黒字倒産とは?黒字倒産が起こる原因と防ぐ方法をわかりやすく解説!

    記事公開日: 2022.07.26

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    1. 黒字倒産とは

    東京商工リサーチの調査では、2020年に倒産した会社の中で同社が財務データを保有する430社のうち53.2%が赤字倒産、46.8%が黒字倒産でした。赤字で倒産するのは理解できますがなぜ半数近い会社が黒字にもかかわらず倒産したのでしょうか。本記事では、黒字倒産についてその要因や防止方法などについて分かりやすく解説します。

    黒字倒産とは、利益が出ているにもかかわらず経営が破綻してしまうこと 

    黒字倒産とは、利益が出ているにもかかわらず会社が経営破綻することを言います。黒字は、企業の収入が支出よりも多く損益計算書の当期純利益がプラスの状態のことですから、普通に考えると倒産とは結びつかないのですが、実際には利益が出ていて黒字であっても倒産する会社は珍しくないのです。

     

    倒産は、取引先に対して支払いができなくなったり、経済活動を維持できなくなったりして経営が破綻することですが、最も多い原因は売上高の減少や長期的な業績の悪化などによる赤字経営です。

     

    しかし、赤字を長期に渡り計上し続けていても倒産していない会社も実際には多く存在しており、その理由を知ることが黒字倒産が発生するメカニズムの理解につながります。

    赤字だからといって会社はすぐには倒産しない 

    赤字が続くと倒産するリスクが増大するので、経営者は常に赤字にならないように心がけているはずです。しかし、2021年1月時点において、世界の自動車メーカーでトップの時価総額を誇る米国テスラ社は、2003年の創業から2019年までずっと赤字経営の状態でした。

     

    倒産は支払能力がなくなり経営が破綻することですが、逆に言えば支払能力があればいくら赤字でも倒産に至ることはありません。つまり、EVの世界市場において大きな成長が見込めるテスラ社に対しては出資する投資家が多く存在し、経営が赤字であっても資金調達によって手元の資金を確保できたことで倒産しなかったのです。

     

    また、一時的に赤字に転落しても過去の黒字によって資金の蓄積が十分ある場合も、同様にすぐに倒産することはありません。

    2. 黒字倒産はなぜ起こるのか

    赤字でも倒産しない会社があるのに、黒字倒産はなぜ起こるのでしょうか。その最大の要因は、手持ちのお金を失ってしまう何らかの理由があったからです。

    黒字倒産が起こる理由は「社内に現金がなくなったから」

    黒字倒産に至るまでのパターンはいくつかありますが、共通する原因はキャッシュフローが悪化したことによる資金不足にあります。

     

    会社は資本金を元手に事業を開始し、稼いだお金の中から原材料や販売費などの支払いを行い、残ったお金(利益)でさらに事業を成長させていきます。黒字の会社は利益が出ているのですから、本来は資金ショートするはずがないのですが実際には商品を納品しても代金を回収できるのは1ヶ月後、2ヶ月後ということは珍しくありません。

     

    このように、帳簿上の売上と実際のお金の流れにはタイムラグが生じることから、売上金の回収前に諸費用の支払いを行う可能性があります。また、売上金の回収が先でも在庫を多く持ちすぎると支払額の方が多くなり、同様に手元の資金が不足することになります。

    黒字倒産の例:順調に利益が出ていたのに倒産してしまった2社のケース 

    ここで、実際に黒字倒産となった「株式会社アーバン・コーポレーション」と「江守グループホールディングス株式会社」の事例を基に、その理由を考えてみましょう。

     

    株式会社アーバン・コーポレーションの場合

    アーバン・コーポレーションは、分譲マンションの企画販売を目的に1990年に設立され、2000年には東証第2部に上場。2008年3月期には売上高1324億7200万円、経常利益555億5200万円を計上したのですが、同年8月に民事再生法の適用を申請することになりました。2008年7月31日時点の負債総額は2558億3200万円でした。

     

    国内市場の好調を背景に大型案件の開発を急増させ事業規模を拡大していたところ、米国のサブプライムローン問題に端を発した世界的な金融市場の混乱などから不動産市場が急激に悪化。その影響を受け、金融機関の不動産向け融資の基準が厳しくなり資金調達が困難になるとともに開発済の不動産売却も進まず自主再建を断念することになったのです。

     

    アーバン・コーポレーションが黒字倒産する直接の引金となったのは、米国のサブプライムローン問題でしたが、根本的な要因は営業活動によるキャッシュフロー(事業活動における現金の流れ)がマイナスにもかかわらず、新規不動産に多額の投資を行い事業拡大を急いだことにあると考えられます。

     

     江守グループホールディングス株式会社の場合

    江守グループホールディングスは、福井県福井市に本社を構える化学品、合成樹脂、電子部品などを扱う商社。1906年に江守薬店として創業され、2005年に東証第2部に上場し、翌年東証第1部に指定替えし、2014年に持ち株会社として「江守グループホールディングス株式会社」に商号を変更しました。

     

    急成長する中国市場を中心に海外展開を加速し、2014年3月期には売上高2191億8700万円、当期純利益33億2300万円と4年連続で過去最高を更新。しかし、翌年4月30日に東京地裁に民事再生手続きを申請し、5月31日に上場廃止となりました。

     

    業績悪化の直接の理由は、中国景気の減速や金融引き締めなどの影響を受け中国子会社の売掛金回収が進まなくなったことですが、アーバン・コーポレーションと同様に営業利益は出ているのに営業活動によるキャッシュフローは5年前からマイナスで、最終的に保有する資金約139億に対し1年以内に返済予定の借入金が約480億円という状態でした。

     

    これらの事例から、お金を稼ぐはずの本業で逆にお金を失う状態のキャッシュフローは、経営破綻のシグナルと考える必要があります。

    3. 黒字倒産を防ぐには

    黒字倒産の事例のように、いくら売上が順調に伸びていても手元の資金を大きく上回る投資や売掛金の回収遅延などがあると、市場環境が悪化した場合に一気に経営破綻に至る可能性があります。これを防止するには次の5つの対策を実施し、常にキャッシュフローを良い状態に保つことが重要です。

    対策1.キャッシュフロー(現金の流れ)を把握する 

    黒字倒産を防ぐために最初にしなければならないのは、キャッシュフロー計算書を活用してお金の流れを常に把握することです。キャッシュフロー計算書は会社の決算書の1つで過去1年間のお金の出入りを表したものですが、現在のお金の流れを把握するためには毎月作成する必要があります。

     

    キャッシュフロー計算書は、会社の活動を「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つに分類しそれぞれの出入金を表しているため、例えば、本業で支出よりも収入が多ければ営業活動によるキャッシュフローはプラスであり、逆にマイナスであれば本業でお金を失っていることになります。

     

    このように、キャッシュフロー計算書をチェックしていれば、事前に問題点を把握し経営が悪化する前に対策を講じることが可能です。

    対策2.回収サイクルは短く、支払いサイクルは長く 

    営業担当者は売上が重要なので、支払などは顧客の条件をそのまま受け入れてしまうことも多々あります。仕入れた製品が売れて代金を回収する前に支払が発生することが通常なのでキャッシュフローは当然マイナスになりますが、継続的な取引の場合には前月の売上金の回収があるので大きな問題にはなりません。

     

    しかし、キャッシュフローのマイナスが少額であれば問題はないのですが、何千万円、何億円といった金額になると会社の規模によっては大きな影響があるので見過ごすことはできません。キャッシュフローにとっては、売上金の回収はできるだけ早く、支払はできるだけ遅くすることが原則です。

     

    実際の取引においては自社の要望通りにいかないこともありますが、担当者全員がキャッシュフローを意識して顧客や仕入先と交渉すれば現状よりもキャッシュフローは必ず改善するはずです。

    対策3.在庫をなるべく減らす 

    不動産業では土地や建物などは商品ですから、アーバン・コーポレーションのように新規不動産に多額の投資を行うと過剰在庫を抱えることになります。

     

    経営者や仕入責任者は、売上が好調だと今後もこの状況が続くと考えて過剰な仕入れを行いがちですが、あまり長期の売上を見越して在庫を増やし過ぎると、支払が先行しキャッシュフローはどんどん悪化します。

     

    予測通り売上が持続すれば問題はないのですが、市場環境が悪化し売上金の回収サイクルが停滞すると、資金繰りができず一気に経営が破綻する可能性が出てきます。このように過剰在庫はキャッシュフロー上のリスクが大きいので、もし売上に対して在庫が過剰であれば仕入れをセーブし在庫を減らさなければなりません。

    対策4.資金調達 

    資金調達によって手元の資金が不足しないようにすることも黒字倒産を回避するための有効な手段です。主な資金調達の方法には、①金融機関からの借入、②新株の発行、③資産や事業の売却、④補助金などの利用などがあります。

     

    資産や自己資金の少ないベンチャー企業などでは新株の発行による資金調達が中心となりますが、事業化して何年も経過している中小企業の場合には銀行などの金融機関からの借入が現実的な手法です。

     

    しかし、キャッシュフローが悪化し売掛金などの回収見通しが立たない状況では、返済能力がないとして融資を断られたり、希望する金額を借りられなかったりする可能性があります。また、無理な借入を行うと返済ができず、逆にキャッシュフローを悪化させるリスクがあることも認識しなければなりません。

    対策5.急成長よりも安定成長を目指す 

    売上が増加し利益が増えていれば経営は順調に推移しており、資金にも余裕があると考え、新たな設備投資や新社屋の建設などを行う経営者は後を絶ちません。また、資金が足りなくなると大きなプロモーションを行ったり、商品の仕入れを増やしたりして売上拡大を図る経営者もいます。

     

    現状の売上で利益が出ている場合にはそのまま継続していればお金は増えますが、急な売上拡大のために在庫の増加や設備投資を行えば、支払額が増加するだけではなく売掛金なども同時に増加するので結果として売上は増加しても手元の資金が減ることになります。

     

    市場環境がどのように変化しても黒字倒産を回避し会社を成長させるには、急激な事業拡大よりもキャッシュフローを悪化させない範囲で徐々に成長させることが重要なポイントとなります。

    まとめ

    経営者の多くはどうしても損益計算書における売上高や利益を重要視しがちですが、キャッシュフローを把握していない経営判断には大きな危険が潜んでいることを認識しなければなりません。

     

    しかし、黒字倒産のメカニズムを正しく理解し、本記事で紹介した対策を実践すれば黒字倒産を回避することは決して難しいことではありません。そのためには、売上や利益と同様に会社の財務状況にも関心を持ち、キャッシュフローを正しく把握することが重要です。

     

    そして、キャッシュフローを理解しようと思ったら、直感的に分かりやすい資料を用いることも重要です。当社が日頃お客様にご提供している資料をサンプルとしてご用意いたしましたので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。

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