「中小企業の平均的なボーナスは、いくらなの?」
「中小企業のボーナスの評定基準を知りたい!」
というように、経営者の方のなかには、中小企業の平均的なボーナスや評定基準を知りたい方も、多いのではないでしょうか。
今回は、中小企業のボーナス平均や評定基準、設定するメリット・デメリットを紹介します。
この記事を読むことで、中小企業の平均的なボーナスや評定基準が分かり、ボーナスを設定しやすくなるでしょう。
1.平均的な中小企業のボーナス支給額
本記事を読んでいる方の中には、ボーナスの設定方法について悩んでいる方も多いでしょう。
しかし、他の中小企業の平均的なボーナス支給額を知らないと、中々設定しにくいです。そこでボーナスの設定をしやすくするために、中小企業のボーナスを業種別と中小企業全体に分けて紹介します。
なお、紹介する平均支給額は、税理士法人の古田士会計が2017年冬から2020年夏に独自調査した賞与実態調査を基にしています。また、ボーナスゼロの会社を除いた平均額を紹介していくので、それを踏まえた上でご確認ください。
中小企業の業種別ボーナス支給額
中小企業の業種別ボーナス支給額を知ることで、自分の業種に合ったボーナスを設定しやすくなります。
ここでは、中小企業の業種別に以下の11業種を紹介します。
- 卸売
- 飲食店
- 小売
- 建設
- IT関連
- 不動産
- 製造業
- 印刷業
- 運送業
- 美容業
- その他・サービス業
それぞれの業種のボーナス平均を見ていきましょう。
業種1:卸売業
卸売の2020年夏のボーナス平均は、232,140円です。
2019年夏のボーナス平均が289,394円、2017年冬から2019年冬までが262,967円~300,405円であることを踏まえると、2020年夏で大幅にボーナスが減少したことが分かります。
業種2:飲食店
飲食店の2020年夏のボーナス平均は、180,987円でした。
2019年夏のボーナス平均が171,195円で、1年でボーナスが約5%減少しています。
ただ、2017年の冬は113,002円であることから、3年で大幅にボーナスが増加していることが分かります。
業種3:小売業
小売の2020年夏のボーナス平均は、273,531円です。
2019年夏のボーナス平均が224,825円で、1年間にボーナスが約21%も増加しています。
業種4:建設業
建設の2020年夏のボーナス平均は、331,851円でした。
2019年夏のボーナス平均が321,261円で、1年間に3%ボーナスが増加しています。
他の業種と比較して、建設業はボーナス平均の高い業種と言えるでしょう。
業種5:IT関連
IT関連の2020年夏のボーナス平均は、323,525円です。
2019年夏のボーナス平均が288,518円で、1年間にボーナスが12%増加しています。
2017年冬から2019年夏までの額は218,483円~288,518円であることを踏まえると、今後もボーナス平均が増加しそうな業種と言えます。
業種6:不動産業
不動産の2020年夏のボーナス平均は、501,418円です。
2019年夏のボーナス平均が707,434円で、1年間にボーナスが約30%減少しています。
2017年冬から2018年冬までのボーナス平均が580,702円~684,728円で、2020年夏が最も低かったことから、さらにボーナスが減少していく可能性があります。
業種7:製造業
製造業の2020年夏のボーナス平均は、293,975円です。
2019年夏のボーナス平均が295,413円で、ほぼ横ばいと言えます。
業種8:印刷業
印刷業の2020年夏のボーナス平均は、219,712円です。
2019年夏のボーナス平均が243,273円で、1年間にボーナスが10%減少しています。
業種9:運送業
運送業の2020年夏のボーナス平均は、115,843円でした。
2019年夏のボーナス平均は111,862円で、ほぼ横ばいと言えます。
業種10:美容業
美容業の2020年夏のボーナス平均は、53,006円です。
2019年夏のボーナス平均が77,579円で、1年間でボーナスが約32%も減少しています。
今回の調査の中で2020年夏のボーナス平均が最も低かったことから、今後さらに低くなる可能性もあるでしょう。
業種11:その他・サービス業
その他・サービス業の2020年夏のボーナス平均は、216,458円です。
2019年夏のボーナス平均が226,870円で、1年間でボーナスが5%減少しています。
全体としての中小企業ボーナス
全業種の2020年夏のボーナス平均は、216,458円です。
2019年夏のボーナス平均が250,765円で、1年間でボーナスが約14%減少しています。全体的にボーナス平均が1年間で減少していることが分かりました。
2.中小企業と大手企業のボーナスの違い
中小企業と大手企業のボーナスの違いは、以下の通りです。
- 中小企業…276,486円
- 大手企業…956,744円
中小企業と大手企業のボーナスは、約70万円違います。なぜなら、大企業の方が大きな利益を上げているからです。
企業自体が利益を得ていなければ従業員にボーナスを支給することは難しいため、大きな利益を得ている大手企業と中小企業とではボーナス支給額に差があります。
3.中小企業のボーナスの設定方法
中小企業のボーナスの主な設定方法は、「給与連動型」と「業績連動型」の2つが挙げられます。それぞれについて解説します。
給与連動型
給与連動型は、基本給に対して一定のボーナスを設定する方法です。
そのため、毎回のボーナス設定を行う手間を省けます。しかし、ボーナス額が毎年変動しないため、従業員の意欲が向上しにくい点がデメリットです。
業績連動型
業績連動型は、企業の業績によってボーナスが変動する方法です。
給与連動型とは異なり、会社の収益状況により自身のボーナスが増減します。従業員の意欲向上にも効果的な設定方法です。
4.中小企業がボーナスを支給するメリット
大企業でなければボーナスを支給する必要性はない、といった考えを持っている方もいるかもしれません。
しかし、中小企業がボーナスを従業員に支給することで得られるメリットもあります。
そこで、中小企業がボーナスを支給するメリットとして以下の3つを紹介します。
- 社員のモチベーション向上
- 自社の評価が上がる
- 節税対策に繋がる
社員のモチベーション向上
ボーナスを支給することで、社員のモチベーションを向上できます。さらに、業績連動型であれば、自身の会社への貢献具合がボーナス増減に繋がるので、よりモチベーションの増加を期待できます。
自社の評価が上がる
中小企業がボーナスを払えば、自社の評価も向上します。
就職・転職サイトの口コミでは、会社関係者や退職者がボーナスの有無に関して記載する場合があります。もし、ボーナスを支給していなかった場合、自社の評価が下がりかねません。自社の評価が下がると、求人を出しても良い人材が集まらない可能性があります。
自社の評価を上げるためにも、ボーナスを支給することをおすすめします。
節税対策に繋がる
決算賞与を行うことで、節税対策に繋がります。決算賞与とは、企業がその年度の業績によって支給する臨時のボーナスのことです。
例えば、税率が35%で利益が1,000万円、200万円の決算賞与を行ったとします。
通常であれば、1,000万円×35%で350万円を納税する必要がありますが、決算賞与であれば、(1000万円-200万円)×35%で280万円になり、70万円節税できます。
5.中小企業がボーナスを出すデメリット
先ほど中小企業がボーナスを出すメリットについて紹介してきました。一方で、中小企業がボーナスを出すデメリットもあるのです。
ここでは、中小企業がボーナスを出すデメリットとして、以下の2つを紹介します。
- 同一期間の離職率が高まる可能性がある
- 経営状況に支障をきたす可能性がある
それぞれのデメリットについて見ていきます。
特定時期の離職率が高まる可能性がある
中小企業がボーナスを出すデメリットとして、特定時期の離職率が高まる可能性が考えられます。
通常、ボーナスは夏と冬に支給されます。逆に言えば、夏と冬以外には、ボーナスが支給されません。
そのため、従業員の離職がボーナス支給直後に集中する可能性があります。
経営状況に支障をきたす可能性がある
中小企業がボーナスを出した場合、企業規模によっては、経営状況に支障をきたす可能性があります。
もちろん、ボーナスを支払えば、会社の利益が減少します。会社の業績が良くない時にボーナスを出せば、経営状況に支障をきたすかもしれません。
ただ、業績連動型にすれば、会社の業績によってボーナスを出せばいいので、負担が減少します。危機管理の面でも、業績連動型でのボーナス支給がおすすめです。
6.中小企業のボーナスを支給する際の注意点
先ほど中小企業がボーナスを出すデメリットについて紹介しました。しかし、デメリットとは別に、ボーナスを支給する際に気を付けるべき注意点があります。
そこで、中小企業のボーナスを支給する際の注意点として、以下の2つを紹介します。
- ボーナスを支給する理由を明確にする
- 経営状況を必ず把握する
ボーナスを支給する理由を明確にする
ボーナスを支給する理由は明確にします。なぜなら、ボーナスを支給する理由を明確にすることで、目標達成しやすくなるからです。
ボーナスを支給する理由を検討する際に、現時点で抱えている課題や、課題解決方法を整理しておくと、業績が良い方向にいく可能性が高まります。
経営状況を必ず把握する
ボーナスについて検討する際は、経営状況を把握する必要があります。
ボーナスを支給することで、会社の利益は減少しています。もし、不況時にボーナスを出し続けていたら、倒産してしまう可能性もあります。
ボーナスを支給する際は、まず経営状況を把握することが大切です。
まとめ
今回は、中小企業の平均的ボーナスや評定基準、ボーナスを設定するメリット・デメリットを紹介しました。
中小企業がボーナスを出すことで、社員のモチベーション向上や節税対策などのメリットが得られます。
その一方で、同一期間の離職率が高まる可能性や経営状況に支障をきたすことも考えられます。
ボーナスを設ける際は、メリット・デメリットを考えた上で設定することをおすすめします。
本記事をボーナスの設定に活用していただけますと幸いです。
なお、中小企業のボーナスの実態をまとめた「中小企業の賞与実態調査(2021年 夏版)」をプレゼントとしてご用意しましたので、ぜひ有効活用いただけますと幸いです。
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