事業計画書とは?必要な項目や採択されるポイントを解説

    記事公開日: 2022.07.20

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    事業計画書は事業アイデアを見える化したもの

    事業計画書とは、事業の内容、将来性、戦略、今後の収益見込みなど、経営者が考えていることを具体的にまとめたもので、事業計画が無ければ、経営者が行おうとしている事業について誰も正しく理解することができません。

     

    例えば新規事業を開始する場合、事業計画があると次のような疑問がクリアになります。

     

    • この事業に対する市場のニーズはあるか
    • この事業の戦略で競合他社に勝てるか
    • この事業によってどれくらい儲かるか
    • この事業計画の実現可能性は高いか
    • この事業の持続性・将来性はあるか
    • この事業を行うためにはどれくらい資金が必要か

     

    このように、事業計画は事業のアイデアを見える化することによって、さまざまな視点で内容を精査することが可能になるとともに、事業の魅力や将来性を社内外の関係者に正しく伝えられるようになります。

    事業計画書を作成する3つのメリット

    仮に事業計画書が無くても会社の経営は可能ですが、事業計画書を作成することでさまざまなメリットが得られます。

     

    メリットは、事業計画の作成自体から得られるものと、事業計画を活用することによって得られるものに分けられますが、なかでも特に重要なメリットは次の3点です。

    ⒈ 自分自身の思考が整理される・見える化できる

    事業計画書を作成すると、経営者が頭の中だけで考えていたアイデアを整理し、客観的に見直せるので、実行計画の妥当性、目的達成に必要な要素の見落とし、市場環境の変化、投資金額など、認識が甘い部分を事前に把握・修正することができます。

    ⒉ 従業員に会社の方向性を示せる

    事業計画を実現するためには、経営者と従業員が一丸となって目標達成に向けて努力しなければなりません。

     

    事業計画書があれば、事業の方向性や目標、さらには目標達成によって得られるメリットなどを従業員が正しく理解でき、業務の効率化や目標達成の可能性がより高まります。

    ⒊ 金融機関からの資金調達を受けやすくなる

    投資家や金融機関は、経営者の話や調査情報だけで投資・融資を判断することはありません。事業計画書があると、計画の具体的な内容をチェックし投資・融資すべき案件であるかを判断できるので、確実な資金調達に事業計画書は不可欠です。

    事業計画に含めるべき18個の項目

    事業計画書を初めて作成する場合には、どのような形式でまとめればよいか迷うこともあると思いますが、事業計画書には決まったフォーマットはありません。

    しかし、書き方によって、投資家や金融機関に強くアピールする事業計画書と、逆に印象が薄い魅力のない事業計画書ができるのは事実です。

     

    そこで、誰でも完成度の高い事業計画書を作成することができる「事業計画書に盛り込むべき18項目」を紹介します。この18項目に従ってアイデアをまとめていくと、投資家や金融機関が知りたい基本的な情報を一通り伝えることができます。

    ⒈ 会社のプロフィール

    事業計画書は、経営者や従業員以外に会社のことをよく知らない社外の投資家や金融機関などに向けて作成するケースも多いため、最初に事業の主体となる会社について正しく伝える必要があります。

     

    そこで作成するのが会社のプロフィールですが、盛り込む内容は次の4つに整理することができます。

     

    ① 会社の基本情報

    会社に関する基本的な事項で、商号、所在地、設立年月日、代表者、役員、株主構成、電話番号、メールアドレス、ホームページのURL、主要取引先、主力商品、従業員数などがあげられます。

     

    ② 会社の略歴

    創業から現在までの変遷を簡潔に記載します。網羅的に記載するのではなく、事業計画の内容に関わる部分を重点的にまとめることが大切です。

     

    ③ 実績、経験・ノウハウ

    事業計画に関係する実績や、計画の実現に役立つ経験・ノウハウを記載します。知的財産及びその他の経営資源についてもできるだけ明記します。

     

    ④ 会社の強み/PRポイント

    ブランド力、企画力、販売力など、上記以外で事業計画の実現にプラスとなるPRポイントがあれば紹介します。

     

    このように、会社のプロフィールは、事業計画を遂行できる会社であることが具体的に理解できるように作成することが重要です。

    ⒉ 代表者のプロフィール 

    代表者のプロフィールは、経営者として事業計画を遂行する能力を持っているかを評価する判断材料となるものです。会社のプロフィールと同様に内容を4つに整理して記載します。

     

    ① 代表者の基本情報

    氏名、出身地、年齢、趣味、学歴などを記載します。信用を高めるために、学歴及び学んできた専門分野の中で事業に関係する部分があれば明記することが重要です。

     

    ② 代表者の職歴

    代表者が現在までどのような仕事に携わってきたのか、特に事業計画の遂行に関わる業務経験があれば重点的に紹介します。

     

    ③ 代表者の実績、経験

    今までの職歴の中での成果や経験など、できる限り事業に有益なものを記載します。例えば、売上増大、シェア拡大、新規プロジェクトの立ち上げなどです。

     

    ④ 代表者のPRポイント

    代表者の経営者としての信条や事業に対する熱意・本気度、そして事業に関わるスキルや活用できる人脈などについてアピールします。

     

    代表者のプロフィールは、事業計画との関係においてプラスとなる情報を簡潔に伝えることがポイントです。必要のない情報はできるだけ盛り込まないようにしましょう。

    ⒊ 事業概要 

    事業計画書はさまざまな項目で構成されているため、内容を理解するには全てを読まなければなりません。そのため、事業計画書の前段に事業概要(エグゼクティブサマリー)と呼ばれる事業計画の内容を要約した項目を記載し、簡単に理解できるようにします。

     

    事業概要を記載する目的は、読み手に対し最後まで目を通すだけの価値があることを理解してもらうこと、及び、事業計画のポイントと全体像の理解をサポートすることです。

     

    記載する際は、冒頭で「事業計画書の目的」を説明することが重要になります。つまり、この事業計画書は「誰に」対し「何を」求めるために作成したのかを簡潔に記載するのです。

     

    例としては、従業員のやる気を喚起する、投資家に出資を求める、金融機関に融資を求める、他社に業務提携やM&Aの検討を求める、などが考えられます。

    ⒋ 今後のビジョン

    ビジョンは「事業(会社)が目指す将来の姿」つまり「目標」のことで、経営者が事業をどのように成長させて行くのかを明確に示すものです。

     

    ただ、事業計画書にはあまり遠い将来の目標設定は適していません。20年先、30年先の目標設定では不確定要素が多すぎるため、読み手が事業計画書によって何かを判断するのは困難です。そのため、事業計画書には一般的に5〜10年の中長期計画に基づくビジョンを記載します。

     

    ビジョンには、若い独身女性の人気ブランドにする、あるいは地域ナンバーワンの店舗にするなどのような「定性的なビジョン」と、目標とする売上高や経常利益などを数値で設定する「定量的なビジョン」があります。

    どちらかに偏るのではなく両方のビジョンを組み合わせることで、読み手に対し経営者が目指しているものを正しく伝えることができます。

     

    ビジョンを作成する時には、「3W1H」に従って考えを整理すると効率よくまとめられます。

     

    When(いつまでに):5年後、10年後などの期限

    Where・Who(どこで誰に):ターゲットとする市場や顧客

    What(何を):提供する商品・サービス

    How much(どれ位):目標とする売上高、利益、シェアなど

     

    あまり高いビジョン(目標)を設定すると、インパクトはありますが事業計画自体のリアリティが低下する恐れがあります。努力すればギリギリ到達できる程度の目標設定が望ましいです。

    ⒌ 事業ドメイン

    事業ドメインとは事業を展開する領域のことで、事業戦略の重要な要素になります。事業ドメインの選定は選択と集中に有効で、経営資源の不必要な分散を防げるため、新分野への進出や新規事業の立ち上げなどの際には非常に重要になります。

     

    事業ドメインを選定する際には、3つの基本軸で構成される「CTMフレームワーク分析」という手法の活用がおすすめです。CTMフレームワーク分析では、「顧客」「技術」「機能」という3つの基本軸において、自社の強みを活かせる領域を分析し規定します。

    CTMフレームワーク分析

     

    ① 顧客軸

    顧客軸では、自社の商品やサービスを提供する「相手」は、どのような消費者が適しているのかを定義します。具体的には、居住地、年齢、性別、趣味・嗜好、家族構成の属性などです。

     

    ② 技術軸

    技術軸では、自社が持っている技術の中で、競合他社よりも優れている技術、あるいは競合他社が持っていない技術を定義します。技術軸の分析により、自社の強みや競争優位性が明確になります。

     

    ③ 機能軸

    自社の商品やサービスを通じて、どのような機能や価値を顧客に提供できるかを規定します。機能や価値を高められれば、付加価値の高い商品やサービスの開発が可能になり、より多くの優良顧客を獲得することができます。

    ⒍ 役員構成や従業員の組織体制

    この項目では、まず事業に関わる役員の経歴・専門分野・スキルなどを紹介し、次に事業計画を実現するための人材や組織体制について記載します。

     

    組織体制の目的は、会社のリソースを効果的に配分することによって、事業計画の目標達成率をできるだけ高めることです。「企画」「開発」「仕入」「製造」「販売」「配送」などのプロセスの中でどこが自社の強みになるかを踏まえて組織体制を編成し、管掌役員や人員の配置を考えます。

     

    例えば、企画力が強みであれば、企画部門に優秀なリーダーと優れた人材を集めます。場合によっては、企画以外の業務をアウトソーシングすることも選択肢のひとつです。

     

    組織体制は、事業戦略と連動し事業計画の実現に深く関わっている項目と言えます。

    ⒎ 事業成長を後押しする社会的背景

    ここでは社会的背景を分析し、事業計画を後押しする要因を具体的に説明します。実際に文章としてまとめる場合には「PEST分析」という手法を活用するとスムーズにまとめることができます。

    PEST分析

    PEST分析は、外部環境(マクロ環境)を「政治」「経済」「社会」「技術」の4視点で整理し、事業に与える可能性のある要因を分析します。

     

    ① 政治情勢(Politics)

    法改正による規制強化・規制緩和、税制改正による増税・減税、政権交代、国際情勢などの状況を整理・分析します。

     

    ② 経済環境(Economy)

    景気動向、経済成長、物価変動、為替・株価・金利、消費動向などを整理・分析します。

     

    ③ 社会情勢(Society)

    老齢人口の増加や少子化などの人口の変化、流行・トレンド、世論の変化、宗教、教育などを整理・分析します。

     

    ④ 技術革新(Technology)

    社会インフラ、IT技術の進歩及び活用状況、各種イノベーション、事業に関連する特許、新規技術などを整理・分析します。

     

    いずれも、事業計画に関わる部分を重点的に記載することが大切です。

    ⒏ 市場規模

    市場規模は、一定の事業領域(市場)で行われる商取引の総額で表され、市場規模が把握できるとその市場における商品・サービスの売上高や販売数量などを推測することができます。

     

    そのため、読み手に対し事業計画の価値を正しく理解してもらうには、市場規模を正しく伝えなければなりません。

     

    市場規模を調べるには、無料で閲覧できる官公庁や業界団体の調査資料を利用する方法と、より範囲を限定した市場規模を調べられる有料の民間調査会社のデータを利用する方法などがあります。

    官公庁の調査資料の例

    業界団体の調査資料の例

    ⒐ 競合他社の動向

    事業を行う上で、自社よりも競争優位性を持った競合他社が存在すると、いくら頑張っても計画通り進めることはできません。

     

    競争がない市場も稀に存在しますが、普通は何社かの競合他社が存在するため、競合する可能性の高い企業の特徴・強み・戦略などを調査・分析しておく必要があります。

     

    競合他社は、事業のビジョンやドメインなどからターゲットとする市場を特定することである程度は絞り込めますが、非上場の中小企業に関しては公開情報が少ないため調査会社への依頼も検討しなければなりません。

     

    動向調査の具体的な内容としては、競合他社が提供する商品・サービスの特徴、メインターゲット、価格帯、広告戦略、販売戦略、売上シェアなどがあげられます。競合他社の情報から、自社が差別化できる領域を明確にします。

    ⒑ 顧客が取得する便益

    市場、商品・サービス、顧客などが明確になった後は、事業を通じて顧客にどのような便益を提供するかを説明していきます。なぜなら、顧客は商品やサービスが生み出す価値を買うからです。

     

    一般に、顧客が期待する便益(顧客価値)は、「機能的価値」「心理的価値」「経済的価値」の3つの価値の総合であると言われています。ここでは各項目について、事業によって提供される商品やサービスを競合他社のものと比較したときの優位点に重点をおいてまとめます。

    ① 機能的価値

    機能性、拡張性、操作性、メンテナンスなどの機能面での優位点

    ② 心理的価値(情緒的価値)

    顧客が体感できる安心感、信頼感、満足感、爽快感などの心理面での優位点

    ③ 経済的価値

    顧客が得られるコスト削減、時間短縮、効率向上などの経済面での優位点

     

    今までは上記3つの価値を考えればよかったのですが、現在は「持続可能な社会」の実現に向けた企業の責任も重要視されており、「社会的価値」も顧客が期待する便益の1つとして考える必要が出てきています。

     

    例えば、商品の製造プロセスでの二酸化炭素の排出量削減、プラスチックの使用中止などです。社会の課題解決に貢献する事業であることも重要な要素なので、可能な限り「社会的価値」についての優位点も盛り込みましょう。

    11. 自社の強み

    自社の強み、つまり競合他社に対する優位性や独自性は、事業計画の出発時点における非常に重要な要素となります。まとめ方にはいろいろな手法がありますが、SWOT分析を利用すると自社の強みを効率よく説明することができます。

    SWOT(スウォット)分析

    この手法は、自社を「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの視点で分析するもので、内部環境と外部環境をバランス良く把握できます。

     

    ① 内部環境における強み「強み」と「弱み」の分析

    顧客の視点、競合他社との比較、社内ヒアリングなどで、自社が持つ、資源、ブランド力、品質、技術力、企画力などの強みと弱みを整理します。

     

    ② 外部環境における「機会」と「脅威」の分析

    外部環境は「政治」「経済」「社会」「技術」の4つの視点によるマクロ環境分析と、ターゲットとする市場の「成長性」「競合」「消費者」「取引先」などの動向に関するミクロ環境分析によって、事業に関する機会と脅威を整理します。

     

    事業計画書に記載する上でのポイントは、弱みや脅威をそのまま記載するだけではなく、対策も盛り込んでおくことです。

    12. 商品・サービスの説明

    事業概要とビジョンで説明しきれなかった商品やサービスの魅力・特徴について分かりやすく説明します。

     

    この項目の目的は、事業によって提供する商品やサービスの具体的な内容とアピールポイントを、正しく読み手に理解してもらうことです。

     

    商品やサービスの具体的な内容に関しては、商品概要だけではなくターゲット、ニーズ、販売方法などについても触れておく必要があります。記載する際は、5W1Hや6W2Hなどのフレームワークの利用がおすすめです。

     

    6W2Hを活用した商品・サービスの説明項目

    Why(なぜ):顧客の需要/顧客価値

    What(何を):商品・サービス・品種など

    Where(どこで):販売地域、販売チャネルなど

    Whom(誰に):ターゲットとなる顧客

    How(どうやって):販売方法、販売チャネルなど

    When(いつ):販売時期や需要が高まる期間など

    Who(誰が):メーカー、代理店など直接販売を行う主体

    How much(いくらで):販売価格、分割・一括・サブスクなどの支払い方法

     

    商品の特徴や独自性の他に、商品が顧客に提供する便益性や競合他社の商品に対する優位性、さらにはブランドやイメージなどについてもアピールできる部分は網羅しましょう。

    13. 販売戦略

    事業計画で設定した販売目標を達成するには、優れた競争力のある商品やサービスが不可欠であるのはもちろん、計画通り販売するための戦略も重要です。

     

    現在は、直営店、販売代理店、TVショッピング、ダイレクトマーケティング、Eコマース、SNSなど販売チャネルは多岐に渡ります。

     

    販売戦略は、商品やサービスの魅力やメリットを認知してもらうためのプロモーションと販売チャネルを組み合わせたものになりますが、事業計画全体に影響を与える戦略的な手法もあります。

     

    多くの成功企業が採用している代表的な販売戦略を以下で3つ紹介します。

    ① コストリーダーシップ戦略

    商品・サービスの製造コストや流通コストなどを低減し、価格を競合他社よりも低く設定し大きな市場シェア獲得を狙う手法。

    ② 差別化戦略

    市場の中で重要視されている特定の顧客価値を重点的にアピールし、競合他社と差別化を図ることによって高い市場シェア獲得を狙う手法。

    ③ 集中戦略

    ターゲットとする市場を絞り込み、そこに経営資源を集中し高い市場シェア獲得を狙う手法。

    14. 主要取引先・顧客

    取引先には大きく分けて「商品やサービスの販売先」「原材料の仕入先」「各種業務の外注先」があります。

     

    仕入れ、開発、生産、販売、配送、代金回収などに関する取引先が明確になっていると、事業計画の実態を把握でき、経営者がどれくらい本気で事業の実現を考えているかが読み手に伝わります。

     

    可能であれば、事業全体のフローチャートを作成すると、事業の仕組みや取引先との関係・役割分担が明確になります。また、各取引先のプロフィールや支払条件なども簡潔に記載すると良いでしょう。

    15. ビジネスモデル・フロー

    ビジネスモデルのフローチャートは、複雑な業務の流れを可視化し、事業の全体像と関係者の役割分担を明確にできるメリットがあります。また、事業計画の問題点や見落としている部分をチェックすることにも有効です。

     

    業種や事業内容によってフローチャートの形式は異なりますが、作成する場合には業務の流れを記号と矢印を使い、プロセスを上から下、または左から右へ進むように表します。ポイントは、誰が・いつ・どの業務を行うかをシンプルに記載することです。

     

    フローチャートは、使い慣れたWord、Excel、PowerPointなどで作成が可能ですが、初めて作成する場合にはフローチャート作成ツールなどを利用することもおすすめです。

    16. 社内体制

    事業計画を実現するためには、組織体制や人員計画が重要です。少人数の会社であっても組織図を作成し担当業務や責任範囲を明確にしなければなりません。特に、外部の投資家や金融機関などにとっては、事業計画を評価する要素の1つとなります。

     

    組織図を作成する場合の注意点は次の2つです。

     

    • 事業を進める上での指揮命令系統を明確にする
    • 責任と権限をバランス良く配分する

     

    社内向けに事業計画書を活用する場合には、社長、取締役、部門長、グループ長などの責任範囲と権限について、組織図とは別に一覧表にすることもおすすめです。

     

    また、スタートから5年後、10年後と事業の発展に伴い従業員も増やしていかなければならないので、事業計画に基づく人員計画も作成しておく必要があります。

     

    人材の調達に関しては、社内の人材だけではなく新規採用やアウトソーシングなども考えられますので、状況の変化に対応できるような人員戦略が重要です。

    17. 財務計画

    財務計画は、「損益計算書」「貸借対照表」「資金繰り表」の3種類の財務諸表から構成されます。金融機関が融資を判断する際に、事業計画書の中で最重要視される項目です。

    損益計算書

    損益計算書は、一定期間(一般には1年間)の事業活動を通した「獲得した金額(収益)」「使った金額(費用)」「儲けた金額(利益)」を分かりやすく整理した表です。事業の収益性を把握できます。

    貸借対照表

    貸借対照表は、特定の時点(一般には決算期末時点)における会社の「資産」「負債」「純資産」の3つで構成される表で、会社の財産状況を明らかにし、倒産のリスク、支払い能力、財務の健全性などを知ることができます。

    資金繰り表

    資金繰り表は、一定期間(一般には1年間)における現金の収入と支出を表にしたもので、事業を健全に運営するためには欠かせないものです。

     

    いくら売上が多くても資金がショートすると黒字倒産という可能性も出てくるので、資金繰り表の作成と共に資金の調達方法も考えておく必要があります。

    18. 資金計画

    事業が赤字でも資金繰りが問題なければ事業の継続は可能ですが、前項でも触れたように資金ショートが発生すると事業の継続は困難です。

     

    そこで、創業時や新規事業のスタート時点で必要な「設備投資」と、原材料費や人件費・家賃・水道光熱費などの「運転資金」に分け、月次及び年次ベースで予測値を表にまとめます。

     

    これに対して、「売上金」と「自己資金」で足りない資金を算出し、①公的資金の利用、②金融機関などからの借入金、③出資を受けるなどの調達計画を盛り込んだ資金計画を作成します。

     

    ここで重要となるポイントは次の4点です。

     

    ① 売上予測や運転資金の精度を可能な限り高くすること

    ② 借入金は会社の返済能力の範囲内とすること

    ③ 出資を受ける場合には経営者の持株比率などの「資本政策」を守ること

    ④ 事業拡大に伴う追加投資や人件費の増加などを反映させること 

    事業計画書の作成に行き詰まったら「6W2H」を考える

    事業計画書は項目が多く、初めて作成する人にとってはハードルが高いかもしれませんが、「6W2H」というフレームワークを利用すると頭の中のアイデアを効率よく整理できます。

     

    「商品・サービス説明」の項でも触れましたが、6W2Hに基づく8つの質問に答えることによって、事業計画書の作成に必要な要素をまとめることができるのです。

     

    1. Why:なぜ、この事業を行うのですか?

    経営者がこの事業を始めようと考えた動機を明確にします。

     

    1. What:どのような商品・サービスを提供するのですか?

    商品・サービスの特徴を具体的に記載します。

     

    1. Where:どのような市場で展開するのですか?

    事業活動を行う市場やチャネルを明確に定義します。

     

    1. Whom:どのような顧客がターゲットですか?

    ターゲットとする顧客はどのような人なのかを具体的に定義します。

     

    1. How:どのようにして実現するのですか?

    商品・サービス、販売方法などを含んだビジネスモデル、及び事業の独自性や競合他社に対する優位性を明記します。

     

    1. When:いつ実行に移すのですか?

    資金の収集、技術の構築、コストダウンなど事業を開始するための条件と、目標時期を明確にします。

     

    1. Who:事業を行うのは誰ですか?

    経営陣や、事業を実現するために必要な人材を具体的に記載します。

     

    1. How much:投資額、売上高、利益額はどれくらいですか?

    事業を行うための資金、事業から期待できる売上・利益などを明確にします。

    事業計画書を成功に導くポイント・注意点5選

    どのような目的で事業計画書を作成する場合であっても、読み手が内容を正しく理解できなければ意味がありません。さらに、事業が持っている可能性や将来性を感じてもらう必要があります。

     

    そこで、事業計画書の内容をより分かりやすくし、読み手にしっかりアピールできるものにするための効果的な作成ポイント・注意点を5つあげておきます。

    1.テンプレートを使用する


    初めて事業計画書を作成する場合には、全体の構成や順序などが整理されているテンプレートを活用すると効率よく必要項目をまとめることができます。

     

    起業する場合には中小企業基盤整備機構(J-Net21)、融資を受ける場合には日本政策金融公庫が提供する無償テンプレートや見本を利用することをおすすめします。Microsoft Office テンプレートや、Web上で公開されている多数の無料のテンプレートの利用も可能です。

    2.初見の人でも分かるように具体的に書く


    IT関連事業や通信事業など技術進歩のスピードが早い業種や、あまり馴染みのない業種の事業計画書には、読み手が知らない専門用語が多く含まれています。

     

    初めて見る人でも事業計画書に書いてある内容を正しく理解できるように、項目ごとの注釈や分かりやすい具体例、場合によっては身近な参考事例を紹介するなどの工夫が必要になります。

    3.図やグラフを活用しわかりやすく書く


    図やグラフは内容を分かりやすくするだけでなく、読み手の興味を喚起する効果があるので、数字が中心の売上や利益を表やグラフにするだけで資料の印象は大きく変わります。

    特に数字の視覚化は、業績などの推移が一目で理解できる点がメリットです。

     

    図やグラフを活用する際は、次のポイントを必ず守るようにしましょう。

     

    • 表・グラフの選択を間違わないこと
    • 文字をできだけ見やすくすること
    • 数字の単位を必ず記載すること

    4.数字的な根拠を明確にする


    事業計画書に記載する「売上」「利益」「経費」などの数値に関して読み手が納得できなければ、事業計画書全体の信頼性が損なわれます。

     

    記載する数値に関しては、必ず算出方法や引用する場合にはデータの出典などの根拠を明確にすることが大切です。引用データについては、信頼できる公的機関の統計データなどを利用すると良いでしょう。

    5.複数人からチェックを受ける

    事業計画書の作成が完了した後は自分での見直しも必須ですが、複数(最低でも2名以上)の第三者にチェックしてもらうことをおすすめします。

     

    単なる誤字・脱字のチェックだけでなく、各項目の整合性や数値の算出根拠、理解しづらい点などについても客観的に指摘してもらうことができます。

    事業計画に関するよくある質問

    事業計画書を作成する際に、どのように記載すればよいか、分量はどれくらいか、あるいはそもそも事業計画書の位置付けがわからないとなど、よくある質問をピックアップしました。

    Q. 事業計画書と創業計画書や経営計画書との違いは何ですか?

    「創業計画書」は、創業、つまりこれから事業を始める時にどのように実現するかをまとめた設計図のことで、事業への協力者や金融機関への説明資料として、あるいは事業をスタートするための行動計画書として利用するものです。

     

    内容は、創業の動機、事業の経験等、商品・サービス、販売先・仕入先、必要資金と調達方法、事業見通しなどから構成されます。

     

    「経営計画書」は、特定の事業ではなく全社的な経営に関する計画書のことを指します。単一事業の会社の場合には事業計画書と経営計画書はほぼ等しくなりますが、経営全体を見通し長期的な視点で作成するのが「経営計画書」、事業自体に重点を置いて作成するのが「事業計画書」です。

    Q. 事業計画書は何枚くらい書けばいいですか?

    事業計画書の枚数については特別な決まりはありませんが、事業の規模が大きくなるに従って枚数も増える傾向があります。

     

    例えば、最大補助金額が1億円の中小企業庁の「事業再構築補助金」ではA4サイズで15枚以内、補助金額が1,500万円以下の場合は10ページ以内と指定されています。

     

    ちなみに、中小企業基盤整備機構が公開している事業計画書の作成例はA4サイズで10枚前後です。

    Q. 手書きの事業計画書は低評価を受けますか?

    事業計画を手書きで作成するか、パソコンで作成するかで評価が変わることはありません。重要なのは書いてある内容です。

     

    しかし、事業計画書の完成度を高くし充実した内容にするには、何度も見直してブラッシュアップしなければなりませんから、手書きよりもパソコンで作成した方が修正などは簡単です。

     

    また、手書きの文字は読み手にとって見づらい場合もあるので、可能な限りパソコンで作成することをおすすめします。

    Q. 将来の売上予測など根拠のある数値はどのように準備すればいいですか?

    一般には、「市場規模」の項でも紹介した官公庁の調査資料や業界団体の調査資料、及び調査会社の調査資料、そして市場の動向や競合他社の売上高などを基に事業の売上予測を行います。

     

    また、創業ではなく既存の事業を拡大しようとする場合には、過去の売上実績を踏まえて今後の売上予測を行うと良いでしょう。

     

    また、資金的に余裕があれば調査会社やコンサルティング会社などに依頼するのも選択肢の一つです。

    Q. 融資以外で事業計画書が必要なタイミングはありますか?

    事業計画書は、金融機関などから融資を受けるための説明資料として作成されることが多いです。

     

    しかし、ベンチャー企業などが投資家から出資を受ける際に、事業の将来性や投資リターンの高さなどをアピールする時や、補助金や助成金などの公的資金を申請する際にも事業計画書の作成は不可欠です。

     

    また、経営者が会社関係者に対して事業の中長期計画を説明する際にも、事業計画書がなければ話になりません。

     

    このように、事業計画書は社内外に向けて経営者の構想を具体的に伝え、協力してもらうための重要なツールなのです。

    Q. 事業計画書は何年分作成すればいいですか?

    事業期間は事業計画書の作成目的によっても異なりますが、創業や新規事業の立ち上げなどの場合、1年間では投資が先行し赤字の業績しか示すことができないでしょう。

     

    そのため、市場環境の変化が予測でき黒字化や業績向上が期待できる期間、つまり5年程度先までの事業計画が一般的ですが、投資額が少なく事業規模も小さい場合には3年間の事業計画も考えられます。

     

    逆に、事業規模が大きくなると業種によっては10年間程度の事業計画が必要な場合もあります。

    Q. 事業計画書のフォーマットに決まりはありますか?

    事業計画書のフォーマットには、金融機関などが指定するもの以外に決まった形式はありません。事業計画書に盛り込まなければならない基本事項は、本記事で紹介する18項目を参考にしてください。

     

    また、前述した中小企業基盤整備機構や日本政策金融公庫などの事例やテンプレートなどを活用することも考えられます

     

    注意しなければならないのは、項目によって呼び名が変わったり、タイトルや説明文に使用する文字のフォントやサイズが変わったりすることです。また、誤字・脱字などのイージーミスも、読みづらくする原因になるので、第三者にチェックしてもらい極力無くしましょう。

    Q. 異なる事業の内容を同じ事業計画書に盛り込んでも大丈夫ですか?

    1つの事業についてでも、第三者にきちんと伝えることは簡単ではありません。また、限りある会社のリソースを分散させるような計画は、実効性においても疑問をもたれる可能性があります。

     

    事業同士が相乗効果を期待できる場合であっても、同時に異なる事業をスタートさせるリスクを考えると読み手を納得させるのはかなり難しくなります。特別な理由がなければ1つの事業に集中することをおすすめします。

    まとめ

    今回は、事業計画書の全体像をお伝えしてきました。

    事業計画書の作成には時間がかかり、高いハードルを感じるものです。

     

    そこで、事業計画書の作成に慣れていない方でも大丈夫なように、簡易テンプレートをご用意しました。

     

    ぜひ、有効活用していただけますと幸いです。

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