経営計画とは?事業計画との違いと構成をまとめて解説

    記事公開日: 2021.03.12

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    経営計画と聞くと、融資時に提出する事業計画をイメージされるかもしれません。実際、この2つは混同されることも多いですが、違いを明確にしておくことで正しい目的に沿って作成を進めることができます。

     

    そこで今回は、経営計画と事業計画の違いについて解説していきます。記事を読み終わる頃には、両者の関係性が整理できて、どちらを作らなければいけないのかが明確になります。

     

    なお、経営計画書の全体像を把握されたいという方は、こちらの記事をご覧ください。

    中小企業こそ経営計画書を作るべき理由と作成から運用までの全ステップを解説

     

    目次

    1. 1.経営計画と事業計画の関係性
      1. 1.経営計画と事業計画どっちが大事?
    2. .経営計画の基本要素
      1. 1.経営計画で押さえておくべき7つの項目
      2. 2.経営計画は方針編と数値編の2部構成が基本
    3. 3.経営計画の作り方
      1. 1.まずは“他社の良い例”のマネでいい
      2. 2.分厚い計画でなくて構わない(10〜20P)
      3. 3.経営理念には「過去のストーリー」を反映させる
      4. 4.具体的な経営戦略・戦術よりも先に「社員の未来像」を考える
    4. .計画通りにいかないからこそ経営計画は作るべき
      1. 1.経営計画は社長の意思
    5. まとめ

     

     

    1.経営計画と事業計画の関係性

    経営計画と事業計画の関係性は、ハシゴに例えることができます。どこにハシゴをかけるのかを決めるのが経営計画で、かけたハシゴをどのように昇るのかを決めるのが事業計画と言えます。つまり、経営計画の方がより大きな概念を指し、事業計画を包括しています。

     

    具体的には、経営計画ではビジョン、理念、基本方針など、会社として目指す大きな未来を指し示し、事業計画はその未来を実現するための短期間における数値目標が記されます。

    経営計画と事業計画どっちが大事?

    経営計画と事業計画はどちらも非常に重要なものです。いずれが欠けても、会社として出したい成果をあげることが難しくなるからです。本来は、会社としてどうあるべきか経営計画書を通じて形にし、それを元に事業計画を立てていくのが正しい流れです。

     

    ただし、融資を受ける際の手段として、形式的に事業計画を作っている中小企業が多いのが現状です。行き当たりばったりの経営から抜け出し、永続的に発展していくには経営計画も作成することが望ましいといえます。

    2.経営計画の基本要素

    経営計画の重要性をご理解いただいたところで、次に経営計画がどんな構成要素で成り立っているかについてご紹介していきます。なお、会社によって含まれる構成要素は大きく異なりますが、今回は基本要素として絶対に押さえておきたい7つの項目を取り上げます。

    経営計画で押さえておくべき7つの項目

    ①使命感(ミッション)

    お客様と共有するもので、自社の存在意義を指し示します。

     

    企業 使命感(ミッション)
    トヨタ自動車 トヨタはクリーンで安全な商品の提供を通じて、豊かな社会づくりに貢献し、国際社会から信頼される良き企業市民をめざしています。
    Amazon お客様がオンラインで求めるあらゆるものを探して発掘し、出来る限り低価格でご提供するよう努めること
    ソフトバンクグループ 情報改革で人々を幸せに

     

    ②経営理念

    会社をどのような価値観に沿って経営していくかを決める考え方の基本。

     

    企業 経営理念
    味の素株式会社 私たちは地球的な視野にたち、“食”と“健康”そして、
    “いのち”のために働き、明日のよりよい生活に貢献します。
    京セラ株式会社 全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること
    株式会社リクルートホールディングス 私たちは、新しい価値の創造を通じ、社会からの期待に応え、一人ひとりが輝く豊かな世界の実現を目指す。

     

    ③経営基本方針

    会社の進む方向性を示した基本方針です。会社として何に力を入れていくのかを定める重要なパートです。ちなみに当社は、「環境整備」「お客様第一主義」「重点主義」の3点を掲げております。

     

    ④個別方針

    経営理念、経営基本方針、目標数値などを達成するための項目別の方針です。例えば、商品・サービスに関する方針、顧客に関する方針、新規開拓に関する方針、販売促進に関する方針、クレームに関する方針、環境整備に関する方針などが挙げられます。

     

    ⑤中長期計画

    3年~5年後に、会社が目指すべき姿を具体的に表現しておきます。

     

    ⑥当期経営目標

    会社が使命感を実現するために、直近1年間にいくらの利益が必要で、そのためにどれだけの売上を目指すのかを示した経営数値目標です。

     

    ⑦当期数値目標

    利益や売上など会社全体の数字について、月別、お客様別などに細分化した数値目標です。例えば、月別利益計画、商品別販売計画、得意先別販売計画、チーム別販売計画、担当者別販売計画、資金運用計画表、などを指します。

    経営計画は方針編と数値編の2部構成が基本

    経営計画は、経営方針と数値が大きな柱になります。そこで、経営計画書を仕上げる際には、方針編と数値編の2部構成にするのが基本です。

     

    方針編には「使命感(ミッション)、経営理念、経営基本方針、個別方針、中長期計画」が入り、数値編には「当期経営目標、当期数値目標」が入ります。ただ、構成を明確に区別すれば、必ずしも冊子を2つに分ける必要はありません。

    3.経営計画の作り方

    経営計画書を作る意義は理解していても、実際に着手するとなると、ほとんどの社長が戸惑うことになります。

     

    そこで、経営計画の具体的な作り方や、作流にあたって心得ておきたいポイントについてお話します。

    1.まずは“他社の良い例”のマネでいい

    自社の経営計画を作る際、他社を参考にして、良い部分を取り入れることは決して悪いことではありません。むしろ、優れた経営を行っている他社の良い例を取り入れることは、特に初めて経営計画書を作る際にはとても効果的です。

     

    研究や開発などの分野においては、後発のプレーヤーが優れているプレーヤーの技術を参考にしてキャッチアップしようとするのは当然の行動ですが、経営計画の作成において他者を参考にするということについてはなぜか抵抗感を感じてしまう経営者の方が少なくないようです。

    経営計画のような「正解のない問題」については「自分自身の頭で考えなくてはならない」という考えが働いてしまうかもしれませんが、国の運営においても他の先進国の方針を参考に取り入れて政治に反映させることは昔から行われてきました。

     

    経営計画も同じであり、上手くいっている他社の経営計画を参考にして、自社の状況に当てはめることに何も問題はありません。

    特に初めて経営計画を作る際には他社の経営計画をテンプレートのような形で利用し、以降の年から徐々に自社独自の記述を増やしていくようにすると良いでしょう。

    2.分厚い計画でなくて構わない(10〜20P)

    経営計画の作成について、初めから完璧なものを作る必要はありません。

    誤解を恐れずに言えば、経営計画は「はじめに完璧なものを作る」ことよりも「作ること、そして使い続けること」に本質的な価値があります。

     

    たとえ完璧なものでなくても、「経営計画が存在すること」自体が自社を律することにつながります。

    さらに、一度作った経営計画を使い続けることで、期を重ねるごとにブラッシュアップされた内容へと洗練されていくケースはあちこちの会社で見られます。

     

    実際に弊社が経営計画の作り方を指導させて頂いている会社さんの多くが、はじめは10Pぐらい、多くても20Pぐらいの経営計画を作るところからスタートしています。

    大切なことは「少しでも早く作って、スタートさせること」です。

    いち早く「10Pの経営計画書」を完成させてしまいましょう。

    3.経営理念には「過去のストーリー」を反映させる

    経営計画書を作成するにあたって、経営理念は根幹を成す要素です。

    実際に、多くの会社の経営計画書には経営理念が盛り込まれています。

     

    ところが、これから経営理念を考えるとなると、非常に多くの経営者の方が「これからこうしていこう」という「未来」の情報を盛り込もうとしてしまいがちです。

    「理念」というものが「未来の事象に基づくもの」であるというのは誤解です。

    実際、「これからやりたいこと」を軸に経営理念を作ってしまうと、理念と呼ぶにはあまりにもフワフワとした内容になってしまいます。

     

    では、経営理念は何をベースにして作ればよいのでしょうか?

    その答えは、「過去のストーリー」です。

    「なぜ、この会社を経営しているのか」「なぜこの事業領域にいるのか」という問いへの答えは、これまでの自社の歴史にしかありません。

     

    「自社は、これまでどういう経緯で創業して・・・」

    「時代の流れの中で事業はどのように変遷してきて・・・」

    「ライバルとどのように戦ってきて・・・」

    「お客さんとどのような関係を築いてきて・・・」

     

    以上を踏まえて、「その中でずっと大事にしてきたことがこれなんだ」というものがその会社の経営理念なのです。

    経営者としては、この「ずっと大事にしてきたこと」こそを言語化する必要があります。

    4.具体的な経営戦略・戦術よりも先に「社員の未来像」を考える

    「経営理念に“過去のストーリー”を反映させるとして、未来のことは考えなくていいの?」と疑問に思われるかもしれません。

    もちろん、未来のことを考えることも非常に大切であり、「過去を反映した経営理念」と「これからの未来」を両方とも表現することが“経営計画のコア”に当たります。

     

    「そうか、未来のことを書くということは、これから実行する戦略や戦術について盛り込んでいくということだな!」と思われたかもしれません。

    実はここも、多くの経営者の方々が正確に理解していない“落とし穴”なのです。

    たしかに戦略や戦術を盛り込むことも大事ですが、その前に決めなければならないのが「社員の未来像」です。

     

    というのも、「これから会社の売上を年間5億円にするぞ!」と意気込んでも、そのスローガンを掲げて気持ちが高まるのは社長だけではないでしょうか?

    聞かされる従業員の側にとってみれば、「会社の売上が5億円に拡大するのはいいけど、それで私たちの給料はあがるんですか?この会社のスローガンのために一生懸命頑張って、わたしたちに何のメリットがあるんでしょう?」としか感じられないでしょう。

    世の大半の会社の従業員が、自社の経営計画をいまいちよく分かっていないのは、「従業員が興味を持てない未来像を掲げ、社長の意識だけが高い状態になってしまっている」という要因が大きいのです。

     

    せっかく時間をかけて作った経営計画が、「社長の自己満足」のためだけのものになってしまう(社員からは「自分達には無関係」と思われる)のは寂しいことではないでしょうか?

    (ほとんどの会社ができていないことですが)「社員がワクワクできる未来像」を発表してはじめて、社員は経営計画を実現するために協力しようという気になるのです。

     

    例えば、我々古田土経営で掲げている「社員の未来像」は、

    1.社員の処遇・・・高給与の実現(同業他社の10%高)、時短勤務、終身雇用、定年70歳(パート・嘱託なら80際まで可)等

    2.ワクワクコース・・・役員・幹部・支店長・グループ会社社長などに出世orエキスパート・スペシャリストコースor独立(のれん分け)など、頑張った社員が輝けるステージを用意

     

    といったような形で「社員自身の人生が輝く未来像」を提示しています。

    ここまで踏み込んだ経営計画であれば、「この会社の経営計画は自分のキャリアに関係があるぞ」と社員は感じ、具体的な経営戦略・戦術を理解して実践しようと考えるようになります。

    4.計画通りにいかないからこそ経営計画は作るべき

    経営計画の話をすると、「どうせ計画通りにいかないから、経営計画なんて作る必要ない」という方がいます。しかし、実際には計画通りにいかないからこそ、経営計画を作るべきなのです。

    1.経営計画は社長の意志

    経営計画で立てた目標は「こうなったらいいな」という未来予測ではありません。会社を存続させ、社員とその家族を守っていくために必要な稼がなければいけない利益を達成するという社長の意志表示です。

     

    そのため、経営計画書は作って当たり前と言っても過言ではありません。さらに、次の3つの点からも経営計画を作る意義は説明できます。

     

    ①計画と実績との差を見比べることで早く対策が打てる

    本気で立てた計画と実績のブレが生じるからこそ、社長の考えとお客様の考えとのズレを認識することができます。だからこそ、早く間違いに気づき、対策を打つことができます。

     

    ②明るい未来が描かれているからこそ本気で目標達成を目指す

    経営計画には、目標達成後の明るい未来が描かれています。そのため、全社一丸となって目標を達成しようという意志が働きます。

     

    ③判断に迷った時に立ち返ることができる

    日々、様々な情報を取得する社長の考えは常に目まぐるしく変化します。しかし、経営計画書で大きな方向性を指し示していれば、大きな方向性を見誤ることはありません。

     

    社長としても社員としても、お互いに立ち返ることができる共通のコミュニケーションツールがあることで、判断に迷った時や社員との意思疎通が必要な時に役立ちます。

    まとめ

    今回は、経営計画と事業計画を対比しながら、経営計画の構成について解説していきました。繰り返しになりますが、自社がどちらに取り組んでいるのか、キチンと認識をしながら作成することが重要です。

     

    なお、経営計画は構造を理解しても、実際に手を動かしてみないと作れるようになりません。

     

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