事業承継の問題を相談する相手は見つけていますでしょうか。
中小企業白書2017のデータによると相談相手として多いのは、顧問の会計事務所や金融機関となっております。
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H29/h29/html/b2_2_1_2.html
しかしながら事業承継といっても範囲が広く、顧問先は知識や経験を持っておらず必ずしも適切なアドバイスをもらえるとも限りません。また相談相手の専門性の強みに引っ張られて想定外の結末になってしまうこともあります。
そこで「事業承継の相談をしたいがどこに頼めばいいかわからない」という方向けに本記事は事業承継コンサルティングの領域や費用感、大事にすべきポイントなどを基礎からお伝えし、最終章にはおススメのコンサルティング会社を7社ご紹介します。
1.事業承継コンサルティングとは
事業承継のコンサルティングは通常のコンサルティングと異なる部分がありますので、特徴を説明していきます。
1.1 計画から実務まで事業承継コンサルティングが扱う領域は広い
事業承継の課題は多岐に渡っており、会社によっても重要性は変わってきます。
例えば以下は中小企業庁の事業承継ガイドラインに基づく承継が必要なものの一覧です。
事業に関する内容から経営や株式、教育などある中で、全部を数年で満遍なく網羅することは難しいです。仮でも構わないので自社の課題に対して優先順位をつけられるとスムーズに進めることができます。
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/shoukei_guideline.pdf
1.2 専門家も何を相談するかによって問い合わせ先が変わってくる
事業承継の中で「どこに相談するか」が承継を成功させるために大事な選択となります。
というのも事業承継の専門家はそれぞれの分野のスペシャリストであることが多いです。事業承継すべての領域に精通しているゼネラリストが揃っているコンサルティング会社は一握りです。スペシャリストが揃っている相談先に問い合わせをすると、自然と事業承継の選択肢が決まってしまうということもありえます。
そのため相談内容が決まっている場合、例えばM&Aで事業承継をすると決まっている場合は専門性の高いコンサルティング会社へ相談すると良いでしょう。もし事業承継の選択肢をフラットに考えたい場合は総合性の高いコンサルティング会社へ相談すると良いでしょう。簡単に分けると下表のようなイメージとなります。
|
相談内容 |
承継の選択肢 |
決定済 |
専門性 |
専門性 |
未定 |
総合性 |
総合性 |
タイプ別のお勧め会社は4章で紹介します。
1.3 依頼内容によって費用も変わってくる
前章まででも紹介しましたが、何をお願いするか(=依頼内容)によって費用も変わってきます。代表的な依頼内容の金額は以下の金額帯になることが多いです。
・事業承継計画の作成 10万~30万/月
・組織再編の実行(合併・分割・株式交換など) 100万~
・M&Aの実施 300万~
・相続対策の実行(遺言書作成・信託・税制の活用など) 100万~
上記はあくまでも参考価格で、実際には会社の純資産や総資産といった規模や実行した際の節税効果を加味して決まることもあります。また登記の変更が入ることも多く、別途実費精算となって追加でおおよそ50万円程かかることを想定しておくと良いかもしれません。
2.一般的な事業承継コンサルティングの内容
事業承継コンサルティングの進め方として王道の流れを紹介します。
2.1 現状のヒアリング
まずは自社の状況を確認していきます。確認項目としては、
・後継者の有無
・株主構成、株主同士の関係性
・創業者や現経営者の想い
・事業の未来
など“会社(組織)”に関する内容から“人”に関するもの、“有形”のものから“無形”のものまで事業承継を進めるにあたって決めるべき内容を伺いながら進めていきます。
もちろん事業承継のコンサルティング会社と一緒に確認する形でもよいですが、ある程度経営者としての想いもあると思いますので、理想の事業承継像の叩き台があると打ち合わせがスムーズに進んでいきます。
2.2 企業価値評価の算定
現状のヒアリングと同時に、会社の価値がどの程度ついているかを計算していきます。
企業の価値評価は大きく二つに分類でき、
①税法上の株価
②会計上の株価
となります。
①は相続対策で用いる株価、②は第三者から評価された株価となります。つまり①=親族内や従業員承継の株価、②=M&Aの株価と言えます。
価値算定で大事なことは、“概算でも構わないので金額を算出すること”になります。
実際に贈与や相続、M&Aを行う際は正確な計算が必要ですが、この段階であれば会社としてどれほどの価値がついているかを認識することの方が重要となります。株価10万円の場合と株価100万円の場合では取るべく対策が変わってくるため、事業承継の方向性をぶらさないためにも全体感を捉えていきます。
2.3 事業承継計画の作成
2.1と2.2で会社の現状を掴んだら、事業承継(=経営資源の引継ぎ)の計画を立案していきます。
その際に検討すべきポイントは3つあり
・事業の承継
・経営権の承継
・財産の承継
となります。
承継方法に応じて今後の選択肢も変わってくるため、計画の作成をしっかりと行うことが成功するための近道です。以下のような計画を作成できると良いでしょう。
詳細に関しては過去記事でも触れておりますのでご参照ください。
https://blog.kodato.com/basics-of-business-succession
2.4 対策の実行、アフターフォロー
2.3で立てた計画を基に事業承継対策の実行に移ってきます。
基本的には専門性が高いためほぼすべての内容を専門家に委託する形となります。
そのため対策を実行するために役員会を実施したり必要なものを準備したりと実務ベースで必要な内容を粛々と行っていきます。
そして事業承継が最後まで抜かりなく完了するようにアフターフォローまで行ってくれる会社が多いです。アフターフォローは別サービスとなり料金が別途発生する場合があるため、サービスの範囲を契約前に確認しておくと良いでしょう。
3.事業承継コンサルティング会社を選ぶにあたって大事にすべき2つのポイント
2章で事業承継コンサルティングの流れを紹介しましたが、その中でも相談する会社を選ぶ際に大事にして頂きたいポイントをお伝えします。
3.1 全体最適なチームコンサルティングサービスを受けることができる
事業承継の課題は多岐に渡っているため、分野を横断したアドバイス(=チームコンサルティング)を受けられる会社を探すことが重要となってきます。また部分最適ではなく、全体最適な提案を受けられるかという点も大事です。
必ずしも事業承継のコンサルティングをする会社が、相談をする会社の最適解を提案しているわけではありません。中には自社にとって有益な提案、すなわちコンサルティング料金が一番高いプランを提供することを主眼として考えている会社もあります。またこの事業承継を契機に顧問契約の変更をしてもらおうと既存の会社を無下に扱う会社もあります。
既存の顧問の先生や専門家を大事にしつつも、多方面の専門家と連携が取れる、事業承継のかじ取り役を相談する事業承継のコンサルティング会社が担えるかどうかがポイントとなります。
3.2 経営計画とリンクした事業承継の計画を立案できる
経営計画と対応した事業承継の計画が立案できるかも大事なポイントです。
確かに事業承継の側面だけをみると引き継いだら解決という形になりますが、会社の経営という側面は引き継いでからが重要で、言い換えればスタートラインに立った状態です。
・経営理念や会社の方針はどうなっていくのか
・事業はどのような方向性で成長させていくのか
・前社長が勇退した後はどのように会社とかかわっていくのか
など会社の内外問わず関心が高いことを事業承継という転換点があっても問題なく、むしろ会社はより前に進んでいることをアピールするためにも経営計画と合わせた計画を立てることが重要です。
4.事業承継のパターン別お勧めのコンサルティング会社7社
2章や3章で触れた事業承継コンサルティングを受けられるお勧めの会社をそれぞれのパターン別にご紹介します。
4.1 親族内承継や従業員承継であればこの会社
①みらいコンサルティンググループ
洗練された事業承継コンサルタントが多数在籍している会社です。規模の大きい法人も対応してきているため、複雑な承継問題にも難なく対応してくれます。
東京都内に本社はありますが、全国に支店があり近くの拠点のコンサルタントが相談に乗ってくれるというフットワークの良さも売りです。
また事業承継の領域だけにとどまらず、人事労務や組織育成にも秀でており、事業承継に関わるあらゆる問題をグループ全体で解決してくれる会社です。
②アイユーコンサルティンググループ
九州で創業して10年余りですが、親族内承継に関して抜群の知見を持っており、また事業承継に関する書籍を何冊も出版しており、同業者からも評価の高い会社です。
また代表者がまだ若く、X(旧Twitter)でも積極的に業界問わず発信をしているためそちらも見て頂くとどんな方が働いているかがイメージしやすいはずです。
初回は無料で面談を受け付けており、強引な押し売りもないため気軽にご相談できる環境があると言えます。
4.2 M&Aを検討するのであればこの会社
③ジャパンM&Aソリューション
中規模法人のM&Aに強みがあり、中小企業の事業承継の選択肢としてM&Aを活用して頂こうと取り組んでいます。
M&Aはしばしば買い手優位となることが多いですが、こちらはそのような情報の非対称性や交渉力が欠けている部分も対応してくれるため、買い手だけでなく売り手のことも大事にしてくれる会社です。
④M&Aサクシード
ビズリーチを運営するVisionalグループが携わっております。
M&Aにおいて大事なことは、買い手もしくは売り手の情報を数多く収集できるかどうかが重要です。事業承継をしたくてもいい相手先が見つからないと先に進みません。
人材系の会社が母体ですので、企業との接点も多く、匿名情報を基にM&Aを体験できる「お試しマッチング」という機能も開始されたためM&Aを気軽に検討しやすい会社となります。
4.3 フラットに事業承継の選択肢を検討したい場合はこの会社
⑤事業承継ドクター協会
創業自体はまだ浅いですが、代表者が元々中小企業向けの最大規模の会計事務所に在籍していたこともあり事業承継に関する知見がとても深いです。そのため親族内承継からM&Aまで、特定の幅広く対応ができること数少ない専門家の一つです。
日本全国の会計事務所とネットワークがあり、地元の専門家を交えながら進めることもできます。また既存の顧問の専門家を尊重しながら進めていきますので、スポットで依頼するということも可能です。
⑥御堂筋税理士法人
https://www.management-facilitation.com/
関西で事業承継の相談をするならこちらの会社です。
事業承継専門の法人も設立され、益々様々なニーズに応えられるよう環境作りに力を入れております。
「中小企業とその経営者に寄り添うこと」をモットーに経営しているため、「何を相談したらよいかわからない」会社でも気兼ねなく相談することができるのが強みです。
4.4 全てを網羅しているのはこの会社
⑦古田土会計グループ
事業承継に困った際はまず古田土会計グループに問い合わせしましょう。
お勧めする理由としては3点あります。
・計画~実行まであらゆる関わり方の対応可能
まず40年以上経営してきた中で様々な規模や業種の会社の事業承継に携わってきたため知見が豊富です。また同業の会計事務所へ指導も行っているため既存の顧問事務所と連携した方法も取る事ができます。
提携先も幅広くそろっており適材適所に活用して事業承継を進めることができるため、相談会社のご要望に沿ったオーダーメイドなご提案が可能です。
・類似事例から事業承継のその後を知れる
現在4,000社と関与があるため、ご相談内容と同じような事例とたくさん接していることが強みとして挙げられます。
事業承継を正に検討している会社もあれば、承継は完了して後継者が会社を順調に経営している会社もあります。
なかなか事業承継後どうなるのかという部分はイメージがつきづらいはずです。事業承継の問題は他社と完全一致することはないからこそ、類似の事例からより事業承継の成功確率を上げることができます。
・後継者教育も一緒にできる
事業承継において大事なことは何度もお伝えしていますが、その中の1つが“事業承継後上手く経営できるかどうか”です。
古田土会計グループでは、経営計画と紐づいた事業承継計画の作成に特に強みがあり、承継前~承継後までに必要な後継者の教育も一緒に行うことができます。事業承継に一貫性を持たせられるため無駄なく引き継ぐことが可能です。
5.まとめ
事業承継のコンサルティングは最初の相談相手の選定がとても重要となります。
上手く引継ぐためにもまずは「自社が現在どのような状態か」「どのような引継ぎをしていきたいか」を仮でもいいので想定し、その仮説を基に今回ご紹介した会社へ相談して頂けると失敗は少なくなるはずです。ぜひお気軽にお問い合わせしてみてください。
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