内部留保とは?貸借対照表(B/S)との関係や高める方法をわかりやすく解説

    記事公開日: 2023.01.11

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    • 「内部留保の役割がわからない」
    • 「内部留保の具体的な高め方を知りたい」

     

    内部留保は、企業が財政的に安定していることを示したり、万が一の経営危機に備えたりするためにも、必要不可欠な指標です。

     

    一方で、経営者として経験の浅い方は、「内部留保の具体的な例や役割、分析方法がわからない」といった方もいるのではないでしょうか。

     

    今回は、内部留保について詳しく知りたい方に向け、下記の内容についてご紹介します。

     

    • 内部留保の基本
    • 中小企業における内部留保の傾向
    • 内部留保の役割
    • 内部留保の分析方法
    • 内部留保を高める方法
    • 内部留保を高めるデメリット

     

    本記事を読めば、内部留保が重要な理由や分析方法を理解し、自社の企業活動に役立てられるでしょう。

     

    また後半では、内部留保を高める方法やそのデメリットについてもご紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。

    内部留保の基本

    内部留保の分析方法や高め方を理解する前に、知っておきたい基本的な内容についてご紹介します。

     

    • 内部留保とは?
    • 内部留保と賃借対照表(B/S)の関係

     

    内部留保や賃借対照表(B/S)との関係性について知ることで、経営者の方は重要な役割や分析方法を理解しやすくなるでしょう。

     

    ここからは、上記2つについて詳しく解説します。

    内部留保とは?

    内部留保とは、企業が事業によって生み出した利益から株主への配当金や役員報酬などを差し引き、その資産を蓄積したものです。

     

    正式な会計用語ではないため、内部留保という言葉は会計上では一般的に使われることがなく、代わりに「利益剰余金」と決算書に明記されます。

     

    内部保留を分かりやすく例えると、個人における貯金に置き換えられます。

     

    個人の貯金と異なるのは、企業の内部留保に含まれるものが自社の資金だけではないという点です。

     

    例えば、企業の取引は現金の受け渡しだけに限らず、有価証券や土地の売買が行われる場合もあります。

     

    保有する有価証券が値上がりすることで含み益が生じるように、取引が完了していなくても企業に利益が発生するのです。

     

    つまり、決算日の時点で企業が有する有価証券や土地に含み益がある場合、その利益が内部留保に含まれます。

     

    企業の内部留保が多ければ、財政状況が安定していると投資家たちに判断されたり、企業自身が余剰金を使って事業を成長させたりと、さまざまなメリットを得られるでしょう。

     

    そのため、会社を経営する上で内部留保の水準や推移は、売上や利益、キャッシュフローと同等に重要視すべき指標なのです。

    内部留保と貸借対照表(B/S)の関係

    内部留保の数値は、賃借対照表(B/S)の純資産の部に記載されます。

     

    賃借対照表とは、企業の決算日時点の財政状況を示す表のことで、バランスシートもしくは略してB/Sと呼ばれることも多いです。

     

    一般的な賃借対照表(B/S)は、運用状況と調達の部分に大きく分けられ、以下の3部によって構成されます。

     

    運用状況

    調達

    資産の部

    現金、売掛金、商品の在庫

    車や土地建造物など

    負債の部

    短期借入金、商品や材料の未払金

    長期借入金、退職給付引当金など

    純資産の部

    株主資本

    (利益剰余金が含まれる資本)

    株主資本以外

     

    賃借対照表(B/S)における純資産は、企業が有する資本調達から負債を差し引いたもので、内部留保は株主資本に表示されます。

     

    利益剰余金は株主に帰属するため、内部留保を株主への配当に使うことも可能です。

     

    また、純資産の部の株式資本は、主に以下の4つに分けられます。

     

    • ①資本金:事業を展開するため株主が支払った元手金
    • ②資本剰余金
      • 資本準備金:元手金のうち、資本金として計上しなかった額
      • その他資本剰余金:資本取引で発生した余剰金
    • ③利益剰余金:企業活動によって得られた利益
    • ④自己株式:企業が保有する自社の株式

     

    賃借対照表(B/S)における内部留保は、企業の資産から負債を差し引いたものから、さらに資本金と資本余剰金、自己株式を除いた額を指すのです。

    中小企業における内部留保の傾向

    中小企業の内部留保は、大企業と同様に毎年増え続けています。

     

    財務総合政策研究所の「法人企業統計調査」によると、2016〜2021年における日本企業全体の内部留保について、以下のような結果が得られています。

     

    日本企業の内部留保の増減(金融業・保険業を除く)

    年度

    2016

    2017

    2018

    2019

    2020

    2021

    内部留保

    (億円)

    +476,085

    +627,561

    +375,310

    +238,855

    +420,541

    +619,850

     

    参考:財務総合政策研究所

     

    過去6年間のデータのみ抜粋していますが、日本企業の内部留保は2000年度から毎年増加し続けているのです。

     

    2018年の米中貿易摩擦や2019年の新型コロナウイルス感染症の影響もあり、一時的に内部留保の増加額が少なくなっています。

     

    一方で、コロナ禍が落ち着くにつれ、2020年度から伸び率はプラスに転じていることが分かるでしょう。

     

    また、2000〜2020年度における大企業と中小企業の内部留保は、以下のような差が出ています。

     

    大企業の内部留保

    2000年度

    2020年度

    内部留保の差(%)

    88.0兆円

    242.1兆円

    +175.2%

                   ※大企業:資本金10億円以上

    中小企業の内部留保

    2000年度

    2020年度

    増加(%)

    79.2兆円

    153.1兆円

    +92.0%

                 ※中小企業:資本金1千万以上1億円未満

    参考:賃金・人的資本に関するデータ集

     

    自然災害や貿易摩擦、戦争など、非常事態の発生が原因で経営危機に陥らないためにも、企業は余剰金を貯めて有事の際に備える必要があります。

     

    コロナ禍でその考え方がより一層強くなり、現在は大企業だけでなく中小企業においても、内部留保を高める傾向にあるのです。

    内部留保の役割

    内部留保の具体的な役割についてご紹介します。

     

    • ①企業が成長するための資金源
    • ②企業の信用スコア
    • ③万が一の備え

     

    企業の内部留保は、事業の成長や投資家からの信用獲得につながったり、万が一の経営危機に備えたりと、会社経営に必要不可欠です。

     

    ここからは、上記3つの点について詳しく解説します。

    ①企業が成長するための資金源

    内部留保は、設備投資や事業の拡大など、企業が成長するための資金源としての役割を担います。

     

    企業が行う具体的な設備投資の対象として、以下の例があります。

     

    • 土地や建物
    • 商品を製造する機械
    • バックオフィスのIT化
    • 特許権や商標権の取得

     

    設備投資を行えば、工場の増設・機械の導入により自社が提供する商品・サービスの大量生産や質の向上が期待できます。

     

    また、会計業務や営業などにITツールを導入することで、従業員にかかる業務負担の軽減や手作業による人為的ミスの減少といった効果が得られるでしょう。

     

    また、内部留保は企業の人材育成への投資としても利用することが可能です。

     

    例えば、企業が事業の海外進出を目指す場合、語学研修や海外留学、海外視察などの研修に内部留保の資金を利用すれば、グローバル人材の育成につながります。

     

    内部留保を設備投資や人材育成に活用することで、商品やサービスの量・質が向上し、企業の生産性を高められるでしょう。

    ②企業の信用スコア

    自社の内部留保が多いほど、企業としての信用スコアが高まります。

     

    上記でも述べたように、内部留保が高い企業は財政状況が安定している会社としてみなされることが多いです。

     

    内部留保を蓄積している企業ほど倒産するリスクが低いため、銀行や投資家などにとって安心して融資・投資ができる要因の1つとなります。

     

    具体的には、企業の自己資本比率が「40%」を超えれば倒産するリスクは低いと言われており、融資が受けやすくなります。

     

    内部留保を高めると同時に、自己資本比率も向上する仕組みであることから、信用スコアを高い水準に保つためにも企業は利益を貯めるのです。

     

    自己資本比率については、下記の「内部留保の分析方法」で詳しく解説します。

     

    また、企業の内部留保が高く信用力があれば、新しい取引先とも契約を結びやすくなるでしょう。

     

    自社の信用スコアを向上させ、契約の締結や資金集めを行うためにも、企業の内部留保は重要なのです。

    ③万が一の備え

    企業の内部留保は、万が一の経済危機に備えるためにも必要不可欠です。

     

    感染症などの自然災害や、リーマンショックのような世界的な経済危機が発生すると、その影響で事業を運営できなかったり、利益が得られなかったりすることもあります。

     

    企業によっては資金不足が原因で固定費や人件費などを払えなくなり、倒産してしまうリスクもあるでしょう。

     

    そんな企業の経営危機に、自社が蓄積してきた内部留保が役立ちます。

     

    具体的には、株主への配当金や従業員への給与、オフィスの賃貸料といったコストを自社の利益剰余金で賄うことが可能です。

     

    企業が事業の売上や利益を得られないといった万が一の事態が発生しても、内部留保によって一時的に経営危機をしのげるのです。

    内部留保の分析方法

    内部留保の具体的な分析方法についてご紹介します。

     

    • 利益剰余金の内訳
    • 内部留保率
    • 内部留保と自己資本比率の関係

     

    自社の内部留保を分析することで、現在における自社の収益力や信用力を明確に把握できるでしょう。

     

    ここからは、上記3つについて詳しく解説します。

    利益剰余金の内訳

    利益剰余金の内訳は、以下の通りです。

     

    • 利益準備金:会社法によって義務付けられている準備金(配当金額の10分の1)
    • その他準備金
      • 任意積立金:会社の判断で積み立てる積立金
      • 繰越利益剰余金:過年度に利益処分されなかった利益の額

     

    内部留保は株主へ配当できますが、すべての剰余金を配当金に回してしまうと、企業の財政的な基盤や債権者の保護に悪影響を及ぼす可能性があります。

     

    自社の財政状況の安定化と債権者の保護のためにも、企業は利益準備金の積み立てが義務付けられています。

    内部留保率

    内部留保率とは、当期純利益(ある会計期間で計上された企業の純利益)のなかで、内部留保がどのくらいの割合を占めるのか表す数値です。

     

    企業の内部留保率は、以下の計算式によって求められます。

     

    • 内部留保率(%)=(利益剰余金/当期純利益)×100

     

    利益剰余金は株主への配当金などを除いた額である一方で、配当金としても活用できます。

     

    仮に内部留保率が高く当期純利益の額が大きいとすれば、財政状況が安定している可能性が高いでしょう。

     

    なぜなら、財務基盤の強化を重視する企業は株主への配当を減らし、内部留保を蓄積していく余裕があると判断できるからです。

     

    逆に株主還元を重視する企業であれば、利益剰余金から配当金を増やしている可能性があるため、内部留保率が低くなる傾向にあります。

    内部留保と自己資本比率の関係

    自己資本比率とは、企業の純資産が資本調達を占める割合を表す比率のことです。

     

    内部留保率と自己資本率の違いは、以下の通りです。

     

    内部留保率

    自己資本率

    純資産に対する利益剰余金の割合

    資本調達に対する純資産の割合

     

    自己資本比率が低い場合、負債が多く他人資本から影響を受けやすくなるため、独立性や経営状態が不安定と評価される可能性があります。

     

    ただ、自己資本比率が極端に高すぎると、「好景気に事業拡大のため借金しない」と投資家に評価され、悪印象を与えることもあります。

     

    そのため、会社経営では自己資本比率20%以上を維持し、高くなりすぎないように調整するのが一般的です。

     

    自己資本比率を調整する方法として、以下の2つがあげられます。

     

    • 内部留保を高める
    • 総資本を減らす

     

    事業の利益などで内部留保を貯めれば、自己資本比率が高まります。

     

    また、負債の返済や固定資産・有価証券などの換金・処分、棚卸資産の見直しなどを行うことでも自己資本比率が高まるでしょう。

    内部留保を高める方法

    内部留保を高める方法として、以下の2つがあげられます。

     

    • ①利益を大きくする
    • ②配当を減らす

     

    内部留保の適切な高め方は、企業によって異なります。

     

    ここからは、上記2つの方法について具体的に解説します。

    ①利益を大きくする

    企業の利益を大きくすれば、内部留保を高められます。

     

    利益を増やす方法として、以下の例があげられます。

     

    • 商品やサービスの売上を引き上げる
    • 変動費や固定費を下げる
    • 新しい顧客を集める

     

    商品・サービスの値上げや売れ筋商品の積極的な販売、リピート率向上などを実現できれば売上が引き上げられ、おのずと自社の利益が高まるでしょう。

     

    また、原材料費や仕入原価、外注費などの変動費や人件費やオフィスの光熱費・賃貸料などの固定費を下げれば、コストを削減した額だけ利益を得られます。

     

    新しい顧客の開拓は、広告宣伝費がかかる可能性が高いですが、自社のターゲット層に適切なマーケティングを行うことも効果的です。

     

    他にも、商品の販売ルートにおける中間マージンを見直したり、新規事業へ着手したりと、企業によって適切な利益の上げ方は異なります。

     

    自社に適した方法を実践して売上が上がれば、事業で得た利益を内部留保として貯められるのです。

    ②配当を減らす

    企業の純資産における株主への配当を減らせば、内部留保を高めることが可能です。

     

    上記で述べたように、内部留保は株主資本に含まれます。

     

    企業は、事業で得られた利益の一部を株主へ配当するのが一般的です。

     

    そのため、株主への配当金を減らした分の額だけ企業の内部留保として貯められます。

     

    ただ、配当金を減らしてしまうと経営者は株主から反発を受けたり、企業の株価が減少したりと、さまざまな問題が発生します。

     

    特に上場企業は不特定多数の株主から支援を受けているため、配当金を減らすデメリットが大きいです。

     

    また、中小企業は大企業と比べると株主の数が限られることから、配当金の額も限られ内部留保を貯めやすく、配当金を減らす方法は選択しない傾向にあります。

    内部留保を高めるデメリット

    内部留保を高めると、主に以下2つのデメリットが発生する可能性があります。

     

    • ①留保金課税の対象
    • ②株主や従業員の反発

     

    企業が内部留保を高めるデメリットは、法人税の課税となるリスクがあることや、株主や従業員から反発を受ける可能性があることです。

     

    ここからは、上記2つのデメリットについて具体的に解説します。

    ①留保金課税の対象

    内部留保を蓄積しすぎると、留保金課税の対象になる可能性があります。

     

    留保金課税とは、資本金が1億円を超える「同族会社」の内部留保に課せられる法人税のことです。

     

    一般的に、同族会社とは企業の株主が少人数の法人のことを指し、資本金が1億円未満であれば、留保金課税の心配は必要ありません。

     

    そのため、大企業と比べると資本調達をしにくい中小企業は、内部留保を充実させることに専念できます

     

    ただ、同族会社が資本金5億円以上の法人の子会社である場合は、課税の対象となるので注意しましょう。

    ②株主や従業員の反発

    企業が内部留保を高め続けると、株主や従業員から反発を受ける可能性があります。

     

    上記でも述べたように、株主への配当金を削減すれば内部留保を高められます。

     

    しかし内部留保を高めるためといっても配当金が減れば株主から反発を受け、経営者を解任される可能性もあるでしょう。

     

    利益を貯め続けるためにも、経営者は配当金を減らすために株主を説得しなければなりません。

     

    また、従業員からすると企業に貯蓄があるにも関らず、「いつまでも給与を上げてもらえない」と反発を招くこともあります。

     

    そのため、経営者は企業を守るためにも内部留保を高めつつ、利益を従業員へのボーナスなどに割り当てるなどの調整を行う必要があるのです。

    まとめ

    今回は、内部留保(利益剰余金)やその重要な役割、分析方法や高め方について詳しく解説しました。

     

    日本企業における内部留保は、会社の規模を問わず毎年増加し続けています。

     

    自社の利益を貯めておけば、万が一の経営危機から会社を守ったり、企業の成長や信用スコアの向上につながるからです。

     

    そのため、あらゆる企業が利益を上げたり株主への配当を減らしたりと、自社に適した方法で内部留保を高めています。

     

    自社を守るためにも、ぜひ本記事を参考に内部留保を高めてください。

     

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