売上目標は組織の原動力になる
売上目標とは、決められた期間内で達成したい売上額のことを指します。売上目標は、営業活動を行ううえで目指すべき指標となるので、売上目標を正しく設定することが重要になってきます。
営業職の場合、立てられた売上目標から短期的、中期的な営業計画が立てられて、計画に沿って営業活動が進められるはずです。
しかし、売上目標がしっかり定まっていなければ、営業活動を目標ももたず、ただなんとなく行うだけということになってしまい、モチベーションも下がり、成果も期待できなくなり、企業の経営にも大きな影響を与えてしまいます。
また、売上目標を掲げていたとしても、実現不可能な目標であれば、今やるべきことがイメージできにくくなってしまいます。そうならないために、売上目標は無理のない範囲で設定しましょう。そうすることで、組織全体が一丸となって目標達成に向けて取り組むことができ、組織の原動力につながります。
適切な売上目標を設定することの重要性とは
前述の通り、売上目標は営業活動の指標となるので、正しく設定することが重要です。正しい売上目標を設定することで、短期的、中期的に営業計画を設定することができ、具体的に取り組むべきこと、今すべきことが明確になります。また、売上目標を立ててから計画をたてることで、進行状況を適宜確認することができ、活動の見直しや改善に取り組むことができます。
しかし、売上目標が無理な設定になってしまう企業は多々見受けられます。そうなってしまうと、活動計画にも無理が生じてしまい、社員のモチベーション低下につながってしまいます。そのため、具体的に取り組むべきことを示すことができ、社員のモチベーションも高めることのできるよう、適切な売上目標を設定することが重要になってきます。
適切な売上目標を設定できていない理由3選
では、どうして適切な売上目標を設定できないのかを考えていきましょう。どこの組織でも、適切な売上目標を立てるために話し合いをされていると思います。しかし、意図せずに誤った売上目標を立ててしまうこともあります。ここでは、なぜ適正な売上目標を設定できないのか、具体的な3つの理由をお伝えしたいと思います。ぜひ、売上目標を設定する際に参考にしてみてください。
①過去の営業実績に基づいていない
売上目標は過去の営業実績をもとに算出するケースが多いです。しかし、過去の実績を参考にしたとしても、実績の背景を理解できていないと、正しく考察できていないことになります。
例えば、前年の実績だけを見て、前年通りに売上目標をたてたとします。しかし、前年はコロナの影響で通常の環境とは異なっている可能性があります。そこを考慮しないで目標を立てた場合、営業活動と計画が目標とかけ離れてしまい、営業活動へのモチベーションが低下してしまいかねません。過去の営業実績に基づいて、背景に何があったのかまで考えて売上目標を立てるようにしましょう。
②現場の意見や状況が反映されていない
次に適切な売上目標を設定できない理由としてあげられるのは、現場の意見や状況が反映されていないケースです。その場合、売上目標を管理職や役員だけで設定していることで、現場の状況を顧みない無理な売上目標設定になっていることが多いです。
現場をまきこまないで目標設定をした場合、「売上額15億円を目指したい」「前年比120%を達成したい」などの役員や株主からの要望をそのまま目標にしてしまい、現場から見ると、常識では絶対に超えることのできない目標になり、従業員のモチベーションが低下してしまう売上目標になってしまいかねません。売上目標を設定する際は現場の意見も組み込むようにしましょう。
③目標数値を達成できる根拠がない
3つ目の適切な売上目標を設定できない理由は、目標数値を達成できる根拠がないためです。
①②で述べたように、過去の営業実績や現場の意見、そして、営業活動や人員、経費などを考慮して目標達成できる根拠がある目標を設定しなくては、適切な売上目標にはなりません。
目標を設定する際には、過去のデータ、現状の組織の技量データ、周囲の環境への考慮、現場の意見や状況を踏まえて設定をするようにしましょう。
売上目標をたてる際の正しいプロセス
それでは、ここからは売上目標をたてる際にどのように進めれば良いか、正しい考え方をお伝えしていきたいと思います。売上目標は売上だけでなく、利益を踏まえて設定する必要があります。なぜなら、いくら売上があがったとしても利益率が低下してしまっては経営状況が悪化してしまいます。
また、目標を設定する際には、現実的な計画を提示したり、低すぎる目標に対して適切な売上目標を再定義したりすることが重要になってきます。
現況の自社分析と経営課題を見つける
まずは、現状の自社分析と経営課題を見つけましょう。現経営課題を見つけるためには、「経営資金」「社員の成長」「組織の状況」「業務フロー」を可視化していくことが必要になってきます。
「経営資金」は、入金や支払いの実際の動きを記録していく「キャッシュフロー計算書」が有効です。
「社員の成長」は、労働環境や評価制度の見直しや分析が有効になってきます。
「組織の状況」は、人員配置や稼働状況などの可視化が重要になってきます。これは、社員へのヒアリングが有効です。
「業務フロー」は、一度社員の業務を洗い出し、ボトルネックになっているところを見つけ、社員が理解しやすいようなフローチャートやマニュアルの作成が有効です。
自社分析にもとづいた経営課題の解決策を模索する
自社分析を行い、経営課題を見つけた後は、解決策の模索をします。課題が見つかったということは、経営状況の「理想の状態」と「現在の状態」の差を見つけたということです。この差をうめていく策が解決策になります。
「売上増・シェア拡大」が経営課題だとすると、営業現場での解決策は、売上目標より現状の売上が下回っている場合、ロープレの実施や、アプローチする数を増やすことが経営課題の解決につながっていきます。また、どうすれば解決できるか、情報収集をして解決策を絞り込んでいくことも重要になってきます。
売上予測に基づいた実現可能な利益金額を設定する
経営課題を探し解決策を模索することをお伝えしてきましたが、次に売上予測をして実現可能な利益金額を決めていきましょう。売上予測は、過去のデータと現状把握している見込みを精査して売上を予測していくことを指します。
売上予測は売上目標ではなく、現実的に達成できると考えられる「予測」なので、売上目標とは差が生じているはずです。売上予測を行い、それに基づいて実現可能な利益金額がいくらかを計算してみましょう。
必要な利益をもとに売上や諸経費を仮計算する
先ほど、売上予測と売上目標には差があると思いますとお伝えしました。売上目標は経営をしていくうえで必要な利益を計算した売上額となっているはずです。この必要な利益をもとに、どのくらいの売上が必要で諸経費がかかるかを仮で計算してみましょう。
再度実現可能か検討する
売上予測と売上目標を達成するために必要な売上と諸経費を求めていただきましたが、その数値を比べて、実現可能なのかを検討してみましょう。差を埋めるためにはまだ見ぬ潜在的な売上や利益をつくり出さなくてはいけなくなってきます。
このまだ見ぬ潜在的な売上をだしてくれる顧客のことをポテンシャル案件と呼びます。このポテンシャル案件を獲得するためにどのようなアクションをとっていくかは、売上目標の達成可否に大きく影響してきます。
最終売上目標を設定し、現場に周知する
現状の売上目標と売上予測のギャップを確認し、実現可能かを検討していただきましたが、そこから期待値を踏まえたうえで、現実的な売上目標を設定しましょう。そこで大切になってくることは必ず現場の意見を聞き、現場を納得させたうえで最終的な売上目標を設定するということです。
机の上で考えただけの期待や希望を追い続けた売上目標ですと、達成できるイメージが持てず、現場はモチベーションが低下してしまいます。また、この時に目標達成までのプロセスをイメージし、社内で共有することでボトルネックがどこで発生し、どうすれば解決できるのかを事前に考えていけることが理想です。
売上目標を達成するためのポイント
これまで売上目標を設定する方法をお伝えしてきましたが、ここからは売上目標を達成するためのポイントをお伝えしていきたいと思います。毎期、売上目標を設定し、振り返り、見直しをして、営業活動をしていくことは大切です。しかし、経営の目的は「売上目標を達成すること」ではありません。経営者の理想の会社にするために必要なことをお伝えしていきます。
中長期的な計画を立てる
未来目標を考えるために、中長期的な計画を立ててみましょう。中期計画は5年後の目標、長期計画は10年後の目標です。この際、売上や利益だけでなく、人員配置、組織図、経営方針、会社の備品や設備計画、新商品で何を作るかなど、細かいところまで考えてみましょう。
中長期的な目標は経営者の思いや意志となり、文章や数値にすることで、従業員へも伝わりやすくなります。未来目標を設定することで、一年間の売上目標も定めやすくなり、一年間の目標も達成しやすくなります。また、中長期的な計画を立てたら、経営計画書を作成しましょう。
定期的な軌道修正をおこなう
短期計画、中期計画、長期計画を立てたと思いますが、5年後、10年後で状況が変わっていないという可能性は少ないので、数年前に計画したものをそのまま実行していてはいけません。定期的に計画の見直しを行い、軌道修正を行うようにしましょう。
全社員と目標を確実に共有する
先ほども述べましたが、計画を立てたら経営計画書を作成し、経営者の思いや意志、価値観を言語化し、従業員に会社の方針や方向性を共有しましょう。従業員に経営計画書をみてもらうことで、従業員の業務の方向性も統一化され、効率的な業務を進められるようになります。
また、従業員側も自分の将来を想像していくことが可能となり、安心して会社で働いていくことができるようになります。また、経営計画書で目標を共有することによって、経営者は日常業務からいずれ解放され、社長業に専念することも可能です。
財務指標を用いて分析をおこなう
最後に、財務指標を用いて分析を行いましょう。売上目標に必要な財務指標は下記8つです。
・労働生産性:粗利額÷人員数
・粗利率:粗利額÷売上額
・変動比率:変動費÷売上額
・損益分岐点比率:損益分岐点売上額÷売上額
・労働分配率:人件費額÷粗利額
・限界利益:売上額-変動費額
・成長寄与率:売上伸び率×前年売上構成比
・営業利益::売上総利益(売上-原価)-販管費
経営とは、投資したもののリターンとして売上、利益がどのくらい向上するのかを計算していくことが求められてきます。
売上目標の算出方法は、「(目標労働生産×予定人員数)÷目標付加価値率」となります。
まとめ:売上目標は過去と将来の分析が非常に重要
最適な売上目標についてこれまで説明してきましたが、ご理解いただけましたでしょうか。売上目標の設定や見直しで重要なのは過去と未来の分析になってきます。過去データからの予測や未来への計画から従業員のモチベーションアップや業績アップにつながるような売上目標を立てていきましょう。
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