事業計画書を作る際、多くの経営者が「スケジュール」作成に頭を悩ませています。
重要性は理解していたとしても、実際に作るとなると大変ですよね。
実は、大半の人がつまづく理由は、2種類の「スケジュール」があることを知らず、使いこなせていないからなのです。
そこで今回は、「ロードマップ」と「予定表・工程表」という2種類のスケジュールについて、事例を交えて解説していきます。
この記事を読めば、事業を成功に導くスケジュールの立て方が分かりますので、ぜひ最後までご覧ください。
1.事業計画書にスケジュールが必要な理由
事業計画書には、具体的な事業スケジュールを載せる必要があります。
なぜなら、関係者や取引先の担当者が事業展開をよりイメージしやすくなるためです。
例えば、「5年後に年商3,000万円になります!」という計画を持ってきたAさんと、「5年後に年商3,000万円を達成するために、このように事業を進めます」と細かく計画を立てているBさんがいたとします。
もしあなたが出資する立場なら、どちらを支援するかは明白ではないでしょうか。
事業計画に対する信頼を得るために、スケジュールは重要な役割を担っています。
では、具体的にどのようなスケジュールを載せたら良いのでしょうか。
次章で解説していきます。
2.事業計画における2種類のスケジュール
スケジュールには、「ロードマップ」と「予定表・工程表」の2種類があります。
それぞれどのようなものなのか、「大学受験」を例に説明してみます。
ロードマップ・・・目標達成までの道のりを描いたもの
例.進学校に入学→校内テストで常に上位→全国模試で100位以内→大学合格
予定表・工程表・・・時系列に沿ってやるべきことを記したもの
例.「進学校に入学」するために……
□ 塾に通う
□ 毎日寝る前に暗記系の本を読む
□ 勉強に集中できるように部屋を整える 等
これを見ると、「ロードマップ」と「予定表・工程表」はつながっており、どちらも目標達成のために欠かせないものであることがわかります。
それぞれのスケジュールの役割やメリットは、次の通りです。
ゴールまでの道のりを描く「ロードマップ」
ロードマップの役割は、ゴールまでの道のりを具体的に示すことです。
道のりが明確になることで、事業のビジョンや将来性を関係者に分かりやすく伝えられます。作りこんだロードマップがあれば、融資の審査時などのアピールにもなります。
タスク管理に便利な「予定表・工程表」
予定表・工程表は、事業の進捗確認やタスク管理に役立ちます。
工程表を作ることで、「誰が」「何を」「いつまでに」行うのかが視覚化され、タスク・期日を共有できたり、プロジェクトが実現可能であることを伝えられたりします。
3.スケジュールの立て方 〜ロードマップ〜
ここからは、「ロードマップ」の立て方を、4ステップに分けて解説します。
① ゴールを設定し、現状との差を明確にする
はじめに、プロジェクトのゴールと達成時期を決めます。
決める際のポイントは、できるだけ定量的で現実的な目標を設定することです。
ゴールを設定したら、現状とゴールの差も把握します。
洋菓子店を経営する、Aさんの例を見てみましょう。
<Aさんの場合>
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Aさんは、自分の店を地域の人気店へと成長させるために、ゴールを「5年後までに年商を3000万円にする」と設定しました。
現在の年商は1000万円のため、目標達成のためには「5年間で+2000万円(300%)」が必要です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
目標を達成する時期を半年後とするのか10年後とするのかによって、実施計画も実現性も大きく変わります。
どこにゴールを設定するかは今後のプロジェクト設計全体に関わるため、データや数値を参考に慎重に決める必要があります。
② 中間目標(マイルストーン)を設定する
ゴールを明確にしたら、次はマイルストーンを設定します。
マイルストーンとは、プロジェクトの中間地点や重要な節目のことです。
ゴールまで期間がある場合、いきなり最終目標を目指して施策を行っても現状とのズレが大きかったり、方向性が間違っていたりして、結果が出ない可能性があります。
そこで、マイルストーンを設定し、その結果を追っていくことで、スタート後の現状把握や方向性の修正がしやすくなります。
<Aさんの場合>
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Aさんは、1年ごとにマイルストーンを設定しました。
現在 :年商 1000万円
1年後:年商 1200万円 達成
2年後:年商 1500万円 達成
3年後:年商 2000万円 達成
4年後:年商 2500万円 達成
5年後:年商 3000万円 達成
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
③ 課題を洗い出す
次に、改めて現状を細かく分析し、中間目標の達成に向けて課題を洗い出します。
様々な視点から問題点を掘り下げていくことで、目標達成への糸口を探っていきます。
<Aさんの場合>
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Aさんが現在の1日の来店数や顧客の傾向、売れている商品などを分析したところ、以下のような課題が見つかりました。
・昔からの常連客が多く、新規の顧客獲得ができていない
・カットケーキや単品の焼き菓子が売上の中心で、客単価が低い
・店の看板と言える人気商品がない
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
④ 施策(アクションプラン)を考える
最後に、課題を解決するための施策(アクションプラン)を考えます。
施策は、考えるだけでなく実際に行うことで意味のあるものになります。
そのため、行動に移しやすいように方法は具体的にし、さらに期日も設定するとよいでしょう。
<Aさんの場合>
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
現状の課題点を把握したAさんは、アクションプランを考えました。
●新規顧客の獲得
・近隣へのチラシ配布(1年目 xx月)
・InstagramとTwitterを活用した集客キャンペーン(2年目 xx月)
・ネットショップオープン(3年目 xx月)
●客単価アップ
・ラインナップの強化(ホールケーキ・イベントケーキ)(1〜2年目)
・接客の見直し(1年目)
●人気商品の開発
・特産品を使った新商品の開発(2年目)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
①〜④で考えたゴール・施策をロードマップとしてまとめると、次のようになります。
4.スケジュールの立て方 〜予定表・工程表〜
ここからは、工程表の立て方を、2ステップで解説します。
① 重要な工程をピックアップ
まず、事業を成り立たせるうえで重要な工程をピックアップします。
特に事業の立ち上げ時や、スタートして間もない時期はタスクが多いため、工程表にすべて記載するとわかりにくくなってしまいます。
事業計画書を見る側の視点に立ち、プロジェクトを成り立たせるうえで重要なタスクに絞ることが大切です。
さらに、各タスクの担当者も確認し記入しておくことで、後々の進捗確認をスムーズに行えます。
<Aさんの場合>
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Aさんは、アクションプランのひとつである「近隣へのチラシ配布」のために重要な工程をピックアップしました。
・チラシのデザイン【担当:Bさん】
・印刷会社【担当:Cさん】
・配布地域の決定【担当:Dさん】
・配布する人員の確保【担当:Dさん】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
② 段取りを組む
工程表に記入するタスクが決まったら、事業開始日やロードマップの最終地点など、ゴールとなる時から逆算し、間に合うように段取りをしていきます。
スケジュールを組むうえで、以下の点が重要です。
・ポイント1:同時進行するタスクの関連性を確認する
数多くのタスクを管理していると、それぞれの関連性を見落としやすくなるため注意が必要です。
例えば、新店舗の内装工事が終わる前に什器を搬入する予定が組まれているなど、関連する工程が噛み合っていないと、進行上大きな問題につながる可能性があります。
・ポイント2:日付を入れる
工程表には、月だけでなく日付まで記入しましょう。いつまでにやらなければいけないかを明確にすることで、より具体的な計画を立てやすくなります。
<Aさんの場合>
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Aさんは「近隣へのチラシ配布」を10月30日に行うための段取りを組みました。
【チラシ作成 担当:Bさん】
デザイナーの選定(9/1)
デザイン案決定(9/15)
データ完成(9/29)
入稿(10/1)
完成(10/15)
【印刷会社 担当:Cさん】
印刷会社選定(9/10)
見積もり依頼(9/12)
印刷会社決定(9/20)
入稿(10/1)
チラシ受け取り(10/15)
【配布地域 担当:Dさん】
近隣のリサーチ(9/1〜5)
配布地域決定(9/5)
配布数決定(9/10)
【配布人員 担当:Dさん】
人員募集方法決定(9/5)
必要人数の確認(9/10)
アルバイト募集(9/10〜9/30)
採用者決定(10/15)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
具体的な段取りを組む際、時系列がわかる表にして全体を見渡しながら考えると、各工程の不一致やすれ違いに気づきやすくなります。
5.スケジュールはわかりやすく作ることが大切
事業計画におけるスケジュールは、誰が見ても分かるように作ることが大切です。
というのも、様々な関係者が目を通し、事業の実現性や今後の方向性を理解するために重要な役割を果たすからです。
言い換えれば、スケジュールに目を通した人の理解度によって、目標達成できるか、融資などの協力が得られるかが変わってきます。
仮にスケジュールを作ったとしても、整っておらず見づらいと、読み手は理解する前に読み飛ばしてしまうかもしれません。
あるいは、情報量が多すぎれば、要点が伝わらない可能性もあります。
こうなっては、せっかく作成したスケジュールも意味がなくなってしまいます。
スケジュールを最大限活用するためにも、情報は具体的にする、一目で把握しやすいようにするなど、わかりやすさにこだわる必要があります。
一から用意するのが難しい場合は、テンプレートやアプリなどを利用してもよいでしょう。
また、スケジュールは定期的に見直しを行うことで、より有効活用できます。
現状と計画のズレが生じていないかを確認し、必要に応じてスケジュールの軌道修正をすることも、目標を達成するためには重要です。
まとめ:スケジュールを立てて事業を成功に導こう
今回は事業計画書に載せる、スケジュールの立て方を解説しました。
スケジュールには、ゴールまでの道のりを描く「ロードマップ」とタスク管理に便利な「工程表・予定表」の2種類があります。
どちらも、事業計画書を見た人に事業のビジョンや将来性を伝えられるように、具体的な情報を盛り込むことが大切です。
より分かりやすいスケジュールを立てたい方には、スケジュールの作成に役立つテンプレートもご用意しております。ぜひご活用ください。
いかがでしたか?お気に召したのであればシェアはこちらから。