「会計」と聞くと、できれば専門家に任せてあまり関わりたくないと思っている方も多いかもしれません。
確かに会計の技術を使って決算書を作り上げる作業をする場合は専門的な深い知識が必要でしょう。しかし、企業において会計を活用するという意味では知っておくべき範囲は実は限られています。
「会計」はとても幅広い概念です。多くの方が会計に苦手意識を持つのは、簿記や財務、税務といった似た概念との区別がついておらず、また、その広い難解なイメージの中で実務的にどこまでを理解しなければいけないのかがわかっていないからです。
この記事では会計とは何か、活用するための基礎的な会計知識について、図とイラストを使ってわかりやすく解説していきます。
1.会計の基礎知識
この章では会計とは何か、その基本について解説していきます。
1.1 会計とは取引を記録・計算・報告すること
会計とは、簡単に言うと、「①取引を記録して、②それを計算して、③報告する行為」のことを言います。
お金の流れや商品を売ったり買ったりするといった取引を記録し、そのデータから儲けの結果などをまとめて、経営者や従業員、株主、金融機関などの関係者に報告する一連の行為やプロセスのことを指します。
1.2 会計を扱うのは企業だけではない
会計を扱うのは企業だけではありません。
国や地方公共団体、公的機関、非営利団体、町内会、サークル、個人も含めて、会計はさまざまな組織で使われています。
1.3 会計の語源は「計は会なり」
会計という言葉が歴史上、初めて登場したのは中国の「史記」と言われています。
会計の語源は「計は会なり」という言葉です。
「計」は正確に話すこと、「会」は増加することを表しています。
「取引によって資産が増えたり、負債が増えたことをきちんと伝える」ことが、会計の最初の意味だということになります。
また、会計は英語では「accounting」と言いますが、「account」にもまた、説明や報告という同じような意味があります。
会計の本質は、利益や財産について記録をするだけではなく、その結果を報告して説明するところまで含まれているということも語源からわかります。
1.4 会計の歴史
会計や帳簿の起源は、ものを数えたり、管理する行為に関係していたとされていて、文字の使用よりも早く行われていました。
穀物などが国の財源として使われ、正しくその数量を把握する必要があったため、会計が活用されるようになりました。
エジプト、メソポタミア、イスラエル、中国、ギリシャ、ローマなどの地域では、現在の単式簿記にあたる会計が行われています。
日本では7世紀以降、律令制時代には「租庸調」という税が定められて、「正税帳」という決算書や「調庸帳」という納税報告のための文書が作られています。
これらが日本最古の現存する会計文書とされ、正倉院に保管されています。
会計は世界各国で古い歴史を持つ概念になります。
1.5 「お会計」は「会計」の一部分
店舗などで料金を支払うことを「お会計をする」とよく使います。
この言葉は本来の会計の意味から少し省略されて定着した言葉です。
会計の意味は、取引を記録、計算、報告するまでの行為ですが、この一連の行為の中でも、特に料金を支払う「取引」の部分だけを抜き出して、「お」をつけることでお店側や顧客が丁寧な表現にし、会計を簡易的に使っている言葉と言えます。
支払いを意味する「お勘定」もほぼ同じような意味で使われますが、会計用語で「勘定科目」と言う場合は、会計帳簿を作る際に使う「売上高」や「消耗品費」、「水道光熱費」などの表示項目のことを言います。
2.会計と似た概念との違い
会計と区別がつきにくい、似たような用語がいくつかあります。この章では違いについて整理していきます。
2.1 会計と簿記の違い
簿記は、会計の中の一部です。
簿記は、「取引を記録するための技術・手段」のことを指し、会計はそれを「報告に使う」までのプロセスのことを言うという違いがあります。
簿記は、日々発生する企業の取引やお金の流れなどを一定のルールに従って記録することであり、「帳簿記入」を略して「簿記」と呼ばれています。
2.2 会計と財務の違い
財務は、会計よりも先を見据えた概念になります。
会計は過去の集計、報告ですが、財務は主に企業の資金管理に関する広範囲な活動を指します。
具体的には資金をどのように集めるのか、そのお金をどう効果的に活用するのか、将来の経営をイメージして戦略的にどう決定するのかが含まれます。
会計がお金も含めた取引の「記録と報告」に焦点を当てているに対し、財務は、そのお金をどう調達し、活用するかを考える分野ということになります。
2.3 会計と税務の違い
税務は、会計を活用した税金計算の業務です。税務は、会計により記録された企業の収入や支出をベースに、支払うべき税金を計算する業務のことを言います。
会計は「会計制度」や「企業会計原則」に従って行われ、税務は法人税法や所得税法などの「税法」に基づいて行われる作業です。
会計によって作られるのが決算書などの「財務諸表」であり、税務によって作られるのが、法人税や所得税の「申告書」という位置づけと考えると良いでしょう。
3.会計の体系
この章では、会計の体系は学術的にも様々な分類が研究されていますが、ここでは一般的によく使われる切り口を中心に説明していきます。
3.1 会計の目的は3つある
会計には大きく3つの目的があります。
①情報提供をするため
②合理的な意思決定をするため
③法律遵守のため
会計は、個人や会社の経済活動の内容をまとめ、関係者にわかりやすく正しく伝える手段です。
また企業等の合理的な意思決定のためにも役立つ情報です。
そして、企業等が法律に従ってきちんと運営されているか、税金の申告やその他の報告を正しく行っているか等、その信用を保つためにも重要な役割を担っています。
3.2 会計には企業会計と官庁会計がある(分野別)
会計をその扱う分野別に分けると、
・企業会計(私会計)
・官庁会計(公会計)
この2つがあります。
企業会計は、主に民間企業に適用される会計のこと指し、企業の活動を記録し、定量的に情報を提供するために行われます。
官庁会計は公会計とも呼ばれ、国や地方公共団体で扱う会計です。
一般会計、特別会計、公営企業会計の3種類があります。
官庁会計では、予算執行の透明性と効率性が重視されます。
3.3 会計には財務会計と管理会計と税務会計がある(目的別)
企業会計を目的別に分けると、
・財務会計
・管理会計
・税務会計
この3つに分かれます。
財務会計は企業の財務状況を外部に報告するための会計
管理会計は経営の意思決定のため社内で使うための会計
税務会計は公平な課税を目的とした税金計算用の会計です。
それぞれの違い、詳細についてはこちらの記事を参考にしてください。
4.活用するために知っておくべき会計
一口に「会計」といってもその範囲は広く、切り口によって様々な概念があります。
この章では自社で活用するために知っておくべき会計に絞ってポイントを解説していきます。
4.1 財務会計の基本を理解しよう
会計を普段から活用するためにまず知っておくべき会計は「財務会計」です。
財務会計は一言でいうと、「外部の利害関係者に報告するための会計」です。
利害関係者とは、主に投資家、債権者、取引先、金融機関、税務署などです。
また、活用するために知っておくべきことは、財務会計の手法やルールそのものではなく、利害関係者に報告するために財務会計によって作成された成果物である、「財務3表」の基本的な意味です。
①貸借対照表(B/S): 決算日時点での企業の財産状況を表現しています
②損益計算書(P/L): 売上や利益を示し、今期の経営成績を表現しています。
③キャッシュフロー計算書(C/F): お金の流れを示し、利益とお金のズレを表現しています。
これらを作るルールは経理担当者や税理士などの専門家に任せましょう。
活用するためには財務3表が表現している中身を読み取れれば大丈夫です。
財務会計の詳細についてはこちらの記事を参考にしてください。
4.2 管理会計で経営判断をしよう
会計を活用するためには外部報告用の財務会計だけではまだ不十分です。
財務会計で作られる財務3表は常に過去の結果のみだからです。
企業にとっては過去の分析よりも未来を見据えた戦略的な意思決定をする方が大事です。それを可能にするのは管理会計の役割です。
管理会計は、過去の数字を踏まえつつも、より戦略的な視点から未来の方向性を示してくれます。
そして、バリエーションも豊富で、会社にあわせて自由に進化させることができます。
企業においては財務会計を深く理解するよりも管理会計をうまく活用する方法を知る方が圧倒的に重要です。
管理会計の活用の仕方はこちらを参考にしてください。
5.まとめ
会計の概念は非常に広範囲で、活用する分野、目的、対象も様々です。
しかし、活用するために知っておくべき会計の範囲はその中でもかなり限定的です。
抑えるべきポイントをしっかりと理解いただき、会計をうまく使いこなしていきましょう。
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