- 「そもそも債務超過ってどのような状態?」
- 「債務超過に陥ったときの対処法と予防法を知りたい!」
債務超過は、会社の資産よりも負債の金額が上回る状態のことです。債務超過になることで倒産リスクが高まったり、金融機関からの融資が受けづらくなったりします。
そのため、債務超過に陥った場合は早急な対策をしなければいけません。とはいえ、債務超過に陥った際の対処法や予防法が分からない方も多いでしょう。
そこで今回は、債務超過の概要や対処法、予防法について詳しく解説します。本記事を読むことで、債務超過の対処法が理解できるため、倒産リスクを軽減できるでしょう。
債務超過は資産よりも負債が多い状態のこと
債務超過とは、会社のすべての資産を売却しても負債を完済できない状態のことです。債務超過に陥ることで、会社が倒産する可能性が高まったり、上場廃止したりとさまざまなデメリットが生じるため、早急な対策を行う必要があります。
また、債務超過を何年間も継続的にしている企業の場合は、その分負債額が大きくなっているため、短期間で返済することは難しいです。
数年単位で継続して債務超過であると、取引先の企業からの信用を失い、ますます業績悪化の一途を辿る可能性が高まります。
なかには「資金調達をして借金の返済に充てればよいのではないか?」と考えている方がいるかもしれませんが、債務超過になると金融機関からの融資が受けづらくなります。
そのため、債務超過になってしまった場合は金融機関からの融資を借金返済に充てられなくなるので、気をつけましょう。
債務超過の状態で放置していても、会社の経営状況はよくなりません。会社の経営状況をよくするためにも、早急に債務超過解消の対策を実施しましょう。
債務超過と赤字の違い
債務超過は資産より負債の合計額の方が高い状態のことをいいますが、赤字は最終利益が出ない状態をいいます。
赤字とは、会社の1年間の収益から税金を含めた全費用を差し引くとその年の利益が出ない状態のことです。
つまり、赤字の場合はその年度に利益が出ていないだけで、資産より負債の合計額が高い状態であるとは限りません。
このように債務超過と赤字の意味は大きく異なっているので、使い方を混同しないように気をつけましょう。
ただ、赤字の状態が続くと債務超過に陥る可能性が高まるため、赤字の状態が続いている企業も早急な対策が必要です。
黒字の場合でも現金化ができていない資産が多く支払いができなくなり、倒産する可能性もあります。
そのため、会社の経営状況は決算書だけでなく、内訳や実態を分析したうえで判断しなければいけません。
債務超過や倒産に陥らないようにするためにも、常日頃から会社の経営状況を把握しておきましょう。
債務超過が及ぼす3つの影響とは
ここでは、債務超過が及ぼす影響として、以下の3つを解説します。
- 1.倒産リスクが高まる
- 2.金融機関からの融資が受けづらくなる
- 3.上場廃止になる
先ほどまで債務超過が及ぼす影響について触れてきましたが、詳しくはまだ解説していません。債務超過の実態を理解するためにも、これから解説する内容を把握しましょう。
①倒産リスクが高まる
債務超過が及ぼす影響として、倒産リスクが高まることが挙げられます。基本的に会社は、キャッシュが足りなくなった場合に倒産することが多いです。
そのため、すでに資産よりも抱える負債が多い会社は倒産する可能性が高いといえるでしょう。とはいえ、債務超過になったとしても経営者が自腹を切って支払いさえ続けていれば、倒産リスクを抑えられます。
ただ、経営者が自腹を切るといっても限りがあるので、債務超過の状態が続けば倒産も視野に入れながら経営状況を考える必要があるでしょう。自社の倒産を防ぐためにも、債務超過の状態を迅速に改善する必要があります。
本記事で債務超過に陥ると倒産リスクが高まることを把握したうえで、早急に対策を練りましょう。
②金融機関からの融資が受けづらくなる
債務超過になると、金融機関からの融資が受けづらくなります。
債務超過に陥っているということは借金の返済能力がないと金融機関に見なされやすいため、融資を断られる可能性が高まるのです。
しかし、債務超過になると金融機関からの融資が受けづらくなるだけで、受けられないわけではないことをあらかじめ把握しておきましょう。
債務超過で融資を受けたい場合は、以下の6つの条件のいずれかを満たさなければいけません。
- 債務超過に陥ってから3年以内
- 資産価値が高い不動産を所有している
- 直近で利益を生み出している
- 経営者が大きな資産を所有している
- 債務が社内の人間から借り入れている
- 融資を受ければ増益が見込める
とはいえ、債務超過に陥ることで金融機関から融資を受けづらくなるのは事実なので、会社経営を順風満帆におこなうためにも債務超過に陥ったら素早く対策をすることが必要です。
③上場廃止になる
上場している会社であれば、債務超過に陥ったら、上場廃止になるので気をつけてください。
上場廃止期限は、市場によって大きく異なります。たとえば、日本取引所の場合は1年以内に債務超過を解消しなければ、上場廃止になってしまいます。
上場廃止になれば、取引先企業からの信用が低下してしまったり、社員のモチベーションが低下してしまったりと上場によって得られたメリットをすべて失ってしまうかもしれません。
今後も上場企業として会社を経営し続けたいのであれば、債務超過を解消する必要があります。
債務超過を解消するための方法7選
ここでは債務超過を解消するための方法として、以下の7つを解説します。
- 経営状態の見直し及び立て直し
- 増資をおこなう
- 債務の免除を受ける
- 民事再生法や会社更生法を適用する
- 遊休資産の売却をする
- 債務を株式に転換する
- ファクタリングなどを活用した早期の売掛金回収
本記事を読んでいる方の中には、債務超過を解消したくてもなかなか解消できずに悩んでいる方もいるでしょう。ここで解説した内容を参考にし、債務超過を解消するための対策をしてください。
①経営状態の見直し及び立て直し
債務超過を解消したいのであれば、経営状態の見直し及び立て直しをするべきです。経営状態を立て直す際は、以下の2つに気をつける必要があります。
- 無駄なコストの削減
- 売上の向上
経営状態を見直す際は、まず無駄なコストの削減をしましょう。たとえば、人件費や広告費、原材料費などを使いすぎていないかを確認しておくとよいです。
今まで社員に残業をしてもらう機会が多かった場合は、業務効率を向上させて就業時間内に仕事を完了させれば、人件費の削減につながります。
また、無駄なコストを削減し終えたら、売上を向上させられるように施策を打つ必要があります。
売上を向上させるためには商品の価格を向上させたり、サービスをリピートしてもらえる方策を考えたりと、さまざまな工夫を行わなければいけません。
経営状態の見直しをおこない、債務超過を解消できるように努めましょう。
②増資をおこなう
債務超過を解消する方法として、増資をおこなうことが挙げられます。増資とは、資本金を増加させることです。
増資をして会社の資金を増加させることで、一時的に債務超過状態を解消できます。増資の種類として、以下の3つが挙げられます。
- 公募増資:新株発行をする際に不特定多数の投資家に対して出資を募ること
- 第三者割当増資:特定の第三者に対して新株を発行すること
- 株主割当増資:既存株主に対して保有株式数の新株を割り当てること
増資には、上記の3つの種類があるので自社に適切な方法を選んでください。
しかし、増資をすることで優遇税制が受けられなくなったり、手続き費用を自己負担しなければいけなかったりとデメリットが生じるのも事実です。
増資をおこなうことを検討している方は、メリットとデメリットを把握したうえで、実施の判断をするとよいでしょう。
③債務の免除を受ける
債権者に債務の免除をしてもらえれば債務超過を解消できます。
もし、債務免除をしてもらえた場合は「債務免除益」として利益に計上できるため、借りていた分の負債を減少させることが可能です。
ただ、債務の免除を口約束でしてしまっては、後からトラブルになる可能性も十分に考えられます。そのため、債務の免除を受ける際は書面で約束を取り交わす必要があります。
ちなみに債務免除益として利益に計上して黒字になった場合は、法人税の課税対象になるので、あらかじめ把握しておきましょう。
財務免除益を計上して黒字になったものの、法人税が支払えずに倒産に陥る可能性も十分に考えられます。そのため、法人税を支払うためのお金を必ず貯金するように心がけましょう。
④民事再生法や会社更生法を適用する
債務超過に陥っていて資金調達ができない場合は、民事再生法や会社更生法を適用するとよいでしょう。
民事再生法や会社更生法は、会社の債務を減免して支払い猶予を得て会社の再建を図る手続きのことをいいます。
また、会社更生法は大手企業向きの再建手続きであるのに対し、民事再生法は中小企業向けの再建手続きです。そのため、自身の会社の規模によって適用する法律を変更する必要があります。
ちなみに民事再生法は経営陣を変更する必要はありませんが、裁判所が選任した管理委員の監督を受けなければいけません。
加えて、会社更生法を適用したら経営陣全員を変更して、経営権は選任された更生管財人が引き受けることになります。
民事再生法と会社更生法を理解したうえで、適用するのかの判断をしましょう。
⑤遊休資産の売却をする
債務超過に陥ったら、遊休資産の売却を検討しましょう。遊休資産とは、かつて事業目的で取得したものの、現在は稼働していない資産のことです。
遊休資産を所有し続けることで、税金がかかったり、手入れの管理や時間がかかったりと良いことはあまりありません。
むしろ遊休資産を放置することで税金を支払い続けなければいけないため、負債の増加につながる恐れがあります。
そのため、遊休資産を所有している方は売却を検討するとよいでしょう。
⑥債務を株式に転換する
債務超過に陥ってしまったら、債務を株式に転換することも検討してください。
債務を株式へ転換することで、債務の返済義務を無くすことが可能です。債務を株式に転換する方法としては、以下の2つが挙げられます。
- 現物出資方式
- 新株払込方式
まず現物出資方式は、債権者が会社に対して債権を出資して株式の交付を受ける方法です。現物出資方式は現金の移動はなく、帳簿上での操作のみで手続きが完了します。
また、新株払込方式とは、借入金を返済するために新株発行をし、新株発行によって支払われた資金で返済する方法です。
新株払込方式は持株比率や利益などに影響が出るため、新株払込方式で取引をする際は注意する必要があります。
債務超過に陥って対策に悩んでいる方は、債務を株式に転換することを検討してみてください。
⑦ファクタリングなどを活用した早期の売掛金回収
債務超過に陥ったら、ファクタリングなどを活用した早期の売掛金回収をしてみるとよいでしょう。
ファクタリングとは、売掛金を買い取ってもらうことで通常より素早く現金化する手法のことです。
ファクタリングを活用することで、審査対象が売掛金の会社になるため銀行の融資が通りやすかったり、売掛債権先が倒産しても返済義務が発生しなかったりとさまざまなメリットが得られます。
ただ、ファクタリングを活用しても一時的な債務超過の回収手段にしかなりません。そのため、会社の経営状況を立て直して安定した会社経営をおこなう必要があります。
そもそもなぜ債務超過が起こる?
ここでは、債務超過が発生する原因として、以下の3つが挙げられます。
- 赤字が恒常化している
- 法人を設立したばかりである
- 設備投資の失敗
債務超過を予防するためには、発生する原因を把握する必要があります。債務超過が発生すると倒産する可能性が高まるため、倒産リスクを減らすためにもあらかじめ債務超過予防をしなければいけません。
ここで解説した内容を把握し、二度と債務超過が発生しないように予防しましょう。
赤字が恒常化している
債務超過の原因として、赤字が恒常化していることが挙げられます。会社の経営状況が赤字の状態が長引くと、純資産が減少し債務超過に陥ってしまいます。
特に赤字経営を年々続けていると、単年度で利益が出たとしても支払いですぐなくなってしまうので、赤字経営から抜け出せなくなりかねません。
そのため、赤字経営を始めてから間もないときに黒字にするための対策をすることで、債務超過に陥らないように工夫する必要があります。
法人を設立したばかりである
法人を設立したばかりであることも、債務超過に陥る原因になってしまうので気をつける必要があります。
法人を設立したばかりの会社の場合は純資産の規模が小さいため、少し負債が膨らんだだけで、債務超過に陥ってしまう可能性も十分にあり得ます。
それに加えて、法人を設立したばかりの会社の場合は実績が乏しく金融機関からの信用も得にくいので、融資を受けることが難しいです。
そのため、法人を設立したばかりの会社の場合は必然的に債務超過に陥りやすくなっています。
ただ、最近はベンチャー企業向けの助成金制度なども充実しているため、債務超過を防ぐためにも積極的に助成金制度を受けたほうがよいでしょう。
設備投資の失敗
債務超過に陥った原因として、設備投資の失敗も挙げられます。設備投資は金額が大きいため、金融機関からの借入などで賄うケースが多いですが、その導入した設備が売上や利益に貢献できなければ債務超過に陥りやすくなります。
設備投資に失敗して債務超過に陥ることを防ぐためには、投資によって生み出される利益で借入返済できるのかをあらかじめ見極めておく必要があります。
設備投資前にあらかじめシミュレーションをしておくことで、投資時期をずらしたり、投資金額を減らしたりして工夫することが可能です。
設備投資に失敗しても債務超過に陥らないように、事前に資金繰りのシミュレーションをしておきましょう。
貸借対照表を分析して債務超過を判断する
ここでは、貸借対照表を分析して債務超過を判断する方法として、以下の3つが挙げられます。
- 決算書の見方
- 実態貸借対照表を作成する
- 定期的な資産と負債の集計
貸借対照表を分析すれば、債務超過が発生しているのかが確認できます。ここで解説した内容を参考にし、債務超過が発生しないように日々貸借対照表を確認する習慣をつけましょう。
決算書の見方
債務超過を判断する際は、貸借対照表の資産から負債を差し引いた数値を見るとよいでしょう。
資産より負債が多ければ債務超過と判断できますが、負債より資産が多ければ通常の経営状態であると認識できます。
とはいえ、資産の現金化ができておらず貸借対照表では債務超過でないにしても、実際の財政状態は厳しい可能性は十分にあり得ます。
実態貸借対照表を作成する
決算書の目に見えないマイナスを可視化するためにも、実態貸借対照表を作成することが大切です。
たとえば、売掛金や貸付金などの回収できない資産を省いたり、役員未払金を負債から純資産へ振り替えたりしてより正確な貸借表を作成します。
実態貸借表を作成することで正確な財務状況の数値を把握できるため、債務超過に陥った際に早期対策が実施できます。
適切な会社の財務状況を把握したい際は、実態貸借対照表を作成することを心がけましょう。
定期的な資産と負債の集計
債務超過を予防したい際は、定期的に資産と負債の集計をおこなうとよいです。
債務超過に陥ってる原因として、常日頃の経営管理が雑になっていることが挙げられるからです。
定期的な資産と負債の集計をするのであれば、大きな借入金が発生した際に決算書の確認をしたり、土地や有価証券の定期的な時価算出をしたりする必要があります。
定期的な資産と負債の集計をおこない、債務超過に陥らないように日常的に予防しましょう。
債務超過は定期的な分析など早期の対策が重要
今回は、債務超過の概要や対策法、予防法について解説しました。
債務超過とは、会社の資産よりも負債が上回る状態のことです。債務超過に陥った場合は、経営状況の見直しをしたり、遊休資産の売却をしたりして対策する必要があります。
また、債務超過に陥ることを事前に予防するためには、実態貸借対照表を作成したり、定期的な資産と負債の集計をしたりして常日頃から注意し続けなければいけません。
債務超過に陥って困っている方は、本記事を参考にして対策していってください。債務超過に陥っているのであれば、経営計画書を再度作成し直してみるとよいかもしれません。
経営計画書を作成し直すことで自社の事業規模や事業内容の再確認ができるため、債務超過の対策がしやすくなります。
経営計画書を作成する際は「マネるだけ、埋めるだけで作れる経営計画書作成シート」を使用するとよいでしょう。
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