月次決算は何のためにおこなう?月次決算の目的と具体的な流れについて解説

    記事公開日: 2023.07.27

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    月次決算とは

    月次決算とは、経営成績と財政状況を確定するという作業で、事業の年度末に行う年次決算とは別に、この作業を毎月一ヶ月単位で行うことを指します。

     

    この作業の目的は、営業成績と財政状況などの経営を管理するために参考となる情報を経営陣に伝えるために行いますので、予算や計画との比較をするために、正確性・詳細性よりも概観的で迅速な情報が必要になります。

     

    また、経理・財務には、月次決算の早期化とKPI(「Key Performance Indicator」重要業績評価指標、目標達成のためのプロセスが適切に実行されているかどうかを評価する指標)に基づく予実差異分析が求められます。今回は、月次決算の目的に着目して、月次決算で作成すべき報告書を解説していきます。

    月次決算の目的とは

    月次決算はどのような目的で、どうして必要なのでしょうか。月次決算は年次決算のように法的な義務はないので、月次決算を行うかどうかはその企業の判断となります。

     

    毎月会計をしめた段階で年次決算と同じような会計処理を行いますので、「業務負担が増えるならやらなくていいかな」と思われる方もいるのではないでしょうか。月次決算には、下記4点の目的があります。

     

    ・経営判断を早い段階でおこなうため

    ・年次決算の事務負担を軽減するため

    ・金融機関から融資を得やすくするため

    ・経費精算など進捗管理をおこなうため

     

    となります。一つひとつ詳しく解説していきたいと思います。

    経営判断を早い段階でおこなうため

     一つ目の月次決算をおこなう目的は、「経営判断を速い段階でおこなうため」です。月次決算は、毎月経営成績や財務状況をまとめる作業なので、経営状況をタイムリーに把握することができるというメリットがあります。

     

    そのため、急激な経営環境の変化で売上減や経費増が起こってしまった場合でも、早急に原因の追究ができ、適切な経営判断をおこなうことが可能になります。問題解決には早期発見が健全な経営の基本の基です。

     

    年次決算だけをおこなっていると、年次決算の時には数字が過去のものとなっていることが多く、原因の追究や対策の実施は難しい状況にあることがほとんどです。月次決算は経営陣が経営判断をおこなう基本の資料となるのです。

    年次決算の事務負担を軽減するため

    二つ目の月次決算をおこなう目的は、「年次決算の事務負担を軽減するため」です。年次決算は、一年間のすべての会計業務を確定する作業です。一年間の会計書類や帳簿を整理し、期日までに決算書類を作成して提出しなくてはなりません。

     

    つまり、年次決算はスピードも正確性も求められて膨大な労力がかかる作業になります。月次決算として毎月会計資料をまとめておけば、年次決算の際にまとめる資料が減り、時間や確認項目なども大幅に軽減することができます。

     

    また、一年に一度の年次決算業務を毎月おこなうことで業務が楽になると考えれば、経理担当者の決算時の作業も減り、業務効率化にもつながります。

    金融機関から融資を得やすくするため

    三つ目の月次決算をおこなう目的は、「金融機関から融資を得やすくするため」です。月次決算をおこなっているということは、経営や財務状況を管理していることの証明になりますので、融資や取引を持ちかける際の心証がよくなります。

     

    また、金融機関の融資審査は時間がかかります。企業から融資の申込があった際、融資審査をしてしっかり返済をしてくれるのかを判断します。

     

    そのため、企業の成績が良かったとしても、直近の会計資料がない場合は融資審査に時間がかかってしまうことがあります。月次決算をし、毎月会計資料を整えておくことで、融資審査のスピードを早めることができるのです。

    経費精算など進捗管理をおこなうため

     最後にお伝えする月次決算をおこなう目的は、「経費精算など進捗管理をおこなうため」です。先ほどもお伝えした通り、月次決算は毎月の経営成績と財務状況を試算表としてまとめて数値化する作業です。毎月決算をおこなうことで、会社の経費精算などの進捗状況を管理することができます。

     

    また、年次決算だけをおこなっている企業と比べるとタイムリーに経営資料を確認できるので、期の途中でも計画した予算と実績が乖離していることや、想定外の売上減・経費増にも早めに気がつくことができます。

     

    会社の状況を早期に把握できると、年間売上や利益の着地が想定しやすくなり、早めに予算修正が可能です。また、手遅れになる前に、経営戦略や営業方針の転換をすぐに判断し実行もできます。

    月次決算と年次決算のちがいとは

    年次決算は年に一度経営成績と財務状況を確定する作業です。一方で、月次決算は月に一度その作業をおこないます。また、年次決算は会社法などの法律で実施することが義務づけられていますが、月次決算は企業が任意でおこなうものです。また、目的や必要性も異なります。ここから詳しく説明していきたいと思います。

    計算項目が異なる

    月次決算と年次決算の一つ目の違いは、「計算項目が異なる」という点です。月次決算は年次決算とは異なり、月に一度経営成績と財務状況を調べて、利益を確定する作業です。そのため、計算項目も月ごとに計上する必要があります。

     

    特に、減価償却費は1/12を計上する必要があります。また、それ以外についても月次ベースで計上をおこないます。一方で、税金計上は確定したものを計上することになるので、年次決算の時に作業します。

    決算についての趣旨が異なる

    月次決算と年次決算の二つ目の違いは、「決算についての趣旨が異なる」という点です。月次決算の作業はスピードが何よりも求められ、タイムリーに経営状況を把握して、利益コントロールをしたり経営判断をくだしたりすることを目的としています。

     

    一方で、年次決算は年間の企業利益を確定させて、課税所得の確定や銀行への提出用資料(財務諸表)を作成するためにおこないます。前述した通り、月次決算は企業ごとに実施の有無を任されていますが、年次決算は会社法や金商法、法人税法などの法律で実施が義務づけられています。

    目的と必要性が異なる

     最後にお伝えする月次決算と年次決算の違いは、「目的と必要性が異なる」という点です。月次決算は毎月経営状況を確認し、経営者が今後の経営戦略を考えるためにおこないます。一方で、年次決算は年間の経営成績を損益計算書や貸借対照表にまとめ、株主や取引先などに情報を共有することを目的としています。

     

    また、月次決算は年次決算や日々の業務を効率化するためにおこなうという目的もあるので、月次決算と年次決算は目的と必要性が異なると言えます。

    月次決算の具体的な作業の流れとは

     ここからは、実際に月次決算を作っていきたいと思います。月次決算は毎月おこなう必要があることなので、何よりもスピードが求められます。

     

    基本的な流れについては年次決算と変わりません。ここでは月次決算の一般的な流れを説明していきますので、できる限り早く作業を完了できる体制を整えていきましょう。

    現金および預金の残高確認

     月次決算をおこなう際、まずは「勘定科目の残高確認」をおこないます。勘定科目(現金・預金)の帳簿残高と、実際の残高に違いがないか確認しましょう。

     

    通帳での預金残高、金庫に保管している現金残高の確認をし、帳簿残高と差異がある場合、どこでズレがでてしまっているのか原因を調査します。

     

    毎日の業務で、出納帳をつけている場合は、毎日ズレがないか確認をしていると思いますが、締めである月末は特に注意を払うようにしましょう。

    棚卸高の集計

     次におこなうことは、「棚卸高の集計」です。棚卸高の集計とは、月末の在庫金額を確定することを指します。可能ならば、帳簿と棚卸資産が一致しているかどうかも確認するようにしましょう。また、毎月棚卸をして棚卸資産管理の手続きがされている場合は、下半期決算や年次決算の時での棚卸を省力化することもできます。

    仮払金や仮受金の振替

     次は、「仮払金や仮受金の振替」をおこないます。仮払金や仮受金は、正確な金額が分からない支出・収入のことです。

     

    名前の通り仮の情報なので、正確な金額がわかり次第処理をします。また、仮払金や仮受金のままではなく、内容は何かを整理しておくことも重要です。仮払金や仮受金のままにしておくと、その月の経営状況が見えにくくなってしまいます。

    経過勘定の処理

    次におこなうことは、「経過勘定の処理」です。経過勘定の処理とは、前払費用や未払費用が月をまたいでしまった時に処理をすることを言います。早急に処理をするために、対象の科目や計上する基準をあらかじめ設定しておくようにします。経過勘定で費用を損益計算書に反映させることで、その月の経営状況を正確に把握できるようになります。

    減価償却費の計上

     次に月次決算でおこなうことは、「減価償却費の計上」です。減価償却費は、年間でどのくらいの費用がかかるか見積もりが可能です。

     

    年次費用をだしたうえで、月次費用として12分の1の金額を計上しましょう。

     ⑥退職給付費用などの計上

     減価償却費と同様に「退職給付費用などの計上」をおこないます。年間での見積もりがわかるので、年次費用をだしてから月次費用として12分の1の金額を計上します。

     

    退職給付費用のほかに、賞与、固定資産税、社会保険などの各種保険料なども月割計上処理をする必要があります。

    月次資料の作成

    次は「月次資料の作成」をおこないます。仕訳したものを総勘定元帳に転記し、月次試算表を作成します。月次試算表は年次試算表同様で、「損益計算書」「貸借対照表」「キャッシュフロー計算書」があります。

     

    また、予算実績対比表や前年同月対比表などを作成する企業が多いです。試算表は3種類あり、「合計試算表」と呼ばれる勘定科目の貸借をそれぞれ合計したもの、「残高試算表」と呼ばれる勘定科目の残高を記載したもの、「合計残高試算表」と呼ばれる「合計試算表」と「残高試算表」のどちらも記載したものがあります。

    財務分析

    その次には「財務分析」をおこないます。月次資料として、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の3つの試算表を作成しています。

     

    その他にも、「前期比較表」や「予算実績対比表」などの比較資料を作り、財務分析をおこないます。売上や利益は前年同月と比べるとともに、どうしてこのような結果になったのか原因究明もおこないます。また、予算と実績を比べ、問題があれば経営計画の見直しや経営判断をくだします。

    月次報告

    最後には「月次報告」をおこなう必要があります。月次報告の際に役立つのは、予算実績対比表や前年同月対比表です。前月の試算表、前年同月の試算表と比較し、資金繰りの状況、売上・経費・予算達成度合いを確認するようにしましょう。

     

    また、月次報告でもっとも重要なことは速やかに経営陣に報告することです。月次決算の報告が遅れるということは経営判断が遅れてしまうということです。月次決算を早期化するための体制作りをしっかりしていくようにしましょう。

    月次決算で作成すべき帳票3

    月次決算の具体的なやり方のなかでもお伝えしましたが、月次決算で作成する資料は、「月次決算書(月次試算表)」「前期比較表」「予算実績対比表」です。どのような資料かひとつひとつ詳しく解説していきたいと思います。

    月次決算書

    月次決算書とは、細かく分けると「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」です。この3つの資料は財務三表と呼ばれています。

     

    貸借対照表はある時点における企業の資産負債状況を示す書類で、企業の資金調達方法や財政状況を読み解くことができます。損益計算書は収益・費用・利益が記載されている書類で、企業はどのような事業でどのくらい儲けているか、もしくは損失を出しているかを明らかにすることができます。

     

    キャッシュフロー計算書は、企業のお金の流れを表したものです。しかし、会社法において作成義務はありません。

    前期比較表

    月次決算で大切な作業は前期との比較です。前年同月と比較しやすいように「比較表」を作成している企業も多くあります。業種によっては季節的な要因が関係して、利益率が上がったり下がったりしているケースもあります。

     

    例えば、花粉症の時期にはマスクやティッシュなどを製造している企業の売上があがります。また、前年同月の売れ筋商品や気象データなども役に立つかもしれませんし、前年と比較して使いすぎている経費にも気がつきやすくなります。

    予算実績対比表

    月次決算では予算と実績の乖離を確認して分析することが重要となります。そこで、予算実算対比表を作成し、予算の進捗率や達成度を把握することは大切な作業です。

     

    予算の達成度が把握できれば、経営方針の転換か現状維持をするか意思決定の役に立ちます。また、予算実算対比表は、売上高・売上原価・人件費・販促管理費などの項目も比較できます。項目ごとに差異の理由を記入しておくことで、これからどこを改善していくかなどが把握しやすくなり、会議などで使いやすい資料となります。

    月次決算を早期におこなうポイント3

    月次決算はスピードが求められる作業です。なので、月次決算はできるだけ効率的におこなう必要があります。ここからは、月次決算を効率よくおこなうためにできることを解説していきます。

     

    ①社員とスケジュールを共有する

    経費精算の締め日などを徹底する

    経理ソフトや会計ソフトを活用する

    社員とスケジュールを共有する

    月次決算を早期におこなう一つ目のポイントは、「社員とスケジュールを共有する」ということです。月次決算に必要な書類をいつまでに作成するかが分かれば、社員もそこから逆算してデータの取りまとめや書類作成、棚卸業務など、具体的な業務に取りかかることができます。

    経費精算の締め日などを徹底する

    月次決算を早期におこなう二つ目のポイントは、「経営精算の締切日を徹底する」ことです。経費精算や請求書の締め日を徹底することは、月次試算表を停滞せずに行うために必要不可欠な要素となります。

     

    経費精算の締め日などはしっかり管理し、経費精算の伝票や請求書は必ず期限通りに提出してもらうように従業員に呼びかけましょう。締め日のルールを具体的し社内共有することも徹底させる有効な手段です。

     ③経理ソフトや会計ソフトを活用する

    月次決算を早期におこなう三つ目のポイントは、「経理ソフトや会計ソフトを活用する」ことです。会計ソフトを導入することで業務の効率化が進みます。

     

    これは、月次決算の作成だけでなく日常業務に対してもあてはまります。会計ソフトは、自動仕訳や、預金残高の確認、記帳作業などもできます。

     

    また、スマホで領収書を撮影するだけで自動入力ができたり、ICカードの履歴と交通費が連動していたりと会計ソフトの種類によってできることも異なってきます。また、ソフトを活用したペーパーレス化やテレワークは以前と比べてかなり一般的になっています。

    まとめ :月次決算の目的を理解して効率の良い月次決算を目指そう

    月次決算について目的や必要性、そして効率的に月次決算をおこなう方法を伝えてきました。今回解説した内容をしっかり理解して、自社の月次決算に活かし、そして経営判断や経営管理に取り入れていってください。             

     

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