短期前払費用の特例とは?具体例でわかりやすく解説

    記事公開日: 2023.01.12

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    • 「短期前払費用の特例が認められる要件について知りたい!」
    • 「前払費用と前払金の違いは?」

     

    自社の家賃や保険料など、継続的なサービスを受けるために必要な前払費用は、支払い時に「短期前払費用」として損金計上することで節税効果が期待できます。

     

    一方、短期前払費用の特例を適用できる要件は国税庁によって明確に定められており、その規定に沿って適切に会計処理を行わなければなりません。

     

    会社を経営する経営者の方のなかには、経理担当の短期前払費用の計上について、理解を深めたい方もいらっしゃるのではないでしょうか。

     

    今回は、そんな短期前払費用に興味や関心のある方に向け、下記の内容についてご紹介します。

     

    • 短期前払費用とは?
    • 短期前払費用の特例とは?
    • 短期前払費用の仕訳

     

    本記事を読めば、前払費用と前払金の違いや特例が認められる要件を理解し、会社経営の節税対策につながるでしょう。

     

    また後半では、短期前払費用の計上が税務署に否認されないための注意点についても解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。

    短期前払費用とは?

    そもそも前払費用とは、数か月や年単位で支払うサービスに前払いした費用を指します。

     

    継続的に受けられるサービスのうち、支払い時の事業年度内において未だ提供されていない部分に支払った費用のことです。

     

    国税庁が定める要件を満たせば、前払費用の一部を損金として計上することが認められており、この損金計上できる支払金を「短期前払費用」といいます。

    参考:国税庁

     

    一般的に、会計処理では前払費用を会社の資産として計上します。

     

    しかし、サービスの提供時期が支払日から1年以内であったり継続性があったりと、一定の要件を満たせば、前払費用を損金として計上することが可能です。

     

    短期前払費用の特例を適用すると、前払費用を損金算入でき課税対象外となるため、会社経営の節税対策につながるでしょう。

     

    短期前払費用の特例における詳しい要件や対象取引については、下記で詳しく解説します。

    前払費用と前払金の違い

    前払費用と前払金の違いは、以下の通りです。

     

     

    前払費用

    前払金

    計上する費用

    サービスに支払った費用のうち未提供の部分

    サービスに支払った費用のすべて

    サービスの具体例

    家賃や保険料など、「継続的」にサービスを受けるもの

    商品や原材料、イベント参加費など、「単発」でサービスを受けるもの

    計上タイミング

    支払い日の翌年度

    支払い時(事業年度内)

     

    前払金とは、単発の商品やサービスを受ける前に支払った費用を指し、前払費用との違いは計上する費用が「一部か全部か」という点です。

     

    会計処理において、前払費用は「費用の一部」が計上されるのに対し、前払金は「費用の全部」が計上されます。

     

    また、前払金は支払い時に会計処理を行うことが一般的です。

     

    一方で前払費用は、未提供のサービスが次の年度に提供されるため、決算時の仕訳整理で計上されます。

    短期前払費用の特例とは?

    短期前払費用の特例について詳しく解説します。

     

    • 特例の内容
    • 適用の要件
    • 対象となる取引の具体例

     

    短期前払費用の特例を適用するためには、国税庁が定める要件を満たす必要があります。

     

    ここからは、上記3つの点について具体的に解説します。

    特例の内容

    上記でも述べたように、短期前払費用の特例とは法人の前払費用の一部を損金として会計処理できる例外のことです。

     

    そもそも損金とは、会社の資産減少の原因となる損失額のことで、益金と差し引いて課税所得を算出するために用いられます。

     

    前払費用の会計処理が決算日前であれば、未だすべてのサービスを受けていないにも関らず、その未提供部分の費用が当期の課税所得に加算される場合があります。

     

    サービスの前払費用を「会計上の費用」として計上しても、「税務上の損金」として計上していなければ、課税対象外として認められないのです。

     

    未提供部分があるのに、会社の納税額が増加してしまうのは避けたいと考える方もいるでしょう。

     

    「短期前払費用の特例」を適用することで、翌年度に提供されるサービスの費用を損金算入できるため、節税対策につながるのです。

    適用の要件

    短期前払費用の特例の適用が認められる具体的な要件は、以下の通りです。

     

    • 等質・等量のサービスが1年以内に提供されること(等質・等量のサービスとは、時間経過とともに対価が変化しないもの)
    • 毎期継続的にの短期前払費用の特例を適用していること
    • 収益の計上と対応させる必要がないこと

     

    短期前払費用の特例は、サービスの提供開始日が決算日前の事業年度内である必要があります。

     

    翌年度にサービスが提供される場合は、前払費用として資産計上しなければなりません。

     

    また、短期前払費用の特例を一度適用すると、そのサービス費用は必ず翌年度以降も継続して損金算入する必要があります。

     

    「今期だけ前払費用を損金として計上する」といった税務処理は認められていません。

     

    さらに、特例を適用できるのは、前払いをするサービスが会社の収益に影響を与えにくい場合です。

     

    そのため家賃や保険料など、会社の収益と関係性の薄いサービスの前払費用にのみ、短期前払費用の特例を適用できます。

    対象となる取引の具体例

    短期前払費用の特例の対象となる費用として、以下の例があげられます。

     

    損金として計上できる前払費用

    • 会社オフィスの家賃
    • 法人や従業員のための保険料
    • 信用保証料
    • 工業所有権の使用料

    損金として計上できない前払費用

    • 従業員への前払給料
    • 税理士や弁護士の顧問料
    • テレビCMやSNSの広告料

     

    短期前払費用の特例が認められる要件より、家賃や保険料といった等質等量のサービス費用は損金として計上できます。

     

    一方、税理士や弁護士の顧問契約や商品の広告などは、時間の経過によって対価が変化するため短期前払費用には該当しません。

     

    また、短期前払費用の特例が認められる場合と認められない場合の具体的な取引例として、以下の例があげられます。

     

    短期前払費用の特例が認められる取引

    ①翌月の家賃を月末に支払う契約をしており、4月分の家賃を3月末に支払った。


    ②保険料の年額を毎年3月に支払う契約をしており、1年分(4月から翌年3月まで)の保険料を3月に支払った。

    短期前払費用の特例が認められない取引

    ③2年分の保険料を3月末に支払った。


    ④家賃を毎年2月に支払う契約をしており、1年分(4月から翌年3月まで)の家賃を2月に支払った。

    ※毎年3月に決算する法人の場合

     

    ③のように1年分を超える前払費用は損金として計上することはできません。

     

    また④の例のように、前払い日から1年を超えてサービスが提供される場合、短期前払費用の特例は適用は認められないので注意しましょう。

    短期前払費用の仕訳

    短期前払費用の仕訳や適用する際の注意点についてご紹介します。

     

    • 前払費用の仕訳
    • 短期前払費用の特例を利用した仕訳
    • 短期前払費用の特例を適用する際の注意点

     

    短期前払費用の特例を適用した場合、費用の振り替えや振り戻しの処理が削減されます。ここからは、上記3つの点について具体的に解説します。

    前払費用の仕訳

    基本的に前払費用の仕訳は、サービス未提供部分の費用を決算時に前払費用として振り替え、翌年度に振り戻す処理が必要です。

     

    たとえば、3月決算の会社が12月に1年分(翌年1月から12月まで)の家賃120万円を支払った場合、以下のような仕訳が例としてあげられます。

     

     

    借方

    貸方

    支払い時

    (12月)

    家賃

    120万円

    普通預金

    120万円

    決算時

    (翌年3月)

    前払費用

    90万円

    家賃

    90万円

    翌期首

    (翌年4月)

    家賃

    90万円

    前払費用

    90万円

     

    短期前払費用の特例を適用しない場合、費用の処理は支払時の事業年度と翌期首に行う必要があります。

    短期前払費用の特例を利用した仕訳

    短期前払費用の特例を適用した場合、支払時の仕訳のみで前払費用の会計処理が完了します。

     

    たとえば、短期前払費用として認められると、以下のような仕訳となります。

     

     

    借方

    貸方

    支払い時

    (12月)

    家賃

    120万円

    普通預金

    120万円

     

    特例の要件を満たせば、短期前払費用を損金として計上でき、費用の振り替え・振り戻し処理を削減することが可能です。

     

    また、損金算入により前払費用を当年度の経費として処理することで、所得課税を抑えられるため、節税対策にもつながります。

    短期前払費用の特例を適用する際の注意点

    短期前払費用の特例を適用する際は、以下の注意点があります。

     

    • 支払った日から1年以内にサービスの提供を受けられるか
    • 一度特例を適用したら翌年度も継続できるか

     

    前払いした日から1年を超えて提供されるサービスは、要件を満たさないため短期前払費用の特例を適用できません。

     

    たとえば、決算日が3月の会社が1年分のオフィス家賃(4月から翌年3月まで)を2月に前払いした場合、提供終了まで1年1か月かかることから特例の適用が否認されます。

     

    また、当年度は家賃を年払いで処理したにも関らず翌期で月払いに戻した場合、税務署に利益操作として判断されるリスクがあります。

     

    そのため、一度月払いから年払いに変更した場合は、毎期継続して年払いにしなければならないのです。

    まとめ

    今回は、短期前払費用や特例の要件、仕訳の具体例などについてご紹介しました。

     

    短期前払費用の特例を適用するには、国税庁が定めた要件に沿って処理する必要があります。

     

    • 等質・等量のサービスが支払日から1年以内に提供されること
    • 毎期継続的に特例を適用すること
    • 会社の収益に影響を与える前払費用は損金算入できないこと

     

    上記の注意点を把握し、家賃や保険料などで短期前払費用の特例を活用すれば、従業員の会計処理の負担軽減や会社の節税効果が期待できるでしょう。

     

    ぜひ本記事を参考に短期前払費用の知識を深めてください。

     

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