事業計画はなぜ必要？事業計画策定の目的と徹底解説

事業計画書とは、事業の立ち上げや資金調達をする際に必要となる書類です。

事業計画書を作成すれば、金融機関などから融資を受けやすくなったり、経営者の思考整理がしやすくなったりします。

そこで今回は、事業計画書を用意する目的や記載するべき項目、作成する際に気をつけるべきポイントを解説します。

本記事を読めば、事業計画書を用意する目的や作成する際に気をつけるべきポイントが把握できるため、事業計画書を通じて事業の魅力や将来性を説得力を持って示すことができるでしょう。

事業計画書とは

事業計画書とは、事業内容や売上、収益の見込みなどビジネスを進めるうえで欠かせない情報を記載している計画書です。

事業計画書を作成すれば事業内容を明確化できたり、事業の方向性を共同経営者や社員へ共有したりできます。

事業計画書は、会社設立時に提出するといった法的な義務はありません。しかし、事業計画書を作成すれば、第三者が見てどのように収益を向上させていくのかを視覚的に把握できます。

事業計画書を作成する際は、自社のことを認知していない第三者へどのように記載したら伝わるのかを検討したうえで、計画書を作成するべきです。

また、事業計画書を記載すれば、金融機関へ自社の経営状況を細かく伝えられるので、融資を受ける際に有利になることもあります。

事業計画書は、ビジネスを円滑に進める場合や資金調達をしやすくするために必要な書類です。

事業計画と経営計画の違いとは

事業計画は会社の理想像を実現するための行動計画表であるのに対し、経営計画は企業の現在の姿と本来あるべき姿を合わせるために数値や目標を示すための書類です。事業計画と経営計画の基本的な違いは、以下のとおりです。

経営計画では、自社が掲げる最終目標を統一させるため会社ごとに計画書を用意します。

しかし、事業計画書では事業別や部門別などに分類して具体的な行動計画を示さなければいけません。用意した経営計画を参考にして、事業計画書を作成しましょう。

事業計画は何のために作成するのか

事業計画を作成する目的として、以下の4つを解説します。

• 事業内容を明確化するため
• 金融機関などから融資を受けるため
• 事業の方向性を共有するため
• 経営者の思考整理のため

ここで解説した目的に沿った事業計画書を作成しましょう。

事業内容を明確化するため

事業計画書は、自社が展開するビジネスの内容を明確化するために必要とされています。事業内容を明確化すれば、自身の頭の中に描いている事業構想を客観的に実現可能なのかを判断してから取り組めるため、ビジネスで失敗するリスクを軽減できるでしょう。

また、事業内容を明確化すれば「具体的にどこを改善すればよりよい事業を実現できるのか」といった改善点も見つけやすくなります。改善点を見つけて事業計画の練り直しをすることで、より効率的に事業の改善に取り組めるかもしれません。

もし、事業計画書を作成していなければ、どのようにビジネスを進めていけばよいのかを取り決めていないため、事業の進め方がわからなくなる恐れがあります。効率的にビジネスへ取り組むためにも、事業内容を明確化できる事業計画書を作成するべきです。

金融機関などから融資を受けるため

事業計画書は、金融機関などから融資を受けるために必要です。資金調達をする際は、「どのような事業を何のために進めていこうと考えているのか」「事業を実現することで社会にどのような利益があるのか」をアピールしなければいけません。

しかし、口頭では必要事項を上手く伝えられない可能性や融資するまでに時間がかかってしまうリスクがあります。事業計画書には自社の経営状況や事業内容が細かに記載されているため、必要事項が伝えやすくなるでしょう。

また、事業計画書を作成すれば、金融機関などから融資を受けられる可能性が向上します。資金面での問題や改善策、今後の収益の向上の見込みなどを資金提供者へ示せるためです。

金融機関から融資してもらえる可能性を向上するためにも、事業計画書を作成する必要があります。

事業の方向性を共有するため

事業の方向性を共同経営者や自社の社員と共有するために、事業計画書を作成するべきです。事業計画書を作成していなければ、経営者の思考のなかにのみ実現したい事業内容があるため、どのように業務へ取り組めばよいのかが共同経営者や社員は理解できません。

そのため、経営者が意図していない方向に事業が進んでしまう可能性があります。事業経営計画書を作成することで、関係者とどのような方向でビジネスを進めていくのかの認識を共有できるため、効率的に事業を進めやすくなるでしょう。

また、事業計画書を作成する際に従業員がどのように事業へ携わるのかを記載しておけば、さらに方向性を間違えることなく仕事へ取り組みやすくなります。

共同経営者や自社の社員へ事業の方向性を共有して効率的にビジネスを進めていくためにも、事業計画書を作成するとよいでしょう。

経営者の思考整理のため

事業計画書を作成すると、経営者の思考整理につながります。例えば、事業計画書を作成することで「なんのためにどのような事業をしているのか」「売上目標や今後の流れ」が具体化できます。

事業計画書を作成して経営者の思考整理を実現することで、新しいアイデアが思いつくかもしれません。円滑に事業を進めていくためには、思考を整理してどのように事業を進めていくべきなのかを再度考える必要があります。

事業計画書は必ず作成しないといけない？

事業計画書は、必ず作成しなければいけないわけではありません。法律によって事業計画書の作成が義務付けられていないからです。しかし、事業計画書を作成することで実施するべき事業計画が明確になるため、作成した方がよいです。

事業計画書を作成していないと、資金を使いすぎてしまい資金不足に陥ったり、ターゲット層を明確に考えていないため商品をあまり売り上げられなかったりするかもしれません。

事業計画書を作成すれば、ビジネスのリスクや準備不足に気づける可能性があるため、売上に結びつきやすくなる事業展開ができるでしょう。

また、金融機関から融資を受けることを検討しているのなら、事業計画書は必ず作成するべきです。金融機関のなかには事業計画書の提出を義務付けている場合もあるからです。事業計画書を提出しなければ、自社の経営状況を伝えにくくなります。

事業計画書は、ビジネスのリスクや準備不足に気づけたり、資金調達できる可能性を高められたりするので作成しておくとよいでしょう。

事業計画書に記載すべき項目とは

事業計画書に記載すべき項目は、以下の通りです。

1. 社名や住所
2. 経営者の経歴
3. 事業内容
4. 会社の理念・ビジョン
5. 自社の強み（セールスポイント）
6. 市場における自社の状況
7. 資金計画
8. 収支計画
9. 将来計画
10. その他

ここで紹介した項目を踏まえて事業計画書を作成してください。

①社名や住所

事業計画書には、社名や住所などの会社概要を記載する必要があります。具体的には、以下の内容を会社概要として記載しましょう。

• 企業の所在地
• 代表者と役員
• 電話番号
• メールアドレス
• ホームページのURL
• 主要取引先
• 主力商品
• 従業員数

事業計画書を見る第三者は、自社のことを認知しているとは限りません。そのため、事業計画書に会社概要を記載して自社のことを認知してもらう努力をするとよいでしょう。

②経営者の経歴

事業計画書を見る第三者から信用を勝ち取るためにも、具体的に経営者の経歴を記載してください。例えば、レストランを開業する事業計画で実際に料理人として5年間修業した経歴があると記載していれば、それだけで十分に信用できる材料になるでしょう。

レストランを開業したいのにも関わらず料理経験が浅かった場合は、本当に事業が上手くいくのかと不安になってしまう恐れがあります。

事業と関係のない経歴を事業計画書に記載しても読み手側の意図を考えられていない書類と思われてしまうため、事業計画書の内容に関係のある内容を記載するように心がけましょう。

③事業内容

事業内容では、どのような市場やターゲットに対してどんな商品を提供するのかとビジネスの全体像について簡潔に記載する必要があります。ビジネスの全体像について簡潔に記載する際は「誰に」「何を」「どのように提供するのか」と決めておくとよいでしょう。

例えば、事業計画書には以下のように事業内容を記載してください。

• 誰に：40～50代の中高年の男性に
• 何を：ビールに合うつまみの専門店を
• どのように提供する：ショッピングモールの中に出店する

上記の例で十分に事業内容について理解できます。事業内容を長々と記載したら、逆に理解しにくくなります。事業計画書を読んだ第三者が理解しやすくするためにも、事業内容を完結に記載するべきです。

④会社の理念・ビジョン

会社の理念・ビジョンでは「事業を通してどのような世の中にしていきたい」「どのように顧客へ喜びを与えたい」とビジネスに対する熱い思いを記載しましょう。ビジネスに対する経営者の考え方に共感してくれる可能性があるからです。

世の中には数多くの会社が存在するため、唯一無二の商品やサービスはほとんどありません。つまり、会社が掲げる理念やビジョンによって商品・サービスの付加価値をつける必要があります。

自身が第三者だったらどのような理念やビジョンに共感するのかを検討したうえで、事業計画書に理念やビジョンを記載しましょう。

⑤自社の強み（セールスポイント）

自社の強み（セールスポイント）では、競合他社にはない自社ならではの独自性をアピールしなければいけません。自社の独自性をアピールする際は、SWOT分析が最適です。

SWOT分析とは、自社の内部環境と外部環境のプラス面とマイナス面を洗い出す現状分析方法です。SWOT分析は、具体的に以下の4つの要素で構成されています。

自社の強みを明らかにするためにも、SWOT分析を活用してどこをアピールするべきなのかを見つめ直しましょう。

⑥市場における自社の状況

市場における自社の状況では、事業を取り巻く現在の環境について記載します。事業を取り巻く現在の状況を明らかにしたい場合は、3C分析を活用するとよいでしょう。3C分析とは、市場・顧客や自社、競合の3つの要素で成り立っているマーケティング手法です。

具体的には、3C分析を実施する際は以下の内容を分析します。

上記の3C分析を活用し、市場における自社の状況を明らかにしてください。

⑦資金計画

資金計画では、事業をするためにどれくらいの資金が必要で、どのように資金調達をしなければいけないのかを記載する必要があります。ただ、資金計画を記載する際は根拠のある数字を求めなければいけません。

根拠のない資金計画を作成したとしても、事業を進めていく際の参考にはならないからです。また、投資家や金融機関から資金調達をする際は、資金計画を見てもらい、自社がどれほどの資産を保有しているのかを把握してもらわなければいけません。

資金調達をする際に困らないようにするためにも、事業計画書には資金計画の記載が必要です。

⑧収支計画

収支計画は、創業当初と事業が軌道にのった後の2つに分類して作成しましょう。創業当初と事業が軌道にのった後の売上は大きく変動するからです。また、収支計画を作成する際は商品やサービスごとに記載することが大切です。商品やサービスの単位ごとに収支計画を考えることで、売上が達成できなかった際に原因を究明しやすくなります。

自社の売上状況を改善しやすくするためにも、収支計画を作成する際は細かく商品やサービスごとに自社の売り上げ状況を記載するとよいでしょう。

⑨将来計画

将来計画では「自社の事業をどのように発展させたいのか」「社会の中でどのような役割をになってほしいのか」を記載するとよいでしょう。

特に金融機関など資金調達をする相手には、自社が継続的に経営し続けられる企業であると信用してもらわなければいけません。

自社が将来性のある企業だと信用してもらわえなければ、資金提供者へ融資してもらったお金を返済できなくなるため資金を貸してくれなくなる可能性が高まるからです。

自社が将来的に利益を稼ぎ続けられる企業であると資金提供者からの信用を得るためにも、将来計画を作成するとよいでしょう。

⑩その他

その他では、自社の人員計画や生産方法、仕入先などを記載しましょう。事業で安定した利益を獲得し続けるためには、ビジネスに携わる人材を見積もらなければいけません。

しかし、すぐに人員を採用できるわけではないため、事業計画書に人員計画を作成して計画的にビジネスに必要な人数の社員を採用する計画を立てる必要があります。

また、自社が顧客へ安心できる商品やサービスを提供することを証明するためにも、生産方法や仕入れ先を記載するべきです。例えば、異物混入事件が発生した仕入先と取引をしていたら自社商品にも異物が混入している可能性があるため、取引先を見直したうえで、健全な取引先から仕入れをしていることを外部に示した方がよいでしょう。

事業計画書を作成する際のポイント

事業計画書を作成する際のポイントとして、以下の8つが挙げられます。

1. 要点を整理してまとめること
2. 様式を統一すること
3. グラフや表を用いて視覚的に見やすくすること
4. 競合企業と市場についての調査をおこなうこと
5. 根拠資料を必ず準備すること
6. 第三者からのフィードバックを受けること
7. 6W2Hに気をつけること
8. 整合性のある内容にすること

ここで解説したポイントを理解し、第三者が視覚的に見やすくなるように工夫した事業計画書を作成しましょう。

①要点を整理してまとめること

事業計画書を作成する際は、要点を整理してまとめることを心がけましょう。要点が整理されていない事業計画書は、第三者からすると読みにくく感じてしまうからです。具体的には、以下の3つの要素を踏まえて事業計画書を作成するとよいでしょう。

• 自社の理念やビジョンは第三者から共感を得られるような内容になっているか？
• 商品の特徴や市場分析は事業の成長につながっているか？
• 経営者の経歴は事業の成功の裏付けにつながっているのか？

事業計画書は、第三者へ読んでもらう機会が多い書類です。そのため、第三者が読みやすいように工夫しなければいけません。第三者が読みやすいと感じる事業計画書を作成するためにも、要点を整理してまとめてください。

②様式を統一すること

事業計画書を作成する際は、様式を統一するべきです。様式を統一せずに事業計画書を作成してしまうと、読みにくくなる恐れがあるからです。例えば、文字のフォントやサイズが統一されていないと不自然に感じてしまい、読む気が薄れてしまいます。

事業計画書を作成する際は統一されたサイズとフォントで記載することを心がける必要があります。とはいえ、タイトルや見出しなど場所によってサイズを変更しなければ、重要な内容を強調できなくなるため、かえって事業計画書が読みにくくなるかもしれません。

場所によってサイズを変更する際は、タイトル26pt、本文11ptなどとあらかじめ決めたうえで事業計画書を作成しましょう。サイズやフォントを統一したうえで、事業計画書を作成してください。

③グラフや表を用いて視覚的に見やすくすること

事業計画書を作成する際は、グラフや表を用いて視覚的に見やすくなる工夫をすることが大切です。文章が長々と記載されていても読みづらくなってしまうので、適宜グラフや表を用いて第三者が理解できる内容にする必要があります。

例えば、数値のデータを図で入れることで視覚的に事業の伸びが理解しやすくなるため、将来性がある事業だとアピールしやすくなるでしょう。商品やサービスの強みや弱みにおいても、グラフを適宜入れることで魅力を伝えやすくなります。

自社の魅力を伝えやすくするためにも、事業計画書を作成する際はグラフや表を用いて視覚的に見やすくする工夫をするとよいでしょう。

④競合企業と市場についての調査をおこなうこと

事業計画書を作成する際は、必ず競合企業と市場についての調査を実施しなければいけません。競合企業と市場についての調査を実施しなければ、自社がどのような付加価値を顧客へ提供できるのかが分からないからです。

事業計画書のなかで自社が市場や競合企業よりも優れている会社だとアピールすれば、資金提供者は融資の判断がしやすくなります。例えば、収支計画で自社の良さをアピールするのであれば、競合他社の収支計画を掲載して比較しやすいように工夫するとよいでしょう。

競合他社の収支計画よりも自社の売上の方が大幅に優れていたら、自社が優れていることの証明が第三者へできます。顧客へ適切な付加価値を提供しやすくするためにも、競合企業と市場についての調査をして事業計画書を作成しましょう。

⑤根拠資料を必ず準備すること

事業計画書を作成する際は、根拠資料を必ず準備する必要があります。根拠がなければ、事業計画書の内容の信ぴょう性が薄れてしまうからです。

例えば、収支計画で「前年同月比より売上20%増」と記載するのなら、どのようにして売上を20%も上昇させるのかを示す必要があります。具体的には、売上20%増との計算に至った計算式を事業計画書に記載しておくと、根拠になります。

事業計画書の根拠資料を準備していなければ、計画書の信頼を大幅に失ってしまうかもしれません。事業計画書の信頼を獲得するためにも、根拠資料を必ず準備することを心がけるべきです。

⑥第三者からのフィードバックを受けること

事業計画書の作成が完了したら、必ず第三者からのフィードバックを受けてください。自身では完璧な内容だと思っていても、第三者からしたら根拠が欠けていたり、内容が分かりづらかったりする可能性があります。

例えば、公認会計士や金融機関で勤めている知人、同業他社など専門知識を持っている人へフィードバックをお願いしてみるとよいでしょう。事業計画書は、投資家や金融機関など専門知識を保有している方に対して提出する機会が多い書類だからです。

客観的に理解できる事業計画書を作成するために、第三者からのフィードバックを受けることを心がけてください。

⑦6W2Hに気をつけること

事業計画書を作成する際は、6W2Hに気をつけてください。6W2Hは、具体的に以下の8つの要素で成り立っています。

• When：どのタイミングで事業を実施するのか？
• Where：どの市場を狙って事業を展開するべきか？
• Who：誰が事業に携わるのか？
• Whom：事業が狙っているターゲット層はどの層なのか？
• What：どのような商品やサービスを顧客へ提供するのか？
• Why：なぜ事業を実施しようと考えたのか？
• How：どのように商品やサービスを顧客へ提供するのか？
• How much：どれくらいの資金を用意する必要があるのか？

6W2Hに気をつけて事業計画書を作成すれば、簡潔で理解しやすい内容になります。第三者が理解できる事業計画書を作成するためにも、6W2Hに気をつけて計画書に記載してください。

⑧整合性のある内容にすること

事業計画書を作成する際は、整合性のある内容にすることを心がける必要があります。整合性のある内容にしなければ、説得力に欠けた事業計画書になる恐れがあるからです。

例えば、自社の売上を上げるための戦略を作成しているのに広告宣伝費が前期と同じではずれが生じてしまうでしょう。

第三者が説得できる事業計画書を作成するために、整合性のある内容にすることを心がけてください。

事業計画の必要性を理解して適切な計画を立てよう

今回は、事業計画書を用意する目的や記載すべき項目、作成する際のポイントを解説しました。事業計画書は、事業内容を明確化したり、ビジネスの方向性を共同経営者や自社の社員と共有したりするために作成されます。

また、事業計画書を作成する際は、要点を整理してまとめることや6W2Hに気をつけることを心がけるとよいでしょう。本記事を参考にして事業計画書に記載するべき項目やポイントを理解したうえで、事業計画書を作成してください。

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