「仕組み化」という言葉を耳にする機会は増えているのではないでしょうか?
下記のような課題が生じた時に、仕組み化できていないからと言われるケースが多いかと思います。
『特定の人しかできない仕事が多く、辞めてしまうのが大きなリスク』
『人への依存度が高く、経験が浅いとミスなどが生じてしまう』
『経営者自身が現場に出ることが多く、なかなか経営者としての時間が取れない』
『経理の仕事がブラックボックスで、任せっぱなしで改善できるのかも分からない』
『人によって成長スピードにバラつきがあり、個々人の能力次第になっている』
『ノウハウの共有ができていないので、チーム力を発揮できていない』
『仕事を部下や後輩に任せるのが不安で、自分で何でもやってしまう』
このようは状況を打開するために仕組み化に取り組みたいと思っても、
仕組み化とは、具体的にどういったものなのか、どのような手順で進めていけばいいのかが分からないという方のために、
メリット、仕組み化の全体像、具体的なステップ、事例などを解説します。
私自身、これまでプロセス改革事業部という部署を立ち上げて「仕組み創り」に取り組んできました。社内で成果が出たことを、100社以上の同業者の方に仕組み化のノウハウを提供しています。
この経験の知見を踏まえて、お伝えしていきます。
1.仕組み化とは?
1.1 仕組み化の定義
仕組み化とは、組織や個人が行う業務やプロセスにおいて「再現性のある仕事のやり方」を創ることと定義しています。
仕組み化を辞書で調べると、
①物事の組みたて、構造、機構
②事をうまく運ぶために工夫された計画、くわだて
とありますが、成果を出すための構造を作るといった捉え方にもなります。
再現性というのは、「いつ」「どこで」「誰が」やっても同じ状態なることであり、
仕組み化することで、個々人のスキル・経験・意思に依存(人依存)することなく、結果につながっていくようになります。
仕組み化の反対は「属人化」と捉えると分かりやすいですが、属人化は、その人にしかできない・分からない業務が存在している状態です。
仕組み化していくことは、この属人化を防ぐことにもつながります。
仕組み化は、「習慣化」や「型」に近い側面もあり、一度できると、少ない努力量で結果を出せるようになっていきます。
1.2 仕組み化のメリット
再現性のある仕組み化をつくることによって、下記のようなメリットが生まれてきます。
一番のメリットは「再現性」です。
人によるバラつきを減らしたり、同じ人であっても状況(体調、気分、モチベーション、仕事の量など)によって波がありますが、それを一定水準にする力があります。
それ以外には、下記のようなメリットがあります。
①品質
・一定水準の品質や結果を出すことができる
・仕事の進め方が標準化されて、バラツキがなくなる
・ミスやクレームを減らすことができる
②教育
・人材育成のスピードが早くなる
・人によって教え方が違うことを防げる
・未経験者でも業務の習得が早くなる
・教育コストを削減できる
③委譲
・経営者が現場から離れて「経営者」の仕事ができるようになる
・管理職がプレイヤーの仕事を部下に任せられるようになり、マネジメントの比重を増やせる
・ブラックボックスが解消され、特定の人がいないと仕事が回らない状況を改善
④業務の効率化
・手順が見える化され、業務改善が進めやすい
・仕組みの中に、IT化やDX化を導入すると、効率化が加速する
上記以外には、
・ビジネスをスケールしやすくなる(FC展開などのノウハウ提供しやすい)
・仕組みそのものは真似しづらく競争優位性になる
といった効果も期待できます。
1.3 仕組み化の留意点
仕組み化にメリットがある一方で、起こりがちな問題があるので、認識しておくことが大事です。
一番の課題は、「自分の頭で考える力」を奪ってしまいかねないということです。
自主的な思考ができなくなると、下記のような現象が起きます。
・マニュアルに書かれていなかったので、気づかなかったという言い訳
・疑問はあったけど、ルール通りに実施した
・ルール通りに実施することで均質化できるけど、プラスアルファや突出した存在が出づらい
・与えられたことしか学ばない、動かない
このようなことが起こりうると認識したうえで、仕組み作りを進めていけば、この課題も解消できます。
2.仕組み化の3つの階層
仕組み化というと、マニュアルやチェックリストなどを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?
マニュアル化などの取り組みだけでは、仕組み化はうまく機能しません。
会社全体の仕組み化として3つの階層で捉えていくことが大切です。
3つの階層 |
主な内容 |
具体的なイメージ |
1 経営の仕組み化 |
組織の方向性 |
MVV、経営計画 |
2事業の仕組み化 |
主要な事業活動(商品・営業) |
戦略策定、フロー |
3業務の仕組み化 |
具体的な業務や作業 |
マニュアル化、ルール化 |
2.1 経営の仕組み化
まずは、組織の方向性や目的(ミッション、ビジョン、バリュー)を明確にし、ビジョンを実現するための仕組みを構築することが第一です。
・何のためにその事業を実施するのか
・どんな価値を世の中に提供するのか
・どのような価値観を持った人と一緒に働くのか、
・数年後の会社の未来像はどのように描いているのか
こういったことを経営計画書などに示すことで、事業や業務の仕組みとの一貫性が生まれて機能します。
【事例】人材育成
「教育の仕組み化」について相談を受けることがよくあります。「人が育たない」という悩みに対して、「どんなツールを使って」「何を」「どのように」「誰が」教えていくかを整えていくことにフォーカスし過ぎてしまっていることがあります。
それも必要ですが、そもそもの人材要件として「どんな人材になって欲しいのか」「どんな価値観を育てていくのか」を明確にすることが大前提として重要です。
2.2 事業の仕組み化
事業の仕組み化は、企業の主要な事業活動やプロセスを体系化し、効率的かつ効果的な運営を実現するための仕組みを構築することを指します。
具体的には、
・製品やサービスの開発・提供
・販売、マーケティング
・顧客対応
など事業の主な活動に関するプロセスとなります。
事業の仕組み化によって、企業は競争力を高め、持続的な成長の土台を作っていくことができます。
次の階層は、業務の仕組み化ですが、商品力やサービス力に競争力がなければ、いくら良いマニュアルを作っても結果は出づらいです。
「何を(商品)」「誰に(お客様)」「どのように提供(販売、デリバリー)」していくのかを言語化して、社内での共通認識を持つことが大切です。
【事例】マーケティングプロセス
イメージしやすいように、弊社のマーケティングプロセスを図解化したものをご紹介します。セミナーや個別相談を通じてご成約いただくプロセスと、既存のお客様にご満足いただき紹介していただくプロセスの両方があるということが、一目瞭然になっているのがお分かりかと思います。
2.3 業務の仕組み化
業務の仕組み化は、具体的な業務や作業のプロセスを体系化し、遂行するための仕組みを構築します。
具体的には、日常業務やタスクの実行手順や方法、役割分担や責任の明確化など、業務の遂行に関するあらゆるプロセスやルールを明確化していきます。
成果物としては、下記のようなものを作っていきます。
|
【事例】個別方針
個別方針は聞きなれない方もいらっしゃるかと思います。
弊社では経営計画書を運用しており、年間で500社以上の中小企業に経営計画書の作成指導の実績がありますが、その中に個別方針を記載しています。具体的には以下のような内容です。
例えば、クレームに関する方針があり、クレームが生じた場合の「対応方法」「クレームに対する姿勢」が明確化されているので、人によって対応が違うといったことを防ぐことができます。
3.仕組み化の5STEP
次に具体的な手順を紹介します。
仕組み化は5つのステップで取り組んでいきます。
一つ一つのステップの前に、全体感を掴んでいただくために、
事例として「営業方法の仕組み化」のケースを記載します。
ステップ |
事例 |
①目的の明確化 |
現状の課題として、営業マンによって営業成績にかなり差が出てしまう状況。 仕組み化することで、誰でも一定水準の成果を出せるようにする。その結果、1人当たりの売上高を増やし、会社の利益を増やし、給与水準を引き上げることが目的。 |
②現状分析 |
実際にどのように営業を行っているのか「事前準備」「ヒアリング」「プレゼン」「事後のフォロー」などのプロセスごとに行動を棚卸。 WEBでの営業であれば、録画して検証。 |
③標準・基準の決定 |
分析を踏まえて、成果につながる行動を決めて、会社の標準とする。 例えば、ヒアリングで聞くことをパターン化する。 |
④明文化 |
営業マニュアルやトークスクリプトなどに言語化 |
⑤メンテナンス・トレーニング |
マニュアル通りに実践できるように、ロープレを繰り返す。 時代の変化とともに、成果の出るやり方は変わるので定期的に見直し。 |
何となくイメージを把握していただいた上で、各ステップを見ていきたいと思います。
3.1 ステップ 1 目的の明確化
仕組み化の第一歩は、目的の明確化です。
今まで、人に依存していた仕事を仕組み化していくフェーズにおいては、今までの仕事のやり方や習慣を変えることになるので、一定の抵抗感を感じる方もいらっしゃいます。
また、成果の出ている人であれば、自分のノウハウを共有することに躊躇することもあります。
この抵抗感を解消するには、仕組み化していくことのメリットを、会社・社員・お客様などの視点で伝えていくことが大切です。
私がこれまで仕組み化に取り組んできて、社員さんにとって響きやすい目的は、以下のようなものがありますので、ご参考下さい。
|
3.2 ステップ 2 現状分析
目的を明確にしたら、業務の棚卸しをして、現状を見える化していきます。
現状の業務プロセスや体制、組織の構造などを見える化すると、いつ、どのタイミングで、誰が、何を実施しているのかが明確になります。どの業務が属人化しているかも浮き彫りになります。
そのうえで、仕組み化すべき業務やプロセスを優先順位付けします。重要度や緊急度に応じて、仕組み化の対象となる業務を選定し、優先度を設定します。
見える化する手段の一つとして「プロセスマップ」があります。業務プロセスを大区分・中区分(業務名)・小区分(具体的な作業)に分けて分類していくとプロセスを見える化することができます。
【具体的なイメージ】
大区分 |
月次決算業務 プロセス |
|||||
中区分 |
連絡 |
回収 |
入力 |
チェック |
資料作成 |
打合せ |
小区分 |
連絡 |
資料回収 |
自動連携 |
残高確認 |
取込み |
事前準備 |
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過不足確認 |
外部委託 |
税務判断 |
確認 |
説明 |
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不足資料依頼 |
手入力 |
異常値確認 |
印刷製本 |
質問 |
|
|
|
|
証憑確認 |
|
相談対応 |
上記に加えて、担当者を追記すると、属人化している仕事・仕組み化できている仕事が浮き彫りになります。
3.3 ステップ 3 標準・基準の決定
会社としての理想的な業務プロセスなどを標準として設定します。
成果の出やすい行動(ベストプラクティス)をベースに標準に組み込んでいくと、会社全体として良い結果を残しやすくなります。
結果を出している方(営業成績が高い、仕事が正確で速い、ミスがない、お客様から喜ばれているなど)は、当たり前のようにできていて、どんな行動をしているのか言語化できないケースも多いので、第三者がヒアリングしてプロセスを書き出すと、ポイントが見えてきます。
私が進めていく際は、ざっくりでもいいので「手順書やプロセスマップ」などを作成した上で、複数名にヒアリングします。何もない状態で聞くと、うまく情報を引き出せないことが多いからです。
また、自社だけではなく、同業者の事例、他業界の事例などをベンチマーキングして、理想の状態は何かを考えるようにしています。
上記の過程を経て、標準や基準を定めることで、現状とのギャップが明確になり、改善していく部分がはっきりします。
3.4 ステップ4 明文化(マニュアル化・商品化・ルール化・チェックリスト化)
仕組み化していくことを決めたら、
業務やプロセスを具体的に仕組み化していきます。
具体的には、マニュアルや手順書の作成、ルールの策定などが該当します。
明文化することで、基準が明確になり再現性が生まれます。
ここでのポイントは、マニュアルやチェックリストだけでなく、ルールを定めたり、誰が実施しても結果の出るような商品・サービスを作ったりと幅が広いです。いずれにせよ、明文化することで、共通言語・共通認識も生まれてきます。
成果の出やすい行動(ベストプラクティス)をノウハウ化して、特定の人だけでなく、全社に横展開していくのがこのフェーズになります。
このフェーズで、私がよく受ける質問は「どんなツールを使うといいですか?」です。
弊社では、「Googleスプレッドシート」「Teachme Biz(マニュアル全般)」「iTutor(動画マニュアル)」「Miro(フローチャート)」などを活用していますが、実はツールにはそこまでこだわっていません。
大事にしているのはツールの統一ではなく「情報の一元化」で、現在は、Googleスプレッドシートにマニュアルやツールの目次を記載して、そこから各ツールで作ったマニュアルにリンクするようになっています。一元化という意味では、会社の価値観や考え方などは経営計画書に全て詰まっています。
3.5 ステップ 5 メンテナンス・トレーニング
仕組み化が完了した後も、定期的なメンテナンスやトレーニングが欠かせません。
マニュアルなどのツールを作ったからといって、全員が正しく運用できるとは限りません。
説明会や読み合わせなどを繰り返すことで、浸透していきます。
プロセスやルールの見直しや改善、新しい技術や手法の導入など、変化に対応するための柔軟性を持たせることが重要です。最近では、生成系AIの発展スピードが早く、最適な方法も次々と変わっていく可能性があります。
また、関係者へのトレーニングや教育を通じて、仕組み化の理解と適切な実践が促進されます。
私がこれまで見てきた中で、成功している事例として、「朝礼の場で、読み合わせや変更点の確認をする」という取り組みです。メール等で配信しても、見逃してしまうことが多いので、大事なポイントは全員が参加する場で周知徹底するのがコツです。
4.仕組み化を進める際の3つのコツ
仕組み化の手順を5つのステップで紹介しましたが、進めていく上で特に大事な3つのポイントをお伝えします。
4.1 自分でやった方が早いという考え方をなくす
仕組み化を進める上で重要なのは「自分でやった方が早い」という考え方を捨てることです。
多くの場合、業務が属人化していると、「業務をほかの人に任せたいけれど、業務のやり方を説明するのが大変だし、マニュアルを作る時間もない。だったら自分でやったほうが早い」という状況に陥ることが珍しくありません。仕組化して任せた方がいいのは分かっていても、目の前の業務に追われてしまうのです。
しかし、自分で完璧に行うことよりも、他の人にも同じように行えるように仕組み化することの方が、長期的には効率的であり、成果を上げやすくなります。
自分でマニュアルを作るのではなく、教えた相手に作ってもらうのがコツです。
4.2 定期的にメンテナンス
仕組み化が完了した後も、定期的なメンテナンスが欠かせません。
一度作ったけど更新されずに、形骸化されているケースはよくあるのではないでしょうか。
例えば、マニュアルを作成して任せるにしても、一度で完璧なものはできません。
一度作成した仕組みが永遠に機能するわけではなく、環境の変化や新たな課題に対応するためには、定期的な見直しや改善が必要です。
定期的なメンテナンスを行うことで、仕組みが時代に合わせて最適化され、現場で活かされていきます。
この時に大事なのは、メンテナンスする責任者を任命することです。ここが決まっていないと、更新されずに使われないマニュアルなどが量産されていってしまいますのでご注意下さい。
4.3 ルールを守る社風、実行する文化がないと機能しない
マニュアルやチェックリストなどを作成しても、それを守って運用する文化がないとなし崩し的になります。
どれだけ優れた仕組みが導入されても、それを実行する人々がルールを守らない場合は機能しません。
そのため、組織全体でルールや仕組みを尊重し、実行する文化を醸成することが重要です。
ありがちなのは、トップや上司は評価される立場ではないので、ルールを守らないことです。
まずは、上司やリーダーが率先してルールを守り、部下やメンバーにも徹底することで、組織全体が一体となって仕組み化を推進することが可能となります。
5.創業から42期連続黒字の成果の出してきた仕組み化の事例
これまで仕組み化のポイントや具体的なステップを紹介してきましたが、この章では、弊社の事例を紹介させていただきます。
仕組み化の幅広さに気づいていただき、ぜひ導入するヒントになれば幸いです。
5.1 社員のベクトルが同じ方向を向き、全社一丸体制となる「経営計画書」の仕組み
仕組み化の一丁目一番地は「経営計画書」です。
経営計画書には、
・使命感、経営理念、行動指針
・戦略(商品、サービスの差別化)
・個別方針
お客様に関する方針
クレームに関する方針
電話・接客に関する方針
報連相に関する方針
教育・訓練に関する方針
など、会社としての意思決定の基準やルールが明文化されています。
経営の仕組み化、事業の仕組み化を構築する上では欠かせない存在です。
参考記事:毎年1,000社超の企業に指導してきた経営計画書の書き方
5.2 社員の経営者意識、当事者意識を育てる「数字公開」の仕組み
社員に当事者意識を持ってもらうための仕組みの一つとして「数字の公開」をしています。
具体的には、損益計算書・貸借対照表・事業別の損益・総勘定元帳などをパートさんも含めて全社員にオープンにしています。
数字教育をしながら、数字を公開することで、「粗利益意識」「コスト意識」「時間当たり生産性への意識」「目標意識」が生まれて、それが当事者意識に変わり主体的に動いてくれるようになります。
参考記事:私たちが社員に経営者マインドを持ってもらうために行っている6つのこと
5.3 社員の心が整う「環境整備」の仕組み
仕組み化を進めていくうえで、ルールを守る社風や実行する文化が大事だとお伝えしましたが、その社風を醸成するうえで、「環境整備」が役に立っています。
具体的には、下記のようなことをルール化しています。
「退社時、後片付けをして、机の上、下、椅子の上には何も置かない」
「席を立つときは必ず椅子をつける」
「ごみ箱は定位置で揃える」
「Googlecalendarは、出社・外出・テレワークなどがルール通りに登録されている」
上記が、正しく実施できているかを月1回の「環境整備点検」でチェックしています。
5.4 PDCAが回り目標達成に近づく「月次決算会議」の仕組み
中小企業経営において、経営層が売上以外の数字を見てない、そもそも目標を立てていないというケースがあります。
我々は、利益計画の作成+月次決算書による数字のチェックをセットに、PDCAが回る環境を提供しています。毎月、必ず数字と向き合い、計画との差をチェックするので、目標達成に向けての行動が加速していきます。
参考記事:月次決算とは?月次決算を導入すべき理由と実践の流れ
5.5 経営理念や価値観が浸透して良い社風を創る「朝礼」の仕組み
経営理念、会社の考え方、部署ごとの方向性などを伝えていく仕組みとして、「朝礼」の場を活用することはお勧めです。
弊社では、朝礼が情報共有で終わらせてしまうのではなく、価値観や方向性を浸透していくのと、当たり前のこと(挨拶、笑顔、うなづき、返事など)を訓練する場として位置づけています。
5.6 ミスやクレームを会社の財産に変える仕組み
ミスをどう活かすかは会社によって差があります。
弊社では『業務ミス報告書』を記載して、全社員に共有する仕組みがあります。
誰かが起こしたミスは、他の人にも生じる可能性があります。ミスに対する防止策として、
①チェックリストなどの改定 ②業務ミス報告書の共有を実施することで、再発防止に取り組んでいます。
5.7 感謝する社風を創るための「サンクスカード」の仕組み
社風の良い会社を作りたいと考えていらっしゃる方は多いかと思います。
感謝する習慣があると、社風に良い影響をもたらします。
『感謝しましょう』と伝えても、なかなかうまくいきませんが、サンクスカードという仕組みを導入することで、ありがとうをカタチにするようになります。
方法は、メッセージカード、アプリの活用、チャットツールなど様々ありますが、弊社では、コロナ以降はkintoneでサンクスカードを登録すると相手に通知が届きます。
渡した枚数、もらった枚数ランキングを毎月発表する仕組みによって、感謝の数を増やしています。
6.仕組み化のお薦め書籍 5選
最後に、これまで仕組み化に取り組む中で、参考にしてきた書籍を5冊厳選して、紹介させていただきます。
6.1 『はじめの一歩を踏み出そうー成功する人たちの起業術』
著者のマイケルE. ガーバー氏は、アメリカの著名な経営コンサルタントであり、中小・成長企業経営者のアドバイザーとして知られています。
「職人、マネージャー、起業家」という3つの人格に分類して、ビジネスを成功するには、
職人としてのスキルだけではなく、経営者としての視点が不可欠であると説いています。
起業した人が職人からマネージャー、そして経営者に変わり、経営者がいなくても現場がまわる仕組みへのプロセスを知ることができます。
また、商品・サービスの質が高いことも大切だけど、それ以上に、いつも同じ商品・サービスを一定の品質で提供し続けることの方がずっと重要であると、マクドナルドなどの例も交えて伝えています。
中小企業の経営の仕組み化を理解したい方にはおススメです。
6.2『無印良品は、仕組みが9割』
38億円の赤字から、どのように驚異のV字回復を遂げたかが描かれた一冊です。
このV字回復のカギはMUJIGRAMという2,000ページのマニュアルでした。
現場の知を吸い上げ、どのようにマニュアル化して、横展開していけば良いのか具体的に紹介されています。
会長(出版当時)の松井氏は、マニュアルを活かして、現場で『使える』状態にアップデートし続けるためには、実行力とそれを支える風土が必須だと強調されています。その風土作りのために、まずは挨拶などの基本を徹底されたようです。
6.3 『ヤバい仕組み化』
年商49億円、14期連続増収増益を実現している会社が、経営における成果の出る仕組みを理論から具体的な実践方法まで惜しみなく紹介されています。
経営の必須項目として「①報告 ②決定 ③実施 ④チェック」の4項目をPDCAサイクルのように高速回転させていくことで、戦略確率を実行確率を引き上げて成果を上げています。独自の日報の仕組みを作り上げて報告の仕組みを構築したりと、各フェーズにおいて仕組み化に取り組んでおられます。
マニュアルの作り方も以下のようにルールが明文化されています。
①目的を作る。「何のためのマニュアルか」の明確化
②やってはいけないことを伝える
③手順を伝える
④注意点・ポイントを伝える
⑤具体例を入れる
⑥画像や動画を活用する
改善提案が毎月3000個集まる仕組み、社長がいなくても自走する組織の仕組み、離職率1%の人が辞めない仕組みなど様々な具体例が紹介されており、本を読むだけで仕組み化のベンチマーキングができます。
6.4 『とにかく仕組み化』
8年で3500社以上が導入したマネジメント手法の識学の仕組み化が紹介されています。
組織の上に立つ上で、精神論や根性論ではなく、何事も「仕組み」で解決する姿勢が説かれており、何か問題が起きた時に、「人」を責めるのではなく、仕組みに問題があるのでは?という問いをまわすことを推奨しています。
仕組み化は『ルールを決めて、ちゃんと運営する』と定義されており、仕組み化がうまくいくためのステップが示されています。
1.「責任と権限」を手に入れる
2.「危機感」を利用する
3.「比較と平等」に気をつける
4.「企業理念」を再認識する
5.「進行感」を感じる
具体的な仕組みの内容というよりも、人依存から仕組み依存に変革していくにあたって、どのような壁や人の心理状態があるのかを知ることができます。
6.5 『自分とチームの生産性を最大化する「仕組み」仕事術』
現場で使える業務の仕組み化の事例が豊富に紹介されています。
業務を「作業系」と「考える系」に分けて、ルーチンワークの作業系を仕組み化することによって、より考える系に時間を費やせるようになると推奨しています。
仕組み化する判断軸として、「月に1度以上行う業務」「今後5回以上同じことをやる業務」のいずれかに該当する場合と提示しており、判断に迷わずに済みます。
・メール処理を素早くこなす10のルール(例 1回しか読まない、返信時の判断に5秒以上かけないなど)
・ミスを無くすための「ミス撲滅委員会」
など実務的な仕組みが紹介されており、すぐにでも真似できます。
おわりに
仕組み化を進めていくことで、会社の安定的な成長や個々人の成長に間違いなくつながっていきます。
ある特定の優秀な方だけが成果を出すのではなく、会社全体として力を発揮していくには、「人依存」から「仕組み依存」へ変革していくことが大切です。
本記事でご紹介した内容が、仕組み化への第一歩につながれば嬉しいです。
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