絶対評価と相対評価、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
しかし、どちらかと言えば評価される側での認識が大いかもしれません。
絶対評価は例えば、資格試験で「70点以上であれば合格」というようなケースで評価基準が明確になっている評価です。
それに対して相対評価は「学校の成績表」で上位20%がA評価、下位10%がC評価、間がB評価といった形で相対的な順位で評価が決まります。
評価する側からすると、または評価制度を整える立場からするとこの2つについてどちらを採用した方がよいのか判断に迷うこともあると思います。
判断する際にはそれぞれの目的やメリットとデメリットを理解した上で設計することが望ましいと思います。
そこで今回は絶対評価と相対評価についての違いやメリットとデメリット、選択のポイントについて解説していきます。
1.絶対評価と相対評価とは?
絶対評価はあらかじめ設定された基準や目標に基づいて評価する手法であり、相対評価は評価対象者の成績を他の人と比較して評価する手法です。
下図のようなイメージです。
1.1絶対評価
絶対評価は、あらかじめ設定された基準や目標に基づいて評価します。評価対象者がその基準をどの程度満たしているかによって評価が決まります。
特徴として、 個人の成果や能力が絶対的な基準に対してどの程度達成されたかに注目し、他の人との比較は行いません。
例えば、試験で90点以上を取れば「A」、80点以上なら「B」といったように、予め定められた点数や基準に基づいて評価する方法です。
1.2相対評価
相対評価は、評価対象者の成績を他の人と比較して評価します。全体の中での相対的な位置や順位に基づいて評価が決まります。
特徴として、他の人と比べてどの程度優れているか、あるいは劣っているかに注目し、同じ成績でも他の人の成績によって評価が変わることがあります。
例えば、クラスの中で上位10%が「A」、次の20%が「B」といったように、成績を分布に基づいて評価する方法です。
2.それぞれのメリットとデメリット
続いて、それぞれのメリットとデメリットを整理していきます。
2.1 絶対評価のメリットとデメリット
メリット
① 個人の進捗や達成度を正確に把握できる。
目標設定に対しての進捗や達成度で結果が数値化でき、それに対しての評価となるため前期と比べて成長しているか否かを正確に把握することができます。
※評価基準が変わらない前提
② 社員の納得感を得やすい
基準が明確であるため、フィードバックしやすく納得感も得やすい利点があります。
③ 他人との競争を避け、自己成長に焦点を当てることができる。
自分自身の課題や目標を定量化しやすくなり、自分自身に目線が行くため社員の育成につながりやすくなります。
デメリット
① 評価の差をつけにくい
極端に言うと、全員がA、全員がC等ということも起こりえます。そうなると評価自体では差がつかないということになります。
② 評価基準の設定が難しい
基準が適切でない場合、評価が不公平になる可能性があります。例えば、部署によって評価基準は異なりますが、ある部署では高い基準で設定しているためにC評価が多い、ある部署では低い基準で設定している場合には不公平が生じやすくなります。
また、全体的に高い基準を設定しすぎると達成が難しくなる等基準の設定の難易度は高くなります。
③ 人件費が上がる可能性がある
① の通り全員がAということも理論上あり得ます。そうなった場合は人件費が会社全体であがってしまうということが起こります。
もちろん、評価が高いということは結果が出ているという裏返しでもあるため、業績と人件費のバランスがとれていれば大きな問題にはなりませんが、この辺のバランスも難しい部分です。
2.2 相対評価のメリットとデメリット
メリット
① グループ全体の中での位置づけが明確になる。
グループや等級ごと、少人数の会社であれば会社全体での順位・位置づけが明確になります。そのため競争意識が芽生えやすくなります。
② 成績の分布が自然に調整されるため、極端な評価が少なくなる。
絶対評価のように全員Aや全員Cといった極端な評価は生まれないので、全体のバランスを保ちやすくなります。
③ 人件費をコントロールしやすい
絶対評価のような極端な評価分布が無くなるため会社全体としての人件費のコントロールは行いやすくなります。
デメリット
① 競争が激化し、協力が難しくなることがある。
競争意識が行き過ぎると個人主義に走り、協力・協調性が失われる恐れがあります。
② グループの全体的なレベルによって、個人の評価が影響を受ける。
相対評価のため所属する集団によって評価が変わる。
③ 上司と下位が固定化される可能性がある。
同じグループで評価する場合、評価がよい人は常に良い、悪い人は悪い、といった傾向に陥りやすくなります。
④ 個人の成長に焦点が行きづらい。
グループ内の順位で満足してしまう、または諦めてしまうという場合は、自身の成長に焦点が行きづらくなります。
⑤ フィードバックがしづらい。
絶対評価と比べて基準が明確でないため、何がよくて何が悪かった、改善すべき等といったフィードバックがしづらい側面があります。
3.中小企業はどちらを採用すべきか?
評価の目的や対象、環境に応じて最適な方法を選択し、必要に応じて柔軟に調整することが重要ですが、主に中小企業はどのような運用が望ましいのかを解説していきます。
簡単に言うと、「個人の成長に焦点を当ててよりシンプルにしたい」場合は絶対評価、「人件費もコントロールしつつ、競争を促進したい」場合は相対評価。手間はかかるがよいところを取りたい場合はハイブリッド型となります。
以下、詳細に見ていきます。
3.1 選択のポイント
まず、簡単なチェック項目を確認していただき、どちらのチェックが多いかで選択をしてみてください。もし、2対2というように同じくらいの場合は両方を用いたハイブリッド型の運用も検討となります。つまり、基準を設定しつつ、相対的な位置づけも考慮することで、両方の利点を取り入れることができます。
絶対評価 |
チェック |
学習や能力の達成度合いを図りたい |
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異なるバックグラウンドやレベルの社員が多い |
|
個々の目標達成度を評価したい |
|
評価をシンプルにしたい(時間を割きたくない) |
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相対評価 |
チェック |
全体の中での位置づけを知りたい |
|
組織の競争を促進したい |
|
同質のグループでの評価が主 |
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人件費のコントロールや賞与の配分や昇降格に活かしたい |
|
ポイントと留意点
1)評価の目的を明確にする
学習や能力の達成度を測りたい場合は絶対評価が適しています。個人がどれだけ基準や目標を達成したかを評価することで、学習の進捗や能力の向上度を正確に把握できます。
一方で、全体の中での位置や競争力を測りたい場合は相対評価が適しています。グループ内での位置づけや他者との比較を通じて、競争力や相対的な立ち位置を評価することができます。
2)評価対象の特性を考慮する
異なるバックグラウンドやレベルの人がいる場合: 絶対評価が有効です。個々の進捗や達成度に基づいて評価することで、公平な評価が可能です。
例えば、社員は皆大卒の日本人で理念が共有できている等といった同質のグループでの評価が必要な場合:は相対評価が有効です。全体の中での相対的な位置が重要になるため、相対評価が適しています。
3)目的や環境に応じた柔軟な運用
個々の目標達成度を評価する際には絶対評価が、昇進やボーナスの配分を決める際には相対評価が適しています。
4)メリットとデメリットを加味する
冒頭のチェックが該当しますが、2章で解説したメリット・デメリットを加味しながら選択する、となります。
選択に際してポイントとなる部分は再度となりますが以下の通りです。
絶対評価
メリット: 個人の成長や達成度を正確に把握でき、他者との競争を避けることができる。
デメリット: 基準の設定が難しく、不適切な基準が不公平な評価を生む可能性がある。
相対評価
メリット: グループ内の位置づけが明確になり、成績の分布が調整されやすい。
デメリット: 競争が激化し、協力が難しくなる可能性があり、グループの全体レベルに影響を受ける。
3.2古田土会計の場合
古田土会計では絶対評価と相対評価のハイブリッド型を採用しています。
メリットはそれぞれの利点、主に、個々の成長や能力の明確化(絶対評価)、競争促進(相対評価)、賞与・昇降格(相対評価)といったところを活かしやすいためです。
一方で、手間暇がかかるというデメリットもあります。
古田土会計の例(サンプル)
① まず、業績評価(売上・新規獲得)、コンピテンシー(行動)評価、方針共有点(勉強会の出席回数など)は絶対評価となります。業績であれば、目標に対してどのくらいの達成率だったか、等で評価・点数化します。
② その後、等級毎に点数順に並び変えてS~Dで相対評価をします。
③ そして、評価に無理が無いか、矛盾が無いか等を加味・調整して確定します。
これにより、目標に対してどのくらいの過不足があったか、といった振り返りがしやすくなります。また、例えば評価がBだった時にSやAの社員とどこに差があったのかもフィードバックできるため、課題や次への行動設定がしやすくなります。
4.まとめ
以上、今回は絶対評価と相対評価について解説してきました。
それぞれのメリットとデメリットを把握した上でどちらを選択した方がよいのかを考えてみてください。
また、1回選択したから変更してはいけない、ということもありません。もちろん、毎年変わるということは会社、社員お互いにとって負担なのでお勧めしませんがタイミングを見計らってよりよい選択・運用をしていただければと思います。
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