事業計画書を作成する際は、数値目標を記載しなければいけません。しかし、事業計画書の消費税の経理処理の具体的な計算方法を再確認したいと考えている方もいるでしょう。
そこで今回は、事業計画書の消費税の経理処理の確認方法や納税義務が始まる基準、消費税の計算方法について解説します。
本記事を読めば、消費税の経理処理の確認方法や納税義務が始まる基準などが把握できるため、事業計画書の数値目標の記載方法について把握できるでしょう。
事業計画書は税込と税抜どちらで計算する?
事業計画書で数値目標を記載する際は、決算書に合わせて税込と税抜きの計算をしてください。つまり、決算書を税込で計算していたのであれば事業計画書も税込にします。一方で決算書を税抜で計算していた場合は、事業計画書も税抜で計算しましょう。
決算書が税込表記だった場合 |
決算書が税抜表記だった場合 |
事業計画書も税込表記 |
事業計画書も税抜表記 |
また、事業計画書の作成が完了したら、事業計画書の数値部分を税理士へ確認してもらうとよいかもしれません。事業計画書の数値部分に税込と税抜が混合している可能性があるからです。事業計画書を作成する際は決算書に合わせて税込と税抜のどちらで計算するのかを決定しましょう。
消費税の経理処理の確認方法
消費税の経理処理の確認方法として、以下の2つの項目を解説します。
- 法人の場合
- 個人事業主の場合
消費税の経理処理の確認方法では、法人と個人事業主で大きく異なります。ここで解説した確認方法を参考にしたうえで、消費税の経理処理をしてください。
法人の場合
法人の場合は、課税事業者であれば税抜で計算している傾向があります。課税事業者とは、2年前の売上が1,000万円を超えている法人の事業者です。課税事業者は法人の中で収入が多い傾向にあるため、国から税金を支払う義務があるとされているからです。
一方で免税事業者は、国から税金を支払うことが求められていない法人のため、事業計画書には税込方式で記載することが求められています。課税事業者は消費税を国に納付する必要がありますが、免税事業者は消費税を利益にできるからです。しかし、場合によっては免税事業者でも、税抜方式で事業計画書を記載しているのかもしれません。
自社がどのように経理処理をしているのかと不安に感じている方は、決算書の中の「注記表」を確認して税込と税抜のどちらで計算しているのかを確認しましょう。
個人事業主の場合
個人事業主の場合は、課税事業者であれば税金を国に納付する必要があって消費税を利益にできないため、税抜方式の傾向があります。一方で免税事業者であれば、消費税も会社の利益にできるので、税込方式が採用されている場合が多いです。
ただ、個人事業主の免税事業者の中には本当に税込方式を導入して良いのかと不安に感じている方も多いでしょう。個人事業主の場合は、青色申告決算書の負債部分に「未払消費税等」や「未収還付税金」が計上されていれば、税抜方式で計算されているはずです。
「未払消費税等」や「未収還付税金」などは、消費税を支払っていないことを表す勘定科目であるからです。とはいえ「未払消費税等」や「未収還付税金」を計上していなくても税込方式とは限らないため、不安に感じている方は税理士へ確認するとよいでしょう。
消費税の経理処理はどのような差があるのか
消費税の経理処理の具体的な差について、以下の2つの項目で解説します。
- 税込処理
- 税抜処理
適切な経理処理を実施するために、消費税の経理処理に具体的にどのような差があるのかを把握しておく必要があります。ここで解説した内容を参考にしたうえで、消費税の経理処理を実施しましょう。
税込処理
消費税の計算に税込処理を活用すると、会社の設立当初から消費税の計算方法を統一できます。2年前の売上が1,000万円を超えたら課税事業者となるため、会社を設立してから2年目までは免税事業者となって税込処理方式しか採用できません。
会社の設立当初から消費税の計算方法を統一することで前期の売上と比較しやすくなり、経営改善がしやすくなります。一方で税込処理を実施すると、30万円未満の少額減価償却資産を取得した際に経費にできる金額が少なくなる恐れがあります。
例えば、税抜きで29万9,000円の少額減価償却資産を所有していた場合に税込処理をしてしまうと、30万円を超えてしまうので経費として処理することが不可能です。
資本金1億円以下の法人の場合は800万円未満の交際費は経費として認められますが、税込処理をして800万円を超えてしまえば経費として処理できなくなります。税込処理を計算すると、得られるメリットより失うデメリットがはるかに多いです。
税抜処理
消費税の計算方法に税抜処理を導入すれば「仮受消費税」「仮払消費税」の科目に消費税の金額が集約されるため、損益の正確な消費税額が把握しやすいです。税込処理の場合は、通常の科目の数字に消費税が加算されているため、正確な消費税額が把握しにくくなります。
また、法人の企業が税抜処理を導入すれば、取得した金額に応じて減価償却の特例が受けられるため、少ない経費額で抑えやすくなります。具体的には、法人税に以下のような特例が設けられているのです。
- 少額減価償却資産:10万円未満で購入した資産
- 一括償却資産:20万円未満で購入した資産
- 資本金1億円以下の中小企業と個人事業主の少額減価償却資産:30万円未満で購入した資産
取得金額が少しでも安くなる税抜処理の方が減価償却の条件を満たしやすくなるため、経費処理がしやすくなるでしょう。一方で税抜処理を導入したら、仕分けの際に本体価格と消費税を分類しなければいけないので、大きな手間がかかります。
経理処理はどちらが有利になるのか
経理処理は税抜処理の方が有利です。税抜処理を選択したら取得金額が少なくなるため、減価償却や経費の条件を満たしやすくなるからです。
例えば、一括償却資産で19万9,000円の商品を購入したとしても、税込処理にしてしまったら20万円以上の金額になってしまい、減価償却が実現できなくなります。しかし、税抜処理を導入すれば19万9,000円のままで取得できるため、節税効果が実現できるでしょう。
また、税抜処理は「仮受消費税」と「仮払消費税」の2つの勘定科目で消費税額が集約されているため、正確な利益を把握しやすい特徴があります。経理処理を実施する際は、税抜処理を選択するべきです。
とはいえ、税抜処理を選択してしまった場合は、会計ソフトへ入力する度に消費税を別立てで処理しなければいけなくなるため、かなりの手間がかかります。期間中は税込で処理をして期末に会計ソフトの設定を変更して税抜処理を選択するとよいでしょう。
消費税の納税義務はいつから始まる?
消費税の納税義務は、以下の3つの基準で決定します。
- 基準期間の課税売上高で判定する
- 特定期間の課税売上高で判定する
- その他の判定要素で判定する
ここで解説した基準を参考にし、消費税の納税義務が具体的にいつから始まるのかを理解しましょう。
基準期間の課税売上高で判定する
消費税の納税義務は、基準期間の課税売上高で判定するとよいでしょう。具体的には、2年前の課税売上高が1,000万円を超えた場合は、消費税の納税義務が生じます。課税売上高とは、消費税がかかっている売上高のことです。
逆に2年前の課税売上高が1,000万円以下だった場合や2年前は会社を作っていない場合は消費税を納める必要はありません。
ただ、新会社を設立して最初の6ヶ月で売上及び給与等の支払い額が1,000万円を超えてしまうと、次の期が始まってから消費税を支払う必要があります。
そのため、新会社を設立する際は最初の6ヶ月で売上や給与などの支払いが1,000万円を超えないように調整しましょう。
初年度で資本金を1,000万円にしてしまうと2期目から課税される恐れがあるため、課税事業者になるまで2年の猶予がある2期目以降に増資をするとよいです。
特定期間の課税売上高で判定する
消費税の納税義務を特定期間の課税売上高で判定する場合もあります。具体的にいえば、1年前の1~6月の課税売上が1,000万円を超えると、当年から消費税を納めることが求められるでしょう。
逆に1年前の1~6月の課税売上が1,000万円以下の場合は消費税を支払う義務はないため、1年前の売上を確認して自社が課税事業者かを判断する必要があります。また、消費税の課税事業者になるなら、税務署へ届出を提出しなければいけません。
1~6月の課税売上が1,000万円を超えていた場合は、翌年から課税事業者へなることを税務署へ報告する「消費税課税事業者届出書」を提出する必要があります。1年前の1~6月の課税売上を確認することで、自社が課税事業者か免税事業者か判断してください。
その他の判定要素で判定する
その他の判定要素は、主に大きな設備投資を実施した場合に必要となります。具体的には、以下の3つの条件のいずれかを満たしたら支払った消費税をいくらか還付してもらえます。
- 経費が多額に発生してしばらく赤字が続くと予想される場合
- 輸出業を営んでいてかつ売上の大半が免税取引の場合
- 多額の設備投資を予定している場合
ただ、設備投資をして消費税の還付を受ける際は、課税事業者で原則課税方式を選択していなければいけません。免税事業者の場合は、支払った消費税分が大きくても還付が受けられないと定められているからです。
設備投資を検討している課税事業者の方は、少しでも支払う消費税額を減らすために上記の3つの条件を満たしていないかを確認しましょう。
消費税の2つの計算方法とは
消費税の計算方法として、以下の2つが挙げられます。
- 本則課税
- 簡易課税
ここで解説した計算方法を理解し、適切な方法で消費税を計算しましょう。
本則課税
本則課税では、実際にかかった売上や経費から納税額を計算する方法です。本則課税では基本的に顧客から受け取った消費税を仕入先へ支払い、残りの金額を国へ納める必要があります。
例えば、売上高3,300万円(消費税額300万円)、経費1,200万円(消費税額200万円)の企業があった場合は、以下のように消費税額を計算することが可能です。
300万円(売上に対する消費税額)-200万円(経費にかかる消費税額)=100万円
上記の計算式を活用し、自身が本則課税で消費税を計算するべきなのかを決定しましょう。
簡易課税
簡易課税とは、売上高の規模が小さい企業にのみ認められている売上だけを使用して納める消費税を計算する方法です。簡易課税を実施する際は、業種ごとに定められたみなし仕入率を用いたうえで、経費の税額計算をしましょう。具体的には、以下のようにみなし仕入れ率が定められています。
事業区分 |
みなし仕入率 |
該当事業 |
第1種事業 |
90% |
卸売業 |
第2種事業 |
80% |
小売業 |
第3種事業 |
70% |
農林・林業・漁業・鋼業・建設業・製造業など |
第4種事業 |
60% |
そのほかの飲食業を中心とした事業 |
第5種事業 |
50% |
運輸通信業・金融・保険業・飲食店以外のサービス業など |
第6種事業 |
40% |
不動産業 |
例えば、売上高4,800万円(消費税額800万円)経費1,600万円(消費税額600万円)、みなし仕入れ率90%(卸売業)の場合は、以下のように消費税が求められます。
(売上に対する消費税額)800万円-(経費に対する消費税額)(600万円×90%)=260万円
また、簡易課税を利用する際は、以下の2つの条件を満たさなければいけません。
- 2年前の課税売上高が5,000万円以下
- 「消費税簡易課税制度選択届出」を税務署へ提出する
上記の2つの条件を満たしていて簡易課税を利用したい方は、積極的に利用しましょう。
創業時においても消費税を意識しておこう
事業計画書は、決算書と同様の税表記をする必要があります。決算書が税込表記であれば事業計画書も税込表記でなければいけません。一方で決算書が税抜表記の場合は事業計画書も税抜表記で記載してください。
また、消費税の納税基準は2年前の課税売上が1,000万円を超えている場合と1年前の1~6月までの課税売上が1,000万円を超えている場合と主に2つの基準を設けています。自社が課税事業者か免税事業者かどちらに当てはまるのかを確認してください。
本記事を参考にして事業計画書の消費税の経理処理について理解を深め、適切な経理処理が実施できるようにしましょう。
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