事業計画を立てる際は経費の分析も重要?収支計画における固定費と変動費とは

    記事公開日: 2023.11.15

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    京セラの創業者である稲森和夫氏は「売上を極大に、経費を極小に」という考えを持っていました。事業計画を立てる際にはいかに売上を増やすかも大事ですが、いかに経費を少なくするかも重要といえます。

     

    今回ご紹介するのは事業計画に欠かせない経費についてです。経費の種類や収支計画を立てる際のポイントなどをご紹介します。本記事を読むことで、経費に対する考え方がわかるため、事業計画を立てる際の参考にすることができるでしょう。

    経費の種類はいくつある?

    事業活動を行う際に欠かすことのできない経費ですが、その種類は3つです。

    • 固定費
    • 変動費
    • 戦略的経費

    それぞれの経費には特徴があり、売上や利益に直結する経費も多く含まれています。ここからは3種類の経費について詳しくご紹介します。

    固定費

    1つ目は固定費です。

    固定費は売上に関係なく発生する経費全般を指します。代表的な固定費は以下の通りです。

    • 人件費
    • 地代家賃
    • 広告宣伝費
    • 減価償却費など

    上記の固定費はあくまでも代表的な固定費であり、業界によってはその業界ならではの固定費もあります。例えば、卸売業や小売業の場合、車両燃料費や車両修理費が固定費として計上されます。

     

    製造業では製造原価にかかわる固定費と販売費や管理費にかかわる固定費で分けられるなど、業界によって固定費の種類は異なります。

    変動費

    2つ目は変動費です。

    変動費は売上に比例して変動する経費全般を指します。固定費では売上があろうがなかろうが同じだけの費用を払い続ける形ですが、変動費は売上が上がれば上がるほど多く払うことになります。代表的な変動費は以下の通りです。

    • 原材料費
    • 支払手数料
    • 販売手数料
    • 消耗品費など

    本来人件費は固定費で扱われますが、例えば繁忙期に限って派遣社員やアルバイトを雇用して稼働に備えるケースもあります。この場合は固定費ではなく変動費として扱うこともあるなど、事業活動を行う中で突発的に必要になったものが変動費になるという考え方でいいでしょう。

    戦略的経費

    3つ目は戦略的経費です。

    戦略的と名が付くだけあって、将来的に効果を発揮する経費を指します。具体的には以下の経費が該当します。

    • 人件費
    • 広告宣伝費
    • 交際費など

    人件費は固定費や変動費のカテゴリーにも含まれますが、例えば社員教育などを行う際に費やした人件費は社員教育の効果が将来的に発生するため、戦略的経費に含まれることになるでしょう。

     

    広告宣伝費や交際費もすぐには結果が出ないものですが、近い将来に効果が出てくる可能性があるため、戦略的経費として用いられます。経費はコストとして捉えられますが、単なるコストではなく成長のために欠かせないコストが戦略的経費と考えられるでしょう。

    原価と経費の違いとは

    人によっては原価と経費は同じようなものと捉えるかもしれませんが、両者は全く異なる性質を持つものです。

     

    原価の場合は商品を形にして売れる状態にするまでにかかった費用を指します。例えば、プラスチックのコップを作る際には原料となる樹脂を確保し、工場で成形し、成形されたものを運搬して店頭に並べることで初めて売り出せます。この一連の工程においてかかったものすべてが原価であり、製造原価とも呼ばれます。

     

    この製造原価はさらに細分化され、直接費と間接費に分けることが可能です。直接費は商品の製造にダイレクトにかかわる費用で、間接費は工場の光熱費や工場の管理費用など、明確にその商品の製造に用いられたと断言できない費用を指します。

     

    一方で経費は、売上をアップさせるために費やした費用です。別名販管費とも呼ばれます。先ほどのプラスチックのコップを例に出せば、コップを売り出す際にかかった広告の費用やコップを管理する費用などが経費に含まれる形です。

    収支計画とは

    収支計画は、事業収入と支出を計算した上で、最終的にいくら現金などが残るかを示したものです。将来的な売上と、その売上のためにいくら経費が必要になるか、最終的にどれだけ利益を計上できるかがわかります。

     

    収支計画はあてずっぽうな数字や希望的観測によって作るものではありません。現実的な数字を活用しながら売上見込みを立て、粗利率などを出していきます。また先ほどの固定費と変動費などを見積もっていく中で必要経費を算出し、どれだけ売上を計上すれば利益が出るかという「損益分岐点」を計算していきます。

     

    こうした情報をまとめたものが「収支計画書」であり、この収支計画書をもとに銀行などで融資を受けることになります。日本政策金融公庫では収支計画書を作成する際のフォーマットが用意されており、フォーマットに当てはめていく中で収支計画を立てることが可能です。

    収支計画を立てる目的とは

    なぜ収支計画を立てる必要があるのかですが、大きな目的が2つ存在します。

    • 資金の流れを把握するため
    • 金融機関など外部へ提出するため

    収支計画を立てる目的とは何かについて、それぞれ解説していきます。

    資金の流れを把握するため

    1つ目は資金の流れを把握するためです。

     

    企業経営を円滑に進めるにはお金、キャッシュの存在は必要不可欠であり、どれだけ順調であってもキャッシュがないことで資金繰りに影響を及ぼすこともあります。このままの資金繰りで大丈夫そうか、はたまた融資などの形でキャッシュを確保した方がいいのかなどを把握するために収支計画を立てるのです。

     

    収支計画を立てると前もって資金繰りが厳しい月や余裕のある月がある程度わかります。余裕をもって金融機関を利用したり、何かしらの手段で出資や借入などを行ったりできるため、より計画性のある動きにつなげられるでしょう。

    金融機関など外部へ提出するため

    2つ目は金融機関など外部へ提出するためです。

     

    会社を立ち上げて間もない時期などは、融資を受けることで資金繰りを安定させることができます。しかし、融資をする側も何のアテもない中で貸し出すのはギャンブルでしかなく、返済してもらえるだけの根拠を示してもらうことになります。その根拠となるものが収支計画書です。

     

    収支計画書を作る際には銀行などを納得させるだけの根拠ある数字や予測が求められます。この時、銀行側は収支計画書から様々なことを推察していき、経営者としてのスキルや事業の可能性などを判断します。

     

    そのためにも、収支計画書を作成する際には金融機関の人たちを納得させ、収支計画書の中身に実現の可能性を感じさせるものでなければなりません。

    収支計画を立てる際の流れとは

    銀行などにも提出する収支計画を立てていくにはどんな流れがあるのか、主に8つのステップが存在します。

    • 人件費の算出
    • 水道光熱費の算出
    • その他固定費の算出
    • 借入金返済額の算出
    • 原価率の算出
    • 損益分岐点売上高の算出
    • 目標売上高が実現可能か試算
    • 目標売上の実現に向けた具体的な対策の模索

     

    これら8つのステップについて詳しく紹介していきます。

    人件費の算出

    1つ目のステップは人件費の算出です。

     

    収支計画を立てる際にまず計算すべきなのは固定費です。売上に関係なく支払うのが固定費であり、利益を出すための最低限の数値が定められるため、固定費を決めておくことが求められます。

     

    固定費の中でも比較的変動が少ないのが人件費です。役員報酬も人件費の一種であり、事業年度内で1度役員報酬の金額を決めたら同じ事業年度内では変えられません。役員報酬をいくらに設定するか、そして、正規・非正規の従業員の人件費を計上していくことで人件費の算出が行えます。

    水道光熱費の算出

    2つ目のステップは水道光熱費の算出です。

     

    水道光熱費は現在使っているオフィスでの水道光熱費が対象となります。こちらは稼働日数に応じて変化するほか、事業の内容によって水道を使う量などが大きく変わることもありますが、水道光熱費は固定費という形で扱われることがほとんどです。

     

    オフィスを借りず、自宅を活用する場合は「家事按分」と呼ばれるやり方で費用を設定します。職場として利用する面積が家全体のどれくらいか割合で定めた上で毎月の水道光熱費のうち、職場として利用する面積で案分したものを職場で用いる水道光熱費として計上するやり方です。

    その他固定費の算出

    3つ目のステップは、その他固定費の算出です。

     

    固定費は多岐にわたり、商品の発送にかかわる荷造運賃を始め、広告宣伝費、旅費交通費、減価償却費などがあります。広告宣伝費などは年間でいくら広告に使うかを決めるなどして、固定費の算出を行います。

     

    自宅をオフィスとし、自ら保有するスマホやパソコン、タブレットなどを仕事に用いる場合は通信費に関しても家事按分を行います。1つ1つの固定費を計上していく中で最終的な固定費の合計が算出される流れです。

    借入金返済額の算出

    4つ目のステップは、借入金返済額の算出です。融資を受ける場合、いくらずつ返済を行っていくかを計算した上で借入金の額面が決まります。

     

    おおよその借入金の額面を決めるには、自己資金の倍ほどの金額で想定するのがおすすめです。例えば、日本政策金融公庫の創業融資と呼ばれるものは、自己資金の2倍が上限となります。また一般的な融資もおおむね自己資金の3倍程度、場合によっては4倍まで認められるケースがあります。

     

    だいたいいくらぐらい借りるかを決めたら、あとは返済期間、利息などを踏まえて返済額が決まります。この返済額を収支計画に盛り込んでいく形です。

    原価率の算出

    5つ目のステップは、原価率の算出です。原価率は売上に対し、売上原価の割合がどれくらいかを示したものです。この原価率の対極にあるものに粗利率があります。粗利率は売上から売上原価を引いた際の割合であり、原価率と粗利率は必ず足したら100%になります。

     

    粗利率は業種によってかなり異なり、売上原価がさほどかからないIT系であれば比較的粗利率は高めに出ます。一方、小売業などは売上原価が高くつきやすく、粗利率が低めに出やすいでしょう。

     

    理想的な粗利率を確保するには、売上原価がある程度の水準でなければなりません。原価率を把握することで、今後いかに原価率を下げていくか、そのための努力を行うことになるでしょう。原価率を下げることは粗利率を高めることを意味するため、原価率の算出はかなり重要といえます。

    損益分岐点売上高の算出

    6つ目のステップは損益分岐点売上高の算出です。

     

    売上高がいくらならばプラスマイナスゼロになるかを示したものが損益分岐点売上高です。損益分岐点を上回る売上高であれば黒字となり、下回る売上になってしまえば赤字という、とてもわかりやすい指標となります。また損益分岐点を上回り続ければ、少なくとも事業を回し続けることは確実です。

     

    損益分岐点売上高は固定費、売上高、変動費の数値があれば算出できます。損益分岐点売上高を算出して、少し厳しそうな数値になったら、固定費もしくは変動費の見直しを行って調整を行うことになるでしょう。



    目標売上高が実現可能か試算

    7つ目は、目標売上高が実現可能か試算を行うことです。

     

    損益分岐点売上高で算出された売上高が、果たして実現できる売上かどうか、実現できるかどうかを確認します。その売上を達成するために商品を何個売ればいいのか、飲食店であれば単価や回転率はどれくらいがいいかなどを計算し、現実的な数字であるかどうかをチェックします。

     

    この部分で具体的な根拠を並べていき、実現可能となればこの根拠を金融機関などに説明していくことになるでしょう。そのため、万が一突っ込まれても大丈夫なように、なぜ根拠となりえるのかを説明できるようにすることが求められます。

    目標売上の実現に向けた具体的な対策の模索

    8つ目は、目標売上の実現に向けた具体的な対策の模索です。

     

    仮に売上高などに現実的な要素が乏しかった場合、何かしらの部分に無理が生じている可能性が高いです。それが売上高なのか、売上高の中身なのか、はたまた固定費や変動費なのかは精査しなければわかりません。オフィスを借りるにしても適宜コワーキングスペースを活用する、レンタルオフィスを利用するようにして固定費を少しでも削減するのも具体的な対策の1つといえるでしょう。

     

    1つ1つを精査していく中でより現実的な数値に近づいていき、現実味のある数値で構成されることになります。その数字では融資を認めてもらえるかどうか微妙であれば、どれくらい仕事を頑張ればいいかもおおよそ分かるので、目標となる売上高を高めて、その売上高になるための方策を考えていきましょう。

    収支計画を立てる際に気をつけたいポイント5選

    実際に収支計画を立てる際において、気をつけたいポイントが5つ存在します。

    1. 原価率が適正かどうかを確認する
    2. 削減できる経費がないのかを考える
    3. 繁忙期売上や季節性売上の影響を考慮する
    4. 客観的な根拠に基づいた内容にする
    5. 3年先までの予測を立てる

     

    収支計画を立てる際に気をつけておきたいポイントについてご紹介します。

    ①原価率が適正かどうかを確認する

    1つ目は原価率が適正かどうかを確認することです。

     

    業種によって目標とされる原価率は異なります。例えば製造業のように材料費や工場の機材の減価償却費などで原価率が高くなってしまうケースがあり、おおよそ80%前後になってしまい、粗利率が低くなりがちです。

     

    一方でサービス業を中心に、材料費や減価償却費がさほどかからず、人件費が大きな比重を占めるケースでは原価率はさほど高くなく、40%前後にとどまることも。こうした原価率が適正なのかを確認しましょう。明らかに平均より高い場合には何かしらの部分でムダが生じているため、注意が必要です。

     

    原価率を上手く利用し、あえて原価率を高めて利益を少なくする分、質を重視することもできます。いずれにしても、原価率を確認することで次の戦略を考える際に役立つので逐一チェックしていきましょう。

    ②削減できる経費がないのかを考える

    2つ目は、削減できる経費がないのかを考えることです。

     

    冒頭でご紹介した京セラの創業者である稲森和夫氏の言葉、「売上を極大に、経費を極小に」にもあるように、売上を大きくし、経費を小さくすれば確実に利益は出ます。そのため、ムダがないか、経費を逐一確認した上で削減できるものは削減していくようにしましょう。

     

    例えば、家賃のように1度入居してしまうと頻繁にとっかえひっかえができないものもあります。創業して間もない段階で、社員1人だけの企業であれば、決まったオフィスを借りるのではなく、自宅をオフィスにして何かあったらコワーキングスペースやレンタルオフィスを活用することで固定費の削減につなげられます。

     

    収支計画書を作ると、キャッシュが不足する月が出てくることがあります。その場合は売上に頼るのではなく、支出をできるだけ減らす形にして対応することが必要です。

    ③繁忙期売上や季節性売上の影響を考慮する

    3つ目は、繁忙期の売上や季節性売上の影響を考慮することです。

     

    売上は常に同じとは限らず、気候や状況によってかなり変化します。飲食店であれば季節に応じて売れる食べ物、飲み物が大きく異なり、夏ならビールなど冷たいものが飛ぶように売れ、冬ならば鍋料理など温かい料理が人気を集めたりします。このように繁忙期や閑散期、季節によって売上はかなり変わるでしょう。

     

    収支計画書を作る際にはこれらの売上の影響を考慮することが求められます。そして、繁忙期に備えて広告宣伝費や人件費をどれくらい計上するかなどを決めて、異なる売り上げを事前に想定しておくことで柔軟な対応ができるようになります。

    ④客観的な根拠に基づいた内容にする

    4つ目は、客観的な根拠に基づいた内容にすることです。

     

    極端な例え話ですが、ある日突如としてアラブの石油王が訪れて、店にあるものを高額な値段で買っていくと仮定して収支計画書を作っても、誰も理解を示しません。アラブの石油王が訪れる客観的な根拠に欠けているからで、全く現実的ではないでしょう。

     

    学生が多い立地で、学生をターゲットにする場合、客単価は決して高くないから回転率を高めて勝負したいという形で計画書を作っていけば、客観的な根拠を用意しやすく収支計画書の内容もしっかりとしたものになります。

     

    客観的なデータがたくさん揃えば、適切な価格を設定しやすく売上につなげやすくなります。その後に固定費の削減なども行っていけば、より現実的な収支計画書になるでしょう。

    ⑤3年先までの予測を立てる

    5つ目は、3年先までの予測を立てることです。

     

    3年先であれば、おおよその見立てがしやすく、多少の環境の変化があったにしてもデータの精度はそこまでは落ちないでしょう。あとは事業をこなしていく中で認知度が高まり、リピーターが増えて業績が良くなっていくといった想定が、3年先までであればしやすいといえます。

     

    一方、3年先までの予測を立てる際には、最もうまくいくパターンと、検討する中で最悪のパターンを想定しておくことをおすすめします。仮に最悪のケースで推移した際にどれくらいキャッシュを確保すればいいのかがわかり、もし最悪のケースを回避できれば、余裕のある経営につなげられます。

    経費の種類と特徴を理解して適切な事業計画をたてよう

    事業計画を立てる際には、まず経費の種類と特徴を理解するところからスタートしましょう。経費には固定費、変動費、戦略的経費があり、闇雲に経費を削ることで戦略的経費となるものまでも削減してしまうと、将来的にマイナスになることも考えられます。

     

    今回ご紹介した内容を踏まえると、「売上を極大に、経費を極小に」という稲森和夫氏の言葉はまさに経営を端的に示した言葉であることがわかります。新しくオープンした飲食店の多くは居抜き物件を利用し、必要経費を削っていくなど、それぞれの企業が経費削減と効率的なキャッシュの活用を目指しています。

     

    かけるべきところに費用をかけ、削れる経費はとことん削るという方針を立てた上で、根拠あるデータで経営に臨めば長く事業経営を続けることができるでしょう。

     

    当社では、中小企業向けに空欄を埋めるだけで作成できる経営計画書を提供しています。

     

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