ある程度会社の規模が大きくなると、会社の施策や方針を社員に浸透させることが、だんだん難しくなってくるかと思います。
しかも、具体的にどう解決すればいいか、頭を抱えることもしばしばではないでしょうか。
そんな方におすすめなのが、部署別の事業計画書の作成です。
部署別の事業計画書を作成すると、会社の方針を社員に効率よく共有できたり、意思統一やモチベーションの向上を図ることも可能です。
そこで今回は、部署別の事業計画書を作成する目的や作成のポイント、作成前に行うべきことなどについて解説していきます。
部署別の事業計画の全体像が理解できるようになりますので、ぜひ最後までご覧ください。
1.事業計画書とは?
事業計画書とは、経営目標を達成するための数字を中心とした具体的な行動計画です。
社内外に打ち出す具体的な計画を記載します。
具体的には
- 新たに打ち出そうとしている施策
- 今後の売上目標
- 市場の見通し
などを盛り込みます。
今後、会社がどのようなことを目指していくのかを可視化できる資料ですので、金融機関が融資を検討する際にも、会社の将来性を図るべく参考にします。
経営目標を達成するのに重要なスケジュールの立て方については以下のページをぜひご参照ください。
『事業計画の2つのスケジュール|それぞれの立て方を解説【テンプレート有り】』
2.部署別の事業計画書とは?
事業計画書は一般的に、会社全体の事業計画書を指します。
創業したてや事業規模が小さい時は会社全体の事業計画書のみで十分ですが、事業規模が大きくなってきた場合には、部署別の事業計画書の作成を検討する必要があります。
ここでは、部署別の事業計画書とは何か、またなぜ部署別で事業計画書を作成する必要があるのかについて解説します。
部署別の事業計画書の概要
部署別の事業計画書とは、営業部署や製造部署、管理部署など部署ごとに作成された事業計画書のことです。
会社全体の事業計画をもとに、自部署はどのようなことに力を入れるべきなのかや、どの程度の売上を目標とする必要があるのか、などを計画していきます。
全社の事業計画書を、各部署に細分化していくイメージです。
つまり、全部署の部署別事業計画書を足し合わせると、会社全体の事業計画書になります。
部署別に事業計画書を作成する必要性
会社全体の事業計画書があるにも関わらず、なぜわざわざ部署別の事業計画書を作成する必要があるのでしょうか?
その理由は、以下のような効果があるからです。
「目標が達成しやすくなる」
「情報共有ができる」
「意思統一が図れる」
①目標が具体的になる
1つ目は、目標が達成しやすくなることです。
なぜなら、計画が明確な方が何をすれば良いかがイメージしやすくなるからです。
例えば、「会社全体の売上目標は1億円です」と言われるよりも、「A課の売上目標は1,200万円です」と言われた方が、自分事化することができます。
イメージさえできれば、後は実行あるのみです。
②情報共有ができる
2つ目は、情報共有ができることです。
部署の計画を作ろうと思ったら、会社全体の計画を把握したり、他部署の動きも気にする必要があるからです。
例えば、今後会社が行う予定の施策や売上目標を把握したり、各部署の事業計画書の共有を通じて、どの部署がどのような動きをするのか把握することができます。
情報共有ができれば、会社全体としても重複や抜け漏れを無くすことができ、効率的な経営につながります。
③意思統一が図れる
3つ目は、意思統一が図れるようになることです。
事業計画を作る過程の中で、お互いに目指している目標を共有し合うため、会社が向かおうとしている方向と合っているかを確認できます。
意思統一ができると、自社のリソースを一点に集中させることができます。
3.部署別の事業計画書を作成する前に行うべきこと
部署別の事業計画書を作成する前に、行うべきことが2つあります。
「利益に対する考え方の統一」と「努力した結果の報酬について伝える」ことです。
①利益に対する考え方を全社員で統一する
事業計画書を作成する前に、利益に対する考え方を全社員で統一する必要があります。
そもそもの考え方がズレていると、話し合っても議論が前に進まないからです。
例えば、「利益=社員を守るためのコスト」と定義している会社があると考えてみてください。
この会社の中に「利益=株主に還元されるべき資金」と考えている社員がいた場合、「利益=社員を守るためのコスト」と考えている社員とは考え方が大きく異なるため、話し合いが前に進みません。
上記のような事態を防ぐために、利益に対する考え方はあらかじめ全社員で統一することをおすすめします。
可能であれば経営者の方が講師となって勉強会を開き、自らが考える利益のあり方を直接社員へ伝えることが望ましいです。
②努力するとどういう報酬があるかを伝える
もう一つ大切なのは、努力するとどういう報酬があるかを伝えることです。
社員としても、自分の頑張りがどう会社に貢献し、自分の収入にも影響があるかは気になるところだからです。
例えば、「とにかく頑張って売上あげてこい!」と言われるのと、「売上が1億円を超えたら、その分については社員全員で分け合おう」と言われるのとでは、社員のモチベーションが異なるのは火を見るよりも明らかです。
自分の待遇が向上するのであれば、社員はより高いモチベーションを持って仕事に取り組むことができるでしょう。
そのため「努力をして得た利益は社員に還元される」ということを事前に伝えておく必要があります。
できれば文書として、いつでも社員が見返せる形式で共有することをおすすめします。
4.部署別の事業計画書作成のポイント
ここからは、各部署で事業計画書を作成する際のポイントについてみていきます。
事業計画書の作成時には、ぜひ意識してみてください。
①部署や個人の目標をボトムアップで作り上げていく
部署別の事業計画書を作成する時は、ボトムアップで数値を作成することをおすすめします。
人から指示された数値より、自発的に立てた目標の方が達成に対する高いモチベーションを抱けるからです。
ただし、時には経営者の想定よりも低い数値が上がってくることもあります。
そのような場合は、最終的に経営者の想定している数値を優先することになります。
とは言え、社員のやる気を数値に反映するためにも、数値はボトムアップでの作成が望ましいです。
②社員レベルの目標数値は単位を細かく設定する
社員レベルの目標数値を作成する際は、売上なら1,000円単位で作成することをおすすめします。
なぜなら、詳細な金額で目標を立てた方が「どうやってその目標を達成するか」をより具体的に考えようとするからです。
「継続のA案件で〇円」「B案件では〇円」「新規案件では〇円」と社員が数値を詳細にイメージしやすい単位をおすすめします。
迷ったら、1,000円単位での数値目標を意識されてみてください。
③季節変動性も加味して月別に作成する
月毎の計画を作成する際は、季節変動性を加味することを忘れてはいけません。
季節変動性とは、時期によって売上や費用が上下することを指します。
なぜなら、季節変動を反映させずに計画を作成してしまうと、予算と実績に大きな乖離が生じてしまうからです。
例えば夏になると冷たいかき氷やアイスの売上は伸び、逆に温かいおでんや肉まんの売上は下がるでしょう。
事業計画書にも、このような季節変動を反映させなければなりません。
④間接費も考慮する
部門別で事業計画書を作成する際は、間接費についても忘れてはいけません。
費用には直接費と間接費があります。
直接費とは自部門の運営に直接必要な費用のことで、間接費とは直接自部門の運営には関わっていない費用のことです。
例えば、電気代や他部門と共通で使っている設備の費用などを指します。
間接費は直接自部門で発生した費用ではありませんが、自部門を運営するために必要不可欠な費用です。
そのため部門別の事業計画書を作成するときには、間接費についても考慮する必要があります。
実態に即した「配賦方法」を選ぶ
間接費を一定の割合を用いて他の部門に割り振ることを「配賦」といいます。
配賦の基準は複数あり、そのどれを採用しても間違いではありません。
例えば間接費を使用してA商品とB商品を製造したとすると、商品の個数でその間接費を割り、A商品を製造した部門とB商品を製造した部門へ間接費を配賦する考え方があります。
この他にも、使用した時間によって配賦する考え方、使用人数によって配賦する考え方など、さまざまな基準があります。
配賦基準を決めるときには、その間接費の実態を表すのに一番適した配賦基準を採用しなければなりません。
そのため、どのような配賦基準を使用しているかは、事業の形態や費用によって異なります。
◇配賦基準の一例
・部門別配賦
・直接配賦法
・階梯式配賦法
・相互配賦法
・製品別配賦
部門別の事業計画書を作成するときは、一定の基準によって配賦を行った間接費も部門の費用に加味した上で作成を行うことがベストです。
間接費を加味しなかった場合と比べると、より実態に即した部門別の費用を算出できるからです。
5.作成した事業計画書は月次で確認しよう
事業計画書は作成して終わりではありません。
計画通りに事業が推移しているかどうか、確認を行う必要があります。
チェック時にも意識するべきポイントがありますので、説明していきます。
①月次決算で数値をチェックする
どの程度目標に近づいているかを確認するため、予実は月に一度はチェックすることをおすすめします。
もし、計画と実績に差があったとしても、すぐに対策が打てるからです。
仮に、チェックを半年に一度しか行わなければ、初月に目標未達だった場合、その状態が6ヶ月間繰り返されることになります。
遅れを後から取り戻すのは大変ですから、チェックは月次で行うことをおすすめします。
②個人ごとの目標達成度をチェックする
部署だけでなく、個人の目標もチェックすることが望ましいです。
できれば月次で、全社または部署での情報共有の場を設け、進捗状況の共有を図ると良いでしょう。
相互に状況を確認する機会を設けることで、関係する社員全員に当事者意識を持ってもらうことができます。
目標達成度の共有を行う際は、誰もがわかりやすい資料を用いて、意思疎通を容易に行えるような準備も重要です。
③会社の数値はなるべく社員に公開する
会計上の数値はなるべく社員全体に公開することをおすすめします。
リアルな数値が分からなければ、同じ議題について話をしていても、温度差が出てしまうからです。
例えば赤字の理由について話をしていても、赤字が発生した月の内訳を知っているのといないのとでは、改善点や今後の見通しに対する意見に相違が生じるでしょう。
会計上の数値を公開することは、経営を改善するために必要不可欠であるといえます。
ただし、会社の状況によってはいきなり全てを公開することに抵抗がある場合もありますので、自社で取り組める範囲から実行するのが現実的です。
まとめ
部署別の事業計画書は会社全体の事業計画書を部署ごとに分けて作成したものです。
会社全体の事業計画書に比べて、部署で行う施策や目標について詳細に記載されており、この計画書を確認することで今後部署がどのような方向に動いていくのか把握できます。
また、作成した目標や数値に対する推移は月次で確認することが望ましいです。
予算との乖離を早い段階で把握できれば、差が広がる前に改善や方向転換などの策を講じることができます。
このように部署別の事業計画書は作成後も役に立ってくれる資料です。
社員への情報共有と意思統一を図るためにも、会社がある程度大きくなってきた段階で部署別の事業計画書を作成することを検討されてみてください。
なお、全社の目標を部署ごとに落とし込むにあたって、まずは全社の正しい目標設定からする必要があります。
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