融資審査はどのようなもの?
融資審査の前に、融資とはなんでしょうか。
融資とは、お金を借りることで資金を調達する方法のことを指します。融資は借りた人に返済の義務が生じます。そのため、融資審査とは融資を受ける人に返済能力があるのかを審査することを指します。
法人への融資は、融資を受ける会社の決算書、財務諸表、事業計画書を調査していきます。融資のなかでも銀行融資は金利が低めで限度額が大きいためおすすめです。
個人事業主であっても融資を受けることは可能です。個人事業主の場合は、①開業届を出している、②毎年確定申告している、③基本的には赤字ではなく黒字である、という3つの条件を満たしておく必要があります。
融資審査は大きく分けて2段階で実施される
融資審査は大きく分けて2ステップで実施されます。
第一段階「融資が可能か?」
第二段階「融資可能額はいくらなのか?」
となります。
金融機関は融資依頼を受けた時に上記の2ステップで検討します。ここからは、融資審査を段階ごとに詳しくみていきましょう。
融資が可能かどうか
第一段階「融資が可能か?」については、まず、返済できそうかどうかを審査されます。損益計算書から償却不足や役員報酬などの妥当性を判断し、妥当ではないと判断した場合は損益計算書を正しく補正していきます。そこで正確な簡易キャッシュフロー(税引後利益+減価償却費)を確認していきます。ひとつの目安として簡易キャッシュフローが純借入額の10分の1以上であれば返済できると判断されます。
その次に、財務が健全かどうかを審査されます。債務超過でないということは重要です。資産超過であっても不良資産はないか確認されますし、債務超過であっても役員からの借入金や役員への未払金は資本に組み込んで判断する場合もあります。
金利の違い
プロパー融資と信用保証付融資では金利にも大きな違いがあり、一般的にプロパー融資のほうが金利が低く、信用保証付融資のほうが金利が高くなっています。これは金融機関に対する信用度が関係しており、金融機関に対する信用度が高いほど金利は安くなるという仕組みがあるためです。
そのため、融資審査が厳しいプロパー融資を受けることができるということは、融資を受ける企業に対する信用度が高いことになるため、低い金利で融資を受けることができます。
融資可能額がいくらなのか
第二段階「融資可能額はいくらなのか?」については、第一段階をクリアした後に事業計画書で審査されます。事業計画書の作成にはポイントがあり、売上目標が大きすぎたり小さすぎたりすると説明が必要になったり、借入の返済ができないと見られる可能性がありますので、融資金額の返済に必要な損益分岐点売上を計算し、それをもとに資金繰りの計画を立てる必要があります。
融資とその他の資金調達との違いは
先ほどもお伝えしましたが、融資はお金を借りることで資金を調達する方法のことを指します。資金を調達する方法には出資や投資もあります。融資と出資・投資との違いは返済義務があるかないかです。融資を受けた人には返済義務があります。
一方で、出資や投資を受けた人には返済義務はありません。その代わりに、事業が成功した場合、出資や投資をした人は経営への参加や、意見を言う権利を獲得することができるのです。
また、融資は限度額が大きいということがメリットとしてあげられますが、融資には審査が必要なので、出資や投資を受けるよりも資金調達に時間がかかることがあります。早急に資金調達が必要な場合などは、融資よりも他の資金調達方法を探した方が有効な場合もあるので、必要に応じて最適な資金調達の方法を選ぶようにしましょう。
融資審査の具体的な流れ
それでは、融資を受けるまでの具体的な流れを紹介していきたいと思います。組織を経営していれば、資金繰りの問題や投資をして事業拡大させるために資金調達を考える場面も多いと思います。最近では、黒字経営をしていても新型コロナウイルスや戦争の影響により、資金が不足してしまったという事業者も多くいらっしゃいます。金融機関から融資を受けるまでの流れをまとめました。融資を受ける際の参考になればと思います。
申し込み
融資審査の流れとして、まずは融資の相談と融資の申し込みをしましょう。今回初めて融資を受けるという場合は、申込金額や返済計画、借入期間をどうするかなどを銀行の担当者にしっかり相談しておくとスムーズです。また、連帯保証人や担保が必要か不要かについても相談しておくといいでしょう。
書類の準備
次に、融資を受けるためには、金融機関から指示のあった書類を提出する必要があります。融資を受ける際には必要な書類が多々あります。設備資金を融資で調達する場合は見積書や事業計画が必要となり、開業の際の資金を融資で調達する場合は創業計画書が必要になってきます。
また、返済計画書が必要な場合や、融資の資金用途や担保、連帯保証人の有無によっても準備が必要な書類が違いますので、融資を相談している金融機関にご相談ください。
面談
書類の準備が整ったら、次は面談が行われます。面談は提出した書類をもとに質問などを行います。融資を受ける金融機関で行われることもあれば、融資を受けたい企業の店舗やオフィス、工場に銀行員が訪問して行う場合もあります。それは事業の内容や設備の状況を確認し、融資をして良いか判断するためです。
審査
面談を経て融資の審査が下ります。金利が低く設定されている金融機関の融資は、比較的審査の難易度が高めです。また、審査にかかる時間も長くなりやすいです。融資の金額や金利によって審査の期間は2週間~1ヵ月半ほどかかりますので、資金が必要なタイミングに合わせて、はやめはやめに準備を進めるようにしましょう。
融資の実行・返済開始
融資審査を通過するといよいよ契約をし、融資が実行されます。融資のお金が送金されているかしっかり確認するようにしましょう。
また、融資のために準備した返済計画書の通りに遅れず返済できるように資金繰りには注意してください。特別な理由(リーマンショックや新型コロナウイルスなどで急に不景気になったなど)がない場合で返済が遅れてしまった場合、今後の融資で審査が通りにくくなってしまう可能性があります。
融資審査に通るためのポイント6選
融資審査の流れを説明してきましたが、融資審査を通過するためには、適当に書類を作成していてはいけません。融資審査を通るためには、必要書類を良質なものにすることと、信用を築くことです。融資審査のために大切なポイントをお伝えしていきますので、ぜひ参考にしてください。
①決算書の内容を良質なものにする
まずは決算書の内容を良質なものにすることです。金融機関では審査の際に決算書も必ず確認します。貸借対照表では、負債が資産を上回っている状態(債務超過)になっていないか、純資産の部がプラスになっているかどうかを注意しましょう。
損益計算書では、売上高から売上原価を差し引いた売上総利益や、本業で稼いだ利益(営業利益)と、企業活動で稼いだ利益(経常利益)を確認してください。また、当期純利益(当期の総収益から総費用を差し引いた税引前当期利益から法人税などを控除したもの)を確認してみましょう。当期純利益は一時的な赤字であれば問題にはなりません。特に重要視されるのは、利息を支払っても利益が出ていると判断される、経常利益が黒字になっていることです。
②返済計画書の根拠資料を充実させる
次に、融資をする際に金融機関が一番気にすることは「返済ができる会社かどうか」です。そのため、資料提出の際に重要視されるのは返済計画書です。毎月いくら返済するというような内容だけではなく、様々な要素を考慮し、リスクを織り込んで、実現可能で根拠の分かりやすい返済計画書を作成しましょう。
③事業計画書の根拠資料を充実させる
次に融資審査に大きく影響があるのは事業計画書です。事業計画書へは事業の継続だけでなく、成長していく方法などを記載し、金融機関にアプローチしていくことができます。また、事業計画書は希望する融資額の根拠にもなります。
事業をどのように拡大させていくために資金をどのように運用し、どのような機材や設備を購入していくのかなど、具体的かつ根拠を分かりやすく記載するようにしましょう。さらに、市場調査や競合他社、ターゲット層の調査も、明確なビジョンを示すために必要となってきます。収支計画も組み込んで、根拠のある事業計画書にしましょう。
④税金や公共料金などを滞納しない
ここからは、「信用を築く」ために気をつける点をお伝えしていきます。まずは、税金や公共料金は必ず滞納せずに期日内に支払うようにしましょう。そこで、返済能力や資金力があるということを金融機関に示すことができます。税金や公共料金など、最低限の支払いができないと判断されると、返済能力がないとされ、信用情報に傷がついてしまいます。また、クレジットカードの支払いも同様に滞納しないように注意しましょう。
⑤信用格付けを理解する
金融機関は、信用の格付けをしており、格付けで融資の可否を判断したり、金利や融資額を決めたりしています。格付けが高ければ高いほど、融資審査は通りやすく、低い金利でたくさんの融資を受けることができます。格付けには2種類の評価が存在し、決算書の分析から評価する定量的評価と、経営姿勢や事業方針から評価する定性的評価です。
格付けの基準は金融機関によって異なり、また、公開もされていません。そのため、日頃から良質な決算書を意識して作成したり、自己資本比率を高めたりと高い格付けになるように取り組んでいくことが重要になります。
⑥金融機関と良好な関係を築く
最後に大事なことは、金融機関と日頃から良好な関係を築いていくことです。融資が必要な時に一時的に金融機関に頼るのではなく、担当者とこまめにコミュニケーションをとり、スムーズに融資の相談から審査までできる関係になっておきましょう。そのためには、資料や報告などを金融機関から求められた場合は、快諾して、信頼を積み重ねていくことが大切になってきます。
まとめ 融資審査は事前の準備で結果が左右される
融資は企業の資金調達としては、有効な手段です。融資審査を通過する必要はありますが、一度でまとまった金額を低金利で調達することができるのがメリットです。
融資をしてくれる機関は、メガバンク、信用金庫、地方銀行、ノンバンクなど金融機関だけでもたくさんの種類がありますし、審査方法や融資審査の通り安さなども異なります。
どの金融機関から融資を受ける場合であっても、事前の準備が審査の結果に影響してきますので、必要書類の作成、信用を築いていくことなど、はやめはやめに準備をしておくようにしましょう。
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