重要な資料ではあるものの、補助金申請のための事業計画書をどのように作成すればよいか悩まれている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、補助金申請のための事業計画書を作成するポイントを解説します。
利用できる補助金もあわせて紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事をお読みいただくことで、どのように事業計画書を作成すればよいか、そのコツがつかめるようになります。
1.補助金取得のカギは事業計画書
補助金を取得できるかどうか、そのカギは事業計画書にあります。
なぜなら、申請があった事業が補助金の目的に合致しているかどうか、審査員は事業計画書を通して確認するからです。
審査員の立場からすれば、補助金の目的にふさわしく、効果的に活かしてくれそうな魅力的な事業を探しています。
逆にどんなに良い事業内容であっても、事業計画書が分かりにくく相手に伝わらなければ、補助金を受け取ることは難しくなります。
では、事業計画書を作る際にはどんな点に注意をすれば良いのでしょうか?
次章では、事業計画書を作成する際のポイントを、事例を交えて紹介します。
2.補助金申請に欠かせない事業計画書を作成する3つのポイント
補助金申請のための事業計画書を作成するポイントは、補助金の公募要綱の中で全て説明されています。
そのため、本来は公募要綱を隅から隅まで読み込むべきですが、ページ数が多く、慣れていないと大変です。
そこで今回は、「事業再構築補助金」を題材に、事業計画書を作成する際に意識するべき3つのポイントを解説します。
①必須項目が含まれているか
1つ目は、公募要項に記載してある必須項目が、全て含まれているかどうかです。
当たり前と思われますが、求められている情報は全て記載しなければ、審査の土台にも上がらないからです。
事業再構築補助金では、次の4項目を記載することが公募要領に明記されています。
(公募要領P.29)
- 補助事業の具体的取組内容
- 将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果)
- 本事業で取得する主な資産
- 収益計画
補助金ごとに記載するべき内容は異なりますので、知ったかぶりをせずに確認することが大切です。
②審査項目に言及しているか
2つ目は、審査項目に言及しているかです。
評価する項目が明記されているわけですので、最も力を入れるべきところです。
事業再構築補助金では、次の5項目が公募要綱に明記されています。
(公募要領P.34)
- 補助対象事業としての適格性
- 事業化点
- 再構築点
- 政策点
- 加点項目
評価をする審査員を意識して、分かりやすい表現を心がけることが大切です。
③妥当な収支計画になっているか
3つ目は、妥当な収支計画になっているかです。
一定の利益を求められる補助金もありますので、市場調査をもとに利益から逆算して、収支計画を立てていきます。
事業再構築補助金では、付加価値額要件として次のような記述があります。
(公募要領P.12)
補助事業終了後 3~5年で付加価値額の年率平均 3.0%以上増加、または従業員一人あたり付加価値額の年率平均 3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること
付け焼刃的な計画にするのではなく、現場に即したシミュレーションが必要です。
事業計画書を自社で作るのは可能?
ところで、細部にも気を遣って作らなければいけない事業計画書ですが、自社で作成を進めることは可能なのでしょうか?
次章で、事業計画書を自社で作る場合と、専門家に依頼する場合のメリット・デメリットを比較します。
3.補助金のための事業計画書は自社でも作成できる?
いざ事業計画書を作るとなると、自社で作る場合と、専門家に依頼する場合の2つのやり方があります。
どちらもメリット・デメリットがあり、下記のようにまとめられます。
自社 |
専門家 |
|
メリット |
・費用がかからない ・作成ツールや情報はたくさん存在する |
・ノウハウや経験を蓄積している ・本業に専念できる |
デメリット |
・時間がかかる(平均70時間ほど) ・不採択時のダメージが大きい |
・費用がかかる(依頼先によってピンキリ)
・実績がある相性の良いパートナー探しが大変 |
自社で作成するメリット
事業計画書を自社で作成するメリットは、専門家に依頼する費用がかからないことです。
作成ツールや事業計画にまつわる情報は世の中にたくさんありますし、含めるべき内容は要綱に全てまとまっていますので、採択率はさておき事業計画書自体を作ることは可能です。
ちなみに、専門家に依頼した場合は、着手金+成果報酬という料金形態になることが多いです。
自社で作成するリソースがあれば、チャレンジしてみるのも良いでしょう。
自社で作成するデメリット
事業計画書を自社で作成するデメリットは、大幅に時間がかかることです。
本業もある中で、事業計画書の作成にまとまった時間を取るのは容易なことではありません。
ものづくり補助金の公式ホームページで公開されている「事業計画書の作成時間」に関するグラフを見ると、平均作成時間は約70時間です。(5次公募までの集計結果)
出典:ものづくり補助金総合サイト(https://portal.monodukuri-hojo.jp/)
さらに、時間をかけたからといって必ず採択されるものではないため、不採択になった時のダメージは計り知れません。
専門家に依頼するメリット
専門家に依頼して事業計画書を作成するメリットは、専門家のノウハウや経験を活用できることです。
採択率の向上にもつながりますし、何より事業計画書を作成する手間が省けるため本業に専念できます。
ものづくり補助金の公式ホームページで公開されている「支援者の関与」に関するグラフを見ると、専門家の支援なしの採択率が 36.2%だったのに対し、支援ありの採択率は 43.1~58.2%と明確な差が出ています。(5次公募までの集計結果)
出典:ものづくり補助金総合サイト(https://portal.monodukuri-hojo.jp/)
もちろん、依頼すれば確実に採択されるわけではありませんが、これだけ採択率に違いが出るのであれば、専門家への依頼は有効な手段といえます。
専門家に依頼するデメリット
専門家に依頼して事業計画書を作成するデメリットは、費用がかかることです。
多くの代行業者は、着手金+成功報酬という料金形態を取っています。
しかし、裏を返せば不採択になったとしても、着手金のみで済むという見方もできます。
着手金は数十万円ほどの会社が大半のため、企業としてもそれほど大きな痛手とはなりません。
総合的に判断すると専門家に頼む方がコスパが良い
総合的に判断すると、補助金申請のための事業計画書は、専門家に作成を依頼する方がコスパが良いと言えます。
過去のデータからも専門家の支援が入った方が採択率が良いですし、作成を任せるため本業に専念することができるからです。
ただし、キチンとした実績があり、相性の良い専門家を見つける必要があります。
4.補助金申請の事業計画書でやりがちなNG事例
事業計画書を作る際に、多くの人がやってしまいがちなNG事例がいくつか存在します。
代表的な事例を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
見栄えはよいが内容が薄い
1つ目は、見栄えはよいが内容が薄い事業計画書です。
審査員が評価するのはあくまで中身のため、最低限の基準を押さえていれば必要以上に見栄えにこだわる必要はありません。
むしろ、見栄えにこだわる余裕があるなら、内容をより詰めた方が採択率が上がります。
費用の内訳が補助金の趣旨に合致していない
2つ目は、費用の内訳が補助金の趣旨に合致していない事業計画書です。
例えば、新規の設備投資を対象にした補助金なのに、使用用途として広告費が計上されているなどです。
補助金の目的を理解し、適切な利用が求められます。
市場調査が不十分で数字的根拠がない
3つ目は、数字的根拠のない事業計画書です。
いくら良いことを言っていても、根拠がなければ採択のしようがないからです。
競合他社の動向を調べるなど、しっかりとした市場調査が欠かせません。
5.おすすめの補助金3選
補助金は、正しく活用すれば事業を後押ししてくれる素晴らしい制度です。
新しく事業を始めたいけど、資金的な問題で動けないのでしたら、補助金の活用を検討してみることをおすすめします。
ここでは、中小企業が利用できるおすすめの補助金を3つ紹介します。
①事業再構築補助金
新分野展開や業態転換、事業・業種転換、事業再編、またはこれらの取り組みを通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援する制度です。
対象者:
以下の要件を全て満たす企業・団体等
(1)2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年または2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少している中小企業等
(2)事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組む中小企業等
補助上限額:
中小企業(通常枠)100万円~6,000万円
※補助率 2/3
実施組織・支援機関:
中小企業庁
参考:
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/
②小規模事業者持続化補助金
小規模事業者等が経営計画を作成し、その計画に沿って行う、販路開拓や生産性向上の取組に要する経費の一部を支援する制度です。
対象者:
常時使用する従業員が20人[商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)の場合は5人]以下の法人・個人事業主の方
補助上限額:
単独申請50万円(低感染リスク型は100万円)
共同申請500万円(1事業者あたりの補助上限額50万円×連携する事業者数)
※補助率 2/3
実施組織・支援機関:
中小企業基盤整備機構、全国商工会連合会、日本商工会議所
参考:
③経営改善計画
金融支援を伴う本格的な経営改善の取り組みが必要な中小企業・小規模事業を対象として、認定支援機関が経営改善計画の策定を支援し、経営改善の取り組みを促す制度です。
対象者:
金融支援を伴う本格的な経営改善の取り組みが必要な中小企業・小規模事業
補助上限額:
200万円
※補助率 2/3
実施組織・支援機関:
経営改善支援センター
参考:
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/kaizen/405.html
なお、ここで紹介した補助金以外にも、さまざまな補助金があります。
その他に利用可能な補助金を紹介したこちらの記事もおすすめです。
「【7分で分かる】経営計画書の作成時に使える補助金制度を一気に解説」
まとめ
今回は、補助金の申請に必要な事業計画書の作成について、作成する際のポイントや自社で作成する場合と専門家に依頼して作成する場合のメリット・デメリットについて解説しました。
結論としては、専門家に依頼する方がコスパが良いですが、もちろん自社で作成することも可能です。
いずれにしても、補助金は何か新しい事業にチャレンジしたい、ステップアップをしたいと考えている事業者さんには、資金面から後押しをしてもらえる有効な手段です。
これを機会に、補助金の申請を検討してみてはいかがでしょうか。
なお、事業計画書を作成するうえで欠かせない、自社の事業構造を把握する際に使える『利益計画検討表』を無料プレゼントしていますので、ぜひご活用ください。
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