月次決算とは
月次決算とは、経営成績と財政状況を確定する作業で、事業の年度末に行う年次決算とは別に、この作業を毎月一ヶ月単位で行うことを指します。
この作業の目的は、営業成績と財政状況などの経営を管理するために参考となる情報を経営陣に伝えることですので、予算や計画との比較をするために、正確性・詳細性よりも概観的で迅速な情報が必要になります。
また、経理・財務には、月次決算の早期化とKPI(「Key Performance Indicator」重要業績評価指標、目標達成のためのプロセスが適切に実行されているかどうかを評価する指標)に基づく予実差異分析が求められます。
月次決算は年次決算とは違い作業項目は多く、スケジュールもタイトです。今回は、月次決算の目的ややり方、効率よく月次決算をおこなうためのポイントを詳しく解説していきます。
月次決算になぜチェックリストが必要なのか
月次決算をおこなう際、チェックリストは必ず使うものではありませんが、チェックリストを使用すると多くのメリットがあります。チェックリストが月次決算に必要な理由は下記3点です。
・単純ミスを防ぐため
・属人化を防ぐため
・月次決算の効率を上げるため
単純ミスを防ぐため
月次決算にチェックリストが必要な理由の一つ目は、「単純ミスを防ぐため」です。月次決算は複数人でミスがないように複眼的に確認するのが一般的です。
複数人で作業してもチェックしなくてはいけない項目が抜けていたり、同じ項目ばかりチェックしてしまったり、単純なミスが起こってしまいます。これでは効率が悪いので、誰がどの項目をチェックしたのかを分かりやすいようなリストにすることで、ミスの防止につなげることができます。
属人化を防ぐため
月次決算にチェックリストが必要な理由の二つ目は、「属人化を防ぐため」です。月次決算の作業はスピードが命です。
早くに月次決算を終えることで、経営判断も早くくだせることになります。しかし、特定の社員でなければ月次決算をおこなえない状況では、月次決算を迅速におこなうことは難しくなります。
チェックリストを使って、月次決算の流れや作業を可視化していけば、特定の社員以外でも作業を進められ、結果、月次決算の属人化を防ぐことができます。
月次決算の効率を上げるため
月次決算にチェックリストが必要な理由の三つ目は、「月次決算の効率を上げるため」です。月次決算は毎月一ヶ月単位で経営成績や財務状況をまとめる作業です。現在、在宅勤務を取り入れる企業が増えているため、社内でのコミュニケーションがとりにくくなっています。
チェックリストがあれば、離れた場所で作業していたとしても、どこまで作業が進み、どの作業を自分がすれば良いかわかるため効率よく作業を進めることができます。
そもそも月次決算はどういう流れでおこなう?
ここからは月次決算の進め方を解説していきたいと思います。月次決算は何よりもスピードが求められるので、具体的な進め方をしっかり頭に入れて、自社の月次決算に取り入れてください。
①現金および預金の残高確認
まずは、「現金および預金の残高確認」をおこないます。現金・預金の帳簿残高と、実際の残高に違いがないか確認していきましょう。
通帳での預金残高、金庫に保管している現金残高の確認をし、帳簿残高と差異がある場合、どこでズレがでてしまっているのか原因を調査します。毎日の業務で出納帳をつけている場合、毎日ズレがないか確認をしていると思いますが、締めである月末は特に注意を払うようにしましょう。
②棚卸高の集計
次は、「棚卸高の集計」をおこないます。棚卸高の集計とは、月末の在庫金額を集計することを指します。可能ならば、帳簿と棚卸資産が一致しているかどうかも確認するようにしましょう。また、毎月、棚卸をして棚卸資産管理の手続きがされている場合は、下半期決算や年次決算のときの棚卸を省力化することもできます。
③仮払金や仮受金の振替
次は、「仮払金や仮受金の振替」をおこないます。仮払金や仮受金は、正確な金額が分からない支出・収入のことです。名前の通り仮の情報なので、正確な金額がわかり次第処理をします。また、仮払金や仮受金のままではなく、内容は何かを整理しておくことも重要です。仮払金や仮受金のままにしておくと、その月の経営状況が見えにくくなってしまいます。
④経過勘定の処理
次は、「経過勘定の処理」をおこないます。経過勘定の処理とは、前払費用や未払費用が月をまたいでしまった時に処理をすることをいいます。
早急に処理をするために、対象の科目や計上する基準をあらかじめ設定しておくようにします。経過勘定で費用を損益計算書に反映させることで、その月の経営状況を正確に把握できるようになります。
⑤減価償却費の計上
次に月次決算でおこなうことは、「減価償却費の計上」です。減価償却費は、年間でどのくらいの費用がかかるか見積もりが可能です。年次費用をだしたうえで、月次費用として12分の1の金額を計上しましょう。
⑥退職給付費用などの計上
減価償却費と同様に「退職給付費用などの計上」をおこないます。年間での見積もりがわかるので、年次費用をだしてから月次費用として12分の1の金額を計上します。退職給付費用のほかに、賞与、固定資産税、社会保険などの各種保険料なども月割計上処理をする必要があります。
⑦月次資料の作成
次は「月次資料の作成」をおこないます。仕訳したものを総勘定元帳に転記し、月次試算表を作成します。月次試算表は年次試算表と同じく、「損益計算書」「貸借対照表」「キャッシュフロー計算書」があります。
また、予算実績対比表や前年同月対比表などを作成する企業が多いです。試算表は3種類あり、「合計試算表」と呼ばれる勘定科目の貸借をそれぞれ合計したもの、「残高試算表」と呼ばれる勘定科目の残高を記載したもの、「合計残高試算表」と呼ばれる「合計試算表」と「残高試算表」のどちらも記載したものがあります。
⑧財務分析
その次には「財務分析」をおこないます。月次資料として、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の3つの試算表を作成しています。
その他にも、「前期比較表」や「予算実績対比表」などの比較資料を作り、財務分析をおこないます。売上や利益は前年同月と比べるとともに、どうしてこのような結果になったのか原因究明もおこないます。また、予算と実績を比べ、問題があれば経営計画の見直しや経営判断をくだします。
⑨月次報告
最後には「月次報告」をおこなう必要があります。月次報告の際に役立つのは、予算実績対比表や前年同月対比表です。前月の試算表、前年同月の試算表と比較し、資金繰りの状況、売上・経費・予算達成度合いを確認するようにしましょう。
また、月次報告でもっとも重要なことは速やかに経営陣に報告することです。月次決算の報告が遅れるということは経営判断が遅れてしまうということです。月次決算を早期化するための体制作りをしっかりしていくようにしましょう。
月次決算チェックリストに含めるべき項目とは
月次決算にチェックリストを使用することは効率的かつ正確に作業できるということをご理解いただいたと思います。それではより効果を発揮するためにはどのような項目をチェックリストに記載すべきなのでしょうか。
事前準備
チェックリストに入れるべき項目の一つ目は、「事前準備」です。事前準備には、「小口現金出納帳の集計・残高の確認」「小口現金の精算仕訳の確認」「ネットバンキング以外の口座の仕訳を確認」「給与の仕訳を確認」「売上や仕入れなど、月末一括仕訳の確認」「在庫仕訳の確認」「ネットバンキング口座の仕訳登録を確認」を入れます。
現金・預金
次に含めるべき項目は、「現金・預金」です。この項目では、「小口現金出納帳の集計や残高に差異がないかの確認」「帳簿の預金残高と通帳の預金残高に差異がないかの確認」「際があった際、原因の解明、帳簿に記載したかの確認」をチェックします。
売掛金・買掛金
次に含めるべき項目は、「売掛金・買掛金」です。この項目では、「未収の売掛金がないかの確認」「未収の売掛金に差異があった場合、担当者に回収依頼をしているか確認」「売掛金の残高と帳簿に差異がないかの確認」「未払いの買掛金はないかの確認」をおこないます。
在庫・棚卸資産
その次に含めるべき項目は、「在庫・棚卸資産」です。この項目では、「月末の商品在庫と帳簿在庫に差異がないかの確認」「社外にある商品在庫と帳簿在庫に差異がないか確認」「不良品や納品ミスで返品扱いになっている商品がないかの確認」をおこないます。
固定資産
その次に含めるべき項目は、「固定資産」です。この項目では、「年間の減価償却費や引当金を12分割して計上しているかの確認」「10万円以上の購入資産があるかの確認」「30万円以上の購入資産があった際、会計処理が適切におこなわれているかの確認」をおこないます。
借入金
次に含めるべき項目は、「借入金」です。この項目では、「短期借入金の金額は返済予定表残高と合っているかの確認」「長期借入金の金額は返済予定表残高と合っているのかの確認」をおこないます。
未払金・預り金
次に含めるべき項目は、「未払金・預り金」です。この項目では、「給与残高はゼロになっているかの確認」「月末時点での未払金額残高に誤りはないかの確認」「所得税や住民税の残高と当月の給与預り分の金額に差異がないかの確認」をおこないます。
仮勘定(仮払金・借受金)
次に含めるべき項目は、「仮勘定(仮払金・仮受金)」です。この項目では、仮勘定(仮払金・仮受金)となって金額が確定していない費目の振替作業をおこなったか確認をおこないます。
経過勘定
その次に含めるべき項目は、「経過勘定」です。この項目では、翌月以降に支払いや受け取りがあるものを、未払費用や未収収益と経過勘定に計上しているかを確認します。
貸借対照表
最後にチェックリストに含めるべき項目は、「貸借対照表」です。貸借対照表の項目では、「マイナス残高になっていないかの確認」「マイナス残高があった場合、原因の特定と修正をしたかどうかの確認」「借方と貸方が一致しているかの確認」をおこないます。
まとめ :月次決算のチェックリストはミスを防ぎ効率化を図ることができる
月次決算は毎月のことなので、毎月のルーティーンにすればチェックリストはいらないと考えている経営者の方もいるかと思います。しかし、チェックリストを使用することで単純なミスを防ぐことができ、効率もあがります。
チェックリストを導入して、より正確でより迅速に月次決算をおこなえるようにしていきましょう。
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