社是とは、企業や団体がその運営において重要視する基本的な理念や価値観、行動指針を示したものです。しかし、同じような言葉として経営理念や社訓等といったものがあります。
これらとの違いや使い分けはどのように考えたらよいのでしょうか。
そこで今回は社訓の定義を確認した後にこれらの言葉との違いについて解説していきます。
1.社是とは
1.1社是の定義
社是とは、企業や団体の運営における基本的な理念や価値観、行動指針を示したものであり、社員全員が共有し、日々の業務や意思決定の際に指針とするためのものです。
そして、社是は企業文化や経営方針の根幹を成すものであり、社員の行動や意思決定に一貫性をもたらすための重要な指針となります。
加えて、社是は、企業の内部だけでなく、外部のステークホルダー(顧客、取引先、地域社会など)に対しても、その企業の姿勢や方針を明示するためのものです。
1.2社是の構成要素
具体的な内容は企業によって異なり、経営理念と被るケースもありますが社是を構成するものとしては以下の3つが挙げられます。
①企業の使命やビジョン:企業がどのような目的を持ち、どのような未来を目指しているのか。
②基本的な価値観:企業が大切にする価値観や倫理観。
③行動指針:社員が日々の業務でどのように行動すべきかの具体的な指針。
1.3社是を作成するメリット
社是は企業の健全な成長と発展に寄与する重要な要素となりますが、メリットは主に6点挙げられます。
①一貫した方向性の提供
社是は企業全体の方向性や目標を明確にし、全社員が共通の目標に向かって努力するための指針となります。これにより、企業内での一貫した意思決定と行動が促進されます。
②企業文化の形成
社是は企業の価値観や理念を表現し、それを全社員が共有することで、強固な企業文化を形成する手助けとなります。これにより、社員間の結束力が高まり、企業全体のモチベーション向上にも繋がります。
③社員のモチベーション向上
社是が明確にされることで、社員は自分の業務が企業全体の目標達成にどう貢献しているのかを理解しやすくなります。これにより、自分の役割や責任感が明確になり、仕事へのモチベーションが向上します。
④外部への信頼性向上
社是を明示することで、企業の理念や価値観を外部のステークホルダー(顧客、取引先、地域社会など)に伝えることができます。これにより、企業の信頼性が向上し、ビジネスチャンスの拡大にも寄与します。
⑤意思決定の基準提供
社是は企業が直面する様々な状況や課題に対して、どのように対応すべきかの基準を提供します。これにより、意思決定が迅速かつ一貫性を持って行われるようになります。
⑥採用活動の指針
社是を明確にすることで、企業の価値観や理念に共感する人材を採用しやすくなります。これにより、企業文化にフィットする人材を確保し、長期的な成長を支える基盤を築くことができます。
2.社是と関連用語の関係性
社是と同じような言葉に社訓、経営理念などがあります。
この章ではこのあたりの整理をしていきますが、
上位から「経営理念→社是→社訓→行動指針」とイメージをしていただくとよいと思います。
また、3章の事例でも分かるかもしれませんが、社是≒経営理念とも言うことができますのであまり考えすぎないことが大切です。
2.1社是と経営理念
社訓と経営理念は、どちらも企業の方向性や価値観を示すものですが、その目的や内容に違いがあります。経営理念の方がより広範囲かつ長期的な視野にたった表現になります。
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経営理念 |
社是 |
定義 |
企業の存在意義や使命、価値観、ビジョンを包括的に示すもの。 |
企業の存在意義や基本理念を示すもの。 |
目的 |
企業の全体的な方向性を定め、長期的な成長と持続可能性を追求すること。 |
企業全体の方向性や価値観を示し、企業文化や経営理念を社員や外部に明示すること |
内容 |
抽象的で包括的な内容が多い。 |
抽象的で理念的な内容が多い。 |
具体例 |
「全ての人々に豊かな生活を提供する」 「持続可能な社会の実現を目指す」 「革新と挑戦を通じて社会に貢献する」 |
「お客様第一」 「品質第一主義」 「社会貢献」 |
経営理念については以下のブログでも解説しています。
経営理念とは?MVV・クレドなどの関連用語との違いを事例を交えて解説
2.2社是と社訓
社是は企業の根本的な価値観や存在意義を示すものであり、社訓はその価値観や存在意義に基づいて社員が日々の業務で実践すべき具体的な行動指針を示すものです。
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社訓 |
社是 |
定義 |
社員が日々の業務や行動の中で守るべき具体的な指針やルール。 |
企業の存在意義や基本理念を示すもの。 |
目的 |
社員の行動や意思決定をガイドし、企業の一体感や統一感を醸成すること。 |
企業全体の方向性や価値観を示し、企業文化や経営理念を社員や外部に明示すること |
内容 |
実務に直結した内容が多い。 |
抽象的で理念的な内容が多い。 |
具体例 |
「毎日改善を心がける」 「チームワークを大切にする」 「顧客の声に耳を傾ける」 |
「お客様第一」 「品質第一主義」 「社会貢献」 |
社訓については以下のブログにて解説しております。
2.3社是とMVV等の関係性
MVVとの相関関係・位置づけを図示すると以下のようになります。
2.1~2.3で経営理念、社訓との違いを解説しましたが、ある程度の理解で問題ありません。細かい定義にこだわらず、自社で使いやすいものを検討し、選んでください。
何れも「作成」しておわりではありません。それらをどう落とし込み「浸透」させていくかです。
3.社是の事例
3.1京セラ株式会社
京セラでは、経営理念「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること。」とともに社是で「敬天愛人(けいてんあいじん)」という四字熟語を掲げています。
「常に公明正大 謙虚な心で 仕事にあたり 天を敬い 人を愛し 仕事を愛し 会社を愛し 国を愛する心 」という注釈付きで用いています。
2章で解説した経営理念との違いも理解しやすいのではないかと思います。
京セラ株式会社 HP https://www.kyocera.co.jp/sustainability/rationale/index.html
3.2伊那食品工業株式会社
伊那食品工業では経営理念と社是が同じ位置づけとなっていますが、「いい会社をつくりましょう」という社是を掲げています。
そして「いい会社」についても説明がされています。
「単に経営上の数字が良いというだけでなく、会社を取り巻くすべての人々が、日常会話の中で「いい会社だね」と言ってくださるような会社のことです。「いい会社」は自分たちを含め、すべての人々をハッピーにします。ハピネスこそ人間社会すべての究極の目的だと思います。「たくましく」とは、手を抜かず、仕事に一生懸命取り組むこと。また自分を律し、その厳しさに耐えることです。永続していく強い会社という意味も含みます。「やさしく」とは、他人を思いやることです。どちらを欠くこともなく、両立させている人たちの集まりが「いい会社」と呼ばれるのだと思います。 |
伊那食品工業株式会社 HP https://www.kantenpp.co.jp/corpinfo/corporate/philosophy
3.3株式会社セブン&アイ・ホールディングス
株式会社セブン&アイ・ホールディングスも京セラ同様に経営理念と同じ位置づけとなっています。
行動指針も掲載されており体系図も示されていてイメージしやすくなっています。
株式会社セブン&アイ・ホールディングス HP https://www.7andi.com/company/philosophy.html
4.古田土会計の事例
古田土会計も同様に社是=経営理念という位置づけとしています。
1.4で解説した4つの要素(①使命・ビジョン、②価値観・信念、③行動指針、④倫理・コンプライアンス)が入っていることが分かるのではないかと思います。
5.まとめ
以上、社是について解説してきました。
社是は度々触れたとおり、経営理念と近しい形で用いられていますが、社訓との違いは明確になったと思います。
社是と社訓はセットで用いられることが多いようですが、必ずということでもありません。
大切なことは、用語そのものではなく、「MVV」の要素がしっかりと入っていることです。さらには浸透させることです。
是非自社にとって使いやすい表現を用いて設定してみてください。
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