パーパスとは、英語で「目的」や「意義」を意味します。
特にビジネスや個人のキャリアにおいて使われることが多く、自分や組織が追求するべき最終的な目標や存在理由を指します。
パーパスは企業・個人において行動の指針となり、意思決定を導く基本的な価値観を形成することになりますので重要であることは事実です。
一方で、経営理念、ミッション・ビジョン・バリュー等同じような言葉も多数存在します。
そこで今回の記事では、企業・ビジネスにおけるパーパスに焦点をあて、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)との関係性、経営理念との関係性を紐解いて解説していきます。
1.パーパスとは?
1.1 パーパスとは
パーパスとは「目的・意図・意義」を意味しますが、もう少し具体的にすると以下のようになります。
「未来における社会的な存在目的」であり、 「なぜこの社会に存在するのか?」という問いに対する答え |
ダイヤモンド社 「理念経営2.0」 佐宗邦威 著 より引用
ミッションと混同するかもしれませんが、ミッションよりもより広範囲で社会性が強くなっています。→1.3で詳しく解説します。
一方、パーパスという言葉が騒がれ始めたのはここ5~10年程度です。特にミッションや経営理念、未来像、ビジョン等々同じような概念の言葉で考え、実行している企業も多数あります。
つまり、すでにパーパスの内容も包括されている場合も多いと思います。
実際に、上場企業を見てもすべての会社が「パーパス」を明確にしているわけではなく「経営理念」「ミッション」のみの企業も多数あります。その意味では、パーパス・パーパス経営は流行りと言える部分もありますのであまり細かく考えすぎないことをお勧めします。
パーパスを策定・共有するメリットは主に2点です。
① 企業が方向性を見失わず、一貫した行動を取ることに役立つ
② パーパスが共有されていると、組織やコミュニティの結束力が高まり、
協力し合って目標を達成することができる可能性が高まる
1.2 パーパスが注目され始めた背景
パーパスが注目され始めた背景は4点です。
消費者が製品やサービスの購入時に、価格や品質だけでなく、企業の社会的責任や環境への配慮といった倫理的な側面を重視するようになったことが大きな要因です。特に若い世代(ミレニアル世代やZ世代)は、企業の理念やパーパスに共感することを重要視します。
② 社会問題への関心の高まり:
環境問題、人権問題、経済的不平等など、グローバルな社会問題に対する関心が高まり、企業がこれらの問題にどのように取り組んでいるかが注目されるようになりました。これにより、企業が自らのパーパスを明確にし、社会的な課題解決に貢献する姿勢を示すことが求められるようになりました。
③ 投資家の意識変化:
ESG投資が広がり、投資家も企業の持続可能な取り組みやパーパスに注目するようになりました。長期的な視点で企業価値を評価する際に、パーパスは重要な要素とされています。
参考 ESG経営とは?
https://blog.kodato.com/esg-management
④ 労働市場の変化:
優秀な人材を引きつけ、維持するために、企業は働きがいや目的意識を提供する必要があります。パーパスを持つ企業は、従業員のエンゲージメントやモチベーションを高めることができ、結果として生産性の向上や離職率の低下につながります。
1.3 MVVとの関連性
パーパスとミッション・ビジョン・バリューの違いや関連性はどのようになっているのでしょうか?
MVVは以下の表のようにまとめることができます。
|
一言でいうと |
具体的に |
英語で表現すると |
Mission |
使命 |
何をするのか |
What(+why) |
Vision |
未来像 |
どこを目指すのか |
Where |
Value |
価値観・行動指針 |
どのように実現するか |
How |
そして、便宜上、上記にパーパスを当てはめると、
「なぜ社会に存在するのか」=「Why」となります。
ここが両者の大きな違いではありますが、1.1の解説の通りミッションに「why」が内包されているケースもあります。
パーパスとミッションは混同しやすいですが、パーパスの方が「社会にどのような価値を提供するのか」という「社会性」の視点が強くなります。
一方で、この差にあまり捉われすぎないことが重要です。
大切なことは、自社の中での定義をしっかりと行い、それを社員とお客様に共有することです。
パーパス・ミッションという言葉が大事なのではなく、内容・中身であることを忘れないようにしてください。
1.4 パーパスと経営理念の関係
パーパスと経営理念も似て非なるもの、という見方ができますが視点の広さや範囲が異なります。
経営理念を1.3に当てはめると、MissionまたはValueに当てはまります。
※経営理念とMVVの関係性についてはこちらを参考にしてください。
経営理念とは?MVV・クレドなどの関連用語との違いを事例を交えて解説
https://blog.kodato.com/management-philosophy
① 視点の広さ
パーパスは企業の社会的意義や長期的なビジョンに焦点を当て、
経営理念は企業の価値観や日常の行動基準に焦点を当てます。
② 内容の範囲
パーパスは社会全体に対する影響や貢献に関する広範な視点を持ち、
経営理念はより具体 的で内部的な行動指針を示します。
両者は補完し合う関係にあり、企業が持続的に成長し、社会に貢献するためにはどちらも重要な要素ですが、具体的にすると以下のようになります。
経営理念(Management Philosophy)
企業の信条や価値観: 経営理念は企業が大切にする価値観や信条、ビジネスの基本方針を示すものです。具体的な行動指針や方針を含むことが多いです。
社内の行動基準: 経営理念は従業員の行動基準となり、企業文化や企業風土を形成する要素として重要です。
日常業務の指針: 経営理念は日常業務における具体的な指針や行動規範を提供し、従業員がどのように行動すべきかを示します。
1.4 古田土会計のパーパス
1.3で解説したMVVとの関連を古田土会計に置き換えるとこのようになります。
古田土会計の存在意義・目的は「人を大切にする経営」を1社でも多くの会社に広め、実現させることです。具体的には、「日本で働く人々・そこに関わる人々や地域を元気に、幸せにする。」ということです。
また、幸せとは=働きがい(世のため人のため)とやりがい(給与・地位など)の両輪と考えています。
ミッション=「日本中の中小企業を元気にし、その社員と家族を幸せにする」は一見パーパスとも捉えることができますが、古田土会計にとっては、これは人を大切にする経営を広めるという目的を達成するための手段(=What)でもあるためこの位置づけにしています。
目指す世界観のイメージが以下のイラストです。
2.パーパスの事例
パーパス経営の事例として、パーパスを掲げている企業のHPからの引用を中心に紹介します。
ここではパーパスの内容の紹介にとどまりますが、実際に各社のHPを見て頂くと、経理理念・MVVとの関係性や具体的にどのように取り組んでいるのかがよりイメージできると思います。
・ダイキン工業株式会社
ダイキンは、「空気で答えを出す会社」というブランドパーパスを掲げ、社会課題を解決する企業であることを表現しています。
ダイキン工業株式会社HP https://www.daikin.co.jp/air
株式会社パワー・インタラクティブHP→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→ https://www.powerweb.co.jp/blog/entry/2023/05/31/100000
・ミズノ株式会社
スポーツメーカーのミズノは「より良いスポーツ品とスポーツの振興を通じて社会に貢献する」というパーパスを掲げていますが、一方で以下のような表現もしています。
ミズノグループは、1906年の創業以来「より良いスポーツ品とスポーツの振興を通じて社会に貢献する」という経営理念を掲げています。これは今後も変わることのない軸であり、すべてのステークホルダーに向けたミズノのパーパス(存在意義)です。 |
つまり、パーパス=経営理念ということです。
1.3でも触れたように、言葉の定義に縛られすぎずに自社にとっての「パーパスは?」「経営理念は?」と考えることが大事であるということが分かると思います。
ミズノ株式会社HP https://corp.mizuno.com/jp/about/topmessage
・日本電気株式会社
NECでは企業理念のページに「NECは、安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現を目指します。」というパーパスが掲載されています。
日本電気株式会社HP https://jpn.nec.com/profile/purpose/index.html
・株式会社すかいらーくホールディングス
すかいらーくホールディングスのパーパスは「食の未来を創造し 豊かな生活と社会の発展に貢献する」です。下図の通り、すかいらーくホールディングスでは経営理念が上位にあり、その下にパーパスが位置付けられています。
ホームページでは以下の通り解説されています。
すかいらーくグループでは、経営理念「価値ある豊かさの創造」を掲げ、人々の生活がより豊かになるよう「食」を通じた社会貢献をめざし、パーパス(存在意義)、ミッション、2030年長期ビジョン、2025年戦略ビジョン、バリューを以下の通り定めています。 |
株式会社すかいらーくホールディングスHP https://corp.skylark.co.jp/about/philosophy/
以上、4社ほどご紹介しましたがいかがでしょうか。
ミズノのようにパーパス=経営理念という会社もありますし、すかいらーくホールディングスのように経営理念が上位概念として位置づけられている会社もあります。
しかし、何れも「よりも広い概念」=「社会性」ということを意識されていることがわかると思います。
1.3で記載した言葉を再度引用しますが、大切なことは、自社の中での定義をしっかりと行い、それを社員とお客様に共有することです。
パーパス・ミッションという言葉が大事なのではなく、内容・中身であることを忘れないようにしてください。
3.パーパスの作り方
パーパスを見つけるためのヒントとしては、自分の価値観や情熱、強みを見直すことが挙げられます。
これらを基にして、自分が本当にやりたいことや、社会にどのように貢献したいかを考えるとよいと思います。
こちらの記事にミッションを発見するための質問、ビジョン、バリューを導き出すための質問を用意していますので、こちらに取り組んでいただくとパーパスに結びつく答えが見つかるかもしれません。
ミッション(使命感)とは?あなたのミッションを発見する33の質問
https://blog.kodato.com/mission-33-question
ビジョンとは? ビジョンを導き出すための質問30
https://blog.kodato.com/how-to-vision
バリューとは? バリューを導き出すための質問24
4.パーパス経営
パーパス経営とは、企業が自らの存在意義(パーパス)を中心に据えて経営を行うことを指します。
この経営手法は、利益追求だけでなく、社会的な貢献や従業員の幸福、持続可能な発展などを重視します。パーパス経営は、企業の全ての活動や意思決定においてそのパーパスが反映されることを目指します。具体的にはこちらの記事で解説していますのでご参考にしてみてください。
パーパス経営とは?パーパス経営を進めるための3つのポイント
https://blog.kodato.com/purpose-management
5.まとめ
以上、今回はパーパスについて解説してきました。
MVVや経営理念との違いについて概念としては理解できたのではないかと思います。
まずは自社のパーパスや経営理念、MVV等の位置づけや定義を作り是非具体的に落とし込んでみてください。もちろん、パーパス・経営理念などとこだわりすぎず、自社が大切にしている価値観や存在着を複数書き出し、その中からパーパス、経営理念、MVVと当てはめていくことでもよいと思います。肝心なことは、まず「作ってみる」ことです。
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