パーパス経営とは?パーパス経営を進めるための3つのポイント

    記事公開日: 2024.04.17

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    ここ数年「パーパス経営」という言葉をよく聞くようになりました。
    「パーパス経営」は企業が単に利益を追求するだけでなく、社会や環境への配慮や良い影響を追求する経営の手法です。
    そして、企業が単なる利益の最大化を追い求めることではなく、社会的な目的や価値を重視・実現し、企業を取り巻く関係者=ステークホルダー(株主、従業員、顧客、地域社会など)に対して責任を果たすことを重視する考え方です。

    企業である以上は利益を追い求めることも必須ではありますが、時代と共にそれだけでは生き残ることが難しくなってきています。

     

    ステークホルダーへの貢献・信頼獲得を重視したパーパス経営が世界的に注目されている中で、今回の調査結果を鑑みると、我が国の中小企業は、企業を取り巻く利害関係者(顧客・社員・取引先・社会)との結びつきを意識してきた企業が一定数存在することが確認される。

     

     

     

    2022年版中小企業白書

     

     日本においては「パーパス経営」と明確に打ち出してはいなくても「三方よし」や「理念経営」を含め一定数、同様の経営をしていることが伺えます。

     

    そこで今回は、パーパス経営とは何か?という定義や考え方を改めて整理・確認した後に、

    ミッション・ビジョン・バリューのミッションとの違いは何か?

    パーパス経営を進めるにあたってのポイントは何か?

    などを事例も交えながら解説していきます。

    1 パーパス経営とは?

    1.1    パーパス経営とは

    パーパス経営とは、文字通りパーパスを掲げ、社内外に周知し、パーパスに基づいて経営を行うことです。具体的には、以下の通りです。

     

    自社の存在意義を明確にし、いかに社会に貢献するかを定め、それを経営の軸として事業を行うことといえ

    J-Net21 HP


    そして、パーパスとは「目的・意図・意義」を意味しますが、もう少し具体的にすると以下のようになります。

     

    「未来における社会的な存在目的」であり、「なぜこの社会に存在するのか?」という問いに対する答え

    ダイヤモンド社 「理念経営2.0」 佐宗邦威 著 より引用

     

    ミッションと似ている?または同じでは?と思うかもしれませんが、ミッションよりもより広範囲で社会性が強くなっています。この辺りについては1.3で詳しく解説します。

    1.2    パーパス経営が騒がれ始めた経緯と背景

    パーパス経営が騒がれ始めたきっかけは、2019年にBRT(ビジネスラウンドテーブル)が「顧客・従業員・サプライヤー・地域社会・株主といったすべてのステークホルダーの利益のために会社を導くことにコミットする」という声明を発表したことにより経営の潮流が変わったことだと言われています。

    経団連 HP

     

    そして、
    ・ミレニアル世代の台頭により精神的な豊かさを重視するようになってきたこと
    ・VUCAと呼ばれる時代やコロナ禍を経て、これまでは儲けていれば生き残れた時代から、SDGSといった社会や環境によいことをしているかが求められるようになってきたこと
    が大きな理由として考えられます。

    しかしそれ以外にも、
    人口減少も重なって、働きがい・働く意義を示せない会社は生き残りが難しいため、
    または、消費者・取引先の理解を得るためにはパーパス経営を掲げる必要があるため、
    パーパス経営に取り組まざるを得ない、という消極的な事情もあると考えられます。

    ただし、一概に後者が悪いということではありません。
    それをきっかけにパーパス経営に取り組み、会社が変わり、世の中の役にたち、周りの人々を幸せにすることができることにつながるのであれば歓迎すべきことだと言えます。

    1.3    MVVとの関連性

    パーパスとミッション・ビジョン・バリューはどのような位置関係・関連性なのでしょうか?
    まず、
    ・ミッション = 使命
    ・ビジョン  = 未来像
    ・バリュー  = 企業の価値観や行動指針
    と定義されます。

    これらを
    ・ミッション = 何をするのか(What)
    ・ビジョン  = どこを目指すのか(Where)」
    ・バリュー  = どのように実現するか(How)
    と言い換えた場合、
    パーパスは「なぜ社会に存在するのか(Why)」
    となります。

    ここが両者の大きな違いです。
    特にパーパスとミッションは混同しやすいですが、パーパスの方が「社会にどのような価値を提供するのか」という「社会性」の視点が強くなります。

    一方で、この差にあまり捉われすぎないことが重要です。

    2章の事例で味の素株式会社の事例を挙げさせて頂いていますが、こちらもきれいにパーパスとMVVになっているわけではなく、パーパス=志という表現もされています。

    大切なことは、自社の中での定義をしっかりと行い、それを社員とお客様に共有することです。
    パーパス・ミッションという言葉が大事なのではなく、内容・中身であることを忘れないようにしてください。

     

    1.4 パーパス経営と人を大切にする経営

    1.3で解説したMVVとの関連を古田土会計に置き換えるとこのようになります。

     
    ミッション=日本中の中小企業を元気にし、その社員と家族を幸せにする、は一見パーパスとも捉えることができますが、古田土会計にとっては、これは人を大切にする経営を広めるという目的を達成するための手段(=What)でもあるためこの位置づけにしています。
    もう少し具体的に表すと、古田土会計が目指している存在意義・Whyは、「日本で働く人々・そこに関わる人々や地域を元気に、幸せにする。」ということであり、そのためには日本の企業の99%が中小企業であるため、中小企業を元気にしなければならない、という位置づけです。イメージは下のイラストのような世界観です。
    ※幸せとは=働きがい(世のため人のため)とやりがい(給与・地位など)の両輪と考えています。

     



     また、1.2でパーパス経営が流行っている理由を述べましたが、古田土会計グループが勧めている人を大切にする経営と共通点があります。

    人を大切にする経営とは、人を大切にする経営学会の会長である坂本光司氏が提唱されている考えです。
    具体的には、以下のような考え方です。

     

    「業績や効果・効率、あるいはライバル企業との勝ち負けを中軸に据えた経営学ではなく、関係する人々の幸せこそを、最優先・最重視する経営学」
    であり、関係する人々とは
    ①    社員とその家族
    ②    社外社員(仕入先・外注先など)とその家族
    ③    現在顧客と未来顧客
    ④    地域住民、とりわけ障がい者や高齢者など社会的弱者
    ⑤    出資者ならびに関係機関

     

    いかがでしょうか。BRTの声明(顧客・従業員・サプライヤー・地域社会・株主といったすべてのステークホルダーの利益のために)とほぼ同じであることが分かると思います。

    パーパス経営=人を大切にする経営、というのは言い過ぎかもしれませんが、大きな方向性は合致しているとも思います。
    時代としては、昔から言われる「三方よし」ではありませんが、会社に関わる全ての人を幸せにする、ということが求められている証でもあるかもしれません。

     

    1.5 パーパス経営にリスクはある?


    パーパス経営のメリットは一般的には、従業員のモチベーション向上やブランド価値の向上などの利点があるとされていますが、リスク(デメリット)はあるのでしょうか?

    考えられるリスクは5つです。
    ①    財務的負担
      パーパス経営は、社会的な価値追求や環境への貢献に焦点を当てるため、これにかかる費用が増加する可能性があります。これが企業の財務に負担をかけ、競争力に影響を与えることがあります。

    ②    短期的な利益の減少
      社会的な価値の実現には時間がかかることがあり、一時的には利益が低下する可能性があります。これが株主や投資家にとっては不利に働くことがあります。

    ③    認識と実行のギャップ:
     パーパス経営を掲げる企業が、実際にその価値観を実践しているかどうかには疑問が生じることがあります。企業の実践が言葉だけでなく行動でも表れない場合、信頼性が損なわれる可能性があります。

    ④    市場の理解と需要の不一致:
     企業のパーパスや社会的な価値追求が、市場や消費者の期待と合致していない場合、商品やサービスの需要が低下する可能性があります。

    ⑤    従業員の適応困難性:
     パーパス経営が導入される際、従業員は新たな価値観や目的に適応する必要があります。これが組織内での混乱や抵抗を引き起こす可能性があります。

    これらの中で特に注意は必要なことは③かもしれません。
    パーパス経営に取り組むことによって言行不一致となると信頼性が損なわれて業績に悪影響が出る可能背があります。

    一方で、だから取り組まない、ということも違うと思います。
    そうならない(言行一致)ためのポイントを3章で解説します。

    2 パーパス経営の事例

    パーパス経営の事例として、パーパスを掲げている企業のHPからの引用を中心に紹介します。
    ここではパーパスの内容の紹介にとどまりますが、実際に各社のHPを見て頂くとMVVやどのように取り組んでいるのかがよりイメージできると思います。

    ・味の素株式会社
    味の素グループは、創業以来一貫して事業を通じた社会課題の解決に取り組み、社会・地域と共有する価値を創造することで経済価値を向上し、成長につなげてきました。
    この取り組みをASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)と称し、ASVをパーパスを実現するための中核と位置付けた理念体系を“Our Philosophy”として設定しています。

     

    味の素株式会社 HP

     

    ・富士通株式会社
    わたしたちのパーパスは、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくことです。

    これから富士通が果たしていくべき役割は何かを、改めて考え、私たちの存在意義、パーパスを定めました。富士通は今、すべての企業活動を、このパーパス実現のための活動として、取り組んでいます。

    富士株式会社通 HP


    ・アディダスジャパン株式会社
    20年以上に渡り、持続可能性はアディダスの経営理念の中心であり続けています。その経営理念の根底にあるのは、「スポーツを通して、私たちは人々の人生を変える力がある」というアディダスのpurpose(存在意義)です。これからの数年、アディダスは持続可能性への取り組みを改めて大幅に拡大し、持続可能な製品を大規模に提供する包括的な消費者志向のプログラムへと移行していきます。

    アディダスジャパン株式会社 HP

     

    3 パーパス経営に必要なポイント

    3.1 経営計画書を作成する

    まず、自社のパーパスやMVVを明確にして経営計画書を作成します。
    また、1.5で解説したように言行不一致を招かないためにも常に方針や行動を振り返る道具として作成をお勧めします。

    経営計画書があることによって、お客様から「書いてあることとやっていることが違うじゃないか!?」とお叱りを頂くこともありますが、書いてあるからこそお客様の期待値がはっきりとわかり、お叱りをいただく、とも考えられ、書いていなければ素通りされてしまうかもしれません(=無言のクレーム)。

    そして、言っていることとやっていることを少しずつ近づけていく努力ができます。



     経営計画書の内容・項目は以下の図の通りです。
     



    経営計画書の具体的な書き方についてはこちらを参考にしてください。


    年間3,000冊発行している経営計画書のフォーマットから学ぶ「経営計画書の書き方講座(初級編)」

    3.2 経営計画発表会で社内外に伝える

    経営計画書を作成したら、それを社内外に伝えるために経営計画発表会を行います。
    経営計画発表会は社員のために実施するものですが、そこに関係者を招待して会社の方針を聞いて頂くことによって会社の方針のみならず、魅力などもよく伝わります。
    また、以下のような内容を発表の中に盛り込んで頂くとストーリー性が出ると同時に、まさにパーパスを伝える、ということになります。

    ①    わが社が社会にもたらすことは?
    ②    わが社が存在する目的は何か?
    ③    何が達成できたら、自分たちは社会からいなくなってもいいのだろうか?
    ④    わが社が無くなったら社会にどのような損失がおこる?
    ⑤    何が無くなったら自分たちではなくなるか?

    3.3 仕組みで組織に浸透させる(日常に落とし込む)

    パーパス経営を行うためには、パーパスの浸透が欠かせません。
    その意味では、経営理念やミッション・ビジョン・バリューの浸透と同じとなります。
    具体的な方策についてはこちらの記事を参考にしていただければと思いますが、根性論ではなく仕組化すること(=行動・習慣化)が大きなポイントとなります。

    ミッション・ビジョン・バリューを浸透させる秘訣

    4 まとめ

    以上、今回はパーパス経営について解説してきました。
    パーパス経営という言葉自体は比較的新しい言葉かもしれませんが、その根底に流れている思想は昔から日本人が実践してきたものとも言えます。
    それを会社・組織としてどのように取り入れていくのかをこの記事を通して考えていっていただけたらと思います。

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