戦略と戦術の違い

    記事公開日: 2024.05.21

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    戦略・戦術はともに目的・目標達成に不可欠なものであるということはイメージできると思います。

    それぞれを簡単に整理するとこのようになります。

     

     

    戦略

    戦術

    定義

    方向性・順番

    方法・やり方

    範囲

    全体最適(広範囲)

    部分最適(狭い・局所的)

    検討する項目

    ターゲット・ニーズ

    差別化・資源の配分

    具体的な方法

    手段

     

    これらをさらに具体的にすると戦略と戦術の違いは何でしょうか?

    明確に違いを説明できそうでできない方も多いのではないかと思います。

     

    一方で、この辺りの整理ができていない、もしくは混同するとどのような影響ががあるのでしょうか?

    主には4つ考えられます。

    ・目標が不明確になる

    戦略が具体的な行動に焦点を当てている場合、大局的な目標が曖昧になる可能性があります。

    ・資源(リソース)の無駄使いが発生する

    戦略と戦術の区別がない場合、リソースが不適切な手段に割り当てられる可能性があります。

    ・実行力が低下する

    戦略的なビジョンがクリアでない場合、実行段階での混乱や指導の欠如が生じる可能性があります。

    ・成果の低下

    戦略と戦術を混同すると、全体的な計画の一部分が欠落し、目標達成が難しくなる可能性があります

     

    今回の記事では、このような事態を招かないように「戦略」と「戦術」について事例も交えながら整理していきます。

    1 戦略と戦術の違い

    まずは戦略と戦術の違いをそれぞれの定義を元に簡潔に整理していきます。

    1.1戦略とは

    戦略は、大局的な視点から目標を達成するための計画や手段を指します。つまり、組織や個人が長期的な目標を達成するための全体的なアプローチ(方向性)や方針を指します。

    例えば、ある企業が市場シェアを拡大するために、新しい製品の開発、マーケティング戦略の変更、新規顧客の獲得などの大きな計画を立てることが戦略です。

     

    もう少しかみ砕くと

    「目的・目標」に向かって「対策・方針」を明確にし「優先順位をつける」

    と表現できます。

     

    もう一つ、重要な概念に「資源をどこに集中するか」というものがありますが、こちらは2.1で解説します。

     

    参考 経営戦略とは? 9Stepで考える中小企業の経営戦略の立て方

     

    参考 毎年1,000社超の企業に指導してきた経営計画書の書き方

    1.2戦術とは

    戦術は、戦略の実施における具体的な手段や方法を指します。つまり、目標達成に向けて具体的な行動を起こす方法や戦略の実行の手段です。例えば、特定のマーケティングキャンペーンの実施、製品の価格設定の調整、販売チャネルの拡大などが戦術に当たります。

    より現場レベルの施策となります。

    1.3 戦略と戦術の違い

    戦略と戦術を図解するとこのようなイメージです。

     

     

    そして、冒頭に記載した表と重なりますが、会社・組織に当てはめて戦略と戦術の違いをまとめると表のようになります。

     

     

    戦略

    戦術

    考える人

     

    全社レベル:経営者

    ※部門レベルの場合は部門長等各階層の長が考えるが、全社レベルの戦略に則ることが前提

    全社員

    情報の流れ

    トップダウン

    ボトムアップ

    (トップダウンもあり)

    スパン

    長期的

    短期的

    範囲

    全体最適(広範囲)

    部分最適(狭い・局所的)

    検討する項目

    ターゲット・ニーズ

    差別化・資源の配分

    具体的な方法

    手段

     

     

    また、英語で表現をするとこのように表現することもできます。

    目的:objective

    目標:who(誰に) 

    戦略:what(何を) →モノではなくコト発想が大事

    戦術:how(どうやって売るのか)

     

    さらに、古田土会計グループの経営計画書に記載している「事業構造」の図だとこのように表現できます。

    戦略・戦術ともに未来像(ビジョン)につながっていますが、「戦略→戦術」という「→」の通り、戦略があり、その後に戦術となります。

     

    2 戦略の誤りは戦術ではカバーできない

    戦略と戦術の関係を理解するために、1つ問題です。

    以下の図で正しい、又は会社がよりよい方向へ向かう順番はどうなると思いますか?

     

     

     

    答えは、A → B → C → Dとなります。

    A → B → D → CとDとCを逆に考えた方も多いかもしれません。

    なぜこのようになるのか、事例を元に解説していきます。

    2.1戦争(失敗の本質)に見る戦略と戦術

    「戦略の失敗は戦術ではカバーできない」ということはよく言いますが、その代表的な例は戦争で日本がなぜアメリカに敗戦したことです。

    ではなぜ負けたのでしょうか?技術力でしょうか?武器の量でしょうか?

     

    詳しくは参考の書籍等を調べて頂ければと思いますが、ミッドウェー海戦を例に簡単にまとめると両軍の戦略は以下の通りとなります。

     

    日本海軍の命令(戦略)

    ・ミッドウェー島を攻略し、ハワイ方面から企図する敵の機動作戦を封止するとともに

    ・出撃する敵艦隊を撃滅する

    米軍の命令(戦略)

    ・日本の空母の撃滅

     

    いかがでしょうか?

    日本軍の命令は、目標が2重かつ曖昧であることに対し、米軍は1つかつ具体的です。

    結果、日本軍は明確な目標が無く行き当たり場たりの戦闘を行った結果、日本の弱点(燃料補修・資源輸送)を見定め、目標を明確にした=資源を1つに集中させた米軍に空母を4隻沈められて太平洋の主導権を喪失してしまいました。その後の結果はご承知の通りです。

    日本軍は多数の地で勝利を収めたものの目標達成につながる勝利が少なく、アメリカは目標達成につながる勝利が多かったのです。

    日本軍は「どこかの戦場で大勝利をすれば勝敗が決まる」という曖昧な目標・考えが根底にあったことも原因と言われています。

     

    まさに、戦略の間違いは戦術ではカバーできないということを歴史が証明している形です。

     

    残念ながら日本人の戦死者1万人以上、餓死・病死1.5万人以上が出たと言われるガダルカナル作戦での失敗にも触れておくと、敗因は米軍の圧倒的な陸上兵力に対し現場を把握せず米軍の戦力を過小評価した日本軍が戦力を逐次投入して戦力を消耗したことと、陸軍・海軍の連携が取れておらずバラバラに行動したことです。

    ※連合軍の死者は戦死者約1,600人、戦傷者約4,700人と圧倒的な差が生まれてしまいました。

     

    ※参考文献

    中公文庫 「失敗の本質」 戸部良一/寺本義也/鎌田伸一/杉之尾孝生/村井友秀/野中郁次郎 著

    ダイヤモンド社 「超入門 失敗の本質」 鈴木博毅 著

    2.2ビジネスにおける戦略と戦術

    2.1を踏まえると分かりやすいかもしれませんが、冒頭の問題の解説をします。

     

    A → B → D → C」は戦略が誤った、もしくは悪いままであっても局地的な戦い=戦術は正しい、もしくはよいということになります。

     

    登山で例えると、富士山を登るはずなのに、浅間山を登っている。かつ装備やルートの設定(=戦術)がよいのでどんどん進んでしまい間違った山を登っていることに気づかないというとんでもない状態です。

    そんなことあるわけない、と思うかもしれませんが、これが実際に起こっていたのが2.1で触れた日本軍だったわけです。

    局地戦では勝利を重ねていたために勝利に向かっていると思い込んでいたということです。

     

    つまり、企業にとって「どう戦うか(戦術)」の前に「どこで戦うか(戦略)」を正しく見定めることが

    何よりも重要となります。

     

    そして、ビジネスで表すと、

    経営者の戦略が誤っていると、人の倍は働いても利益は出ない。会社をつぶすこともあります。

    逆に、戦略が正しいと遊んでいても利益は出る。

    という形で表すこともできます。

     

    また、1.3の事業構造の図のポイントは、未来像(ビジョン)は戦略・戦術・目標数値それぞれとつながっていますが、戦略・戦術・数値は一方通行の矢印になっている点です。

    つまり、戦略の誤りは戦術ではカバーできないということを表しています。

     

    これらをふまえて、改めて戦略と戦術を整理します。

    ビジネスにおいて、経営戦略の策定では、最終的な企業目標を達成するための大まかなプロセスを決めていきます。

    具体的な決定事項としては、経営ビジョンや事業ドメイン、各機能の役割、経営資源の配分などが挙げられまず。

     

    一方で、経営戦術の策定では経営戦略を意識しながら、より具体的な施策を考えていきます。例えば、経営資源(ヒト・モノ・カネ)の調達方法や、さらに細かい資源配分(組織内への振り分け)をイメージすると分かりやすいと思います。

    3 古田土会計グループの戦略と戦術

    3章では、戦略と戦術の違いについてよりイメージしやすくなるように古田土会計グループの戦略と戦術について少し解説をしていきます。

    全てをこの場で解説することは難しいですが、エッセンスを感じ取っていただければと思います。

     

    古田土会計グループの経営計画書はこのような構造となっていますが、戦略と戦術について個別に解説していきます。

    経営計画キャンバス®

     

    3.1 古田土会計グループの戦略

    まず、古田土会計グループの戦略ドメイン(事業領域)はこちらです。

     

    誰に:日本中の中小企業の社員とその家族

    何を:元気

    どのように:人を大切にする経営計画書と古田土式月次決算書を通じて

     

    その上で、もう少し詳しく戦略を解説すると、ペルソナとポジショニングは以下の図のようになります。

     

     

    その他に、

    ・サービス(社員教育)の差別化

    ・ビジネスモデルの差別化

    ・ブランドの差別化

    等といった項目でまとめています。まとめると以下の表の通りです。

     

     

    更に、商品の差別化としては以下の通りです。

     

     

    まとめると、目的(ミッション)を明確にし、それを元に戦略ドメインを設定。

    更に、ここでは触れていませんが、ビジョンや目標も策定しています。

    そしてペルソナ、どのように差別化を図るか、ということを整理しています。

    3.2古田土会計グループの戦術

    続いて戦術です。

    戦術は、お客様(既存)に関する方針・お客様(新規)に関する方針、社員に関する方針、電話に関する方針、クレームに関する方針等個別具体的な方針をいくつも作成しています。

    ※経営計画キャンバス参照

    例えば、お客様(既存)に関する方針では、どうのようにお客様と向き合うのか、といったことを具体的に記載し、チェックリストのよう役割も果たします。

     

     

    4まとめ

    以上、戦略と戦術の違いについてビジネスだけでなく戦争の事例も含めて解説してきました。

    いかがでしたでしょうか。

    戦略と戦術の違いだけでなく、戦略の重要性も同時に理解していただけたのではないかと思います。

    自社の戦略と戦術を考える際の参考にしてみてください。

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