経営方針とは?MVVとの関連性を中心に分かりやすく解説!

    記事公開日: 2023.10.17

    マネるだけ、埋めるだけで作れる 経営計画書 作成シート(ダイジェスト版)

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    経営方針とは、文字通り「会社が考える経営に対する方針・考え方」であり、
    「企業・経営者の経営に対する姿勢や考え方」
    と言えます。

    「経営方針」の捉え方にも幅がありますが、一般的に「経営方針」というとこの考え方を指すことが多いと思われます。

    「よい会社」を作っていくためには、「経営に関する仕組」が必要でありまさに「経営計画書」の作成と運用に他なりませんが、まずはその土台となる経営方針(基本方針)があってこそです。

    そこで今回の記事では、狭義の経営方針について、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)や経営理念、行動指針との違いや位置づけにも触れながら解説していきます。

    この後の本文では「基本方針」と記載している部分もありますが、「経営方針」と読み替えて頂いて結構です。

     

    1.経営方針とは

    1.1    経営方針の定義

    経営方針を定義すると以下のようになります。

    ミッション(使命感・経営理念)を達成するための大方針・基本方針であり、社長の経営に対する「姿勢」

     

    経営方針(基本方針)は、事業経営に関する最も基本的なもので、これによって会社の進む方向を明らかにするものです。
    また、組織や企業が目標を達成し、成功を得るために採るべき方向性や戦略の基本的な概念を示すものであるともいえます。

    1.2 ミッション・ビジョン・バリューとの関係性

    経営方針(基本方針)はミッション・ビジョン・バリューのどこかに当てはまるものではなく、ミッション・ビジョン・バリューのどれをとっても、この基本方針から外れていないことが大切です。

    「樹木」に例えると、「果実」はそれによって多くの人々が豊かになると考えるとミッション(目的)であり、「花」は果実が実るための前段階という意味でVision(未来像・目標)、それを支える「土壌」はValue(行動指針)となります。そして、この3つをつなぎ、貫く「幹」が基本方針となます。

    しっかりとした果実が実るかどうか、きれいな花が咲くかどうかは、しっかりとした土壌と幹が必要になります。逆に、土壌に栄養が不足していたり、幹が枯れている・空洞である場合には花・果実は実らない可能性もあります。



    また、違う形でミッション・ビジョン・バリューやフィロソフィーとの関係性を図解すると以下のようになります。
    経営方針は「ミッション・ビジョン・バリューを貫くもの」とも言えますし、「ミッション・ビジョン・バリュー全体を包括するもの」とも言えます。
    大事なことは「わが社がどのような姿勢で経営を行うか」という「姿勢」である、ということです。


    1.2 経営方針の重要性

    経営方針は1.1の解説の通りミッション・ビジョン・バリュー全体を貫く、または包括する概念となります。具体的には、経営方針は組織や会社が達成しようとする長期的な目標や方向性を示す重要な要素です。
    経営方針がなぜ重要か、以下に列挙しますが、一言で言うと以下の通りです。

    「わが社は~~という姿勢で経営を行う」
    という経営方針を示すことは、組織全体の方向性や目標を明確にし、組織が効果的に運営され、成長し続けるための基盤となるためです。

    以下、もう少し詳細に記載します。

    ①    方向性を提供する役割を担う
    経営方針は、組織や会社がどのような方向に進むべきかを示す指針を提供します。これにより、組織全体が一貫性を持ち、共通の目標に向かって協力できるようになります。方針が明確であれば、従業員は自分の役割や責任を理解しやすくなり、組織全体の効率性が向上します。

    ②    目標設定と計画の基盤となる
    経営方針は、組織が達成したい具体的な目標とその達成方法を策定するための基盤となります。経営者や組織の指導者は、方針に基づいて中長期的な戦略を策定し、それに基づいて具体的なアクションプランを立てることができます。

    ③    統一感と連携を促進
    経営方針は、組織内の異なる部門や従業員間で統一感を生み出す役割を果たします。共通の方針が存在することで、異なる部門やチームが協力しやすくなり、一貫性のあるサービスや製品を提供できるようになります。

    ④    ステークホルダーへの伝達
    経営方針は、組織のステークホルダーに対して、組織の価値観やビジョンを伝える手段としても機能します。顧客、投資家、取引先、従業員など、異なるステークホルダーが組織の方針を理解し、信頼できる組織であると認識するのに役立ちます。

    ⑤    変化への対応
    経営方針は、環境や市場の変化に適応するための柔軟性を組織に与えます。方針や方針を元にした戦略を適宜見直し、修正することで、新たな機会や課題に対応し、競争力を維持することが可能です。

    このように、経営方針がしっかりと策定され、実行されることは、組織の成功に不可欠です。

    1.3 経営方針を作ることのメリット

    1.2の重要性と重複する部分もありますが、会社の「方針(価値観)」を理解してもらうことで、

    その方針(価値観)にあったお客様や社員、取引先が集まってくることが最大のメリットです。

    例えば、古田土会計の経営方針は「人を大切にする経営」です(詳細は1.5へ)。
    採用では、「人を大切にする経営」に共感した社員が入社してくれることにより、自分中心の社員の入社が抑えられ、よりよい社風形成が行いやすくなります。
    また、お客様も同様に「人を大切にする経営」に共感して下さるお客様が多くなり、脱税思考や例えば社長の給与だけが高額で社員の給与は世間相場以下といった社長自身がよければよいというお客様の比率が少なくなるため、社員の仕事のやりがいにもつながっています。

    経営方針を作成することによるメリットは以下の通りです。

    ① 方向性の明確化
    経営方針を作成することにより、組織や企業の方向性が明確化されます。これは、組織全体が一貫性のある目標やビジョンに向かって進むために不可欠です。明確な方向性があれば、従業員やステークホルダーは目標を理解しやすくなり、協力しやすくなります。

    ② 目標の設定と優先順位付け
    経営方針を策定することで、組織は長期的な目標を設定し、それに合わせて戦略やアクションプランを立てることができます。これにより、組織は優先順位を付けてリソースを効果的に配分し、目標の達成に向けて進むことができます。

    ③ 組織全体の一貫性
    経営方針は、組織内の異なる部門や従業員間で一貫性を生み出します。共通の方針が存在することで、組織は統一感を持ち、異なるチームや部門が協力しやすくなります。この一貫性は、製品やサービスの品質向上にも寄与します。

    ④ ステークホルダーへの伝達
    経営方針は、組織のステークホルダー(顧客、投資家、従業員、取引先など)に対して、組織の価値観やビジョンを伝える手段として役立ちます。ステークホルダーは組織がどの方向に向かっているかを理解し、信頼感を持つのに役立ちます。

    ⑤ 変化への対応
    経営方針は、環境や市場の変化に適応するための柔軟性を提供します。方針を適宜見直し、修正することで、組織は新たな機会や課題に対応し、競争力を維持することができます。

    経営方針を策定することは、組織の長期的な成功に貢献し、方針が適切に実行されることで、目標の達成や成長の機会を最大限に活用できるようになります。また、外部環境の変化に対する適応力を高め、持続可能な競争力を維持するのにも役立ちます。

    1.4 経営方針の事例    

    ここでは、基本方針の事例を3社紹介します。
    言葉、表現はそれぞれですが、1.1、1.2で解説させて頂いた要素が入っているかどうかということに注目してみて頂くとより理解が進むと思います。

    ① 清水建設
    清水建設では経営方針として、「社是」、「経営理念」、「長期ビジョン:SHIMZ VISION 2030」、「中期経営」を掲げています。

    https://www.shimz.co.jp/company/about/strategy/

     

    ②    トヨタ自動車
    トヨタ自動車のHP(トヨタ自動車75年史)では『「トヨタ基本理念」のもと、2011年3月に「トヨタグローバルビジョン」を策定。その実現に向けた中長期経営計画などを立案し、達成すべき目標を定め、実現に努めている。 また従業員は、「トヨタ基本理念」を実践する上で、共有すべき価値観や手法がまとめられた「トヨタウェイ2001」、「トヨタ行動指針」を行動原則とし、日常業務にあたっている。』と記載されています。
    この基本理念(CSR方針)が基本方針と同義でると捉えることができます。

     

    https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/data/conditions/philosophy/overview.html

     

    ③    ユニクロ
    ユニクロのHPでは経営方針として、トップメッセージ、トップインタビュー、業界でのポジション、配当政策、事業リククの5つが記載されています。
    その中のトップメッセージでは、
    「あらゆる人々の快適な日常生活に欠かせない「服のインフラ」として、世界中のお客様から最も愛されるNo.1ブランドになることを本気でめざします。

    No.1ブランドになるということは、「ユニクロで買えば安心」だと思ってもらえる、世界中の人たちから信頼されるブランドになるということです。我々は世界中でLifeWear(究極の普段着)のコンセプトを繰り返しお伝えし、その価値に共感していただく商売を追求してきました。進出した国や地域でどんな貢献ができるかを常に考え、行動してきました。そうした積み重ねの上に、信頼が生まれます。」

    と記載されており「基本方針」とも言えます。
     


    https://www.fastretailing.com/jp/ir/direction/message.html

    1.5 古田土会計の経営方針

    古田土会計の経営方針は「人を大切にする経営をする」です。
    1.2の図で表現するとこのようになります。

     


    「人を大切にする経営」が根幹となってミッション・ビジョン・バリューがあります。
    そして、以下の経営方針ではそれを1~7で詳細に落とし込んで解説しているという形です。そこには経営理念や使命感と同じ表現も含まれていますが、あくまで「人を大切にする経営」に基づいているものです。

     

     

    2.経営方針の作成のポイント

    2.1 経営方針は誰が作るか

    経営方針は1.1の定義で述べた通り、「社長の経営に対する姿勢」です、そのため特に中小企業では経営者が作成することをお勧めします。そして、広く従業員やステークホルダーに伝える重要な文書(経営計画書)やガイドラインとして表現されることが一般的です。

    2.2 MVVを貫く概念を端的に表現する

    古田土会計の経営方針は繰り返しになりますが、「人を大切にする経営」です。
    また、1.4の事例で挙げさせていただいたトヨタ自動車でいえば基本理念(CSR基本方針)に該当し、
    ユニクロでは「あらゆる人々の快適な日常生活に欠かせない「服のインフラ」として、世界中のお客様から最も愛されるNo.1ブランドになることを本気でめざします。」と表現されています。
    このように、「わが社の経営方針は~~~です。」と皆が言えるように、1行~2行程度で自社の経営に対する姿勢を文字化することがポイントです。
    つまり、「ミッション・ビジョン・バリューを貫くもの」は何か?
    という問いに答えるものです。

    2.3 MVVの策定から始める

    経営方針の作成にあたり、
    ミッション・ビジョン・バリューを先に作るべきか、経営方針を先に作るべきかどちらでしょうか?

    答えは、ミッション・ビジョン・バリューから作成、です。

    あくまで、ミッション・ビジョン・バリューを達成するために戦略・戦術をどうするか?と考えていく際に「経営方針」が指針となるという位置づけになります。

    ミッション・ビジョン・バリューのついては別の記事で解説していますので、そちらの記事を参考にしてみてください。

    ミッション・ビジョン・バリューを浸透させる秘訣

    ミッション(使命感)とは? あなたのミッションを発見する33の質問

    ビジョンを導き出すための質問30

    バリューとは? バリューを導き出すための質問24

    3.経営方針に関するQ&A

    3.1 経営方針は状況に応じて変えてよい?

    経営方針を世の中の状況や会社の状況によって変えることはよいですが、解説の通り経営に対する価値観であり根幹でもあり、MVVなど影響が多岐にわたるため毎年など頻繁に変えるものではありません。
    古田土会計では「人を大切にする経営」を標榜して10年ほど経ちますが、それ以前は明確に言語化されていなかったものの、同様の価値観はありました。つまり、基本的には変わっておらず表現方法が変わったと言えます。

    3.2 経営方針はいつ作るのがよい?

    経営方針はミッション・ビジョン・バリューをも包括する、という意味ではミッション・ビジョン・バリューを作成する前段階でどのような経営を行っていくかを明確にした方がよいです。
    一方で、必ずミッション・ビジョン・バリューの作成前でないとダメかと言うとそうではありません。
    ミッション・ビジョン・バリューを作成して、もっというとミッションやビジョンのみを作成して経営を行っていく中で生まれてくるということもあります。
    古田土会計の基本方針も3.1の通り最初からあったわけではありません。もっというと経営計画書を作成し始めた第9期(32年前)は全くありませんでした。
    経営を行い、PDCAを回していく中で、また様々な経験を経た中でうまれてきたものです。

    3.3 経営方針は社長1人で考えなくてもよい?

    2.1の解説の通り、原則は経営者が考えるべきものです。
    企業のステージによっては、経営幹部が参加してディスカッションすることも有効ではありますが、任せっ放しにせず最後は経営者自身が決めるものです。

    3.4 経営方針はどのように浸透させればよい?

    経営理念と同じく、掲げただけでは効果はありません。いかに社員に方針を浸透させるか、徹底させるか、お客様をはじめとしたステークホルダーに伝えるかは大きなポイントです。
    こちらにつきましては、経営計画書を作成し、経営計画発表会を行うといったものが代表的な方法となりますが、こちらの記事も参考にしてみてください。

    ミッション・ビジョン・バリューを浸透させる秘訣

    4.まとめ

    以上、今回は「経営方針」についてまとめました。
    「経営方針」もミッション・ビジョン・バリューや経営理念と同じく何となく漠然としたイメージがあるかもしれませんが、1章で解説させていただいたように図にして考えると整理しやすいと思います。
    また、ミッション・ビジョン・バリューの記事でも度々触れていますが、一番もったいないのは、「本や記事によって考え方が異なる気もするけど経営方針って何?」と、考えすぎたり正解を求めすぎて前に進まないことです。
    私たちは学者ではないので、ミッション・ビジョン・バリュー、経営理念・経営方針・クレド・フィロソフィー等の言葉を正しく理解・整理することよりも「行動」に移すことの方が大切です。
    ある程度概念が理解できた段階、もしくは自分にあった考え方が見つかった段階で自社のものを作成し、自社に落とし込んでみてください。そして、状況に応じてPDCAを回していくことが何より重要です。

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