CSV経営とは?

    記事公開日: 2024.04.11

    マネるだけ、埋めるだけで作れる 経営計画書 作成シート(ダイジェスト版)

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    CSV経営とは、企業が自社の事業や製品を通じて社会課題の解決に取り組み、かつ利益を得ようとする考え方です。
    これはこれでその通りなのですが、同じような言葉にCSRという言葉があります。こちらとは何が違うのでしょうか?
    また、サスティナブル経営とCSV経営の違いはなんでしょうか?
    今回の記事では改めてCSV経営の定義を確認した後、この辺りにも触れながらCSV経営を紐解き、更にその進め方のポイントについて解説していきます。

    1.CSV経営とは?

    1.1 CSV経営の定義

    CSV経営とは、企業が自社の事業や製品を通じて社会課題の解決に取り組み、かつ利益を得ようとする考え方です。


     
    中小企業白書では以下の通り定義されています。

    「CSV」とは、「Creating Shared Value」の略で、「共有価値の創造」、「共通価値の創造」等と訳される。CSV は、企業の事業を通じて社会的な課題を解決することから生まれる「社会価値」「企業価値」を両立させようとする経営フレームワークである。

    2014年版 中小企業白書

    別の表現をするとこのようになります。
    CSV経営では企業は利益追求だけでなく、社会問題の解決や持続可能な発展に貢献することで、新たなビジネス機会を創出し、同時に社会との共有価値を生み出すことを目指します。これにより、企業は社会的な課題に対処するためのビジネスモデルを構築し、そのプロセスで自らの競争力を高めることができます。

    具体的な例としては、環境問題や貧困削減などの社会的課題に対処するためのビジネスモデルや取り組みが挙げられますが、具体的な事例は4章で解説します。

    1.2 CSV経営が進んできた背景

    CSVの概念は、マイケル・E・ポーター(Michael E. Porter)とマーク・R・クレイマー(Mark R. Kramer)によって2011年に提唱されました。

    大まかな流れは以下の通りです。


    東洋経済新報社 CSV経営戦略 名和高司 著


    つまり、グローバル化の進展、SNSの普及、環境問題や社会格差などの社会課題の深刻化、顧客の価値の多様化等により企業は単なる利益追求だけでなく、社会的価値の創造と経済的利益の両立を目指す必要性を認識するようになり、その結果、CSV経営が進展してきたと考えられます。

    2.CSV経営と類義語の関係性

    2章では、類義語との関連性や違いを解説していきます。
    まず、前提として各言葉の位置づけを図のように整理しました。こちらをイメージしながら読み進めて頂けるとよいと思います。

     

     

     2.1 CSVとCSR

    CSVは本業で高収益を上げることと、社会課題の解決を同時に追求し実現しようというものでCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)は企業が社会的責任を果たすために、利益追求活動とは別に社会貢献を行うことを目指しています。

    つまり、CSV経営ではCSRとは異なり、社会的な活動が単なる「負担」や「寄付」ではなく、企業自体のビジネス成果に密接に結びついています。

     

     

    2.2 CSV経営とサスティナビリティ経営

    CSV経営はビジネス活動そのものが社会的価値と経済的利益の両立を追求するのに対し、サスティナビリティ経営は企業が持続可能な社会・環境を促進するために全体的な取り組みを行うことを目指します。

    もう少しかみ砕くと、CSV経営は企業が自らの事業活動を通じて社会的課題の解決や価値創造に直接的に貢献することを目指し、ビジネスモデルそのものが社会的課題への解決策を提供し、同時に企業に経済的な利益をもたらすことを追求します。
    サスティナビリティ経営は、企業が持続可能な社会・環境の構築に向けて、経済的、社会的、環境的な側面を総合的に考慮して事業を展開することを目指すというアプローチの違いがあります。

    3.CSV経営の事例

    3章では、CSV経営の事例として、まずはイメージしやすいように大企業の事例を解説します。

    ・キリンホールディングス株式会社
    キリングループがCSV経営を経営の基軸に据えた直接のきっかけは、2011年3月11日に日本で発生した東日本大震災とのことで、2013年にCSV経営を表明しています。

    「社会課題に対して、商品やサービス等を通じてアプローチしていくことが、結果として事業にもプラスの影響をもたらす」として、CSV の実現に取り組んでいくことを決め、具体的には、飲酒運転による交通事故の多発という社会問題に対して、世界初のノンアルコールビールを開発。また、物流における環境負担の軽減を図るために、集荷する商品をできるだけ集約するなどして、CO2 排出削減とコスト削減の両立を可能にしたことなどが挙げられます。

     



     キリンホールディングス株式会社HP

     

    ・ネスレ日本株式会社
    「ネスレは、皆さまにとって、そして地球にとって有益となる製品の開発に取り組んでいます。私たちのパーパス(存在意義)は「食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます」です。」と記載した上で、気候変動対策を中心とするアプローチ等7つの観点からCSVについて解説されています。

    例えば、コーヒー豆の仕入先であるアフリカや中南米の貧困地域の零細農家に対して、農法に関するアドバイスを提供したり、銀行融資に対する保証をするなど栽培農家に対して密に支援することにより、高品質のコーヒー豆を安定して仕入れることを実現するとともに、品質の高い豆には価格を上乗せして支払うことで生産性の向上と農家の所得の増加をもたらしています。
     


     
    ネスレ日本株式会社HP

    4.中小企業におけるCSV経営

    4章では、少し古いですが2014年版中小企業白書でCSVについて触れられているので、その事例と古田土会計で考えるとどうなるか、ということを解説していきます。

    4.1 中小企業におけるCSV経営の取組

    ・有限会社中央タクシー
     


    2014年版中小企業白書より


     社会価値:歩行困難者が自由に移動できる
     企業価値:利用者の増加や囲い込み

    社会価値と企業価値の両立を実現した一つの要因として、社会的な課題に取り組んだことにより、地域住民の間でその企業の評判が口コミで伝わったことが挙げられます。
    身近な地域的課題を解決することで、地域住民に社会的価値を生み出すとともに、口コミによ企業の収益基盤がより強固になったという企業価値を生み出した好例といえます。

    ・大里綜合管理株式会社
     


    2014年版中小企業白書より


     社会価値:地域住民のあらゆる課題を解決
     企業価値:地域住民との信頼関係の構築や従業員の育成
          慈善活動ではなく本業につながる地域活動

    200を超える取り組みは、あくまで本業につながる活動として実施されており、会社の事務所自体が、誰もが気軽に入れる「公民館」のような場となっているとのことです。

    ここまで中小企業白書の2つの事例を紹介させていただきましたが、共通していることは、社会価値の創造という面では「地域課題の解決・活性化」という点です。
    それが信頼関係につながり、経済的価値にもつながっているということが言えますので、中小企業はこの観点をもって取り組むとよいかもしれません。

    4.2 古田土会計グループにおけるCSV経営の取組

    古田土会計で考えてみると、以下のように表せます。

    社会的価値=日本の中小企業の賃金や生産性の低さを解決する
     ⇒使命感:日本中の中小企業を元気にし、その社員と家族を幸せにする
    経済的価値=月次決算書と経営計画書を中心に社会課題を解決することによって経営剤的価値(利益)を得る

    という構図になります。

     


    古田土会計の場合はミッション(使命感)に基づいて様々な商品・サービスが開発されています。
    それが経済的価値につながっているという流れです。
    「儲けるために商品・サービスを開発する」のではなく、「中小企業を元気にするために商品・サービスを開発する」、そして結果的に利益(経済的価値)がついてくる、という点が大きなポイントです。

    5.CSV経営の進め方

    CSV経営を推進していくにあたり、大事なポイントは「ミッション」または「パーパス」の策定です。
    CSV経営は1章の解説の通り、社会課題の解決と経済価値を両立させることです。
    そして、そのためには、4.2の古田土会計の例の通り、「わが社は社会のどのような問題を解決するのか」を明確にしておいた方がよりCSV経営を進めやすくなります。

    5.1 ミッション・パーパスを定める

    まずは、ミッション・パーパスの策定です。
    わが社はどのような社会課題を解説していくのか?を明確にすることに他なりません。
    その際に参考になりそうな切り口・質問・ポイントを別の記事でまとめていますので参考にしてください。
    また。「社会課題」を考える際に、古田土会計は「日本」という割と広い概念にしていますが、4.1の事例の通り、中小企業は「地域の課題」でも問題ありませんので是非考えてみてください。

    既にミッションがある、という会社は「社会課題の解決」につながっているかを確認してみてください。

    参考 ミッション(使命感)とは? あなたのミッションを発見する33の質問
    参考 パーパス経営とは?パーパス経営を進めるための3つのポイント

    5.2 MVVに沿って戦略を定める

    ミッショッンが作成できたら、未来像(ビジョン)、行動指針(バリュー)に落とし込み、更にそれに沿って戦略を構築します。
    戦略を構築する際に、「事業ドメイン」という考え方がありますので、それに沿って考えて頂くとブレにくい戦略を立てやすくなります。

     

    古田土会計で例えるとこのようになります。

    誰に:日本中の中小企業
    何を:元気
    どのように:人を大切にする経営計画書、月次決算書、労務サポートサービス、事業承継等

     

    ポイントは、「何を」の部分を「モノ」ではなく「コト」で発想することです。
    是非考えてみてください。

    また、こちらの記事も参考にしてみて頂ければと思います。
    参考 毎年1,000社超の企業に指導してきた経営計画書の書き方

    5.3 PDCAを回す

    戦略(方向性)が定まったら、それをより具体的に戦術・行動レベルに落とし込みます。
    そして、PDCAを回していく、という流れになります。

    当然のことながら考えただけでは成果(社会課題の解決・経済的価値)にはつながりませんのでこの部分も肝となります。
    また、戦略の誤りは戦術ではカバーできない、ということも事実ですのでここをしっかりと見定めるためにも素早く行動し、振り返る、というPDCAが重要となってきます。
    PDCAについてはこちらの記事を参考にしてみてください。

    参考 PDCAとは?目標達成を加速させるPDCAサイクルの回し方

    6.まとめ

    今回はCSV経営について解説してきました。
    その本質は、ミッション(使命感)の定め方とも言えると思います。自社の事業が社会課題の解決につながり、かつ利益(経済的価値)の創出につながっているかを今一度振り返ってみて頂ければと思います。

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