経営理念の浸透で頭を悩ませている経営者は非常に多いと感じます。
古田土会計グループの創業者であり現会長である古田土会計は「売上1年、利益3年、人10年」とよく言います。
経営理念の浸透=人づくりということもできますので一朝一夕にできることではありませんが、だからこそ仕組みづくりが大切になってきます。
今回の記事では、経営理念浸透の16の施策について実際に古田土会計で取り組んでいることをインプットとアウトプットに分類して解説していきます。
1.経営理念の浸透の必要性と現状
1.1 経営理念を浸透させる必要性
経営理念を浸透させる必要はない、という方は少ないと思いますが、逆に「なぜ浸透させるのか?」と問われるといかがでしょうか?
よい会社をつくるため、社員が働きやすい会社をつくるため、お客様に貢献するため等いろいろな理由があるかもしれません。
簡単にまとめると2つに集約されます。
① 経営理念は組織の指針としての役割を果たすだけでなく、従業員のモチベーションや
行動指針を形成する
② 組織の価値観や信念を共有し、それに基づいて行動することで、 組織全体の一体感や
目標達成に貢献することが期待されます。
経営理念そのものについてはこちらで詳しく解説していますのでご確認ください。
(参考 経営理念とは?MVV・クレドなどの関連用語との違いを事例を交えて解説)
https://blog.kodato.com/management-philosophy
また、経営理念を浸透させることによる効果も確認しておきます。
古田土会計グループでご支援させていただいているお客様の状況は以下の図の通りとなります。
古田土会計グループでは数字の説明だけでなく、理念の大切さ、どのように浸透させていくか等も重要視しており、それを経営計画書の作成という形にしていただくお手伝いもしています。
その結果、黒字割合や業況の改善にも結び付いていると考えられます。
また、以下の図では経営理念・ビジョンの内容別に見た、労働生産性の上昇幅が示されています。一概には言えないものの、経営理念・ビジョンを明文化している企業は明文化していない企業と比べて、労働生産性の上昇幅が大きい結果が確認できます。
2022年版中小企業白書
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2022/chusho/b2_2_3.html
1.2 経営理念浸透の現状
経営理念の浸透については2022年版の中小企業白書で触れられています。
2-2-71図を見ると、経営理念・ビジョンについて従業員が理解している企業は8割以上に上りますが、「浸透=共感・共鳴、行動に結びついている」と考えると浸透度合いは低いことが分かります。
2-2-72図では、「認知していない→理解している→共感・共鳴している→行動に結びついている」という順に浸透度合いが高くなっていることが分かります。
階層を問わず全社的に浸透させていくには、経営理念・ビジョンを組織内の認知から行動へとステップアップさせていくことがポイントと考えることができます。
2022年版中小企業白書
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2022/chusho/b2_2_3.html
2.経営理念を浸透させるための前提条件
3章で経営理念を浸透させるための具体策を解説させていただきますが、その前に重要なポイントがあります。
それは、「経営者のリーダーシップ」です。
いくら施策を実施しても、経営者自らが率先垂範し、できていなければ指導し続けないと浸透はしません。
古田土会計でも、創業者の古田土会計が毎朝社員と挨拶をする際にできていなければ指導、場合によってはやり直しをさせる等ということをコツコツと積み重ねて浸透させてきました。
一朝一夕には浸透しませんので、相当の覚悟とリーダーシップが必要となります。
その覚悟をもつためには、ミッション・ビジョン・バリューや経営理念等をしっかりと経営者自身の中で落とし込む必要性があります。
会社の規模が大きくなれば幹部も同様です。上から行動に移すことが何より大切になってきます。
(参考 ミッション(使命感)とは? あなたのミッションを発見する33の質問)
https://blog.kodato.com/mission-33-question
3.経営理念を浸透させる方法
3章では経営理念を浸透させる方法を具体的に解説していきます。
3.1 経営理念を浸透させるポイント
経営理念を浸透させるポイントは「インプット」と「アウトプット(行動)」を繰り返すことです。
古田土会計の事例をもとに具体策を解説していきますいので是非参考にしてください。
3.2 経営理念を浸透させる具体策 インプット編
① 経営計画書を作成する
まずは経営理念を文字化します。
その際に、経営理念だけでなく未来像(事業の未来像・組織の未来像・社員の未来像)
を中心に、何に力を入れていくのか(=方向性・戦略)、何を大切にするのか等を
経営計画書にまとめます。
(参考 年間3,000冊発行している経営計画書のフォーマットから学ぶ「経営計画書の書き方講座(初級編)」)
https://blog.kodato.com/how-to-write-a-business-plan-beginner-version
② 経営計画発表会を開催する
年に1回(古田土会計は1月11日)、全社員を対象に前期の振り返り、
今期の方針を発表、共有し士気を高めます。1年で最も特別で大事な日です。
③ 理念勉強会を行う
経営計画書についての解説等を通じて理念の意味や作成の背景などを伝えます。
文字だけでは社員の受け取り方に差が出るためこの部分を補足し、
全員が共通の理解を持てるようにします。
|
|
会 議 |
概 要 | |
理念 |
1 |
月曜勉強会 |
開催日 |
最終週を除く月曜日 8時35分~9時15分 |
目的 |
経営計画書の理解と理念の浸透 |
|||
参加者 |
社員 |
|||
内容 |
経営計画書等についての所長、社長の講和 |
|||
2
|
社長講話 |
開催日 |
役職者(チーフ以上):第1木曜日 9時30分~ |
|
目的 |
理念の浸透 |
|||
参加者 |
①役員・部長 ②役職者(チーフ以上) |
|||
内容 |
理念の浸透 |
|||
3
|
第1月曜会議
|
開催日 |
毎月第1月曜日 10時~12時 |
|
目的 |
業績の把握(4・7・10月は個人別実績の確認を行う) 全体への連絡事項 理念の浸透 |
|||
参加者 |
全所員(社員・パンジーさん) |
|||
内容 |
・所長・社長より ・前 月分B/S・P/Lの確認、計画に対する実績の検討 ・その他連絡事項 |
④ 会議でも理念について触れる
会議の場でも経営理念について触れる機会を設けます。
古田土会計では上記の表のとおり役職者向けに社長講和を行い、
全社員向けには第一月曜会議で会長・社長からそれぞれ理念(経営計画書)
に関する話を聞く機会を作っています。
⑤ 社内の掲示で目に触れる機会をつくる
目で見て触れるようにすることも方法の一つです。
目で見て、耳で聞く、というインプットです。
以上が主なインプットですが、理念について見たり聞いたりする機会をできるだけ増やしてください。
同じ内容を繰り返し伝える・聞くことも大事です。
「一度話したから大丈夫」とか「前に話したからもう大丈夫」、と思うことが一番危なくもったいないです。
人は忘れる生き物、という前提で伝え続けてください。
私の実体験上も、毎年同じ話を聞いていてもその時の状況や立場によって受け取り方が変わってきます。
決して無駄なことはありません。
3.3 経営理念を浸透させる具体策 アウトプット(行動)編
① 経営者自らが実践する
経営者自身が経営計画書に書かれていることを率先して取り組む姿勢を示すことが大切
です。もちろん、経営計画書に記載したことが全てできる人はいません。
言っていることをやっていることを少しでも一致させるように行動する「姿勢」が
何より大事、ということです。
② 朝礼
朝礼を「情報共有の場」ではなく「訓練の場」と位置付けています。
朝礼では理念の唱和は毎日行います。
また、週1~2回は「理念の金太郎あめ朝礼」と称して
経営計画書に書いてあることを題材に、
「ここに書かれていることの意味は?」「行動できているか?」等を
参加者全員がアウトプットする場を設けており、
それに対して役職者が講評するということを行っています。
③ 挨拶
挨拶も毎日行っていますがまずは挨拶の定義を決めます。
古田土会計の定義は以下の通りですが、「相手に喜んでもらうため」に挨拶をします。
この意味で理念浸透の一環としての役割を担っています。
古田土会計グループ42期経営計画書より
④ 掃除
掃除についても、目的は「人間性を高める」ために行っています。
古田土会計グループ42期経営計画書より
⑤ サンクスカード
小さなことにも感謝し、感謝の気持ちを形に表します。
毎月、送った枚数の多い社員、もらった枚数の多い社員を表彰しています。
ポイントは、送った枚数の多い社員を称えることです。
⑥ 甲子園・未来サミット等社内イベントの開催
理念に基づいてお客様に喜ばれた事例等を年に1回全社員と共有しています。
予選は全員が参加し、投票で選ばれた7~10名が全社員の前でプレゼンを行います。
そして全社員の投票で優勝者が決定します。涙もあり感動に包まれるイベントです。
昨年は形を変えて「未来サミット」として実施しました。
こちらは古田土会計の未来についてグループごとに語り、課題を設定するという場
であり、正に古田土会計の使命感や理念を達成するために何が必要なのか?
どのように行動していくのか?を明確にする1日です。
⑦ 月間MVP
毎月テーマを決め、社員貫投票を実施し表彰しています。
MVPのテーマももちろん理念や行動指針等に沿ったものとなりますので、
社員がそれを意識・行動することにより徐々に浸透する一助となります。
⑧ 汚い字シリーズ(創業者のメッセージ)を何回も読む
毎月お客様向けに古田土から発行している手書きのメッセージとなります。
社員はお客様との打ち合わせの際にこちらを読み、解説することとなりますが、
20社担当している場合は20回読むことになります。
一番の目的はお客様へ古田土会計のメッセージを伝えることですが、
副次的に社員教育にもなっています。
⑨ 朝礼案内
お客様が朝礼見学でお越しになられた際に、若手が中心となって朝礼の目的や取組を
説明します。繰り返しアウトプットすることにより自社の取組の目的が体に刷り込ま
れていきます。
⑩ メンター制度
朝礼見学と同じく、学生に対して古田土会計のことを語ります。
それを通じて自社の理念や価値観を再認識します。
⑪ 親孝行
5月は親孝行月間として、新卒は初任給でご両親にプレゼントを渡します。
プレゼントを渡す際の口上も経営計画書に記載しており、事前に練習してから臨み
ます。
親孝行を通じて、人に喜ばれるということはどういうことなのか、ということを体感
してもらいます。
4.経営理念の浸透度合いの測り方
経営理念の浸透度合いについては社員満足度調査やエンゲージメント調査で定期的に測ることが望ましいです。
その他、お客様や取引先から「~~さんの会社は理念が浸透していて素晴らしいですね!」というようなお言葉をいただけることも非常に分かりやすく且つモチベーション向上にもつながります。
★2022年4月実施時点 自社で実施
経営理念やビジョンが言語化されている 9.2点/10点
経営理念やビジョンが社員に浸透している 7.9点/10点
※全項目の平均 7.3点
★外部機関による調査
理念・ビジョンへの共感 84%
※業種平均 63% 優良企業平均 78
5.まとめ
以上、経営理念の浸透策を中心に解説してきました。
ポイントは「インプット」と「アウトプット(行動)」の両輪です。
どちらか問えばインプットが多くアウトプットの場がない会社が多いと感じますのでアウトプットの場づくりを意識していただけるとよいと思います。
いかがでしたか?お気に召したのであればシェアはこちらから。