資金計画とは
資金計画とは、企業が事業を運営する際にどのくらいの資金を準備する必要があって、その資金をどのように調達しておくかを計画することをいいます。
また、これから事業を開始し運営するにあたり、どのように資金を運用すべきかを合理的に計画もしていきます。
企業が事業を運営する際に事業計画書も必要な書類としてあげられますが、どんなに完璧な事業計画書を作成したとしても、資金計画をしっかりたてておかなければ、事業が成功する確率は低くなってしまいます。
資金計画の必要性や資金計画の作成方法などを学び、独立・事業の立ち上げの際などに参考にしてください。
資金計画の必要性とは
資金計画は事業の立ち上げや運営の際に必要な書類だとお伝えしましたが、どうして必要なのでしょうか。資金計画が必要な理由としては2点あり、「事業計画を実現するため」「黒字倒産を防ぐため」です。資金計画の必要性を詳しく解説していきます。
事業計画を実現するため
資金計画が必要な一つ目の理由は、「事業計画を実現するため」です。事業立ち上げの際には、事業計画を立てる必要があります。
その事業計画を実現するためには、いくらの収入があり、支出や収入のタイミングがいつか、どのように資金調達をするかなどを把握しておかなくてはいけません。このような資金の流れを把握・管理するために資金計画は重要な役割を果たします。
また、資金計画には、立ち上げる事業がどのくらい確実に、どのくらいの収益をもたらせるのかを具体的な数値で伝えるという役割もあります。
黒字倒産を防ぐため
資金計画が必要な二つ目の理由は、「黒字倒産を防ぐため」です。企業経営の際、いくら収益があったとしても資金がなくては倒産してしまう可能性があります。これを黒字倒産といいます。
こうした黒字倒産してしまうことを防ぐために、資金計画をしっかり立てて、資金繰りを管理していくことが事業をおこなっていく上では重要事項となります。事業を継続していきたいと考えている企業には特に大切なものになります。
資金計画の立て方
ここからは資金計画の立て方を解説していきます。資金計画は下記の流れでおこないます。
①開業資金の確認
②運転資金の確認
③自己資金の確認
④収支予測
⑤資金繰りの確認
上記について順をおって説明していきます。
開業資金の確認
資金計画を立てる際、まずは「開業資金の確認」をおこないます。開業資金とは事業を立ち上げる際に必要な資金のことをいいます。開業資金と言われる費用項目は、
・事務所や店舗のための費用
・設備投資や設備を改装するための費用
・備品などを仕入れるための費用
・広告宣伝費
・商品を仕入れるための費用
となります。
さらに、独立する際には収入を得るまでに時間がかかることも考えられますので、当面の生活費も準備する必要があります。開業資金は必要最低限に抑え、また、必要な費用をしっかり把握して準備しておくことで、事業に失敗した時のリスクを軽減することができます。
運転資金の確認
資金計画を立てる際に次におこなうことは、「運転資金の確認」です。運転資金とは、事業を継続するために必要な資金のことをいいます。運転資金と言われる費用項目は、
・固定費(人件費、家賃、水道光熱費、支払利息、原価償却費、リース料)
・流動費(原材料費、仕入原価、販売手数量、消耗品を購入するための費用)
となります。
固定費に関しては、売上の変化では変わらず、営業の努力でコントロールできる費用ではありません。固定費の割合が多すぎると、収入が減った際の負担が大きくなってしまうので、必要最低限まで抑えておく必要があります。一方で、流動費は売上と連動しているため、売上が増えれば増えるほど流動費も高額となります。
自己資金の確認
次におこなうことは、「自己資金の確認」です。事業を立ち上げる際、まとまった資金が必要となります。金融機関などから資金調達をされる経営者も多いと思いますが、融資を受ける場合は返済義務と利子が発生します。
一方で自己資金の場合は、返済に頭を悩ます必要はありません。外部から資金調達をおこなう前に、可能な限り自己資金でまかなえるように準備しておきましょう。
また、金融機関などから融資を受ける際にも、返済する能力などが問われるため、ある程度の自己資金を持っていることは必要条件となります。
自己資金比率が高ければ高いほど、外部から資金を調達するのも有利となりますので、自己資金は充実させておきましょう。
収支予測
次におこなうことは、「収支予測」を立てることです。収支予測とは、収入と支出のタイミングや、借り入れや返済の関係を予測していくことを指します。
収支予測には、しっかりシミュレーションをしていくことが重要で、支出に関しては開業資金や運転資金はすでに算出できているので、シミュレーションは収入の方が問題となります。まずは、自社の商品もしくはサービスの価格を決めます。
原価や必要経費から販売価格としていくらが妥当かを割り出します。逆に、100円ショップなどは先に販売価格を決め、それに見合った商品や仕入れ方法、販売する体制を検討するという方法もあります。
資金繰りの確認
資金計画を立てる際に最後におこなうことは、「資金繰りの確認」です。収支計画まで立てられたら、当面の間資金が足りるのかを確認する必要があります。
手元に入ってくる資金、支払う必要がある資金を把握し、円滑にまわしていくためには、特に、借入金の返済や仕入れ金額の支払うタイミングや、売上金の入金のタイミングを把握することが重要になってきます。
掛け売りや約束手形で取引をすることも多く、売上が即現金として手元に入ってくるかは分からないため、支払いをする前に入金されるように調整することや、入金が間に合わない場合はどのように資金を調達するかをしっかり確認しておきましょう。
資金計画の立案から資金調達への流れ
資金計画を立てたら、次は資金調達をおこなっていきます。流れとしては、「事業計画の立案」→「資金計画の立案」→「資金調達の方法を検討」→「融資の申し込みなど資金調達の実施」となります。ここから、一つひとつ解説していきます。
事業計画の立案
まずは、「事業計画の立案」です。資金を調達するためには事業計画書を作成し、金融機関など融資を受けたい機関に提出する必要があります。融資を受けるにはある程度の期間を有するので、はやめに事業計画を立てておきましょう。
事業計画では、どのくらいの費用が必要で、どのくらいの収益が見込めるかも検討し、収益計算書を作成することになります。収益計算書は、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益をもとめ、最終的に1年間の利益・損失がいくらになるかを算出し、どのように利益を出せるかを記載するものです。
事業計画は具体的な数値で計画を立てておかなければ融資を受けにくいので、綿密な計画が必要です。
資金計画の立案
事業計画の立案ができたら、次に「資金計画の立案」をおこないます。資金計画をたてる際は、必要経費がどのくらいかかるか、設備投資にどのくらいかかるか、主要な取引先との決算状況や支払い・入金のタイミングを把握し、計画を立てていく必要があります。
資金計画では、収支計画書を作成し、毎月の収入と支出をまとめます。収支計画書に記載する収入については事業活動での売上高、融資を受けて得た金額、資産(不動産)などを売却して得た収入などもまとめます。
資金調達の方法を検討
次に「資金調達の方法を検討」します。資金調達の方法を検討する時は最初に自己資金がどのくらいあるかを確認し、判断材料とします。自己資金をある程度保有できている人は、金融機関からの融資がおすすめです。
一方で、自己資金がない人は、出資を受けて資金調達をするという方法があります。出資とは、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家などから資金提供してもらう方法で、この場合は返済する必要がありません。
しかし、出資を受けるのは難しく、自社の将来性をどのくらいアピールできるかが重要となります。また、出資を受けるということは出資者に経営の口出しをされるということも頭に入れておかなければなりません。
融資の申し込みなど資金調達の実施
最後に、「融資の申し込みなど資金調達の実施」をおこないます。どのように資金を調達するかが決まったら、融資を受ける場合は、金融機関などに問い合わせをおこない、担当者に事業計画、資金計画などを確認してもらうとともに、第三者の目線から指摘してもらい修正や摺り合わせをおこないます。その後、融資審査の申し込みへと進みます。
融資審査にはある程度の時間がかかりますので、融資を受けられる可能性が見えてきたら、融資審査を受けている間に連帯保証人を探しておきましょう(連帯保証人が必要な場合のみ)。
資金計画をたてる際のポイント5選
資金計画をたてる際、おさえておくポイントは5点あります。
①収支は細かく分類する
②当面の資金繰りも綿密に計画する
③資金計画は数年先まで考慮する
④資金調達の金額は低く抑える
⑤調達コストも考慮する
ここからは上記について解説していきます。
①収支は細かく分類する
資金計画をたてる際の一つ目のポイントは、「収支は細かく分類する」という点です。資金計画では、収支を予測していくことが重要になりますが、その際、大まかな分析ではなく可能な限り細かく分類し分析していくことが大切です。
支出の予測は、運転資金を算出し、年数ごとにどのくらいの支出となるかを予測します。一方、収入は事業の商品またはサービスの価格を決めることから始まります。価格を決める際は、まず同業他者などから価格の相場を調べ、採算ラインから価格を割り出し、さらに市場環境や立地条件なども検討していきます。
②当面の資金繰りも綿密に計画する
資金計画をたてる際の二つ目のポイントは、「当面の資金繰りも綿密に計画する」という点です。事業は収益があがっていたとしても、資金繰りがうまくいかないと倒産してしまう可能性があります。そのため、資金計画をたてる際、手元に入る資金と出ていく資金の流れをスムーズにできるように当面の資金繰りは計画する必要があります。
事業の収入は現金取引だけではなく、請求書や掛け売り、約束手形などで取引することモ多く、売上が即現金化されるというわけではありません。そのため、売上が入金されていないのに、支払いが必要となってしまう場合があります。
このような問題を防ぐために、支払・入金のタイミングをしっかり把握し、当面の資金繰りについて計画していきましょう。
③資金計画は数年先まで考慮する
資金計画をたてる際の三つ目のポイントは、「資金計画は数年先まで考慮する」という点です。資金計画は、1年間だけたてるのではなく、数年先までみこして計画を練ることが重要です。
数年先までの計画は予測が難しいですが、変化があった場合に修正したら良いと考えて、数年先まで考えるようにしましょう。数年先まで考慮することによって、ある程度先までの事業目標を見通せるので、具体的な事業の道筋を決めることができます。
④資金調達の金額は低く抑える
資金計画をたてる際の四つ目のポイントは、「資金調達の金額は低く抑える」という点です。資金調達は事業の立ち上げには必須です。しかし、事業立ち上げに必要となる資金の多くを外部からの融資に頼るのは良くありません。
開業前には可能な限り自己資金を貯め、また、開業資金に関しても限界まで工夫して抑える努力をすることで、外部からの資金調達の金額を低く抑えることができます。
⑤調達コストも考慮する
最後に解説する、資金計画をたてる際のポイントは、「調達コストも考慮する」という点です。資金の調達には融資という方法があるとお伝えしましたが、ここで調達した資金は、元金に加えて利息の返済が発生します。
資金を調達する際は、調達した金額以上にいくらコストがかかってしまうかも考慮するようにしましょう。また。無担保・無保証人・即日融資などをうたっているあやしい貸金業者からは絶対に借りないように注意しましょう。
まとめ 資金計画は資金調達や事業を成功させるために必要不可欠
資金についてしっかり計画し、把握・管理することは事業計画を成功させるための絶対条件となります。資金計画をたてる際のポイントをおさえて、万全な体制にしてから事業立ち上げを進めていきましょう。
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