経営を行う中で順調に業績を伸ばすケースもあれば、なかなか業績を伸ばせないケースもあります。特に先代から事業承継を行って間もない2代目以降の経営者からすると、現状何が問題で、どこから解決を目指していけばいいか分かっていない方も珍しくありません。
根本から経営を立て直したいと思っている経営者をサポートしてくれるのがマネジメントコンサルティングです。経営はまず組織改革から立て直すことが重要ですが、その方法は何かなどを教えてくれるマネジメントコンサルティング。
本記事では、組織運営とはどういうものか改めて見直したい経営者の方たちに向けた、マネジメントコンサルティングに関する説明、主な業務内容、マネジメントコンサルティングに必要なスキルなどをまとめました。
マネジメントコンサルティングとは
マネジメントコンサルティングという言葉をビジネス雑誌などで見かけたことがある方も多いかもしれません。ここからはマネジメントコンサルティングとはどういうものなのかをわかりやすくご紹介します。
ちなみにマネジメントコンサルティングは特定の職業、肩書きとして存在するものではありません。この後にご紹介する業務内容を取り仕切る人たちに与えられる役割といえるものです。
マネジメントコンサルティングではどのようなことを行っていくのか、その詳細をご紹介していきます。
個別事案の解決よりも抜本的な解決を目指す職種
マネジメントコンサルティングは、個別事案の解決よりも抜本的な解決を目指す職種となっています。
経営を行うにあたり、業績を伸ばしたい、上場を目指したいなど個別事案をどうするかを考えるケースがほとんどです。しかし、業績や上場などは樹木に例えれば枝葉もしくは実の部分であり、幹や根の部分が腐っている状態では枝葉も実も芳しい状態にはなりません。
個別事案をどうにかするのではなく、まずは幹や根の部分、企業における組織構造の抜本的な解決を目指していくのがマネジメントコンサルティングです。幹や根の部分において腐っているところを見つけて除去し、適切な治療を行った後に肥料や水をしっかりと与えるようなことを行うことで、ようやく成果が出始めます。
経営状態が芳しくない企業は組織構造に何らかの問題を抱えているケースが目立ちます。マネジメントコンサルティングを通じてゼロから組織構造を見直していき、成果が出やすい組織へのブラッシュアップを目指していくことになります。
マネジメントコンサルティングは会社の組織構造を見直していくポジションにあり、プロジェクトを立ち上げ、自らリーダーとなって組織構造を変えていきます。
組織マネジメントの専門家
マネジメントコンサルティングは組織マネジメントの専門家が行っていきます。
組織マネジメントとは経営資源の管理を行いながら、有効活用を目指し、組織運営をよりスムーズなものにさせるやり方です。この場合の経営資源は主に4つあります。「ヒト」・「モノ」・「カネ」・「情報」の4つです。
4つの経営資源では「ヒト」の重要度が高く、「ヒト」の管理を怠ることは致命的な結果を招くことにもつながりやすいため、慎重な対応が求められます。組織マネジメントを行うことはリソースの集中や経営を行う中での環境の変化に対応できることにつながります。そして、経営戦略を打ち出す中で経営資源を効率よく活用していくことにも貢献するでしょう。
組織マネジメントの専門家として社会保険労務士など資格を持った人が担当するケースがあるほか、過去に「インターナルコンサルタント」として社内の組織改革に挑んだ人が組織マネジメントの専門家を名乗るケースがあります。いずれのケースも企業経営や組織運営などの知識と経験に長けた人物が担当しているので、抜本的な組織改革を目指すにはうってつけです。
プロジェクトマネジメントコンサルタントとの違い
マネジメントコンサルタントとは別にプロジェクトマネジメントコンサルタントもいます。プロジェクトがつくかつかないかだけの違いですが、もちろん名称の違いだけではありません。
プロジェクトマネジメントコンサルタントは、企業が設置したプロジェクトがうまくいくために必要なスキルや知識などに対してアドバイスを送っていく仕事です。マネジメントコンサルタントは企業の組織運営に対するコンサルタントであり、プロジェクトマネジメントコンサルタントは企業が設置したプロジェクトを成功に導くことに対するコンサルタントとなります。
プロジェクトを成功に導くためには「プロジェクトマネージャー」と呼ばれる人材が必要です。一方で、企業には優秀なプロジェクトマネージャーが存在しないケースもあります。このため、プロジェクトを成功に導くため、プロジェクトマネジメントコンサルタントに依頼を出して、プロジェクトマネージャーへのアドバイスをしてもらいます。
リスクマネジメントコンサルタントとの違い
次にご紹介するのはマネジメントコンサルタントとリスクマネジメントコンサルタントとの違いです。
リスクマネジメントコンサルタントは、リスクマネジメントに対するコンサルティングを行う人物です。企業にはさまざまなリスクが付きまといます。分かりやすい例では企業内の不祥事、天変地異による損害、新型コロナウイルスに代表されるパンデミック、テロなどが該当します。一方、ハラスメント系や人権関連の問題など、近年注目され始めたリスクもあるなど、企業によって意識を高め切れていないリスクもあるのが実情です。
何かあったからでは遅いのも企業を取り巻くリスクの怖さであり、そのリスクを分析して回避していくのがリスクマネジメントです。このリスクマネジメントに対してアドバイスを送る人たちがリスクマネジメントコンサルタントになります。
リスクマネジメントコンサルタントはまず企業内で想定されるリスクを見つけ出して策を講じ、現場レベルまで浸透させていく役割を担います。リスクマネジメントコンサルタントは日本でも有名な監査法人やコンサルティングファームに在籍していることが多いです。
マネジメントコンサルティングの具体的な業務内容
ここからはマネジメントコンサルティングに関する具体的な業務内容についてご紹介します。マネジメントコンサルティングの主な業務内容は以下の4つです。
- 課題の洗い出し
- 課題が発生した原因の特定
- 経営戦略の提案
- 組織構造の変革
まず幹や根の部分を改善することが枝葉につながっていくため、最初に問題点・課題を洗い出すことが求められます。そのうえで改善に向けた動きを強め、その後経営戦略や組織改革へとつながっていく流れになります。ここからはそれぞれの業務内容について掘り下げていきます。
課題の洗い出し
1つ目の業務内容は課題の洗い出しです。
組織の課題を洗い出すには、あるフレームワークに沿って作業を進めていくことになります。このフレームワークを「7S」と呼びます。「7S」は世界有数のコンサルティングファームで使われているフレームワークで、組織の課題を洗い出すのに欠かせない7つのSが含まれています。
- 戦略(Strategy)
- 組織 (Structure)
- システム(System)
- 人材 (Staff)
- 経営スキル(Skill)
- スタイル・社風 (Style)
- 価値観(Shared values)
この7つのSはハード3つ、ソフト4つに分けられ、戦略と組織、システムがハード、それ以外がソフトに該当します。ハードに関しては経営者たちの決断ですぐに変えられる分野であり、ソフトは経営者たちの決断で変えても浸透するのに時間がかかる分野です。
実際に課題の洗い出しをするには、まず企業の状況を分析します。この時、7つのSに当てはめて分析を行うことで、課題はもちろんのこと、強みにしている部分も出てきます。その一方、7つのSを活用して分析を行う中でたくさんの問題点が浮き彫りになるものです。1つ1つ改善を目指すだけで相当な時間を使うでしょう。そこで、優先順位をつけ、今すぐ変えなければならない課題から改善を目指していくことになります。
課題が発生した原因の特定
2つ目の業務内容は、課題が発生した原因の特定です。
たくさんの課題が浮き彫りになり、何から片付けていくかの優先順位をつけたら、次は原因の特定です。その課題がどういう理由で生じているのかを探ります。
例えば、会社内で情報などの共有がうまくいかないという課題があったとします。7つのSで分析を行うと、競争が激しいために個人プレーに走りやすく、社内での共有がうまくいかないという原因が出てきます。
競争が激しいのもノルマが厳しく、インセンティブが発生するために必死に営業成績を上げようとした結果だとすれば、この部分を改善することで社内での情報共有が上手くいく可能性が出てきます。
先ほどの例はあくまでも一例ですが、こうした例は大なり小なり、企業の内部にはいくつも存在しており、経営で苦戦する企業であればあるほど、課題は多くなる傾向にあります。まずはその特定を行っていくことが大切です。7つのSに沿った分析を行い続けることは組織改革にはとても重要といえます。
業績が伸びない原因はヒトなのか、それともモノなのか、問題点をあぶりだして根本から変えていくことで抜本的な改善に結びつけられるでしょう。
経営戦略の提案
3つ目の業務内容は、経営戦略の提案です。
問題点を洗い出し、原因まで特定できれば、その原因に対してどのような対応を見せていくかがポイントになります。経営資源は限られており、リソースをどのように割いていくかが、とても重要です。企業側が持つリソースを何から割いていくのか判断するのが経営戦略であり、その提案をマネジメントコンサルタントが行います。
経営戦略の提案はこれまでの経営方針への軌道修正を促すことにもつながるでしょう。今までやってきたことは問題だらけで、改善しなければならないと分かれば、あとは提案を受けて軌道修正を図っていきます。この軌道修正を行う中で企業側の成長が見られるようになるでしょう。
的確な経営戦略の提案が行えるのも、7つのSで課題点を見つけて、原因の追究をしてきたからです。経営者の立場からすれば、今までやってきたことを変えるのは根拠がないと辛いものがありますが、明確な根拠が示されれば変えざるを得ません。説得する材料が揃った中で経営戦略の提案を行う形になります。
組織構造の変革
4つ目の業務内容は、組織構造の変革です。
構造的に問題が生じやすい状況は、表層部分で問題点を改善させたところで、いずれは同じような問題が生じ、その都度リソースを割かなければならない状況に追い込まれます。定期的にロスが生じるようなものであり、あまり健全とはいえない状況です。
組織構造の変革は構造的な問題が生じないようにゼロベースから新たな組織を作り出していくことを指します。この組織構造の変革も元をただせば7つのSに連動してくるものであり、7つのSがあることで問題点の把握につながります。
組織構造の変革にはそれなりの時間がかかります。ただ変革さえ終わってしまえば、時代の変遷があっても問題点が構造的に生じにくくなり、致命的な事態を招きにくくなるでしょう。
マネジメントコンサルティングに求められるスキルや心構え
ここまでマネジメントコンサルティングの業務内容についてご紹介してきましたが、マネジメントコンサルティングを行っていくうえで欠かせないスキル、心構えについてご紹介していきます。
- コミュニケーション能力
- リーダーシップ
- ITに頼り過ぎない
- 周囲を上手に巻き込む
最終的には組織構造の変革がゴールになっていくため、強いリーダーシップだけでなく、周囲とうまく折り合いをつけていくこと、そして、技術に頼り過ぎないことが求められます。
今までの組織を大きく変えることは今までの自分を否定されるようなものなので、変化への抵抗はどうしても出てくるものです。この4つのスキルや心構えは変化への抵抗をできるだけ抑えるものといえます。
コミュニケーション能力
マネジメントコンサルティングを行っていくうえで欠かせないスキル・心構えの1つ目はコミュニケーション能力です。
まず企業内の問題点をあぶり出していくことが重要であり、そのためには経営者・経営陣からのヒアリングが必要です。経営者たちが求めているものとは何かをしっかりと認識することは組織構造の変革を達成するうえで重要な要素といえます。
経営者たちの求めているものを理解したうえで、現場レベルでのヒアリングも行う必要が出てきます。経営に携わる人たちは組織構造の変革が必要であると分かっているのでマネジメントコンサルティングに対して協力的ですが、現場レベルでは何かしらの不満を抱えていることが多く、社員によって温度差が見られます。
社員によって温度差がある中でうまく問題点をあぶり出していくには、コミュニケーション能力が求められます。「あくまでも会社をよりよくするために調査をしているだけであって、今までのことを否定するわけではない」というスタンスを打ち出したうえで聞き取っていくことで本音で語ってもらいやすくなり、速やかに課題を見つけ、原因まで特定することができます。
経営者が求めるゴールを目指すことは、社員の協力なしにはあり得ません。その協力を引き出すには社員たちのモチベーションアップが重要であり、現場の社員たちが何を考えているのかを聞き取っていくことが求められます。
リーダーシップ
マネジメントコンサルティングを行っていくうえで欠かせないスキル・心構えの2つ目はリーダーシップです。
マネジメントコンサルティングにおいて、1人ですべてを担うことはまずなく、組織変革に向けたプロジェクトが設置されたうえでそのリーダーを務めることになります。プロジェクトリーダーになる以上はリーダーシップがなければ、その組織が動かなくなるため、リーダーシップは必要不可欠な要素といえるでしょう。
組織構造の変革を実現させるには組織内で見られる変化への抵抗に屈しないことが重要です。もしもリーダーシップがなければ、変化への抵抗を前に屈してしまう可能性があります。組織を変えていくには率先して自分がメンバーたちを引っ張っていく姿勢が必要です。その姿を見せてメンバーたちを安心させることが求められます
ITに頼り過ぎない
マネジメントコンサルティングを行っていくうえで欠かせないスキル・心構えの3つ目はITに頼り過ぎないことです。
ITの存在は企業経営においてなくてはならない存在であり、組織構造の変革を考えるうえでも無視はできません。ITの活用はより働きやすく、より効率性を高めることにもつながります。一方でITに頼り過ぎてしまうと、現場レベルでは不満が出やすく、人間が蔑ろにされているような感覚に陥りやすいでしょう。
一方で、ITの可能性にすべてを賭けるようなことをしなくても、現場で働く社員たちに大いなる期待を見せることでやる気を引き出し、組織構造の変革に一役買うことも十分に考えられます。何事も大事なのは人であり、人を無視するやり方ではいずれ組織はガタガタになるでしょう。
もちろんITの活用は必要ですが、何事もほどほどが肝心であり、効率ばかりを求めても反発を生むだけです。
周囲を上手に巻き込む
マネジメントコンサルティングを行っていくうえで欠かせないスキル・心構えの4つ目は、周囲を上手に巻き込むことです。
周囲を巻き込むという行為は、1人でも多くの人を当事者にさせていく行為といえます。自分には関係ないと他人事のように思われたら、協力的な姿勢を引き出すことが難しくなります。協力してもらうには当事者になってもらうことが手っ取り早いのです。当事者になってもらうべく、うまい具合に巻き込んでいければ、一人ひとりが当事者として出し惜しみせずにスキルを出してくれます。
うまく巻き込んでいくには先ほどもご紹介したコミュニケーション能力やリーダーシップが欠かせません。これらを活用していく中で自然と周囲の人たちを巻き込めるようになっていき、他人事な社員を減らしていけるでしょう。
マネジメントコンサルタントは、経営の根幹に関わる重要な業務の1つ
今回はマネジメントコンサルティングについてご紹介してきました。マネジメントコンサルタントはある種病院の医師のようなものです。手術を行って病巣を見つけ、切除したら、しっかりと栄養素を補給し、運動などを行っていくことで健康体を維持し続けることができます。
それくらいマネジメントコンサルタントは経営の根幹に大きく関わる重要な業務の1つであることがわかります。社内でマネジメントコンサルタントが行える社員がいればそれに越したことはありませんが、大企業ならまだしも中小企業ではなかなかできる社員がいないのが実情です。
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