プロジェクトスコープマネジメントとは
プロジェクトスコープマネジメントとは、プロジェクトを進めていくうえで、「何を」「どこまでおこなうか」という成果と作業範囲(スコープ)を決めて、それを達成できるようにマネジメントしていくことをいいます。プロジェクトスコープマネジメントでは、プロジェクトの成功に必要な成果物と作業を洗い出していきます。
そして、各局面で生産される成果物と想定していた成果物の間に品質のズレがないかを確認する「スコープ検収」も重要な作業です。また、作業の進捗状況が予定よりも遅れている場合には作業を調整していく「スコープコントロール」という作業もプロジェクトスコープマネジメントでは必要な業務です。
プロジェクトスコープマネジメントの役割とは
プロジェクトスコープマネジメントの役割は、期間内に顧客などのステークホルダーが求める高品質な成果物を生産することです。前述の通り、プロジェクトスコープマネジメントは、プロジェクトの成功に必要な成果物と作業を洗い出すマネジメント手法です。
そのため、洗い出した要素に漏れや重複がないように絞り込み、プロジェクトの過程で管理・調整・修正していくことがプロジェクトの成功には欠かせません。
スコープマネジメントの目的は目標のブレをなくすため
スコープマネジメントの目的は、プロジェクト成功のために、顧客が求める成果物を把握して、期間内に作業を進めていくことです。プロジェクトの成功に必要な成果物と作業を洗い出し、そして漏れや重複がないように作業を絞り込んでいきます。
そうすることで、プロジェクトの目標に向かってブレることなくすすんでいくことができます。そのためにも、スコープマネジメントの際には作業の管理、時間の調整、進捗状況とズレがある場合は修正していくことが求められてきます。
スコープマネジメントの2つのメリットとは
スコープマネジメントのメリットは2つあります。
①利害関係者の満足度が向上する
②プロジェクトの完全成功を実現できる
上記のメリットについて詳しく解説していきます。
①利害関係者の満足度が向上する
スコープマネジメントの一つ目のメリットは、「利害関係者の満足度が向上する」という点です。スコープマネジメントは、プロジェクトの成功に向けて成果物と作業範囲を洗い出して進めていき、ステークホルダー(利害関係者)が求めるものを把握し、期間内により高品質なものを生産していくことが求められます。そのため、利害関係者の満足度が高まっていく可能性があります。
利害関係者が求めるものは状況によって変化していきます。そのため、想定外のトラブルが起こったり、要件が増加したりする可能性もあります。ズレが起こらないために「何を」「どこまでおこなうか」を定期的かつ継続的に、そして具体的に定めておくようにしましょう。
②プロジェクトの完全成功を実現できる
スコープマネジメントの二つ目のメリットは、「プロジェクトの完全成功を実現できる」という点です。プロジェクトの完全成功とは、プロジェクトが完了した時点で利害関係者全員が満足しているということです。
プロジェクトが上手く進み、納品も滞りなくできたとしても、利害関係者が不満を感じていれば成功とはいえません。スコープマネジメントをおこなう際には、顧客が求める成果物や期間を明確にしておくようにしましょう。
スコープは2つの種類がある
スコープマネジメントのスコープには2つの種類があります。
①プロジェクトスコープ
②プロダクトスコープ
①プロジェクトスコープ
まずは、「プロジェクトスコープ」です。プロジェクトスコープとは、作業スコープと呼ばれ、プロジェクトを進めていくことにおいて、範囲を定め「どんな作業をしていくか」を定義することを指します。
プロジェクトスコープは、プロダクトスコープよりもさらに細かく要素を決めていきます。成果物を生産するためにどんな作業が必要か洗い出し、漏れや重複がないかを絞りこみ、より具体的な作業に落とし込んでいくことがプロジェクトスコープの役割になります。
②プロダクトスコープ
次は、「プロダクトスコープ」です。プロダクトスコープとは、成果物スコープと呼ばれ、プロジェクトの各局面で「何を」作っていくかを定義することを指します。プロダクトスコープは、プロジェクトの進め方を決める重要な要素になります。
このスコープは、クライアントとプロジェクトメンバーどちらともに合意・共有してから、実行していく施策になります。
スコープマネジメントの流れ
ここからはスコープマネジメントの流れを解説していきます。
①計画の立案
②要求事項の収集
③スコープを定義する
④WBSの作成
⑤スコープの実証
⑥スコープの管理
上記6つの流れで作業を進めていきます。
計画の立案
まずは、「計画の立案」です。スコープマネジメントをおこなう前に顧客にヒアリングをおこないましょう。顧客が求める成果物とその期日を明確にすることによって、作業をどのように進めていくか大枠を決めることができます。
計画の立案の際に、しっかり顧客の求めるものを調査しておくことによって、プロジェクト完了時の顧客の満足度が向上します。そして、プロジェクトメンバーの具体的な行動方針についても合わせてまとめていくようにしましょう。
要求事項の収集
次は、「要求事項の収集」です。顧客からの要求を要求事項マネジメント計画書にしたがって収集していきます。収集するには、プロジェクト憲章と呼ばれるプロジェクトの目的・前提条件・リスク・予算・成功した際の状況をまとめたものと、ステークホルダーのリストを参考にしていきます。
スコープを定義する
次は、「スコープを定義する」ことをしていきます。要求事項を収集したら、それを参考にスコープを定義していきます。その際、より具体的に明記することが求められます。定義したスコープによって、プロジェクトの方向性は大きく変化します。収集した要件としっかり関連付けて定義するようにしましょう。
WBSの作成
次は、「WBSの作成」をおこないます。WBSとは、プロジェクトを構成するタスクを漏れなく抽出していく手法のことです。WBSには収集した要求事項や定義づけしたスコープを落とし込んでいきます。WBSはひな形があるため効率的でわかりやすく作成するために、ゼロからの作成ではなくあるものを有効活用していきましょう。WBSを作成することでプロジェクトを可視化することができ、プロジェクトメンバーのタスク漏れも防ぐことができます。
スコープの実証
次は、「スコープの実証」をおこないます。スコープを具体的に定義づけしたら、そのスコープが妥当なものかを検証していきます。実証していくことでより精度の高いスコープを作っていくことができます。実証する際は、「スコープが妥当なものであるか」クライアントや関係者に確認してもらうようにしましょう。
プロジェクトの成功には利害関係者とスコープについて確認・共有していくことが重要になりますので、とても大切な作業になります。実証は、「品質管理の工程で成果物をチェックする」「確認済みの成果物を利害関係者にチェックしてもらう」という流れでおこないます。
スコープの管理
次は、「スコープの管理」をおこないます。プロジェクトを進めていくなかで、スコープが達成できるようにプロジェクトスコープとプロダクトスコープに分けて管理していきます。顧客が求めるベースラインに成果物が到達していなかったり、想定よりも作業が進んでいなかったりした場合には、早めに対処する必要があり、柔軟な調整が求められます。
プロジェクトスコープマネジメントのポイント4選
最後に、プロジェクトスコープマネジメントのポイントを解説していきます。ポイントは4つあります。
①プロジェクトに必要なものに絞る
②関係者からの合意を得る
③要件の洗い出し
④スコープの可視化
①プロジェクトに必要なものに絞る
プロジェクトスコープマネジメントの一つ目のポイントは、「プロジェクトに必要なものに絞る」ことです。利害関係者の求めるものをすべて盛り込んでプロジェクトを進めていこうとすると、プロジェクト自体が失敗する可能性があります。プロジェクト成功を定義づけして、漏れや重複がないようにスコープを絞っていくことがポイントとなります。
②関係者からの合意を得る
プロジェクトスコープマネジメントの二つ目のポイントは、「関係者からの合意を得る」ことです。プロジェクトスコープマネジメントでは、定義づけしたスコープを関係者に確認・共有・合意してもらう必要があります。関係者から合意が得られていないと、プロジェクトを進めていても途中で強制終了となってしまう可能性があります。この合意についてはプロジェクト開始前におこなうことが重要です。
③要件の洗い出し
プロジェクトスコープマネジメントの三つ目のポイントは、「要件の洗い出し」です。顧客から要求要件を聞き出し、必要な要件を洗い出しておくようにしましょう。要件を洗い出した後、事前に優先順位をつけておくことでプロジェクトの進行がスムーズになります。
④スコープの可視化
プロジェクトスコープマネジメントの四つ目のポイントは「スコープの可視化」です。プロジェクトを進めていると、計画したものから変更することは多々あります。
常に最新の情報をプロジェクト管理に反映させ、スコープの変更も都度調整していくことが重要です。計画書にまとめておくことで、現状との違いをすぐに確認することができ、プロジェクトメンバー全員でスコープを共有することも可能となります。
まとめ スコープマネジメントを有効活用してプロジェクトを成功に導こう
ここでは、スコープマネジメントとはどのようなものかを解説してきました。プロジェクトスコープマネジメントはプロジェクトを成功させる有効手段です。しっかり活用し、プロジェクトを成功に導いていけるようにしましょう。
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