なぜ経営計画を作っても上手くいく企業とそうでない企業に分かれるのか?

    記事公開日: 2023.06.19

    マネるだけ、埋めるだけで作れる 経営計画書 作成シート(ダイジェスト版)

    マネるだけ、埋めるだけで作れる 経営計画書 作成シート(ダイジェスト版)

    古田土会計グループでは、年間500社超の経営者に経営計画の作成指導をさせていただいています。おそらく令和において日本最多の実績だと思います。そのおかげで古田土会計グループと言えば日本でいちばん経営計画について強いと認識をしていただいているとも自負しています。

    現在わが社では毎週のように経営計画の作成指導をさせていただく機会を設けているので、私のもとには経営計画に関するご相談が日々舞い込んできます。その一つに「経営計画なんて作っても意味ありますかね?」という何気ないご質問です。この質問される方々としては、これまでに経営計画を作ったことはあっても、その後計画通りにいかなかったら「経営計画が役に立たない」という考えに至ったのだと思われます。
    ただ、同様に計画が未達であったとしても、「計画がうまく進まない理由を突き止め、改善する」と捉える経営者の方がいるのも事実です。どちらの思考と行動をするかで、結果は大きく変わります。

    世の中に障害のない仕事はありません。障害を考慮しない計画は意味がありませんし、そんな計画を完遂したと満足する人は考えが甘いと断言できます。障害を乗り越えて成果を上げることこそが、人生の喜びや成長につながります。たとえ計画がうまく進まなくても、放棄せずに粘り強く取り組むことが大切です。計画の目標が達成できなくても、諦めずに努力を続けることが重要です。最後まで粘り強く取り組むことで、良い結果が得られるでしょう。

    かく言う私自身これまでに経営者として数多くの障害を経験させていただきました。ここでは明かせないような痛い失敗もしてきました。とは言え、その障害や失敗にいちいちくじけていたら、経営は前には進みません。経営者自ら作る明るい未来像(ビジョン)を掲げた経営計画を信じ切るからこそ、経営者はもちろん社員もその経営計画で表現されているビジョン(未来像)を信じて仕事にまい進できるものだと信じています。

    たとえ計画通りにならなくても、努力を続ければ必ず目標を達成できます。障害を列挙するのは、言い訳をするためではなく、それを克服して計画を達成するためです。

     


     

    以上のスタンスを踏まえ、この記事では経営計画を作成する重要性についてまとめるのはもちろん、昨今評価されている経営計画書のパターンについても説明しております。あなたにも是非参考にしていただき大いにメリットを享受していただけたら幸いです。

    1、経営計画とは

    経営計画書の構成要素をお伝えする前に、そもそも経営計画を作る目的を共有させていただきます。
    経営計画とは、会社が抱えている経営課題を克服し、「経営者がイメージしている理想像(以下「ビジョン」)」を実現するための道具です。
    ということは、経営課題を明確にするためには、「ビジョン(未来像・理想・目標)」と「現実・現状」を明確にすることで、そのギャップを顕在化させることでき、経営課題を明確にすることができるようになります
    そして、その経営課題を解決し、ビジョンへと到達できるようにするための道具が経営計画なのです。


    1-1.経営計画は経営者の想いを実現するための道具である

    私たちの日常生活において、地図やナビゲーションは目的地にたどり着くための重要なガイドとなります。それと同じように、ビジネスの世界においても、経営計画は目指すべき目標に向かって進むための道しるべとなります。一見、硬直的で形式的なものと思われがちな経営計画ですが、その実態は全く異なります。経営計画はただの数字や目標の羅列ではなく、経営者の「想い」を具現化する最も強力な道具であるのです。

    経営者の想いは会社の方向性を示し、そのビジョンは企業文化を形成し、従業員の働き方や顧客への接し方を左右します。その想いを実現するためには、それを明確に計画し、それに基づいて行動する必要があります。その役割を果たすのが、経営計画なのです。

    多くの経営者は会社経営をするにあたり成し遂げたいこと、克服したいことなどがあります。
    たとえば、


    ・売上シェアを拡大する
    ・社員の給料を上げる
    ・自社の商品を全国に広める
    ・高い顧客満足度を達成する
    ・持続可能な成長を達成する
    ・新製品やサービスを開発する
    ・新規市場への進出を達成する
    ・業界でのリーダーシップを確立する
    ・組織の働きやすさを向上させる(ワークライフバランスを保つ)
    ・ブランドの認知度を上げる
    ・収益力を向上させる
    ・優秀な人材を採用する
    ・デジタルトランスフォーメーションを実現する
    ・社会への貢献度を高める(CSR活動を強化する)
    ・経営の透明性を高める
    ・サービスや製品の品質を向上させる など

    上記のように、経営者はいろんな想いを持ってはいますが、それぞれを実現するにも下記のようなハードルが待ち受けています。

    ・資金調達の難しさ
    ・人材不足
    ・マネジメント力の不足
    ・テクノロジーの変化
    ・競争の激化
    ・顧客ニーズの変化
    ・法規制の変更
    ・社会的・環境的問題 など

    結果として、起業して年を経れば経るほど、企業の生存率は減少していくようになるのです。

     

    (出典:中小企業庁HP 中小企業白書2011年版全文 第3-1-11図)


     

    (国税庁統計データ より)

     

    業績が悪い会社経営者は良くしたいでしょうし、業績が良い会社経営者はますます良くしたいものです。しかしながら、それを阻む課題はたくさんあります。そして、それらの課題を克服するためには次の5つのことをする必要があります。


    1、    自社がおかれている状況を客観的に把握する(現状確認)
    2、    その状況から脱却するための術を模索し、仮説を立て、解決策を導きだす(戦略・戦術)
    3、    解決するためのプロセスを数値化する(数値目標)
    4、    その解決策にまい進するための目的を確認する(使命感・理念)
    5、    解決策がうまくいった際の状況もイメージする(未来像)

    つまり、この5つの内容を含めた作業が、経営計画を作成するということなのです。

    経営計画とは、何よりも経営者の夢や目標を実現するための具体的な手段としての役割を持っています。その実施により、企業は新たなる成長の道を切り開くことが可能となります。

    1-2.経営計画によって会社は成長する

    経営計画は会社の成長を左右する鍵であり、その道筋と行動を明確に示します。弊社古田土会計グループの経験では、経営計画に基づく行動を徹底し、全社員が一丸となって目標に向かうことで、業界で注目される存在に成長しました。このブログでは、経営計画の重要性とその具体的な活用方法について詳しくお伝えします。

    今でこそ弊社は世間からも注目される経営計画の作成指導で日本有数の会社として注目されるに至りましが、創業当初はただの会計事務所でした。どこの会計事務所とも同じように単に決算をするだけの会社でした。
    しかし、創業者である古田土 満(こだと みつる)は公認会計士だったこともあり、決算書・試算表の説明に注力し始め、そのためのツール(“古田土式“月次決算書)を開発しました。そして、それをすべてのお客様に提供するようにオペレーションを抜本的に見直しました。しかも、社員の教育の一環として教育内容・体制も大きく変更していきました。この商品・オペレーション・教育・評価を徹底的に変えることでなんとしてもお客様の満足度にこだわり抜きました。そこで、経営計画書に「なぜやらなくてはいけないのか?」、「どうやってやり抜くのか?」を表現していきました。
    導入初期には、社内からは反対の声もありましたが、古田土はこの取り組みの重要性を確信し、くじけることなく経営計画書に掲げた価値観に基づいて新たなスタッフを採用し、教育、評価を徹底しました。その結果、古田土会計グループは業界のリーダーとなり、多くの顧客から支持を得るに至りました。最終的には、同業者にもそのノウハウを提供するほどにまでなりました。

     

     
    古田土会計グループの創業以来の売上高の推移

    1-3.経営計画によって反発も生まれる

    文面で表現すると経営計画を作成するのが簡単なように思われるかもしれませんが、とんでもありません。古田土会計グループにおいてでも30年以上前は相当苦労しました。今の古田土会計グループからは想像できないかもしれませんが、30年以上前の古田土会計は決算業務だけをする一般的な会計事務所でした。そんな状況から今の古田土会計グループのような会計事務所に転換すると決断をし、現場に落とし込んできました。そうすると現場からは相当の反発が生じます。それでも、代表の古田土は常に自分がイメージしている理想郷をイメージし、経営計画書にもそのことを書き記し、社員にこれでもかというほど説き続けたのです。その積み重ねによって、今では世間から評価される会計事務所グループに上り詰めることができたのです。それを成し遂げた創業者の古田土は時々言います。「創業当社は1年に1人採用すれば良いと思っていた。だから、40年経った今では40人のつもりだったけど、結果、社員が400人にもなっていた。これも経営計画書のおかげです。」と。

    弊社古田土会計グループの事例からわかるように、経営計画こそが企業の成長、そして経営者の想いを具現化する重要な道具であることが理解いただけると思います。

    経営計画を策定し、それを従業員に明確に伝えることで、組織全体が一丸となって目標に向かって進むことができます。具体的な計画があることで、従業員は経営者の想いをより深く理解し、それに共感しやすくなります。その結果、経営者の想いは組織全体のエネルギーとなり、それが企業の成長を牽引します。

    1-4.経営計画を作るためには相当な覚悟が必要

    重要なので今一度言いますが、経営計画を作成し、社員と共有すると反発があります。しかも、会社の現実・現状と目標・理想のギャップがあればあるほど、その反発は強くなります。
     
    最悪の場合としましては、相当数の社員が退職することになります。事実、古田土会計グループにおいても経営計画を導入してから数年間はそのような状況が続きました。これはなにも古田土会計グループに限ったことではなく、社長の目標設定が高くなればなるほど、その傾向は強くなります。
    ですから、そうなってしまったとしても、経営者が目指している世界観を実現したいか否かによって、経営計画を作成するに際して、どのような内容で仕上げるかは大事になってきます。

    1-5.テンプレに依存しても良い経営計画は作れない

    一概に経営計画と言っても、世の中にはさまざまな種類の経営計画が存在しています。
    WEB上で「経営計画」と検索すれば、数多くの指導するコンサルタント・団体・会社が出てきますが、その数だけテンプレート・ひな型・フォーマットがあると言っても過言ではありません。
    ただ、大きく分類すると次の3つに分類することができます。


    A、売上アップ至上主義型経営計画書
    B、社員第一主義型経営計画書
    C、テンプレート型経営計画

    ただ、経験則で言わせていただきますとWEB上で検索すればヒットする「テンプレート型経営計画書」では、経営における課題を解決するには程遠い代物で終わってしまいます。経営は100社100通りですから、経営計画も同様に100社100通りです。つまり、経営計画をテンプレートベースで仕上げること自体無理なのです。
    ですから、この記事では世の中に出回っているCのテンプレート型を除いたAとBを中心に紹介させていただきます。(第3章参照)

    2、経営計画によって生み出してきた数々の成果

    経営計画に社長の想いを込めて作れば作るほど、社長の思い描く通りになるものです。
    ここでは、経営計画を作成した結果、会社がどのように変わったのかを紹介させていただきます。

    2-1.古田土会計グループの成功事例(40年連続増収中・社員満足度高く年間100名採用達成)

    まずは、前章でも紹介させていただきましたように弊社 古田土会計グループを改めて紹介させていただきます。

    経営計画書を作成したのは創業から10期目でしたが、それからというもの定量的にも定性的にも順調に成長できるようにはなりました。

    定量的実績

    ・成長性・・・創業以来40年連続増収中
    ・収益力・・・売上高経常利益率10%超
    ・安全性・・・自己資本比率90%超


     
       
    定性的実績
    定性的な評価としては社員満足度調査・受賞歴からしても、世間からはベンチマーク企業として注目していただけるようにもなりました。


     
        

    世の中の27,000の会計事務所のほとんどが個人事業主であり、平均所属職員数が5人であるのに対し、
    わが社はグループ総勢400名以上にものぼります。その要因としては、同業他社が持ち合わせていない戦略商品(“古田土式”月次決算書・人を大切にする経営計画書🄬・社長の成績表🄬)を開発したからです。それは、お客様の要望と自ら自社分析をした結果、開発できたものなのです。そして、その気づきを得たきっかけが経営計画なのです。

    あくまで競争市場においていかに成長していくかの仮設・検証するためには、客観的な市場分析・自社分析・競合他社分析をしたうえでいかに勝ち残るかを検討しなくてはいけなくなります。それを考えに考え抜いたからこそ今のポジショニングにたどり着くことができたのです。

     

     

    2−2.スズキ機工株式会社(機械製造)の成功事例(社員数わずか17名で経常利益毎年2億円を実現)

    スズキ機工株式会社は、年商7億に対して経常利益が約2億です。
    売上高経常利益率としては驚異の27%です。
    しかも、社員はわずか16名でこの利益率を達成することとなったのです。

     


    千葉県松戸市に機械製造会社があります。2代目社長の鈴木豊氏が事業を承継された際は、瀕死の状況でした。当時扱っていたのは今では目にすることのない一斗缶の工場だったのです。すでに当時の時点で需要はどんどん少なくなって減退している状況でしたから死に体だったのです。そこで、鈴木社長は冷静に市場分析をしたうえで、会社でできることとご自身の経歴と掛け合わせたうえで今の商売である機械製造をやり始めることになりました。
    しかしながら、なんども会社が崩壊しそうになりあるとき1冊の本に出合うこととなりました。
    それが、『経営計画書のつくり方(古田土満著・あさ出版)』だったのです。それがきっかけで鈴木社長は「経営理念」から「行動指針」、「社長の心得」、「社員の心得」、「人事」、「給与・賞与」、「教育訓練」、「環境整備」まで、会社運営に関するあらゆる基本方針を明文化されました。
    それでも、たくさんのトラブルが生じたので、さらに経営計画書を改めていき、最終的には今の形である高収益型の事業構造を作り上げることができました。

    参考)著:スズキ機工株式会社 代表取締役 鈴木豊氏 「弱者の経営戦略(エーアイ出版)」
    https://aiwa-ad.co.jp/suzukikikoh/

    2−3.株式会社夢とありがとう(飲食業)の成功事例(広告宣伝することなく、創業わずか12年で自己資本比率50%を実現)

    株式会社夢とありがとうは、広告宣伝のための集客プラットフォームを一切活用することなく、お客様へのサービス品質をあげることに徹底的にこだわりリピート率を高いまま維持し続けることができたのです。
    そして、創業から約10年たった時点で4店舗あったにも関わらず、余計な節税をすることなくしっかりと収益も出し、強い財務体質を作り上げることができたのです。

    世の中、飲食店の集客方法と言えば、大手企業が運営している集客プラットフォームを活用しているケースがほとんどです。しかし、株式会社夢とありがとうは創業から上記のプラットフォームを活用することなく、社員・アルバイトさんに対する理念教育・技術教育の末、お客様のファン化・リピート化に取り組んできました。

     


    飲食業と言えば、少人数で運営して細々と経営するか、店舗展開を目指して拡大戦略を取るかの二択になります。そして後者の場合は成長を急ぐこととなり結果として財務体質が悪化するケースがほとんどなのです。しかしながら、愛媛県松山市で店舗展開している株式会社夢とありがとうは、社員とアルバイトさんに技術教育のみならず、理念教育・サービスマンシップ教育をも徹底的にしました。いくら手間暇かかったとしてもこれにはこだわってされました。具体的には経営計画書のことを「赤本」と称し、社員はもちろんアルバイトスタッフのみなさんに対しても、お客様へのサービス品質を高くする理由・目的、そして具体的な接客対応の仕方等を書きまとめ、それを教材として社内テストを繰り返ししていきました。

    3、「成果が出る経営計画」と「成果が出ない経営計画」の違い

    実は、世の中にはいろんな経営計画書のパターンがあります。
    とは言っても、主流となっている経営計画書としては次の2つに大別することができます。

    本章では、それぞれの形式・特徴をイメージしやすいように、それぞれが重視している内容をベースにして比較・説明をさせていただきます。

    A、 売上アップ至上主義型経営計画書
    (数値目標を中軸として目標売上達成を重視する昭和型の経営計画書)


    B、人を大切にする経営計画書🄬
    (ウェルビーイング・人的資本主義をベースにし、持続的成長を目指す令和型の経営計画書)

    経営計画コンサルタント集団であるわれわれとしては
    Aの売上アップ至上主義型経営計画書を「成果が出にくい経営計画書」   

    → 短期的成果が出やすい


    Bの人を大切にする経営計画書🄬を「成果が出やすい経営計画書」

    → 中長期的成果が出やすい


    と定義させていただきます。

    そして、さらに目的と対象をまとめてみると下記のようになります。


     なお、この比較表は筆者の経営計画作成指導の実績をもとにまとめたものであり、絶対にこの比較表の通りという訳でないことをご理解ください。

    また下記の注意点もありますので、比較する際に参考にされてください。
    ※1、目次は弊社古田土会計グループの経営計画書をベースにして表現したものです。
    ※2、目次の並び順は各社の課題の優先順位によって、並び順が変わるものです。
    ※3、事業・部門ごとに表現する場合も多々ありますが、弊社では上記のようにひとつにまとめています。

    3-1.「売上アップ至上主義型経営計画書」の特徴

    売上アップ至上主義型の経営計画書は、短期的な売上増加に焦点を置きます。これらの計画書には、企業の使命感、経営理念、経営方針、ビジョン、目標と達成計画、利益計画、戦略、SWOT分析、具体的な経営目標、製品開発、販売戦略、組織運営に関する方針、年間スケジュールが含まれます。

    この売上アップ至上主義型の経営計画書は売上の達成を最優先とし、その達成のためには社員にルールを徹底させるための「環境整備に関する方針」と「評価制度」に重点を置いています。経営者が「なんとしても今期は3億円を達成しよう!」というような明確な目標設定を行い、その達成のためには戦術を中心に経営計画書を作成します。
    中にはSWOT分析を標準で表記する売上アップ至上主義型の経営計画書もあります。

    この売上アップ至上主義型の経営計画書は、特定の市場状況や企業のフェーズには最適です。例えば、市場が拡大している時や人材確保が容易な時に有効だったり、自社の位置や競争環境を理解している企業に適しています。

    いずれにしても、売上だけや自己分析だけに偏らず、経営全体のバランスと社員のモチベーションを保つことが重要です。これを達成するためには、明確なビジョン設定が必要で、経営計画は経営者だけでなく、社員全体の行動を統一し、企業の目標達成のための指針となります。

    3-2.「人を大切にする経営計画書🄬」の特徴

    社員第一主義型経営計画書は、人材の幸福と成長を中心に据え、結果的に企業の安定成長を目指すものです。この人を大切にする経営計画書🄬では「社員の未来像(ビジョン)」を中心にして作成することが重視されます。これは、社員の満足度や働きやすさを高めることで、生産性や士気を向上させ、それが最終的に企業の業績を向上させるという考え方に基づいています。

    社員個々のキャリアプランや生活設計を重視し、その達成を支える経営資源の投入を考えることが求められます。具体的には、高給与、働き方改革(ホワイト化)、定年の長期化、給与は年功・生活重視で賞与は実力主義、定年後の第2の人生、福利厚生、長期・中期キャリアプラン、社員持ち株会、親族外承継や親族外役員の登用、ホールディング化等によるポジション増加などが要素として挙げられます。

    ただし、社員の満足度を高めたり、働きやすい環境を整えたりするための投資は、短期的にはコスト増につながります。その結果が現れるまでには時間がかかるため、短期的な業績向上を求める経営者にとっては難しい経営方針となり得ます。また、このような経営計画は、中長期的な視点で経営を考えることができる経営者にとっては有効な手法となるでしょう。

    4、人を大切にする経営計画を作るべき理由(時代背景編)

    前章では、2つのパターンの経営計画を説明しましたが、令和において最も注目されている経営計画が社員第一主義型経営計画書(人を大切にする経営計画書)です。
    その理由を、以下の4つの時代背景をとして説明させていただきます。

    4-1.人材不足・人材流動化による採用難・離職率アップ

     

    (出典:総務省「第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI~ネットワークとデータが創造する新たな価値~」)

     

    近年の人材不足や人材の流動化は、企業にとって採用難や離職率の上昇という問題を引き起こしています。高齢化による労働力の減少や、経済のグローバル化に伴う人材の多様化が背景にあります。企業は優秀な人材を確保し、長期間働いてもらうことが難しくなっています。こうした状況の中で、社員第一主義型経営計画が注目される理由は、社員の満足度やエンゲージメントを高め、採用力や従業員の定着率を向上させる効果が期待できるためです。人材育成や福利厚生の充実、労働環境の改善など、従業員に対する投資が重要視されています。


    具体的な対策としては以下のようなものがあります:

    魅力的な組織文化の構築:

    企業文化や働きがいを高めることで、従業員の満足度とエンゲージメントを向上させ、離職率を下げることができます。企業のビジョンや使命を明確にすると共に、それを実現するための働き方や組織風土を形成することが重要です。

    従業員の成長支援:

    スキルアップの機会やキャリアアップの道を提供し、従業員の成長を支援することで、人材を引きつけ、維持することができます。定期的なフィードバックや評価、メンターシップ、研修プログラムなどを通じて、従業員のスキルとキャリアの発展を促進しましょう。

    労働条件の改善:

    賃金、福利厚生、勤務時間などの労働条件を見直し、働きやすい環境を提供することも重要です。フレックスタイム制度やリモートワークなど、柔軟な働き方を導入することも検討してみてください。

    採用戦略の見直し:

    人材の確保を目指すなら、採用戦略を見直すことも必要です。幅広い採用チャネルの活用、ブランドイメージの強化、求職者に対する魅力的なオファー(例:インターンシップや研修プログラム)など、多角的なアプローチを試みましょう。

    これらの対策は、経営計画書に明示的に記載することで、社員一人一人が目指すべき方向性や期待を明確に理解できます。そして、それが実現したとき、彼らは組織とともに成長し、自分の仕事に価値を見出し、より満足感を得ることができます。これが、人材の流動性を抑えるための重要なステップとなります。

    4-2.賃上げムード

    (出典:NHK首都圏ナビ「最低賃金 東京都 時給1072円 過去最大の引き上げを答申 影響や課題は」)

     

    近年の経済状況や労働市場の変化により、賃上げムードが高まっています。政府や労働組合が賃上げを求める動きが活発化し、企業も賃金を上げることを検討しています。しかし、賃上げだけでは、従業員のモチベーション向上や定着率の改善には限界があります。そのため、賃上げだけでなく、社員の幸福感や成長を重視した経営計画が求められるようになっています。社員第一主義型経営計画は、賃上げ以外の面でも従業員を大切にする取り組みを行い、働きがいのある環境づくりを目指します。これにより、社員の満足度やエンゲージメントが向上し、生産性や業績にも好影響を与えることが期待できます。

    以下のような対策が考えられます:

    パフォーマンスに基づく報酬制度:

    パフォーマンスや結果に基づく報酬制度を導入することで、労働者のモチベーションを引き上げ、同時に組織の目標達成に貢献することを促します。この方法は、公平性と透明性を保つことが重要で、評価基準や報酬体系を明確にし、従業員に理解してもらうことが求められます。

    ベネフィットの見直し:

    給与だけでなく、福利厚生や働き方の柔軟性、キャリア開発支援など、ベネフィット全体を見直し、働きがいを感じられる職場環境を提供することも効果的です。例えば、健康保険の充実、フレキシブルな勤務時間、教育研修の提供などが挙げられます。

    雇用形態の多様化:

    フルタイムの正社員だけでなく、パートタイムや契約社員、リモートワークといった雇用形態を多様化することで、人件費を効率的に管理することも可能です。これは企業のニーズに合わせて慎重に検討するべき問題です。

    これらの対策を経営計画書に反映させることで、社員は自身の報酬が公平で、パフォーマンスにより決定されることを理解し、その結果、自身のパフォーマンス向上につながるでしょう。また、多様なベネフィットや働き方の選択肢は、社員が自分自身と仕事とのバランスを保つ手助けとなります。

    4-3.Z世代の意識向上

     
    (引用:著:ジェイソン・ドーシー アンド デニス・ヴィラ(2021)Z世代マーケティング 世界を激変させるニューノーマル.ハーパーコリンズ・ジャパン、画像 https://amzn.asia/d/aRRFEYy より)

     

    Z世代は、1997年から2012年までに生まれた世代であり、インターネットやSNSが普及した環境で育った世代であり、自己表現や価値観の多様性を重視する傾向があります。この世代は、企業や職場に対して、自分たちの意見やアイデアを尊重し、多様性を認める環境を求める傾向があります。彼らは「会社はみんなのもの」という意識を持ち、企業の経営にも関心を持つことが多いです。そのため、社員第一主義型経営計画が支持される背景には、Z世代の働き方や価値観の変化が関係しています。


    このZ世代が求めるものを理解し、それに対応するために以下の対策が有効です。具体的には、

    多様性と包括性の推進:

    Z世代は多様性と包括性を重視します。性別、人種、宗教、性的指向など、個々の違いを尊重し、その違いを価値として活用する組織文化を推進しましょう。

    持続可能性への取り組み:

    Z世代は社会的な問題に敏感で、企業が環境や社会に対して責任を持つことを求めます。企業の持続可能性に対する戦略や具体的な行動を明示することが重要です。

    デジタル化への対応:

    Z世代はデジタルネイティブで、デジタル技術を自然に活用します。そのため、働き方やコミュニケーションのデジタル化を進めることで、彼らの働きやすさを向上させることができます。

    キャリアの成長支援:

    Z世代は自己実現とキャリア成長を重視します。キャリアの目標設定やスキルアップのための教育プログラムを提供することで、彼らのモチベーションを維持します。

    これらの対策は経営計画書に明記することで、Z世代の社員にとって企業の魅力を高め、自分たちがどのように成長し貢献できるかを示すことができます。

    4-4.後継者不足 

     

    (出典:中小企業庁 「第2部 深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命 2 中小企業の経営者の高齢化と事業承継」)


    多くの中小企業が後継者不足に悩んでいます。高齢化が進み、引退する経営者が増える一方で、次世代の経営者が不足しているためです。後継者不足の背景には、経営の厳しさやリスクが伴うことへの懸念、働き方の多様化やキャリア意識の変化などがあります。この問題を解決するためには、企業が魅力的な働き方やキャリアパスを提供し、経営者としての成長を支援する必要があります。
    社員第一主義型経営計画は、後継者不足に対処するための有効な手段となります。人材の育成や、働く環境の改善に取り組むことで、将来の経営者候補を見つけやすくなります。また、経営者自身が社員の意見やニーズを尊重し、一緒に働くことに喜びを見出すことが、後継者を引き寄せる魅力的な企業文化を築くことにつながります。


    多くの企業では、経営陣や重要な役職の後継者を見つけることが難しくなっています。これは、業績に直接影響を与えるため、非常に重要な問題となっています。この背景には、キャリアアップの意識の高まり、リーダーシップに対する期待値の変化、新しいスキルセットの必要性などがあります。

    この問題を解決するための対策は以下のとおりです:

    リーダーシップ開発プログラム:

    内部の人材をリーダーとして育成するためのプログラムを設けましょう。これには、メンターシップ、コーチング、ローテーションプログラム、リーダーシップトレーニングなどが含まれます。

    後継者計画の作成:

    重要な役職の後継者候補を明確にし、彼らが必要とするスキルや経験を獲得できるように計画を立てることが重要です。

    才能の発掘と育成:

    社員一人一人の強みや関心を理解し、それに基づいて彼らの才能を発掘し育成します。これには定期的なパフォーマンスレビューやフィードバック、個々のキャリアパスの支援などが必要です。

    組織風土の構築:

    社員が自分の意見を表現し、新しい挑戦を受け入れることができるような組織風土を作ることが重要です。これにより、新しいリーダーシップの形を生み出し、後継者不足の問題を解決することが可能となります。

    これらの対策を経営計画書に取り入れることで、後継者候補は自身のキャリアパスと成長の方向性を明確に理解することができ、それに向けて努力し続ける意欲を維持することができます。

    5、人を大切にする経営計画を作る5つのメリット

    前述したとおり、時代背景的に経営計画を作成しなくてはいけないことはご理解いただいたかとは思います。とは言え、単に経営計画書を作成するだけではなく、社員第一主義を謳い、社員が社員自身の未来像・ビジョンに向け仕事にまい進できるストーリー・ステップ等も大事になってきます。そうすることで、さまざまな効果・効能・メリットがあるのです。

    その代表的なメリットして、弊社古田土会計グループの事例を紹介させていただきます。

    古田土会計グループでは、年間100名超の社員・パートさんを採用できるような状況になっています。事実、2022年は108名もの人数を新たに採用することとなりました。


     
    これもひとえにこの章で解説させていただく5つのメリットとなります。


    5-1.目標が明確になり目標達成しやすくなる
    5-2.経営参加型となり、自主性が芽生え始める
    5-3.会社・商品の強みを認識し、経営資源を集中し始める
    5-4.社員の未来像を目指して、スキルアップ・キャリアアップのプラン・コースを整理しはじめる
    5-5.MVVに共感して採用ができるようになる

    以上のように次の5つのメリットにまとめてみましたので、それぞれ確認されてください。

    5-1. 目標が明確になり、目標達成しやすくなる

    経営計画を策定することで、会社全体の目標が明確になり、社員一人ひとりが自分たちの役割や責任を理解しやすくなります。ほとんどの経営者が単に「頑張れ」と言うのに対して、人を大切にする経営計画書では「誰が、どの顧客に、どの商品を、どれくらい頑張って売るのか」を明確にしていくからです。

     

    (販売計画)
    また、目標を共有することでチームワークが向上し、効率的な業務遂行が可能になります。結果として、会社全体の生産性が向上し、成長が加速することが期待できます。

    古田土会計グループでは、全社員が自分の年間売上目標を設定します。そして、毎月それを自身でチェックするような仕組みにしています。これはノルマではなく、自分で設定させいるからこそ自分で設定した目標を達成するように試行錯誤し始めることとなり、目標を達成させる癖付けができるようになっています。

     

    5-2. 経営参加型となり、自主性が芽生え始める

    経営計画に社員が参加することで、自主性や意識が高まります。自分たちの未来を明るいものとするために社員達は自分たちの意見やアイデアを出したりすることで、自分たちの仕事に対する責任感が強まり、やりがいを感じるようになります。また、経営者と社員がコミュニケーションを密に取り、互いの意見を尊重することで、企業文化が改善され、社員の満足度が向上します。これにより、社員のモチベーションが高まり、組織全体の生産性が向上し、企業の成長につながります。


    古田土会計グループの社員のなかには、自ら事業開発をしたいと申し出る社員が毎年います。それは、
    経営計画において今後の事業展開の方向性を社員に明示しているからです。そして、モチベーションの高い社員にとっては、自己成長させたいという欲求を満たすこととなるからです。

     

    5-3. 会社・商品の強みを認識し、経営資源を集中し始める

    経営計画を通じて、会社や商品の強みを明確にすることができます。自社の強みや競争力を理解し、経営資源を効果的に活用することで、市場での競争力を高めることができます。また、弱みや課題に対しても取り組むべき改善策を立案し、組織全体で取り組むことで、継続的な成長が実現できます。経営資源を適切に配分し、事業戦略を実行することで、企業の利益や業績が向上し、持続的な成長が期待できます。

    古田土会計グループでも戦略を作る際に、市場を俯瞰するためにポジショニングマップを作りました。経営計画を作るに際し、ポジショニングマップを作ることによって市場を俯瞰し自社の強みを明確にイメージでき、今に至っていると自負しています。

    5-4. 社員の未来像を目指して、スキルアップ・キャリアアップのプラン・コースを整理しはじめる

    経営計画の策定によって、社員が将来的に目指すべき未来像が明確になります。そのため、スキルアップやキャリアアップに対する取り組みがより具体的になり、社員が自分の成長に向けた計画を立てやすくなります。経営者や上司が社員のキャリアプランをサポートし、研修や教育プログラムを提供することで、社員は自分のスキルや知識を磨くことができます。

    古田土会計では、社員のために数多くのキャリアアッププランを提示しています。提示しているからこそ、モチベーション高い社員にとってはますますモチベーションが高まりますし、離職率も下がる結果となっています。

       

    5-5.MVVに共感して採用ができるようになる

    企業の目標や将来のビジョンが明記された経営計画書を求職者に提供することで、企業がどのような方向性を目指しているのかを理解できるようになります。その結果、求職者は自分のキャリアと企業の将来像が合致するかどうかを判断しやすくなり、適切な企業を見つけやすくなります。また、企業の価値観や組織風土、働き方改革などに関する情報も記載されているので、求職者にとっては企業の文化や働き方について具体的なイメージを持つことができ、自分に合った環境で働けるかどうかを事前に把握できます。

    今は採用難と言われていますが、おかげさまで古田土会計グループでは採用は順調にできています。
    昨年は全部で108名もの社員を採用することができました。それもこれも経営計画のおかげです。経営計画があるからこそ、理念や事業に共感していただく方が増えることとなっています。時代は変われども本物だけは引き続き成長するということを表していると確信しています。

     

    6、令和になってヒットしている「人を大切にする経営計画書🄬」の作り方

    ここまで読み進めていただき、人を大切にする経営計画書を作成する重要性は十分ご理解いただけたかと思います。そこで、作成したいという想いが募ってきた方もいらっしゃることでしょうから、本格的に作成したい方は下記からご確認ください。

    → 経営計画書の作成方法はこちらをチェック(近日公開予定)


    ただ、経営計画を初めて作るのか否か、数字に強いか否かによって、作る内容が変わってくるのも現実です。そこで、われわれの経験則をもとに数字に強いか否か、何度作成しているかによってどれくらいのボリュームを作成すればよいのかの目安をまとめてみました。



    なぜこのボリュームで良いのかも含めて、下記の記事にて詳細を記載しておきますのでご確認のほどよろしくお願いいたします。

    → 経営計画書の作成方法はこちらをチェック(近日公開予定)

    7、経営計画に関するよくある質問とその回答

    7-1.経営計画はいかなる企業であっても作るべきですか?

    経営計画書を作らないというのは、一般的には推奨できません。
    経営計画書は、会社がどのように運営されるべきか、どのように成長するべきか、そのために何をすべきかを示す重要なツールです。

    しかしながら、経営計画書を必要としない代表的な例が次の3つです。

    非常に小さな企業:
    個人経営のビジネスやスタートアップの初期段階など、非常に小さな企業では経営計画書を形式的に作成する必要は必ずしもありません。ただし、それでも目標を設定し、それに向けてどのように動くべきかについてのある程度の計画は必要となります。

    安定した収益を上げている企業:
    市場での位置を確立し、安定した収益を上げている企業も、新たな経営計画書を頻繁に作成する必要はないかもしれません。ただし、業界の変化や新しい機会に対応するためには、定期的な計画の見直しや調整が必要となるでしょう。

    ファミリービジネス:
    家族経営のビジネスの中には、事業の運営方針や目標が口頭で伝えられ、形式的な経営計画書が存在しない場合もあります。

    ただし、これらの事例でも、ビジネスの方向性を定め、将来の挑戦に備えるために、ある種の計画や戦略が存在していることが普通です。経営計画書はその計画や戦略を文書化し、共有するための有効な手段と言えます。

    7-2.経営計画は誰が作るべきですか?

    経営計画書は企業の将来の目指す方向性や戦略、目標を具体的に明確にするための重要な文書です。その作成は、企業の規模や組織の性質によって異なります。

    中小企業の場合:

    経営者自身が直接経営計画書を作成することが一般的です。それは経営者がビジネスの全体像を把握し、将来のビジョンや戦略を決定する責任があるからです。

    大規模な企業の場合:

    経営幹部や部門長が経営計画書の草案を作成し、その後経営者や会議・ミーティング等で審議・承認するプロセスが一般的です。この場合、計画の作成はチームワークとなり、各部門からのフィードバックや意見を取り入れることで、より包括的で実行可能な計画を作ることが可能となります。

    どちらの場合でも、経営計画書は企業の目標を設定し、それに向かって行動するための道筋を示すためのもので、経営者がその方向性を決定し、その実行を監督する役割を担っています。そのため、最終的な決定権は経営者にあると言えます。


    各要素に対する経営者の関与度は組織の規模や業態、そしてその要素が企業の長期的な戦略にどれほど密接に関連するかによります。以下、各要素についての一般的な考え方を説明します。

    ミッション・ビジョン・バリュー:
    会社の根幹をなすものなので経営者が主導すべき要素です。

    戦略: 
    経営者が設定するべきであり、その方向性を決定します。
    ただし、具体的な内容を決める際には各部門のリーダーからのフィードバックや意見を取り入れることが望ましいです。

    戦術:

    各部門のリーダーやチームが作成すべきです。

    戦術は戦略を具体的な行動に落とし込むためのもので、それぞれの部門が最もよく理解している自身の業務領域に関連します。


    数値目標:

    経営者や経営陣が設定する全社的な目標がある一方で、各部門の目標は各部門のリーダーやチームが設定すべきです。

    以上のように、経営計画書の作成は組織全体の協力を必要とするプロセスであり、その各要素は企業の経営層だけでなく、全ての社員が理解し、関与し、遵守するべきものです。

    7-3.経営計画を作るべきタイミングはいつですか?

    経営計画書の作成は一般的に次の会計年度の始まる3~4か月前に始めることが望ましいです。具体的に言うと、もし決算月が3月であれば、11月または12月から計画作成を開始するのが良いでしょう。

     

    その理由は以下の通りです:

    1.計画作成には時間が必要

    経営計画書を作成する際には、会社の過去の業績データ、市場分析、競合分析、業績予測などの多くの情報を考慮に入れる必要があります。それらの情報を集め、分析し、それを基に戦略を練るためには十分な時間が必要です。

     

    2.内部調整のため

    経営計画書は、会社全体の方向性を示すものであり、各部門やチームの目標設定に大きな影響を与えます。そのため、計画案を作成した後、各部門やステークホルダーと調整を行い、フィードバックを取り入れる時間が必要です。

     

    3.財務計画のため

    経営計画書には、予算や投資計画などの財務に関する情報も含まれます。これらの計画を行い、必要な場合には資金調達をするためにも、早めに計画を立てることが必要です。

    以上の理由から、会計年度の始まる3~4か月前に経営計画書の作成を開始することが良いとされています。ただし、企業の規模や業界、事業状況によってはもっと早く開始することもあります。また、経営計画は定期的に見直し、必要に応じて更新することが重要です。

    7-4.経営計画を作成する際に必要な情報は何ですか?

    財務情報

    会社の現在の財務状況を理解するためには、過去の財務報告書(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書など)が必要です。これらの情報を元に、将来の財務計画を立案します。

     

    市場分析

    市場の動向や競合状況を理解するためには、市場調査レポートや競合分析の結果が必要です。市場のサイズ、成長率、主要な競合他社、顧客の嗜好や行動などの情報を把握し、それを経営戦略に反映します。

     

    組織構造

    組織図や部門の役割と責任を明確にした資料があると、経営計画を具体的に実行するための役割分担や責任範囲を設定しやすくなります。

    以上の情報を集め、分析し、それらを経営計画書に反映することで、会社の将来を見据えた戦略的な決定を下すことができます。経営計画は静的なものではなく、市場環境や会社の状況に応じて定期的に見直し、更新することが重要です。

    7-5.経営計画の作り方はどこで勉強すれば良いですか?

    中小企業の経営計画の作り方について学ぶためのリソースは多岐にわたります。以下にいくつかの方法をご紹介します:

     

    ビジネススクール:

    MBAプログラムなどのビジネススクールでは、経営戦略や財務管理、マーケティングなど、経営計画を作成するための広範な知識を学ぶことができます。

     

    オンライン教育:

    CourseraやUdemyなどのオンライン学習プラットフォームには、経営計画作成に関するコースが多数存在します。自分の都合に合わせて学習することが可能で、具体的なスキルを身につけることができます。

     

    書籍:

    ビジネスや経営戦略に関する書籍は、経営計画作成の知識を深めるための有効なリソースです。特に、経営計画作成に関する専門書やビジネスケーススタディの集積は非常に有用です。

     

    専門家やコンサルタント:

    経営計画作成の経験が豊富な専門家やコンサルタントに相談することも一つの方法です。これらの専門家は、経営計画作成の具体的なステップや注意点を教えてくれるでしょう。

     

    産業団体や商工会議所:

    多くの地域では、中小企業向けのビジネスサポートが提供されています。これらの組織はワークショップやセミナーを開催し、経営計画作成に関する情報を提供しています。

    これらのリソースを活用して、経営計画の作り方について学び、実際に計画を作成してみることが重要です。また、作成した計画は定期的に見直し、必要に応じて更新することを忘れないでください。

    7-6.経営計画を作るにあたってお勧めの環境はありますか? 

    経営計画を作成する際には、以下のような環境が推奨されます。

     

    静寂な場所:

    中断や雑音がない場所で作業することは、集中力を高める上で非常に重要です。これは、思考を明確にし、戦略的な視点で計画を立てるのに役立ちます。

     

    情報アクセス:

    市場調査、財務データ、社内レポートなど、必要な情報への簡単なアクセスが可能な環境が理想的です。これにより、計画作成に必要なデータをすぐに取得し、分析できます。

     

    適切なツール:

    コンピュータ、プロジェクター、ホワイトボード、ポストイットなどのビジネスツールを使うことで、思考の整理や視覚的な表現、アイデアの共有が容易になります。特に、スプレッドシートやプロジェクト管理ツールなどのデジタルツールは、情報の管理やタスクの追跡に役立ちます。

     

    チームとのコミュニケーション:

    チームメンバーやステークホルダーとの定期的なミーティングやブレインストーミングセッションを行うことで、多角的な視点やフィードバックを得られます。これは、全体像を理解し、適切な決定を下すのに役立ちます。

    これらの条件が整った環境で作業することで、経営計画の作成が円滑に進み、より良い結果を得ることができるでしょう。

    7-6.経営計画の更新頻度はどのくらいが適切ですか?

    原則としては年に一度、作成し直すことを強く勧めます。


    理由としては、更新しない場合は以下のようなデメリットが考えられるからです。


    市場変動への対応遅れ:

    市場環境は絶えず変化します。競争状況、消費者の需要、技術の進化など、ビジネスに影響を与える要素は常に動いています。経営計画を定期的に更新しないと、これらの変動に対応する機会を逃すことになり、結果的に競争力を失う可能性があります。

     

    目標達成の遅れ:

    定期的な計画のレビューと更新を通じて、進捗を確認し、必要な場合には早期に調整を行うことができます。これにより、計画通りに事業が進んでいない場合でも、早期に修正を行い目標達成を目指すことができます。

     

    リソースの最適化の遅れ:

    経営計画の更新を通じて、リソースの割り当てを見直すことが可能です。計画を更新しないと、リソースが最適に活用されず、生産性や収益性に影響を及ぼす可能性があります。

     

    社員のモチベーション低下:

    経営計画は、社員が会社の目標に向かって努力するための方向性を示します。計画が古くなると、その方向性が失われ、社員のモチベーションや結束力が低下する可能性があります。


    以上のように、経営計画を定期的に更新しないと、事業の競争力や効率性、社員のモチベーションなどに悪影響を及ぼす可能性があります。

    7-7.経営計画の作成に専門家を雇うメリットとデメリットは何ですか?

    経営計画の作成に専門家を雇うことには、以下のようなメリットとデメリットがあります。

     

    メリット:

    専門知識と経験:専門家は、多くの業界やビジネスモデルについての知識を持ち、経営計画の作成に関する豊富な経験を持っています。これにより、最適な戦略を立案し、適切な指標を設定することができます。

     

    客観的な視点:

    組織内部からではなく、外部からビジネスを見ることで、偏見のない分析や評価を提供できます。これにより、組織内部で見過ごされがちな問題を明らかにすることができます。

    時間の節約:

    専門家に経営計画の作成を任せることで、経営陣は他の重要な業務に集中することができます。

     

    デメリット:

    コスト:

    専門家を雇うことは、一定の費用が必要です。そのため、予算の制約がある中小企業にとっては、その費用が負担となることもあります。

    企業文化やビジョンへの理解:専門家は組織の内部文化やビジョンを十分に理解していない場合があります。そのため、それらを適切に反映した計画を作成するのが難しい場合があります。

    依存性の発生:

    経営計画の作成を完全に外部の専門家に依存すると、組織内部でそのスキルを育てる機会が失われ、組織が自己依存的な経営能力を失う可能性があります。

    これらを考慮した上で、専門家の雇用を検討することが重要です。また、専門家を雇う場合でも、経営陣が経営計画の作成プロセスに深く関与し、組織のビジョンや目標を明確に伝えることが重要です。

    8、弊社が運営する経営計画作成25時間合宿にご参加ください

    経営計画を作成される決意をされたものの、あなたひとりではできないということであれば、弊社が毎週開催している「経営計画作成25時間合宿」にご参加ください。

    8-1.毎週、経営計画の作成指導をしています。

    弊社古田土会計グループでは、毎週「経営計画作成25時間合宿」を開催しています。サービスを開発して5年経ちましたが、参加者数も年々増加し、今では年間500名の中小企業経営者が参加するほどになりました。

    合宿の様子2

     

    そもそも、この「経営計画作成25時間合宿」を開発したのは2018年のことでした。弊社では、「“古田土式”月次決算書」と「人を大切にする経営計画書🄬」の2つを主な戦略商品としてサービス提供してきました。しかしながらこの「経営計画作成25時間合宿」のサービスをリリースするまでは、お客様に対し毎月の月次決算報告をする際にだけ経営計画書の作成・運用の指導をさせていただいていました。そして、指導するのは専属のスタッフではなく、全担当者が追加のオプション料金をもうらこともなかったので、ノウハウが希薄だったのは否めませんでした。つまり、戦略商品と言いつつも、本格的に経営計画の作成を1から指導するということがなかったのです。

    そこで、意を決して有料のサービスへと昇華させ既存のお客様向けに打ち出しをし始めました。当初は3~4か月に1回開催するほどでしたが、お客様の反応が非常に好評だったためすぐに毎月開催にすることとなりました。また、今では本社の東京のみならず大阪・名古屋・博多・横浜の5か所にて開催するほどにまでなりました。

    8-2.経営計画作成25時間合宿でやっていただく3つの内容

    経営計画作成25時間合宿のサービスを開始して5年も経ちますが、内容は常にブラッシュアップさせています。今から考えると初年度の内容と今の内容はほとんど違うものと言っても過言ではないほど進化を遂げることができました。結果として、今は参加される中小企業経営者が大満足されるほどの内容になったと自負しています。その中でも次の3つを重点的にやっていただくようにしました。

    1. 経営計画作成指導 その1 経営計画の構造を理解する

    経営計画とは言っても世の中にはたくさんあります。

    われわれ古田土会計グループとしましては、前述したように今の時代に即した弊社の「人を大切にする経営計画書🄬」をベースに指導をさせていただいております。具体的には下記の「経営計画キャンバス🄬」(「経営計画キャンバス🄬」は株式会社古田土経営の登録商標です。)に基づいて経営計画を俯瞰・理解していただいています。

     



       

    各用語とその意義をご理解いただくことによって、多くの気づきを提供させていただいています。つまり、そこでスタートラインに立っていただくということとなります。これができていないと、経営者の方々は枝葉の話に終始してしまうケースがかなりあります。ですから、



    1. 経営計画作成指導 その2 中期事業計画を作成する

    経営計画は気合と根性だけでは作れません。万が一、作れたとしても社員さんには伝わりません。われわれのスタンスとしては経営者・経営陣のみならず、社員のみなさんにも経営者が市場をどうとらえたうえで、これからどのように展開するのかを知りたいのです。そのためにも数字が欠かせないのです。

    「経営計画作成25時間合宿」では、弊社の独自フォーマットに落とし込んで中期事業計画を作成していただくようにしています。

     

    上記のフォーマットはまだ一部ではありますが、合宿の際に提供させていただいている中期事業計画 完全版で作成していただくことで多くの計画の粗さが分かってきます。その一例を挙げてみますと、

     

    ・各商品の売上高・粗利益額の推移(事業成長率の妥当性)

    ・労働分配率・労働生産性の推移による生産性の異変

    ・未来費用(広告・採用等)の最大捻出可能額の妥当性

    ・目指すべき1人あたり人件費の最適化

    ・最低限獲得経常利益・当期利益の妥当性

    ・5年後における実現すべき貸借対照表の最終デザイン

    ・5年後に目指したい組織図デザイン

    などがそれです。

    ですから、数字とは言っても侮ることができません。会社を客観的に捉えることで初めて、戦略的に高収益高賃金の事業構造を作ることができるようになる訳です。

     

    1. 経営計画作成指導 その3 明るい3つの未来像(事業の未来像・組織の未来像・社員の未来像)

    弊社の経営計画の醍醐味は何といってもビジョン(未来像)です。ビジョン(未来像)と言っても3つあります。それが、「事業の未来像」、「組織の未来像」、「社員の未来像」です。

     

       

    時系列で表現すると「事業の未来像」→「組織の未来像」→「社員の未来像」となります。なぜならば、今後の事業開発・展開によって、会社(組織)が変わっていきます。会社(組織)が成長拡大していくから社員の処遇等の社員の未来像も変わる訳なのです。

    ただ、われわれがこだわっているのが「社員の未来像」です。結局、経営計画を遂行するのは社員です。その社員をモチベートするには社員にとっての明るい未来を提示してあげなくては誰も主体的には動いてくれません。ですから、「経営計画作成25時間合宿」ではビジョン(未来像)とりわけ社員の未来像を作成していただくことは必須事項としています。

    8-3.経営計画作成25時間合宿の概要

    興味関心を持っていただいた中小企業経営者の方のために「経営計画作成25時間合宿」の概要を共有させていただきます。


    開催日程:下記会場のいずれかにおいて毎週開催中

    開催場所:東京・大阪・名古屋・福岡

    ※会場参加のみなので、オンライン参加はできません。

    指導員:古田土会計グループの経営計画作成指導員、古田土会計グループにて認定された全国の税理士・職員さん

    対 象:中小企業経営者・経営陣(各社2人まで)

     


     
    参加費:132,000円(税込み)
    申込方法:こちらをクリック

    なお、お時間都合つかない方もいらっしゃるでしょうから、こちらの無料のウェビナー(高収益型事業構造のつくり方ウェビナー)もございます。

    どちらかご都合よい方を選択して参加されてください。

    9、まとめ

    企業の成功と経営計画の作成スタイルには密接な関連性があります。成功する企業は、現代の働き方やビジネス環境に合わせた経営計画を作成しています。これは社員の参画とモチベーションを高め、より現実的で適応性のある計画を作り出すことを可能にします。一方、昔のスタイルで計画を作成している企業は、現代の環境に対応する能力を欠いてしまいがちです。結果として、実行可能性の低い計画や社員のモチベーションの低下を招く可能性があります。そのため、成功するためには、現在のビジネス環境と社員のニーズを理解し、それに応じた経営計画を作成することが重要となります。

    1.  
    マネるだけ、埋めるだけで作れる 経営計画書 作成シート(ダイジェスト版)
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