固定長期適合率とは?計算式や目安から改善方法まで解説

    記事公開日: 2022.10.25

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    固定長期適合率は、会社の安全性を見る指標であり、会社を経営していくうえで大切な指標のひとつです。

     

    しかし、

    「どうやって固定長期適合率を計算すればいいの?」

    「固定長期適合率の目安はいくつ?」

    「固定長期適合率の改善方法を知りたい!」

    といった疑問をお持ちの経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

     

    この記事では、固定長期適合率の計算式や目安と改善方法、その他の安全性の指標についても解説します。

     

    この記事をお読みいただくことで、貸借対照表の数字を使って、会社の安全性について検討することができるようになります。

     

    1.固定長期適合率とは

    固定長期適合率とは、「自己資本+固定負債」に対して固定資産がどれだけの値であるかを示す指標です。

     

    固定資産とは、1年を超えて現金化されずに、長期にわたり使われる資産を言いますが、固定長期適合率を見ることで、返済する必要がない自己資金と長期借入金などの固定負債のうち、固定資産への投資にあてられた比率が分かります。

    固定長期適合率は会社の安全性を見る指標

    固定長期適合率は、会社の安全性を見る指標として用いられます。ここで言う安全性とは、負債を支払う能力があるかどうかです。安全性を分析する際には、長期的な視点と短期的な視点がありますが、固定長期適合率は長期的な視点での安全性の指標になります。

     

    固定長期適合率が低ければ低いほど、企業の財務状態は安全性が高いと言えます。逆に、固定長期適合率が100%を超える値になると、資金調達に短期借入金が使われていることになるので改善が必要です。

    固定長期適合率と固定比率の違い

    固定長期適合率と同じように、長期的な視点で安全性を見る指標に固定比率があります。固定比率は、自己資本に対して固定資産がどれだけの値であるかを示した指標です。

     

    固定長期適合率との違いは、分母に長期借入金である固定負債を含めるかどうかにあります。長期にわたって使用する固定資産は、返済する必要がない自己資金のみで購入することがより望ましいとされているため、固定比率は固定長期適合率よりも厳しく見た指標であると言えます。

    2.固定長期適合率の計算方法

    固定長期適合率は、次の計算式にあてはめることで、求めることができます。

     

    固定長期適合率(%)=固定資産÷(自己資本+固定負債)×100

     

    例えば、固定資産600万円、自己資本500万円、固定負債250万円であれば、

     

    600÷500万+250万)×100=80

     

    となり、固定長期適合率は80%です。

     

    計算式に出てくる「固定資産」「自己資産」「固定負債」は、いずれも貸借対照表に記載があります。

     

    「固定資産」は1年を超えて現金化されずに長期にわたり使われる資産のことで、土地や建物、機械装置などの有形固定資産、ソフトウェアなどの無形固定資産、投資有価証券などが該当します。

     

    「自己資本」は資本金と利益剰余金のことで、貸借対照表では純資産にあたります。返済する必要がない資金です。

     

    「固定負債」は返済期限が1年以上ある負債のことで、社債と長期借入金が該当します。自己資本の次に安定した資金と言えます。

    3.固定長期適合率の目安

    固定長期適合率は会社の安全性を見る指標であることは既に説明しましたが、何を目安として固定長期適合率を見るとよいのでしょうか。また、業種別に見ると、固定長期適合率の平均には違いがあるのでしょうか。固定長期適合率の目安について説明します。

    固定長期適合率の目安は100%以下

    固定長期適合率の基準は「100%」です。100%以下であれば会社の財務状況は健全であり、100%を超える状況であれば危うい状況で改善が必要であると判断されます。

     

    固定長期適合率が100%以下である状況は、固定資産が、安定した資金である自己資本と固定負債の合計額以下であることを意味します。そのため、会社の財務状況は健全であると言えるのです。

     

    一方で、固定長期適合率が100%を超える場合、安定した資金である自己資本と固定負債だけでは足りずに短期借入金が使われている状況です。短期借入金はすぐに返済をしなければならないため、返済期日が来ればまた新たな借り入れが必要になります。そのため、資金繰りが危うい状態であると判断されるのです。

     

    したがって、会社の安全性を保つためには、固定長期適合率を100%以下にする必要があります。

    業界別の固定長期適合率の平均

    固定長期適合率が実際にどの程度であるのかは、業種別の平均を見ることができます。日本政策金融公庫が「小企業の経営指標調査」を隔年で実施しており、固定長期適合率のデータもあります。この調査は、日本政策金融公庫国民生活事業が融資した企業のうち、従業員数が50人未満の企業が対象です。

     

    【小企業の業種別固定長期適合率の平均(20192020年度)】

    業種

    固定長期適合率の平均

    情報通信業

    44.8%

    運輸業

    98.2%

    卸売・小売業

    80.9%

    飲食店・宿泊業

    136.3%

    医療・福祉

    79.4%

    教育・学習支援業

    104.3%

    サービス業

    87.0%

    建設業

    72.6%

    製造業

    87.0%

    建設業、製造業は2020年度、その他は2019年度

    参考:小企業の経営指標調査|日本政策金融公庫

     

    業種別の固定長期適合率の平均を見てみると、業種によって大きく異なることがわかります。情報通信業や建設業、医療・福祉などの業種では固定長期適合率が低く、飲食店・宿泊業や教育・学習支援業では固定長期適合率が高くなっています。

    4.固定長期適合率の改善方法

    固定長期適合率を改善するためには、計算式の分子を減らすか、分母を増やすと、固定長期適合率の値が小さくなります。

    ここでは固定長期適合率を改善するための3つの方法について、具体的に解説します。

    (1)固定資産を減らす(分子)

    まったく使っていない遊休資産やトレード目的ではない有価証券で不要なものがあれば、これらを処分して固定資産から外します。また、使っている資産であっても、資産計上する必要がないオペレーティングリースなどにすることでも、固定資産を減らせます。

     

    設備投資を抑えることでも固定資産を減らせますが、設備投資は企業の成長には不可欠です。そのため、設備投資の見直しは、慎重に行わなければなりません。

    (2)自己資本を増やす(分母)

    利益を上げ内部留保を増やしたり、出資を受け入れ増資を行ったりすることで、自己資本を増やします。

     

    しかしながら、利益は景気や消費者の動向など外部要因の影響を大きく受けるため、思うようには利益を上げて内部留保を増やせません。また、増資についても、出資を受け入れることで議決権が変動するなど、検討しなければならない課題もあります。自己資本は短期間で増やすことが難しいため、中長期的な計画が必要です。

    (3)固定負債を増やす(分母)

    一般の投資家から社債を募集するか、金融機関から長期借入金を借り入れることで、固定負債を増やせます。

    さらに、長期借入金を増やす方法としては、新たに長期借入金を借り入れる方法と、短期借入金から長期借入金への借り換えにより流動負債を減らし固定負債を増やす方法の2つがあります。

     

    いずれの場合も、固定負債は返済しなければならないため、無理のない返済計画を立てることが大切です。

    5.固定長期適合率と合わせて覚えておきたい安全性の指標

    会社の安全性を見る指標は、固定長期適合率や固定比率だけではありません。固定長期適合率・固定比率は長期の支払い能力を見る指標ですが、短期の支払い能力や財務体質の健全性を見るための指標もあります。ここでは、覚えておきたい安全性の指標を紹介します。

    (1)株主資本比率

    株主資本比率は、総資産に占める株主資本の割合で、財務の安定性を測る指標のひとつです。計算式は次のようになります。

     

    株主資本比率(%)=株主資本÷総資産×100

     

    株主資本は、株主が出資をしたお金と過年度からの利益の蓄積で構成されています。株主資本は負債と異なり、返済や支払いの必要がない資金であるため、株主資本比率が高いほど、会社の財務の安定性が高いと言えます。

     

    株主資本比率は業種や業態によって異なり、例えば、中小企業の平均的な株主資本比率は3540%程度、銀行であれば10%程度が適正であるとされています。

     

    (2)流動比率

    流動比率は流動負債に対する流動資産の割合で、会社の短期の支払い能力を測る指標のひとつです。計算式は次のようになります。

     

    流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100

     

    流動負債とは1年以内に返済すべき負債で、流動資産とは1年以内に現金化する資産です。流動比率が高ければ支払い能力があり、低ければ支払い能力がないと判断されますが、特に、流動比率が100%を下回ると、1年以内に返済すべき負債を流動資産のみで賄いきれないことになるため、資金繰りが危険な状態であると言えます。

    (3)当座比率

    当座比率は、流動負債に対する当座資産の割合です。流動比率と同様に、会社の短期の支払い能力を測る指標ですが、流動資産の中でも、特に流動性の高い当座資産に絞っています。計算式は次のようになります。

     

    当座比率(%)=当座資産÷流動負債×100

     

    当座資産とは、現預金、有価証券、売掛金など短期間で容易に現金化できる資産を指します。当座比率の方が、流動比率よりも厳格な判断基準にできると言えるでしょう。当座比率においても、100%を超えていることが望ましいです。

    (4)固定比率

    固定比率は、自己資本に対する固定資産の割合で、長期的な視点で会社の安全性を見る指標です。計算式は次のようになります。

     

    固定比率(%)=固定資産÷自己資本×100

     

    固定比率を見ることで、固定資産をどの程度自己資本で賄えているかが分かります。固定資産は数年にわたり使用するため、固定資産が利益を生み出す期間も長期です。

    そのことから、固定資産の購入にあたっては、返済する必要がない自己資本を利用することが望ましいと言えるでしょう。固定比率が100%以下であれば、自己資本だけで賄えていることになります。

    (5)自己資本比率

    自己資本比率は、総資本に占める自己資本の割合で、会社の安全性を測る指標のひとつです。計算式は次のようになります。

     

    自己資本比率(%)=自己資本÷総資本×100

    総資本=自己資本+他人資本

     

    貸借対照表では、他人資本は負債、自己資本は純資産にあたります。他人資本は返済する必要があるお金で、自己資本は返済する必要がないお金です。そのため、自己資本比率が高ければ、他人に返済する必要があるお金の割合が少ないことを意味し、安全性の高い企業と言えます。

    (6)インタレスト・カバレッジ・レシオ

    インタレスト・カバレッジ・レシオは、年間の事業利益が金融費用の何倍であるかを示すもので、借入金等の利息支払い能力を測るための指標です。計算式は次のようになります。

     

    インスタント・カバレッジ・レシオ

    =(営業利益+受取利息+受取配当金)÷(支払利息+割引料)

     

    インタレスト・カバレッジ・レシオからは、収益が現在の何分の1になるまで借入金等の利息支払い能力があるかを判断でき、最低でも1倍以上であることが必要です。

    1倍を下回れば、自己資金を取り崩さなければ利息の支払いができないことを意味し、非常に危うい経営状態であると言えます。

    まとめ

    この記事では、固定長期適合率の意味と計算方法、改善方法について、詳しく解説してきました。

     

    固定長期適合率を改善する方法として、固定資産を減らす、自己資本を増やす、固定負債を増やす、という3つの方法を紹介しましたが、中長期的な計画が必要になります。

     

    貸借対照表があれば固定長期適合率を計算することができるので、まずは自社の固定長期適合率を計算してみましょう。もし、100%を超える状況であれば、すぐに改善方法を検討しなければなりません。

     

    中長期的な計画を立てるためには、経営計画書の作成が必須です。経営計画書の作成と聞くと、頭を抱えてしまう経営者の方もいるかもしれませんが、無料プレゼントの「マネるだけ、埋めるだけで作れる経営計画書 作成シート」を利用すれば、思っているよりも簡単に経営計画書が完成します。まずは、こちらを使って経営計画書を作成してみてはいかがでしょうか。

     

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