- 「そもそも経営指標ってどのような意味なんだろう?」
- 「実用的な経営指標の種類を把握したい!」
経営指標とは、収益力や成長性など企業の経営状況を表す指標のことです。経営指標は、業務改善をしてより効率性を高めるために欠かせません。
ただ、経営指標がどのようなものかが分からない方や経営指標の算出方法が分からず経営課題を明らかにできなくて困っている方もいるでしょう。
そこで今回は、経営指標の概要や種類、分析する際のポイントについて詳しく解説します。本記事を理解することで自社の経営課題を把握でき、より業務効率化に努められるでしょう。
経営指標とは
経営指標とは、売上高や利益、資本金など決算書の数値を用いて会社の経営状況を表した指標のことです。
経営指標を活用することで目標と現実の差が明確になるため、再現性の高い目標の設定がしやすくなって業務改善に役立てられます。
もし、経営指標を活用しなかったら、自社の経営状況が明確に把握できず、業績が傾いたり会社が倒産してしまうかもしれません。
そのため、経営者は経営指標を活用して、現在の経営状況は安定しているのかを定期的に把握する必要があります。
また、多くの企業が経営指標を活用しているので、自社の経営指標を作成したら他社や業界の平均と比較することが可能です。
ですので、他社と比較して自社がどれぐらい安定した経営ができているのかが判断できるでしょう。
経営指標でわかる4つの観点
ここでは、経営指標でわかることとして、以下の4つの観点を解説します。
- 収益性
- 生産性
- 安全性
- 成長性
上記のように経営指標を活用すれば、自社の様々な側面が把握できます。
たとえば、収益性であれば自社がどれだけ利益を生み出しているかが一目瞭然でわかりますし、安全性では会社の財政状況が正確に把握できます。
本記事で経営指標に関して理解し、自社のどの側面を業務改善するべきかを理解しましょう。
①会社の「収益性」を知ることができる
会社を存続させるためには、会社の「収益性」を知ることは大切です。経営指標は会社の収益性そのものだけでなく、自社が儲けている理由がわかります。
たとえば、経営指標で収益性を確認すると、以下のポイントが把握できるでしょう。
- 会社全体でどれほど稼げているのか
- どれだけ無駄なく効率的に利益を獲得できているのか
- 経営のために必要な資本を適切な場面で使用できているのか
- 利益率が高い商品やサービスを提供しているのか
経営指標を活用して会社で目標より稼げていないと判明すれば、どのように働けば今よりも稼げるのかを試行錯誤する必要があります。
また、利益率の低い商品やサービスを提供していると分かれば、利益率が高い商品やサービスの提供に切り替えなければいけません。
より大きな利益を得るためにも、会社の収益性を経営指標を通して把握しましょう。
②会社の「生産性」を知ることができる
会社の生産性を経営指標で把握すれば、自社が効率のよい働き方ができているのかが分かります。
経営指標を活用することで、人件費や設備導入費などの資金の無駄が分かるので、経費の無駄遣いをしないようになるでしょう。
経営指標で生産性を確認すると、以下のポイントが把握できます。
- 人件費や設備投資が適切か
- 競争性の高い商品やサービスが提供できているか
このように会社経営をするうえで欠かせないヒト・モノ・カネを適切に振り分けられているかが、生産性を高める際には大切です。
ヒト・モノ・カネを適切に振り分ければ、業務効率化につながり、より多くの利益を獲得しやすくなります。
③会社の「安全性」を知ることができる
会社の業績の傾きや倒産する可能性を確認するためには、経営指標で会社の安全性を知る必要があります。
経営指標を活用して会社から利益が出ていることが分かったとしても、自身の返済能力を超えた債務があった場合は、安全性を見直さなければいけません。
経営指標では財政状況の問題の有無を把握できるため、借金の返済を心配する必要がなくなり、早めに必要な対策を実施できるでしょう。
経営指標で安全性を確認することでわかることの例としては、以下の3つが挙げられます。
- 倒産のリスクがどれくらいあるのか
- 適切な額で事業へ投資ができているのか
- 現金のみで債務を返済できるのか
会社の安全性を早めに把握して対策を講じることで、資金繰りの悪化を防げます。
④会社の「成長性」を知ることができる
経営指標で企業の成長性を知ることで、今後どのように事業発展するのかが予測できます。
ただ、予測といっても決算書の数値を用いるため、正確な今後の成長性が把握できるでしょう。
本記事を読んでいる方の中には、「売上高や利益を確認すれば今後の成長性が一目でわかるのではないか」と考えている方がいるかもしれません。
しかし、会社の業績を伸ばすために新たな設備の導入や人件費の投入などコストがかかる対策をする必要があります。
そのため、経営指標を用いて会社の成長性を把握し、対策を講じなければいけないのです。
会社の「収益性」の分析に用いる経営指標
会社の「収益性」の分析に用いる経営指標として、以下の5つが挙げられます。
- 売上高営業利益率
- 売上高経常利益率
- 総資本回転率
- 自己資本利益率
- 総資本経常利益率
収益性分析では、主になるべく小さな元手でどれほど大きな利益を獲得できているのかを確認できます。
会社の収益性を分析をしたい方は、それぞれ指標によって算出できる収益力が異なっているため、自分に適した指標を選ぶようにしましょう。
売上高営業利益率
売上高営業利益率とは、売上高に対する営業利益の割合を算出できる指標です。
営業利益が大きければ多いほど利益を得られていることになり、小さかったら事業がうまくいっていないことを意味しています。売上高営業利益率の計算式は、以下のとおりです。
売上高営業利益率=営業利益÷売上高×100
ちなみに営業利益は、以下の計算式に当てはめて算出してください。
営業利益=売上高-売上原価-販売費及び一般管理費
売上高営業利益率の高い会社の特徴として、以下の2つが挙げられます。
- 商品やサービスの質が高い
- 効率的に業務を行っている
質の高い商品やサービスを製造するとその分コストが高くなると感じる方も多いです。
しかし、その分ロボットやAIの仕事を増やして人件費を減らせば質の高い商品やサービスを提供できます。
売上高営業利益率が低かった企業は、上記の特徴を自社に取り入れて、収益力を高めましょう。
売上高経常利益率
売上高経常利益率とは、売上高に対する利益と費用の割合を示したものです。つまり、売上高経常利益率を測ることで、営業活動全般の効率性が把握できます。
売上高経常利益率の数値は高ければ高いほどよいとされています。売上高経常利益率の計算式は、以下のとおりです。
売上高経常利益率=経常利益÷売上高×100
ちなみに経常利益は、以下の計算式で算出しましょう。
経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用
ただ、上記の計算式を見ても単語の意味が把握できない方もいるでしょう。そんな方は、下記を参考にしてください。
- 営業利益:売上から原価と営業活動に関する費用を差し引いたもの。
- 営業外収益:本業以外の財務活動による収益で、受取利息や雑収入などが含まれる
- 営業外費用:本業以外の財務活動で発生した費用で、支払手数料や売上割引などが含まれる
営業活動全般の効率性を把握したい方は、売上高経常利益率を算出してみるとよいでしょう。
総資本回転率
総資本回転率とは、総資産の有効活用度合いを示す指標です。総資本回転率が高ければ高いほど効率よく利益を稼いでいる証明になります。
そんな総資本回転率の計算式は、以下のとおりです。
総資本回転率=売上高÷総資本
総資本回転率が低かった場合は、資産を不必要に使用している証拠です。たとえば、販売業で在庫が大量に余った場合は、その分資産の無駄遣いにつながります。
そのため、在庫が大量に余らないように過去の販売数から仕入れる数を決める必要があるのです。
自己資本利益率
自己資本利益率とは、自己資本を用いてどれほど多くの利益を生み出したかを示す指標です。自己資本利益率の計算式は、以下のとおりです。
自己資本利益率=当期純利益÷自己資本×100
自己資本利益率は10%を上回ると優良な企業といわれており、数値が高ければ高いほど投資価値のある会社である証明になります。
総資本経常利益率
総資本経常利益率とは、総資本に対する経常利益(普段の事業活動によって得た利益)の割合を示す指標です。総資本経常利益率の計算式は、以下のとおりです。
総資本経常利益率=経常利益÷総資本(負債+純資産)
ちなみに総資本経常利益率は一般的に5%以上が理想だといわれており、中には運輸業や教育業などマイナスになっている業種まで存在しているため、マイナスだったとしても落ち込む必要はありません。
会社の「安全性」の分析に用いる経営指標
ここでは会社の「安全性」の分析に用いる経営指標として、以下の3つを解説します。
- 流動比率
- 固定比率
- 自己資本比率
上記の経営指標で測定し、会社の安全性が低いと判断された場合は支払能力が低いことにつながるため、倒産する可能性もあります。
安定した会社経営をするためにも、一度自社の安全性を測定してみましょう。
流動比率
流動比率とは、貸借対照表の流動資産と流動負債の比率から1年以内の支払能力を分析する際に用いる指標です。流動資産と流動負債は、以下の意味を持ち合せています。
- 流動資産:現金・預金・受取手形など貸借対照表の資産の中で1年以内に現金化できるもの
- 流動負債:買掛金・支払手形・未払い金など貸借対照表の負債の中で1年以内に支払う必要があるもの
そんな流動比率の計算式は、以下のとおりです。
流動比率=流動資産÷流動負債×100
流動比率は高ければ高いほど安全性が高い照明になります。流動比率は200%を超えていれば安全性が高く、100%を下回っていれば危険であると判断されます。
固定比率
固定比率とは、自己資本に対する固定資産の割合を指し示す指標です。固定資産は、土地、建物、機械、特許など決算日から1年以内に回収が予定されていない資産のことをいいます。固定比率は、以下の計算式で算出できます。
固定比率=固定資産÷自己資本×100
固定比率は基本的に100%以下が望ましいとされ、100%以下だった場合は長期的な支払い能力があると判断できます。
つまり、固定比率は数値が高ければ高いほど危険であると判断できる指標なのです。
自己資本比率
自己資本比率とは、会社のすべての資産のうち自己資本が占める割合を指す指標です。
自己資産は返済する必要がないお金なので、自己資本比率が高ければ高いほど安全性のある企業だと評価されます。自己資本比率の計算式は、以下のとおりです。
自己資本比率=自己資本÷資産(他人資本+自己資本)×100
自己資本比率の目安として、最低でも30%あれば安定している企業と言えます。
ただ、自己資本比率が30%未満だと倒産リスクの高い会社であるため、自己資本の割合を高める必要があるでしょう。
自己資本比率を高めるためには借入金の早期返済を行って負債を減らしたり、企業の利益を上げたりとさまざまな方法があります。
ぜひ、自己資本比率が30%未満だった方はあなたの会社に適した方法で、自己資本比率を高め、安全な会社経営ができるように努めましょう。
会社の「生産性」の分析に用いる経営指標
会社の生産性の分析に用いる経営指標として、以下の2つを解説します。
- 労働生産性
- 労働分配率
上記の指標で会社の生産性を指し示すことで、業務効率の高さ、低さが把握できるでしょう。
業務効率を高めることは会社の業績向上にもつながるため、会社の利益を高めるためにも生産性を高められるように努める必要があります。
労働生産性
労働生産性とは、労働者1人あたりどれほどの成果が出せたのかを表す指標です。労働生産性が高ければ効率的に業務を進められるため、会社の業績が向上しやすくなります。
労働生産性の計算式は、以下のとおりです。
労働生産性=付加価値額÷従業員数
付加価値額は、自社で創出した付加価値を1つずつ加算して算出しましょう。例として、付加価値額は下記のように計算できます。
付加価値額=営業利益+人件費+支払利息+不動産賃貸料+租税公課
上記のように自社が業務を行ううえで欠かせない付加価値を加算して算出すれば、付加価値額は求められるでしょう。
労働分配率
労働分配率とは、付加価値額に対して人件費が占める割合を指し示す指標です。人件費は経費の大部分を占めるといっても過言ではありません。
安定した会社経営をするためにも、少ない人件費で業務を回す必要があります。労働分配率は、下記の計算式で求められます。
労働分配率=人件費÷付加価値額×100
労働分配率が低いほど人件費を抑えて安定した会社経営をしているといえるでしょう。ただ、労働分配率が低すぎると、従業員へ十分な給料を支払えていない可能性もあります。
労働分配率の主な目安は大企業で50%、中小企業で70~80%といわれているので、この目安をもとに適切な時間の労働を従業員にしてもらうようにしましょう。
会社の「成長性」の分析に用いる経営指標
会社の「成長性」の分析に用いる経営指標は、売上高伸び率のみです。今後、事業を拡大していくのであれば、会社の成長性を高める必要があります。
現状の売上高伸び率を把握し、どのようにしたらより会社の成長性を高められるのかを検討しましょう。
売上高伸び率
売上高伸び率とは、前期と比較して売上高がどのくらい伸びているのかを表す指標です。
売上高伸び率は高ければ高いほど成長性が高いことを表せますが、売上が伸びていることが一時的な可能性も考えられます。
たとえば、新型コロナウイルスが流行したことによってマスクは一時期品薄になるほど売れていました。
このように状況によって一時的に売り上げが伸びている可能性もあるので、売上が伸びていたとしてもさらに売上を向上させるためにはどうすればよいのかと検討し続ける必要があります。
売上高伸び率の計算式は、以下のとおりです。
売上高伸び率=(当期の売上高-前期の売上高)÷前期の売上高
売上高伸び率を測定したら、来期にどれぐらい売上を伸ばすのかを検討しましょう。
目標の売上高が決まったら従業員全員に共有し、その目標売上高を達成するために働き方をどのように考えるのかを具体的に決める必要があります。
経営指標を用いて分析する際のポイント3選
ここでは、経営指標を用いて分析する際のポイントとして、以下の3つを紹介します。
- さまざまな経営指標を用いて分析する
- 同業種の他社や同規模の他社の数値と比較すること
- 分析後に経営課題の解決方法を模索すること
先ほど多くの経営指標について解説しましたが、ただ指標で測定するだけでは業務改善につながりません。
ここで解説する3つのポイントを参考にしたうえで経営分析を行い、企業の成長を高められるように努めましょう。
ポイント① さまざまな経営指標を用いて分析する
より細かく企業の経営状況を把握するためには、一つや二つの経営指標で分析するのではなく、多くの経営指標を用いて分析することが大切です。
一見、「収益性の経営指標を多く用いて業務改善をすれば会社の業績も向上するのではないか?」と思いがちですが、収益以外の指標も財務状況に大きく影響します。
いくら会社の収益力を高めたとしても、安全性が劣っていたら倒産してしまう恐れもあるでしょう。
そのため、少なくとも「収益性」「安全性」「生産性」「成長性」の4つの観点の中から1つずつ選び、さまざまな観点から見た自社の財務状況を把握してください。
そして業務改善の余地があるのであれば、改善に努めるように心がけましょう。
ポイント② 同業種の他社や同規模の他社の数値と比較すること
経営指標で自社の財務状況を把握するのなら、同業種の他社や同規模の他社の数値と比較はしてください。
同業種や同規模の他社と比較することで、自社がどれほどの財務状況なのかが客観的に把握できるからです。
たとえば、競合他社の数値と比較して自社の方が収益性が高ければ、働くモチベーションにもつながります。
客観的な自社の状況を把握するために、他社の財務状況と自社の財務状況を比較しましょう。
ポイント③ 分析後に経営課題の解決方法を模索すること
経営指標で自社の財務状況を測定して終わりではなく、分析後に経営課題の解決方法を模索しなければ、測定した意味がありません。
たとえば、売上高伸び率で自社の成長率を測った結果、財務指標で指定していた目標に達成できなかった場合は、以下のような視点で課題解決につなげていく必要があります。
- 営業利益は出ているのか
- 社員の生産性が下がったのではないか
このように四半期ごとのタイミングで、経営指標を用いて成果を振り返り、課題を達成できたか否かを確認するようにしておくと良いでしょう。
経営指標は現状分析だけでなく将来の問題解決や経営戦略に役立てることが重要
今回は、経営指標の概要や種類、分析する際のポイントについて詳しく解説しました。
本記事で「収益性」「安全性」「生産性」「成長性」の4つの観点の経営指標を紹介しましたが、ただ経営指標で現状を分析するだけではあまり意味がありません。
経営指標で現状分析をしたら、どのようにより数値を高められるのかを試行錯誤して役立たせる必要があります。
経営指標で分析をする際は、本記事で紹介したポイントの内容を念頭に置きながら行いましょう。
また、経営指標で現状分析をする前に改めて経営計画書を作成し直すと、事業の道筋が明確になるため、おすすめです。
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