- 「決算書ってどのように読めばよいのかを知りたい!」
- 「そもそも決算書ってどのような役割を果たしているの?」
会社の業績を把握するためには、決算書を読み込むことが大切です。ただ、会社経営を始めて月日が浅い方は、決算書の読み方が分からない方も多いでしょう。
今回は、わかりやすい決算書の読み方を詳しく解説します。会社経営を始めて月日が浅い方のために、決算書の役割や主要な書類についても解説していますので、ぜひご覧ください。
決算書とは?
決算書とは会社の一定期間の財政状態や経営成績などを表す書類で、財務諸表とも呼ばれています。
決算書の読み方を理解すれば現状の会社の財政状況が的確に把握でき、資金繰りで困らないようにできるでしょう。
また、一会計年度の区切りは法人に関しては自由に設定できますが、個人事業主の場合は1月に始まって12月決算と定められています。
そんな決算書にはどのような役割があり、決算書と呼ばれる書類の種類にはどのようなものがあるのでしょうか?早速、決算書の役割や主要な書類について見ていきましょう。
決算書の役割
決算書の役割として、以下の4つの場面が挙げられます。
- 金融機関が融資を判断する際の資料として提出するとき
- 株主に対して資産状況を報告するとき
- 税務署へ確定申告をするとき
- 会社の経営状況を客観的に判断してもらうとき
このように決算書は金融機関に融資を判断してもらったり、税務署へ確定申告をしたりとさまざまな場面で必要な書類です。
また、取引先の企業から決算書の提出を求められる場面も少なくありません。取引先を増やして事業規模の拡大を目指すためにも、決算書は必要なのです。
税務署や金融機関、取引先企業へ正しい財務状況の説明をするためには、決算書の読み方を把握する必要があるでしょう。
主要な書類
決算書の主要な書類として、以下の4つが挙げられます。
- 貸借対照表(B/S)
- 損益計算書(P/L)
- キャッシュフロー計算書
- 株主資本等変動計算書
上記の書類はあくまで主要なものであって、決算書には個別注記表といった書類も存在しています。
ここで解説した内容を確認し、決算書の種類がそれぞれどのような書類なのかをあらかじめ把握しましょう。
貸借対照表(B/S)
貸借対照表とは決算日時の財政状況を表す書類で、資産と負債を管理する書類です。貸借対照表を活用すれば、会社の資金調達先や経費の使い道、安定性、支払い能力が把握できます。
また、貸借対照表は左側が資産、右側が負債・純資産で構成されています。右側には資金調達の方法を記載し、左側には資金の使い道を記載しなければいけません。正しく資金を使うためにも、貸借対照表は欠かせない書類です。
会社の資金繰り状況をすぐ確認したいのであれば、貸借対照表をみましょう。
損益計算書(P/L)
損益計算書とは会社が一定期間内に上げた経営成績を表す書類で、利益と経費を管理できる書類です。損益計算書は収益・費用・利益の3つで構成されており、売上高から費用を段階的に差し引き、収益を加えることで、利益や損失を算出できます。
損益計算書では自社の利益を把握できるため、競合他社と比較した自社の立ち位置を認識することが可能です。また、損益計算書は自社の業績を把握するためであったり、取引先と信頼性を得やすくするためであったりとさまざまな場面で必要になる書類です。
キャッシュフロー計算書
キャッシュフロー計算書とは会計期間の資金の動きを示した書類で、期末にどれだけの現金が手元に入るのかが一目で把握できます。
キャッシュフロー計算書は適切な資金繰りをするためにも必要な書類であり、上場企業では作成が義務付けられているほど重要な書類です。
キャッシュフロー計算書を確認すれば、資金のこと細かな流れまで把握できるので、黒字倒産しにくくなります。
適切な資金管理をするためにも、キャッシュフロー計算書を作成しましょう。
株主資本等変動計算書
株主資本等変動計算書とは、一会計期間の貸借対照表の純資産の変動額において株主資本の各項目の変動事由を報告するために作成された財務諸表です。
株主資本等変動計算書は資本金や資本剰余金、利益剰余金などから構成されており、すべての企業に作成が義務付けられている書類です。
貸借対照表(B/S)の読み方
会社の財政状況を把握するためには、貸借対照表の読み方を理解しなければいけません。ここでは、貸借対照表の読み方として、以下の4つを紹介します。
- 資産の部
- 負債の部
- 純資産の部
- 貸借対照表(B/S)を読むポイント
貸借対照表は経営状況を把握でき、課題の発見や改善に重要な役割を果たせる書類です。ここで解説したポイントを理解し、貸借対照表を適切に読めるように努めましょう。
①資産の部
資産の部では、現金や売掛金などの資金の使い道を表した勘定科目が記載されています。資産の部は以下の2つの種類に分類されるので、把握しましょう。
- 流動資産:現金や売掛金、受取手形など現金化しやすい資産
- 固定資産:土地や建物など1年以上保有していて現金化しづらい資産
現金化しやすい資産ほど上に記載する決まりになっているため、貸借対照表の資産の部ではまず一番流動性の高い「現金」を記載しましょう。
例え、固定資産を多く所有していたとしても、流動資産が少ないとすぐに現金化ができないため、倒産に陥る恐れがあります。
そのため、固定資産よりも流動資産を多く所有していた方が、財政状況がよいといえるでしょう。
②負債の部
負債の部は他人から借りているお金を表しているので、返済しなければいけません。負債も、資産と同様に2種類に分類されます。
- 流動負債:買掛金や支払手形など1年以内に支払期限が到来する負債
- 固定負債:社債や借入金など1年以内に支払義務が発生しない負債
固定負債はすぐに返済するべき資産ではないため、流動負債より固定負債が多い方が財政状況は安定しています。
もし、流動負債が増えすぎてしまうと借金返済に手が回らなくなり、会社が倒産してしまう恐れも考えられるでしょう。
安定した会社経営をするためにも、できる限り支出を抑えて流動負債を増やさないような工夫をするか、売上を大幅に高めるための工夫をして負債を減らせるように努めましょう。
③純資産の部
純資産とは返済義務のない自分のお金のことです。純資産に含まれる勘定科目は、以下の3つです。
- 資本金:事業を運営する際の元手となる資産
- 資本剰余金:企業が資本取引を実施することで発生する「利益剰余金」を除いた資産
- 利益剰余金:営業活動によって発生した利益を蓄積した儲けの合計額
負債を増やすほど経営が不安定になるため、安定した会社経営をするためには負債よりも純資産を多くする必要があります。
純資産を増やすためには、利益剰余金を増加させなければいけません。そのため、売上をより高めていき、少しずつ利益を積み重ねていく必要があります。
貸借対照表(B/S)を読むポイント
貸借対照表を読む場合は、下記の3点に注目しましょう。
- 売掛金と買掛金の比較
- 棚卸資産と買掛金の比較
- 仮払金の残高の確認
売掛金と買掛金を比較し、買掛金が異常に多かった場合は仕入条件の悪さや不良債権などが発生している可能性が高いです。例えば、仕入れ代が高すぎたり、買掛金の支払いペースが早すぎたりすれば必然的に買掛金が高くなります。
その場合は仕入れ先を変更したり、値下げ交渉をしたりして買掛金を少しでも安くできるように工夫しましょう。
また、買掛金より棚卸資産が極端に多ければ売れない商品を多く抱えていることになるので、仕入れ数を考え直す必要があります。
さらに、仮払金の残高が多ければ経費の精算が遅れている可能性が高いです。経費の返済の納期が遅れていた場合は催促して、仮払金を減少させるように努めましょう。
仮払金が多いことはそれだけ入ってくるべきお金が手元にないことにつながるので、資金繰りが難しくなってしまう可能性があります。
損益計算書(P/L)の読み方
会社の業績を高めるためには、損益計算書を読んで1年間の利益を把握したうえで、業績向上を目的とした目標を設定する必要があります。損益計算書の読み方として紹介するのは、以下の7つです。
- 売上総利益
- 営業利益
- 経常利益
- 税引前当期純利益
- 当期純利益
- 損益計算書(P/L)を読むポイント
上記のポイントを把握し、損益計算書を読めるようにしましょう。
①売上総利益
売上総利益とは売上から商品の原価を差し引いた利益のことで、粗利とも呼ばれています。ここの売上は会社の主力事業の売上であり、そこから商品の仕入れ代(売上原価)を差し引けば、売上総利益を求められるでしょう。
例えば、会社の売上高が1,000万円で売上原価300万円を差し引けば、売上総利益は1,000-300で700万円と計算できます。
売上総利益を高めるためには、商品を安く仕入れて高く販売する必要があります。商品を高く仕入れたり安く販売したりしていれば、売上が増えているのに利益が減ってしまう事態になりかねません。
その場合は、より多くの利益を獲得するためにも仕入れ代や販売価格を見直さなければいけません。
②営業利益
営業利益とは売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いた利益です。販売費は給料や交際費などで、管理費は水道光熱費や地代家賃などを言います。
売上総利益が700万円で販売費および一般管理費が200万円であれば、営業利益は500万円と計算できるでしょう。
営業利益の高い会社は本業における収益力が高いと判断できます。もし、営業利益が思うように向上しないのであれば、販売費や一般管理費で削減できる部分を探しましょう。
例えば、飲食店を経営していて2人でシフトを回せるはずの時間に3人シフトに入れてしまうと人件費がもったいないです。このように従業員の人件費に費やすお金を減らすだけでも、営業利益の向上につながるでしょう。
ほかにも、宣伝広告費や接待交際費など不要な費用は削減していき、営業利益の向上に努めることで、会社の業績が高まります。
③経常利益
経常利益とは企業が行っているすべての事業を通して得た利益で、複数の事業へ取り組んでいる会社の場合は本業以外の事業で得た利益も含んでいます。
ただ、宝くじが当たったり、企業が所有している土地を売却して利益を得たりと一時的な損益を得た場合は、経常利益に含まないので気をつけましょう。
そんな経常利益は、以下の計算式で算出できます。
経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用
営業利益が500万円で営業外収益が300万円、営業外費用が200万円だった場合は、経常利益が600万円と計算できます。
ちなみに営業外収益は受取配当金や受取利息など、企業が本業以外の継続的な事業で得ている利益を言い、営業外費用は支払利息や貸倒損失など本業以外で発生する費用のことです。
経常利益はすべての事業の利益を表しているので、会社の現状を把握するためにも一番知っておくべき利益といえるでしょう。
④税引前当期純利益
税引前当期純利益とは税金を支払う前の利益です。税引前当期純利益を計算すれば、事業以外の事情を含めた会社の利益がわかります。税引前当期純利益の計算方法は、以下のとおりです。
税引前当期純利益=経常利益+特別利益-特別損失
経常利益が600万円で特別利益が1,000万円、特別損失が600万円だった場合は、税引前当期純利益が1,000万円です。
税引前当期純利益は不動産を売却したり、突発的な災害によって損失を受けたりと特別な事情によって利益・損失を受けた場合にそれらの特別損益を勘案して計算します。
⑤当期純利益
当期純利益とは税引前当期純利益から法人税や住民税、事業税の税金を差し引いた利益です。
例えば、税引前当期純利益が1,000万円で、税金が400万円だった場合の当期純利益は600万円になるでしょう。
この当期純利益が一年間の最終利益であり、数値がマイナスになると赤字経営していることになります。
当期純利益を算出するまでの5つの利益を順番に見ていくことで会社の資金の流れが把握でき、当期純利益は貸借対照表の純資産の部の利益剰余金に蓄積されます。
当期純利益を明らかにすれば将来の納税予測ができるため、当期純利益を算出して納税する際に困らないように貯金しておきましょう。
損益計算書(P/L)を読むポイント
損益計算書を確認する際は、以下の3つを確認しましょう。
- 人件費の使い方
- 損益分岐点を考える
- 地代や交際費を使いすぎていないか
会社の支出の大部分は人件費になるため、人件費の使い方について確認をしなければいけません。そのような人件費が適切かを表す指標として、労働分配率があります。労働分配率の計算式は、以下のとおりです。
労働分配率=(人件費÷売上総利益)×100
例えば、売上総利益が300万円で、人件費が180万円だった場合は(180÷300)×100という計算式になり、労働分配率が60%であることがわかります。
一般的に労働分配率が50%を超えると経営が苦しくなるといわれているため、例に挙げた60%の労働分配率ではかなり経営が厳しい状況の会社といえるでしょう。
そのため、労働分配率を計算して50%を超えた方は売上総利益を高めるための施策を検討するか、人件費を大幅に削減するかを選択しなければいけません。
また、経営状況が赤字であれば、損益分岐点を考えることも大切です。損益分岐点分析で必要な売上高を考えればどれだけ費用を削減すればよいのかがわかるでしょう。
地代や交際費も経費の中で割合を大きく占める傾向にあります。損益計算書を確認して、使い道が本当に適切なのかを考えましょう。
キャッシュフロー計算書の読み方
手元にある現金を把握するためには、キャッシュフロー計算書の確認が欠かせません。ここでは、キャッシュフロー計算書の読み方として、以下の4つを紹介します。
- 営業キャッシュフロー
- 投資キャッシュフロー
- 財務キャッシュフロー
- キャッシュフロー計算書を読むポイント
ちなみにキャッシュフロー計算書の場合は、統一して下記の計算式で算出できます。
キャッシュフロー=全体の収入-外部への支出
上記のようにキャッシュフロー計算書の算出方法は簡単なので一度全部計算して、会社の手元に現金がどれほど残っているのかを確認したほうがよいでしょう。
①営業キャッシュフロー
営業キャッシュフローとは、本業の収入と支出の差額を算出する流れのことです。営業キャッシュフローの数値が大きいほど使用できる現金が多いため、安定した会社経営ができているといえます。
もし、営業キャッシュフローを把握しなかったら、黒字倒産してしまうかもしれません。例え一定の利益を得られていたとしても、支出を把握していなければ資金繰りが難しくなるからです。
黒字倒産を防ぐためにも、現在の営業キャッシュフローを算出して不要な支出を削減しましょう。
②投資キャッシュフロー
投資キャッシュフローとは投資活動による資金の流れのことです。投資キャッシュフローを算出する際は、以下の項目を含めるようにしましょう。
- 預入期間が3カ月を超える定期預金の預け入れや払い戻し
- 投資有価証券による支出・収入
- 貸付金の貸付・回収
- 固定資産の取得・売却
もし、投資キャッシュフローがプラスだった場合は、積極的に投資活動をしていないことの現れです。一方で投資キャッシュフローがマイナスであれば、積極的に投資活動へ取り組んでいることになります。
貸付金や有価証券が原因で投資キャッシュフローがマイナスになっていたら、資金の回収ができるかを見極めなければいけません。
投資キャッシュフローを明らかにして、自社の投資活動によってどれくらいの利益や損失を得られているのかを把握しましょう。
③財務キャッシュフロー
財務キャッシュフローとは企業の借入金や資本金の取引など資金調達における現金の流れのことです。財務キャッシュフローを計算する場合は、以下の項目を算出しましょう。
- 社債発行による収入・借入金返済による支出
- 新株式発行による収入・自己株式取得による支出
- 自己株式の売却による収入・配当金の支出
財務キャッシュフローを把握すれば、資金繰りに困らないような適切な資金調達が行えます。資金繰りの収入・支出のバランスをとるためにも、現在の財務キャッシュフローを把握しましょう。
キャッシュフロー計算書を読むポイント
キャッシュフロー計算書を読む際は、以下の3つのポイントに気をつけましょう。
- 営業キャッシュフローの総額がプラスで多いこと
- 投資キャッシュフローがマイナスであること
- 前期及び同業他社と比較して営業キャッシュフローが増加傾向にあること
上記の3つのポイントを満たせなかったら、対策を練って改善しなければいけません。例えば、営業キャッシュフローが少なかったら人件費や水道光熱費など減らせる支出を削減したり、商品に付加価値を付けて値段を高めたりして増やす工夫をする必要があります。
株主資本等変動計算書の読み方
ここでは、株主資本等変動計算書の読み方として以下の4つを解説します。
- 資本金
- 資本剰余金
- 利益剰余金
- 株主資本等変動計算書を読むポイント
上記のポイントを把握し、株主資本等変動計算書の読み方を正しく把握しましょう。
①資本金
資本金は返済義務がなく、事業の運転資金として使用できる額も増えるため、容易に事業規模の拡大ができます。
ただ、資本金を増やすことで税金が増加したり、資本金を増加させる際の手続きが複雑であったりとさまざまな点に注意しなければいけません。
特に資本金を増加させる場合には、新規株主の募集要項を株主総会で決定した後、自社の登記事項を法務局で変更する必要があります。
それに加えて、資本金を増加させるためには法務局に対して登録免許税を支払わなければいけません。
増加した金額が429万円以内であれば登録免許税は3万円ですが、430万円以上であれば増加した資本金に0.7%を掛け合わせた額を支払う必要があります。
資本金を増やすことで他社からの信頼を得やすくなったり、事業を始めやすくなったりとさまざまなメリットがある一方で、複雑な手続きや税金の増加が発生します。
メリットとデメリットのどちらを選択するのかを考えたうえで、行動しましょう。
②資本剰余金
資本剰余金は、払込剰余金や評価替剰余金、贈与剰余金などから構成されている資金です。資本金と資本剰余金の違いとしては、株主に分配する配当金の種類が異なっている点です。
資本剰余金を原資として株主へ配当する場合は、資本金を取り崩して資本剰余金を増額させてから行えます。
③利益剰余金
利益剰余金は、利益準備金や繰越利益剰余金、積立金などから構成されている資金です。基本的に利益剰余金が増加すると自己資本も併せて増加するため、安全性の高い会社であると評価されます。
一方で利益剰余金が低くなれば、経営状況が傾いている状態といえるでしょう。
株主資本等変動計算書を読むポイント
株主資本等変動計算書は、ほかの財務諸表との関係性を把握したうえで読みましょう。たとえば、貸借対照表との関係では、株主資本等変動計算書は、貸借対照表の純資産の部の変動額を示している書類です。
株主資本等変動計算書には、損益計算書の当期純利益が記載されているので、資金の流れを確認するためにも貸借対照表や損益計算書と一緒に確認するようにしましょう。
決算書でできる経営分析
ここでは、以下のポイントに沿って決算書でどのような経営分析ができるのかを解説します。
- 収益性
- 健全性
- 成長性
- 効率性
- 生産性
経営分析方法も把握し、事業改善ができるようにしましょう。
収益性
収益性では、会社の利益を効率的に得られているのかを分析できます。決算書で実施できる収益性の指標として、以下の2つが挙げられます。
- 売上高総利益率
- 総資本利益率
売上高総利益率は売上総利益と売上高の比率を表した指標で、本業で収益を稼ぐ力を確認したい時に使用します。売上高総利益率の計算式は、以下のとおりです。
売上高総利益率=売上総利益÷売上高×100
例えば、売上総利益が2,000万円、売上高が5,000万円であれば2,000÷5,000×100となり、売上高総利益率は40%と算出できます。
売上高総利益率は高いほど収益力が高い証明となり、最低でも20%は超えられるように努めましょう。
もし、売上高総利益率が20%未満だった場合は、製造費用の上昇や商品の販売数量の減少などが考えられるため、商品の仕入れ先の変更や販売価格を引き上げたりとさまざまな対応が必要です。
また、総資本利益率は総資本に対する営業利益の比率を表す指標で、会社の総資本を使用してどれだけ収益を向上できたのかが明らかにできます。総資本利益率の計算式は、以下のとおりです。
総資本利益率=営業利益÷総資本×100
営業利益が1,000万円で、総資本が8,000万円だった場合は1,000÷8,000×100となり総資本利益率が12.5%となります。
総資本利益率では5%が安定した会社経営ができている目安となり、10%以上は優秀な会社です。上記の指標を用いて会社の収益性を把握し、業務改善に努めましょう。
健全性
健全性は、会社の支払い能力を確認する指標です。会社の健全性を測るためには、以下の指標を使用するとよいでしょう。
- 自己資本比率
- 流動比率
- 当座比率
自己資本比率とは、会社の全財産のうち純資産の比率を算出した指標です。自己資本比率は、以下の計算方法で算出できます。
自己資本比率=自己資本÷総資産×100
例えば、自己資本が500万円、他人資本が800万円であった場合は、500÷(500 + 800)×100とあてはめられ、自己資本比率が38.46%と求められるでしょう。
自己資本比率が高いほど経営が安定していて倒産しにくい会社であり、自己資本比率が低ければ不安定な経営を行っている会社だとわかります。
自己資本比率が40%以上であれば倒産しにくい企業と認識して大丈夫です。
先ほど例に挙げた自己資本比率の場合は40%を下回っているので借金を返済して他人資本を減らしたり、株主に出資してもらって自己資本を増やしたりして自己資本比率を高めましょう。
次に解説する流動比率は、流動負債と流動比率の割合がどれくらいかを算出できる指標です。
流動比率を把握すれば短期的な会社の支払い能力が把握できるので、現在の資金繰りが不安に感じている方は、ぜひ計算してみてください。流動比率の計算式は、以下のとおりです。
流動比率=流動資産÷流動負債×100
流動資産が200万円で、流動負債が150万円だった場合は、200÷150×100とあてはめられ、流動比率は133%であると求められます。
流動比率が130%~150%より高ければ、一般的な企業の支払能力を満たしているといえるでしょう。先ほどの例の流動比率は、133%なので比較的安定して会社経営ができています。
ただ、流動比率が100%を下回ってしまった場合は、短期的な会社の支払い能力が低いことにつながります。そのため、あらかじめ資金計画の見直しを行わなければいけません。
厳密な支払い能力を確認するのであれば、当座比率の確認も必要です。当座比率とは、流動負債に対する当座資産の割合を示す指標です。
当座資産は、流動資産のうち現金及び預金、売掛金、受取手形を言います。先ほど解説した流動比率には棚卸資産が含まれており、棚卸資産は商品が売れなければ現金化されません。
流動比率と比較して当座比率はより現金化しやすい資産のみを対象としているので、正確な支払能力が確認できるのです。当座比率は、以下の方法で算出できます。
当座比率=当座資産÷流動負債×100
当座資産が300万円で流動負債が200万円であれば、当座比率は300÷200×100で150%となります。
当座比率は、一般的に100%以上が適切といわれています。先ほどの例は当座比率が150%で100%よりも50%も高いため、支払能力が高い企業といえるでしょう。
もし、流動比率と当座比率の差が大きい場合は、過剰な商品を抱えている可能性があるため、商品を仕入れる数を変更するべきです。
成長性
成長性は、売上高の伸びしろを把握できる指標です。成長性を用いて自社の伸びしろを適切に把握しましょう。
- 損益分岐点売上高
- 売上高経常利益率
- 売上高増加率
損益分岐点売上高とは、売上総利益と固定費が同額になるときの売上高です。損益分岐点売上高は、以下のとおりに算出します。
損益分岐点売上高=固定費÷(1-(変動費÷売上高))
損益分岐点売上高を算出するためには、固定費と変動費を理解しなければいけません。
固定費は、賃貸料や人件費などの売上の増加や減少に関わらず一定にかかる費用です。一方の変動費は、原材料費や外注費など売上の増加や減少に応じて変動する費用をいいます。
例えば、固定費が300万円、変動費が200万円、売上高が1,000万円だった場合、300÷(1−(200÷1,000)とあてはめられ、損益分岐点売上高は375万円となります。
算出した損益分岐点売上高よりも実際の売上高が上回れば黒字で、下回れば赤字です。例にあげたとおりの売上であれば、比較的安定した会社経営ができているといえるでしょう。
損益分岐点売上高は一目で現在の会社が黒字か赤字かが算出できるので、ぜひ利用してください。
ちなみに損益分岐点売上高の計算方法は少し複雑になっていますが、計算順序を1つでも間違えると正しく計算できなくなってしまうので、計算順序を間違えないように気をつけましょう。
また、売上高経常利益率は売上高に対する利益と費用の割合を示した指標です。売上高経常利益率は、以下のとおりに算出しましょう。
売上高経常利益率=経常利益÷売上高×100
たとえば、売上高が200万円で経常利益が20万円だった場合、20÷200×100とあてはめられ、売上高経常利益率は10%と算出できます。
売上高経常利益率は業界によって異なるものの、5%~10%の利益率が平均的ですので、上記の例の場合は平均的な売上高経常利益率は満たしているといえるでしょう。
さらに、前期と比較して売上高の伸び率を確認したい場合は、売上高増加率を使いましょう。売上高増加率の計算式は、以下のとおりです。
売上高増加率=(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高×100
例を挙げると、前期の売上高が1,000万円、当期の売上高が1,020万円だった場合、(1,020-1,000)÷1,000×100で2%になります。
売上高増加率が2%~8%であった場合は安全であるため、特別対策をする必要はありません。
ただ、売上増加率が1%以下となると徐々に業績が傾き始めていることになるため、売上を増加させるための施策を打つ必要があります。
効率性
効率性は、業務効率の確認ができる指標です。会社の業務効率性を把握して改善することで、会社の業績向上につながります。
効率性を分析する際は、総資本回転率を使用するとよいでしょう。総資本回転率は、一年間の売上で総資本が何回入れ替わったのかを表せる指標です。総資本回転率は、以下のとおりに算出できます。
総資本回転率=売上高÷総資本
売上高が8,000万円で総資本が4,000万円であれば、総資本回転率は2回です。総資本回転率の目安は業種によって大きく異なりますが、2回を目安にするとよいでしょう。
総資本回転率が高いほど業務効率が高い証明になります。
生産性
生産性は、ヒト・モノ・カネを効率的に使用できているのかを確認できる指標です。1人当たりの売上高を確認すると、投入された経営資源に対して成果を得られているのかが確認できます。
1人当たりの売上高=売上高÷従業員数
売上高が5,000万円で従業員が30人だとしたら、5,000÷30で1人当たりの売上高は167万円と求められます。
1人当たりの売上高が高ければ高いほど生産性が高いことにつながるので、生産性を高めるためにさまざまな施策を行う必要があるでしょう。
まとめ
今回は、わかりやすい決算書の読み方を詳しく解説しました。今回解説した貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、株主資本等変動計算書の読み方を把握することで、さまざまな側面から業務改善ができます。
より会社の業績を高めるためにも本記事を参考にして、決算書を読み込んでみましょう。
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