マネジメントシステムとは、方針や目標を定めて組織を適切に管理するための仕組みです。マネジメントシステムを活用すれば、周囲からの信頼獲得につながったり、組織におけるシステムの効率化につながったりします。
このようなマネジメントシステムが、具体的にどのような仕組みなのかを把握して理解を深めたい方も多いでしょう。そこで今回は、マネジメントシステムの概要やメリット、ISO規格の種類について解説します。
本記事を読めば、どのようにマネジメントシステムを活用すればよいのかが把握できるため、さらなる業務効率向上につなげられます。マネジメントシステムを活用して業務効率を向上させたい方は、本記事を参考にしてください。
マネジメントシステムとは
マネジメントシステムとは、経営者が設定した企業方針を「どのようなやり方で達成するのか」「どのような役割分担で活動するのか」などを管理するための仕組みです。
会社には複数の社員が関わり合っており、それぞれが自由に業務へ取り組んでいたら組織の目標を達成することができません。したがって、社内で業務に関するルールを設定して従業員全員が決まりを守るように整備することで、組織を適切に管理する必要があります。
また、マネジメントシステムを構築するためには、経営者や工場長などのトップがヒト・モノ・カネなどの経営資源を提供したうえで携わる必要があります。
自社が掲げた目標を達成するためにも、PDCAを継続的に回すことで業務改善に努めるとよいでしょう。企業はマネジメントシステムを設定することで、効率的に企業目標を達成できるように努めてください。
マネジメントシステムとPDCAサイクルの関係性とは
マネジメントシステムとPDCAサイクルの関係性として、以下の4つの項目に分類して解説します。
Plan(計画) |
Do(実行) |
Check(評価) |
Action(改善) |
|
|
|
|
ここで解説した内容を理解したうえで、組織の仕組みづくりにマネジメントシステムを活用してください。
Plan(計画)
Plan(計画)は、目標設定をして仕事計画をする段階です。Planの段階では、具体的に以下の3つの業務を実施する必要があります。
- KPI(中間目標)の設定
- KGI(最終目標)の設定
- 目標を達成するために課題や解決策の洗い出し
上記の業務を実施することで、自分が何を目標にしているのかを明確にします。ただ、現実離れした目標を設定したとしても、達成できずに従業員のモチベーションが低下するだけなので、必ず達成できる目標を設定しましょう。
また、Planを実施する際は以下の3つのポイントを設定することが大切です。
- 目標や目的を設定するために「なぜ」「誰が」「何を」「どれほど」「いつまでに」「どのように」を意識する
- 目標設定した理由
- 実行計画を設定した理由
第三者がPlanを見たときに、どのような計画なのかが理解できるように簡潔に内容を記載しましょう。
Do(実行)
Do(実行)は、設定した目標や課題、解決策をもとに具体的な行動計画を設定します。Doの段階では、以下の3つの業務を実施する必要があります。
- 行動計画の実行度合いを測定できるように数値目標を設定する
- 行動計画をスケジュール化できるまで細分化する
Doを数値目標で設定しておけば、客観的な評価が可能です。例えば「今月は売上1,000万円を稼ぐ」との目標を設定した場合は「1日33万円以上の売上を獲得する」と設定すれば、成果が得られやすくなるでしょう。
また、行動計画をスケジュール化することで、従業員が具体的にどのように業務へ取り組めばよいのかが把握できるため、仕事に取り組みやすくなります。従業員が業務へ取り組みやすくするためにも、Doでスケジュール化をするべきです。
Check(評価)
Check(評価)は、仕事計画に沿って適切な計画が実行できていたのかを評価する段階です。Checkの段階では、具体的に以下の業務を実施してください。
- KGI・KPI・行動計画の定量目標の達成率を確認する
- できた・できなかった要因の振り返り
もし、計画通りに業務が進められなかった場合や成果が達成できなかった場合は、何が原因なのかを探ってみましょう。原因を探って改善することで、業務改善につながるからです。Checkでは正確で客観的な視点で向き合うことを心がけましょう。
Action(改善)
Action(改善)は、行動計画でできた要因やできなかった要因を踏まえたうえで、目標設定に向けた行動計画をしてください。Actionでは、以下の2つの業務を実施しましょう。
- できた要因とできなかった要因を踏まえた改善策の洗い出し
- 改善案のKPIと行動計画の定量目標を設定する
上記を実施することで次のPDCAを回すことができます。改善策の洗い出しをする際は、以下の3つから適切な選択をしましょう。
- 目標設定を変えるべきなのか
- 課題設定を変えるべきなのか
- 解決案やスケジュール内容を変えるべきなのか
目標設定から変える場合はPlan、課題設定や解決案から変える場合はDoからやり直して、業務改善を実施してください。
マネジメントシステムのメリットとは
マネジメントシステムのメリットとして、以下の3つが挙げられます。
- 信頼の獲得
- 組織におけるシステムの効率化
- 社員の不信感をなくすことができる
ここで解説したメリットを理解したうえで、マネジメントシステムを導入するべきなのかを検討してください。
①信頼の獲得
マネジメントシステムを実施すると信頼の獲得につながります。適切なマネジメントシステムを実施すると、品質や安全性を証明するISO規格が取得できるからです。例えば、ISO9001を取得すると国際基準をクリアした製品である証明ができます。
ISO規格を取得することで競合他社との差別化につながり、国際基準で安心した品質の商品であるとアピールすることが可能です。
また、取引先を選ぶうえでISO規格を取得していなければ参加できない場合もあるので、ISO規格を取得することで取引先の拡大にもつながります。顧客からの信頼や取引先の拡大を実現するためにも、マネジメントシステムを実施するべきです。
②組織におけるシステムの効率化
組織におけるシステムの効率化も、マネジメントシステムのメリットの1つです。マネジメントシステムを実施する際は今まで行ってきた作業を見直すことで、誰がいつ見てもどのような手順で作業をするべきなのかを明確にできます。
すると、無駄な作業や手順、人によって違う業務への取り組み方など、業務に関するネガティブなポイントを明らかにできるので、業務改善することで生産性の向上につながります。さらなる業務の生産性を高めるためにも、マネジメントシステムは導入するべきなのです。
③社員の不信感をなくすことができる
社員の不信感を無くすことができることも、マネジメントシステムのメリットといえるでしょう。ISO規格を取得することで、責任と権限も明確化できるため、従業員満足度の向上につながるからです。
各部門の責任者がマネジメントシステムに沿って組織を運営することで、従業員は自分の役割を認識しやすくなり、モチベーションが向上します。問題発生時においても責任者への報告がされやすくなるので、スムーズな問題解決が実現可能です。
ISO規格とはどういったものなのか
ISO規格とは、スイスのジュネーブに本部を置く非政府機関International Organization for Standadization(国際標準化機構)の略称です。
ISO規格は特定の商品やサービスに対してどの世界においても同じ品質のものを提供できるようにしようというものであり、世界165ヶ国の投票によって決定されます。具体的には、非常口のマーク(ISO7010)やネジ(ISO68)などが含まれています。
一方でマネジメントシステムに関してもISO規格が制定されています。具体的には、品質マネジメントシステム(ISO9001)や情報セキュリティマネジメントシステム(ISO27001)が含まれています。
自社の商品やマネジメントシステムの品質の高さを証明するためにも、ISO規格を取得する必要があるのです。
ISOマネジメントシステム規格の種類
ISOマネジメントシステム規格の種類として、以下の7つに分類して解説します。
- ISO9001(MQS:品質マネジメントシステム規格)
- ISO14001(EMS:環境マネジメントシステム規格)
- ISO27001(ISMS:情報セキュリティマネジメントシステム規格)
- ISO45001(OHSMS:労働安全衛生マネジメントシステム規格)
- ISO22000(FSMS:食品安全マネジメントシステム規格)
- ISO13485(医療機器の品質マネジメントシステム規格)
- その他の規格
ここで解説した内容を理解したうえで、マネジメントシステムを活用してください。
ISO9001(MQS:品質マネジメントシステム規格)
ISO9001は、会社が提供する商品やサービスの品質向上を目的としたマネジメント規格です。顧客満足度の達成を最終目標に設定しており、継続的に商品やサービスを改善する仕組みを構築することでさらに良い質の商品を顧客へ提供できます。
また、ISO9001は価格や納期などの顧客要求事項を満たすことが求められており、品質だけでなく価格や納期なども良好な水準を保つ必要があります。品質が良くても納期が1年先では事業を成り立たせられないでしょう。
一方ですぐ商品を出荷したとしても、品質が低すぎて使い物にならなければ意味がありません。ISO9001は品質や価格、納期をバランスよく保つことが求められている規格なのです。
ISO14001(EMS:環境マネジメントシステム規格)
ISO14001は、環境を保護しながら企業の環境パフォーマンスを向上させることを求めたマネジメント規格です。
環境パフォーマンスとは、具体的に自らが発生させた環境負荷に対して企業が環境保全活動に取り組んだ結果、どれだけの環境負荷を削減できたのかを表しています。
具体的には汚染物質の削減や資源の節約などが評価されて、環境にやさしい会社であると周知されるのです。環境にやさしい会社であると世間に周知させたい場合は、ISO14001を取得するとよいでしょう。
ISO27001(ISMS:情報セキュリティマネジメントシステム規格)
ISO27001は、可用性・機密性・完全性など情報の三大要素をバランスよく維持することで、情報漏えいやサイバー攻撃などから企業の情報を守るマネジメント規格です。可用性・機密性・完全性は、以下の意味を表しています。
可用性 |
システムが継続的に稼働できる度合いや能力のこと |
機密性 |
情報にアクセスしてもよい人以外はアクセスできない状態を保証すること |
完全性 |
情報や情報の処理方法が正確で改ざんされていない状態のこと |
企業がISO27001を取得していることで、顧客は安心して取引ができます。顧客に個人情報が漏えいする不安を除去するためにも、ISO27001を取得して情報セキュリティの高さを証明する必要があるのです。
ISO45001(OHSMS:労働安全衛生マネジメントシステム規格)
ISO45001は、勤務時間中の負傷や傷病など従業員が企業で働くうえでの危険を排除するためのマネジメント規格です。ISO45001を取得すれば安心して働ける労働環境であると求職者に対してアピールができます。
また、ISO45001を取得する際に業務フローを可視化して、管理体制を改善することが求められます。そのときに無駄な業務フローや人材配置があった場合は、適切な体制に是正してコスト削減が期待できます。
求職者に安心して働ける労働環境だとアピールをする場合や無駄なコスト削減を実現するためにも、ISO45001の取得は必要なのです。
ISO22000(FSMS:食品安全マネジメントシステム規格)
ISO22000は、安全な食品を製造するための仕組みを評価するためのマネジメント規格です。食品事故が発生するリスクを低減して消費者に安全な食品を提供し続けることを目的としているため、ISO22000を取得すれば顧客に安心して商品を購入してもらえます。
ISO22000は食品製造業や農業、食品流通業など食品に関するさまざまな業種で取得されており、従業員の意識改革にもつながります。安全な食品製造をしていることを証明したい場合は、ISO22000の取得を目指しましょう。
ISO13485 (医療機器の品質マネジメントシステム規格)
ISO13485は、医療機器に関して安全性が高い品質であることを評価するマネジメント規格です。ISO13485を取得すれば、医療機器の開発や販売に関するプロセスを合理的に管理できる体制づくりが実現できます。
また、ISO13485を取得すれば法令順守をしている企業の証明ができるので、顧客からの信頼獲得や新たな顧客獲得につなげられます。医療機器を合理的に管理できる体制づくりを構築したい場合や新たな顧客を獲得したい場合は、ISO13485を取得してください。
その他の規格
その他の規格では、IATF16949やJISQ9100などが挙げられます。具体的に、それぞれ以下のような意味があります。
IATF16949 |
自動車産業に関する品質マネジメントの総称 |
JISQ9100 |
航空宇宙や防衛産業に特化した品質マネジメントの総称 |
世の中には、数多くのマネジメントシステム規格が存在します。自社はどのようなシステム規格を取得するべきなのかを検討したうえで、実際に取得できるような行動をしてみましょう。
組織の仕組みづくりはマネジメントシステムが必須
マネジメントシステムを導入すれば、組織におけるシステムの効率化を実現できたり、社員の不信感を無くせたりできます。また、ISO規格には、環境パフォーマンスの向上を目的としたISO14001や医療機器の安全性を証明するISO13485とさまざまな種類があります。
組織の仕組みづくりを実現するためには、マネジメントシステムを構築しなければいけません。本記事を参考にしてISO規格を理解することで、自社に適切なマネジメントシステムを導入しやすくなるでしょう。
当社では、中小企業向けに空欄を埋めるだけの経営計画書を提供します。
無料でダウンロードができるので、ぜひご利用ください。
いかがでしたか?お気に召したのであればシェアはこちらから。