はじめに
「経営者としてどんなスキルを伸ばしていけばいいか?」
誰しもが悩んだことがあるのではないでしょうか。
スキルを習得しようと思い、本屋に行ったり、ネットで調べると、スキル系の情報は溢れています。先輩経営者に聞いたり、専門家に相談しても、それぞれのバックボーンや専門領域が違うが故に、人によって言うことが違います。
情報に触れれば触れるほど、自分に必要なスキルが分からなくなり、優先順位も決められなくなります。
これからの時代は「ITスキル」や「マーケティング」がないと経営していけないよと特定のスキルの必要性について言われたこともあるのではないでしょうか。
こういった迷いに対して、一つの答えを提示したいと思い、スキルに関する書籍、ネット記事、文献などを調べました。また、3700社の中小企業の顧問先がいることによる知見を活かして「経営者に必要なスキル」を整理・編集しました。
本記事では、数多くのスキルを整理して、経営者にとって必要なスキルは何か?を解説していきます。
1.経営者に必要なスキル
1章では「スキルの種類」「立場や職位ごとに重視されるスキル」「必要なスキルは状況に応じて変化する」ということを、カッツモデルやビジネススキル図鑑をベースに整理しました。
1.1 「カッツモデル」から考える経営者に必要なスキル
ビジネスに求められるスキルの有名なモデルとして、R.カッツが提唱したカッツモデルがあります。
マネジメント層に必要な能力として、次の3つに整理しています。
①コンセプチュアルスキル(概念化能力)
②ヒューマンスキル(対人関係力)
③テクニカルスキル(専門技能)
さらにマネジメント層を下記の3つに分けて、それぞれのレイヤーにおける必要なスキルを明らかにしています。
①ロワーマネジメント(リーダー層)
②ミドルマネジメント(管理職層)
③トップマネジメント(経営者層)
職位が上がるにつれて、必要なスキルの重要度がシフトしていきます。
3つのスキルを簡単に紹介します。
経営者の場合、
・会社のミッション・ビジョンを示す ・戦略を決めて、リソース(人材、資金、時間など)を最適に配分 ・会社の文化や価値観を形成し、従業員のモチベーションやコミットメントを高める ・外部の環境変化や競合状況を把握し、適切な対策や戦略変更を行う |
といったような役割が求められますが、この責務を果たすのに一番必要なスキルは「コンセプチュアルスキル」となります。
ただ、少人数で経営している場合は、
・管理職がいないことが多く、部下とのコミュニケーションやマネジメントが必要
・経営者自身がトップセールスとして実績を残す
・得意先、提携業者などとの関係性強化などを経営者自身が対応する
・人手が足りなければ、プレイヤーとして現場に入る
といった状況も起こります。
なので、ヒューマンスキルが重要な役割を果たしますし、テクニカルスキルは相対的に 重要性が低くなりますが、必要性は残ります。
会社の規模が大きくなるにつれて、管理職や幹部社員が育ってくれば、必要なスキルがシフトしていくと言えます。
1.2 「ビジネススキル図鑑」から考える経営者に必要なスキル
カッツモデルは優れた考え方ですが、1950年代に提唱されたもので、時代背景として製造業が主体のモデルになっています。
昨今では、IT・情報・サービス業などの産業が主流になってきており、求められるスキルも多様化してきています。
組織コンサルタントの掘 公俊氏の『ビジネススキル図鑑』では、時代の変化を踏まえて、カッツモデルを5つの領域に再編成しています。
①思考系 |
ロジカルシンキング、問題解決、戦略立案など |
②対人系 |
コーチング、プレゼンテーション、ファシリテーションなど |
③組織系 |
リーダーシップ、チームビルディング、人材開発など |
④業務系 |
ビジネス英語、パソコン、プロジェクトマネジメントなど |
⑤知的生産系 |
情報収集、図解、文書デザイン、学習、情報発信など |
参考:堀 公俊著 『ビジネススキル図鑑』
それぞれ10個、合計で50個のスキルが解説されており、「職種別」に求められるスキルの重要度が明示されており、非常に分かりやすいので、詳しく知りたい方は、ぜひ読んでみて下さい。
堀氏は、カッツモデルとの関係性を下記のように位置づけています。
経営者にとって、どのスキルも必要ではありますが、会社のステージや経営者の役割によって、重要度が変化していくと考えられます。
スモールビジネス向け経営コンサルタントの権威である有名なマイケル.E.ガーバーは、著書「はじめの一歩を踏み出そう」の中で、経営者が持つ人格を3つに分類しています。
①職人・・・目の前の作業だけに没頭する人 ②マネジャー・・・管理が得意な現実主義者 ③起業家・・・将来を見据えたビジョンを描く人 |
ガーバーによると、多くの成長できない経営者は「起業家」の人格を持っておらず、「職人」にとどまっていると指摘しています。「職人」にとどまらず、「マネージャー」や「起業家」の顔を持つには、スキルを磨いていく必要があります。3つの人格に対する必要なスキルを下記のように整理してみました。
職人(プレイヤー) |
「業務系」「知的生産系」 |
マネージャー |
「対人系」「組織系」 |
起業家(経営者) |
「思考系」「(高度な)知的生産系」 |
経営者の仕事が職人中心であれば、「業務系」「知的生産系」のスキルを重点的に伸ばせばいいですが、成長していくには、違う分野のスキルを身につけていく必要があります。
ご自身の状況を踏まえて、どこを伸ばしていきたいのか、どのステージに行きたいのかによって、必要なスキルを考えていかれると良いと思います。
1.3 必要なスキルを見える化
「カッツモデル」「ビジネススキル図鑑」を参考に、スキルを「業務」「人的」「思考」の3つに分類して、それぞれ、どんなスキルがあるかを列挙しました。
さらに、カッツモデルを参考に、階層別でどのスキルの重要度が上がっていくのかを見える化しました。色が濃くなるほど、必要性が増していくことを表現しています。
一般社員は「業務系」、管理職は「人的系」、経営者は「思考系」に比重が高くなっています。
*直観的に分かるように色分けしていますが、あくまで、参考程度で、会社の規模・業種・業歴・状況・経営者のタイプなどによって、違いがあるので、これが当てはまるとは限りませんのでご了承下さい。
項目 |
一般社員 |
管理職 |
経営者(役員) |
|
業務 |
ビジネスマナー |
|||
報連相 |
||||
事務処理能力・PCスキル |
||||
時間管理 |
||||
業務改善 |
||||
プロジェクトマネジメント |
||||
情報収集 |
||||
データ分析 |
||||
情報発信 |
||||
リスクマネジメント |
||||
会計・財務 |
||||
業界知識 |
||||
人的 |
コミュニケーション |
|||
率先垂範 |
||||
コーチング |
||||
クレーム対応 |
||||
プレゼン |
||||
アンガーマネジメント |
||||
アサーション |
||||
説得・交渉 |
||||
ファシリテーション |
||||
マネジメント |
||||
リーダーシップ |
||||
チームビルディング |
||||
モチベーション |
||||
思考 |
ロジカルシンキング |
|||
クリエイティブ思考 |
||||
アイデア |
||||
問題解決 |
||||
意思決定 |
||||
戦略立案 |
||||
変化対応・柔軟性・多様性 |
||||
仕組化・ビジネスモデル化 |
||||
マーケティング |
||||
ファイナンス |
参考:堀 公俊著『ビジネススキル図鑑』
自分に必要なもの、不要なもの、任せられるもの、これから身につけたいものなどが何かを考えるチェックリストとしてご活用下さい。
2.会社の成長に影響する経営者の6つのスキル
幾多ものスキルのうち、特に何が重要なのか?
2022年版中小企業白書で「経営者に求められる知識・スキル」の共通項が導き出されています。
中小企業経営者を対象に、経営に必要なスキルのアンケートを実施して、得られたデータについて因子分析して、中小企業の経営者が身につけている資質に共通する要素を抽出し、企業の成長に寄与する経営者の知識・スキルが6つに整理されています。
我々は、日々経営者の方とお会いさせていただき、かつ、決算書や財務の数字を見ていますが、優れた業績を残されている会社の経営者ほど、この6つのスキルを兼ね備えている傾向があります。
また、これまで経営者の書籍などを数多く読んできましたが、「意思決定力」「変化対応力」「強力なリーダーシップ」「数字に強い」「強烈な問題意識」といった共通項が浮かび上がってきます。
引用:2022年版「中小企業白書」
調 査 期 間 : 2021 年 11 月~2021 年 12 月
調 査 方 法 : 郵送による調査票の配布・回収、Web による回収
対象エリア : 全国
調査対象数 : 20,000 件(※1) 回 収 数 : 4,341 件(回収率 21.7%)
※1 株式会社帝国データバンクの保有する企業情報データベースから以下の条件で抽出し た 20,000 件を対象とした。
・決算書の収録状況:2020 年度の決算書収録がある
・企業規模:中小企業(中小企業基本法に則る)
・従業員数:5 人以上
6つのスキルが高い方が、より売上高増加率の水準が高いことも調査にて実証されています。
引用:2022年版「中小企業白書」
6つのスキルを一つずつ見ていきたいと思います。
2.1 臨機応変に対応し、意思決定する力
『複数の選択肢の中から最適な選択肢を選び、組織を代表して責任を持って意思決定することができる。また、状況を臨機応変に見極め意思決定に影響を与える可能性のある要素に配慮することができる』
経営者の大きな役割の一つとして「決定」があります。経営者の決定を、社員が実行することで事業は成り立っていきます。
『経営とは意思決定であり、マネジメントとは実行である』という言葉もあります。
コロナ禍においては、未曽有の事態への臨機応変の対応力と、いつ事態が好転するのか、先行きが見えない中で意思決定していく力が求められました。
直近では、chatGPTなどの生成系AIの登場によって、劇的な変化が迫っています。
経済の変動、技術の進化、環境の変化、競争状況の変化など外部環境の大きな変化は、会社が経営をしていくときの「前提条件」として「起こる覚悟」を持っておく時代が到来しています。
変化が常態化しつつある時代において、この力がより求められていくのは間違いありません。
2.2 傾聴し、人を導く力
『積極的に部下や関係者と関わるだけでなく、一人一人の性格や状況に応じた接し方ができる。また、部下や関係者と信頼関係を維持・構築することができる。』
経営者は会社で一番リーダーシップを発揮する存在で、社内・提携先などを指導し、動機づけすることが求められます。いくら良い意思決定をしても、実行してくれる社員などがいなければ、うまくいきません、
そのためには、他者の意見を聴き、理解しようとする姿勢が不可欠です。
お客様、経営幹部、社員、取引先、コンサルタント等、さまざまな人の声を集め、十分にヒアリングしていくことで、意思決定が独断になることを防ぐことができますし、社内を向かいたい方向へ導いていく原動力になります。
昭和時代の「いいから、俺についてこい」とか「とにかく、俺の言う事を聞け」といったような「支配型リーダーシップ」では、令和においては人がついていきません。
最近では、支配型リーダーから、「まずは相手に奉仕し、その後に相手を導く」という「サーバント・リーダー」が推奨されています。
真摯に傾聴して、その上で意思決定して、リーダーシップを発揮することが求められています。
2.3 理論的に考えて本質を見抜き、適切に表現する力
『答えのない問題や課題に対して、物事を理論的に考えて、その本質を見極めることができる。また、自分の考え方や伝えたい内容を他者に分かりやすく伝えることができる。』
経営をしていると、事業・人・お金など多くの複雑な問題に直面します。それも、答えがないケースが多いです。変化の早い時代に突入して、これからどうなっていくのか答えを持ち合せている方は少ないのではないでしょうか。
こういった課題に対処していくには、起きた出来事の本質的な問題は何かを突き詰めて、考えていく力が求められます。
京セラ創業者の稲盛和夫氏は、「一つのことを究めることによって、ものごとの本質を体得することができる」とおっしゃっていますが、ご自身の経験から経営の本質を導き出し、誰もが分かりやすい言葉で的確に表現されています。
・私心のない判断を行う ・利他の心を判断基準にする ・楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する ・売上を極大に、経費を極小に ・値決めは経営 |
このような本質を捉えた判断基準を持っておくことで、迷った時に意思決定できますし、分かりやすい言葉で社内などへも伝えていくことができます。
2.4 計数管理・計画能力
『財務状況や資金繰りについて適切に把握し、数字を基に経営計画や投資計画を立案できる。』
経営者の役割の一つとして、戦略を決めて、人材・資金・時間などのリソースを最適に配分することがあります。
何か新たな投資を進める際に、財務状況や資金繰りを考慮せずに決定してしまうと失敗のリスクが高まります。我々は3,700社の顧問先に対して、毎月、月次決算書を提供していますが、新たに相談にこられるお客様の決算書を見ると、過大投資や過剰スピードの成長(膨張)で財務体質が悪化してしまっているケースを見ています。
数字が全てではないですが、数字をベースに経営計画・投資計画・資金計画を立てて、
計画に対する実績を数字で検証していくことが、盤石な経営への役割を果たしてくれます。
意思決定して計画したことが、100%正しいとは限りません。だからこそ、数字でモニタリングして、軌道修正していくことも大事なことです。
また、経営において銀行からの借入も必要性が高いですが、経営者自身が自分の言葉で、銀行に対して、数値計画などを語れるかどうかも大事なポイントです。
2.5 問題意識を持ち、自己変革する力
『周囲の状況に積極的に関心を持ち、変化を恐れずに、得られた情報を基に自社の経営課題解決のために実践したり、応用することができる。』
「現状維持は衰退」という言葉がありますが、経営者は、現状に満足せずに、常に新しい価値を追求していくことが求められます。
市場環境は常に変化しており、変化に対応するためには、自分自身や組織の思考や行動を定期的に見直し、改善していく必要があります。
問題意識を持つために大事なのは、理想を掲げたり、数字目標を決めることです。ゴールを設定するからこそ、現実とのギャップが生まれ、その差が変革への意識をもたらしてくれます。目標がなければ、日々起こる問題へは対処しますが、あくまで対処療法的になるだけで、変革には至りません。
我々は、毎年、経営計画書を作成して、実現したい未来像を掲げていますので、常に健全な問題意識が生まれ、その未来像を実現するために成長していく力が湧いています。
2.6 業界に精通する力
『自社が属する業界や市場についてよく理解しており、競合他社を含めた業界の動向を把握することができる。』
「社長専門の伝説の経営コンサルタント」の一倉定氏の有名な言葉に『市場にはライバルとお客様しかない』というものがあります。
経営者は社内に目を向けるのではなく、競合他者とお客様に意識を向けることの重要性を説いています。
お客様に選んでいただく商売をするには、
・お客様から必要とされる商品・サービスを提供する
・お客様が気づいていない潜在ニーズを満たす
・ライバルと差別化した付加価値を提供する
といったことが重要です。
さらに、最近の物価上昇・コスト高によって、「値上げ」は経営における超重要なキーワードです。
単に、コストが上がっているから値上げをして下さいというのではなく、競合他社とは差別化された付加価値があることによって、お客様にも納得していただく値上げをしていくことが求められています。
そのためにも、まずは、業界・市場・競合他社の動向を定期的にチェックして把握していくことが必要です。
(補足) 6つのスキルを導き出した37の問い(チェックリスト)
これまで紹介した「経営者に求められる6つのスキル」を導き出すためのベースとなるアンケートの質問(全37個)を2022年版中小企業白書から抜粋します。
必ずしも全てのスキルが網羅されているわけではありませんが、自分はどうかな?と問いかけながら、質問内容を見ていただくと、必要なスキルを考えるキッカケになります。
2022年版中小企業白書では、質問内容のみが掲載されていますが、「業務、人的、思考」の3つの分類に整理して、スキル内容も追加しました。3つの区分のうち、どのスキルが強いか、不足しているかなどといった観点で、チェックリストとしてご活用下さい。
業務 |
会計・財務 |
財務・会計に関する専門知識やノウハウをもっている |
業務 |
会計・財務 |
資金繰り、財務状況を的確に把握している |
業務 |
業界知識 |
業界で通用する専門知識やノウハウをもっている |
業務 |
業界知識 |
業界の市場動向に関して情報を収集し把握している |
業務 |
業界知識 |
業界の商習慣や習慣について理解している |
業務 |
事務処理能力 |
速やかに業務を進める事務処理能力をもっている |
業務 |
情報・データ分析 |
速やかな情報収集や情報をもとに導き出される事象を見極める ための分析を行うことができる |
人的 |
アサーション |
相手の行動・プロセスに対して、自分の意見を建設的に具体的な 言葉で伝えることができる |
人的 |
コーチング |
相手に気づきや自発的な行動を促し、目標達成に向けて伴走して いくことができる |
人的 |
コミュニケーション |
商談や社内組織間の意思疎通を図る上で、自分の意思を伝える ことができる |
人的 |
コミュニケーション |
相手の言葉に耳を傾け、相手のことをしっかりと理解している |
人的 |
コミュニケーション |
人と人、組織と組織のあいだに立ち、両者の意見交換をスムーズに 行える |
人的 |
チームビルディング |
他人を活かして事業を推進していくことができる |
人的 |
プレゼンテーション |
伝えたい内容を分かりやすく、見やすくまとめることができる |
人的 |
プレゼンテーション |
物事を理論的に整理したり説明したりできる |
人的 |
モチベーション |
同僚や部下の意欲を引き出すことができる |
人的 |
リーダーシップ |
組織を背負う責任感をもっている |
人的 |
リーダーシップ |
バイタリティやタフさをもっている |
人的 |
率先垂範 |
率先垂範して行動することができる |
思考 |
アイデア |
事業とは関係のない事象を自社のこととして置き換えて考えている |
思考 |
アイデア |
新しい学びを自社にどう活かせるかについて考えている |
思考 |
アイデア |
課題に対して複数のアプローチを行える |
思考 |
ファイナンス |
投資計画を立てることができる |
思考 |
ロジカルシンキング |
物事の本質を正しく見極めることができる |
思考 |
ロジカルシンキング |
物事の全体像を正確に把握することができる |
思考 |
ロジカルシンキング |
起こっている事象を抽象化して捉えることができる |
思考 |
意思決定 |
困難な状況でも決断する力をもっている |
思考 |
戦略立案 |
事業環境を見極め、優先的課題や中長期的な重要課題等の洗い出しができる |
思考 |
戦略立案 |
経営計画を立てることができる |
思考 |
創造思考 |
既成概念にとらわれず、自由に発想することができる |
思考 |
変化対応・柔軟性 |
予定外の事態が発生した場合には優先順位を柔軟に判断し、 早期に必要な対策を講じている |
思考 |
変化対応・柔軟性 |
自分とは異なる価値観を受け入れられる |
思考 |
変化対応・柔軟性 |
変革マインドをもっている |
思考 |
変化対応・柔軟性 |
物事を感覚的に捉え、瞬時に反応することができる |
思考 |
変化対応・柔軟性 |
トラブルに対しても臨機応変に対応できる |
思考 |
問題解決 |
単に現状を追認するのではなく、「本来どうあるべきか」という問題意識を持っている |
3.スキルを磨くための方法
3.1 自分に必要なスキルを自覚する
1章・2章で、ビジネスで必要なスキル、経営者に必要なスキルを紹介してきました。
一概にこのスキルがあれば大丈夫ということはなく、自身の置かれている環境や立場に応じて、必要なスキルは変化していきます。もしくは、同じスキルでもレベルアップが求められていきます。
例えば、「リーダーシップ」や「マネジメント」は必要不可欠なスキルですが、
社員数が10人・100人・1000人の3パターンの場合に、同じレベルで通用するかというとそうではありません、このスキルをより高度化させて、伸ばしていく必要があります。
定期的に、スキル一覧などをチェックして、今必要なものは何か、これから伸ばしていく必要があるものは何か、セルフチェックすることで、不足に気づくことができ、磨くための第一歩になります。
自覚するには、
・経営者が書いている本やビジネス書を読む
・経営者の集まりに参加したり、知り合いの経営者との交流を図る
・税理士やコンサルタントから不足しているスキルを教えてもらう
・経営計画や目標を立てることで、不足スキルを考える
といった方法も考えられます。
3.2 学びながら実践を繰り返す(実践知)
知識は読書や勉強で習得できますが、スキルを身につける上で大事なのは、実践の経験を通して得られるということです。
ビジネスのスキルに限らず、スポーツ、料理、ゲームなども同じで、いくら知識を知っていたところで、実際に料理が上達するわけではありません。
一方で、闇雲に経験を積んでいると成長スピードや習熟度は遅くなりますし、間違った方法を覚えてしまう可能性もあるので、正しく学んでいくことも必要です。
実践を通じて得られるスキルを「実践知」と言いますが、『実践知』という書籍の中に、スキルを獲得するための5つの方法があるので紹介します。
①観察学習 初心者が、仕事場において、意図的にモデルとなる先輩、熟達者を選択し、そこに注意を向け、その行動を記憶内に保持し、適切なときに、自らを動機づけることによって、実行することである。また、先輩から直接教わらなくても、心酔する先輩の態度を模倣したり、熟達者を観察して、教えてくれない仕事のスキルを盗んだりする。
②他者との相互作用 同僚、上司、顧客など他者との相互作用における対話や教え合い、情報のやりとりによって学習される。 熟達者がここで初心者のためにモデルとなって、優れた実践活動を示し、初心者が模倣し、それに対して熟達者が結果の知識としてフィードバックを与え、初心者が修正するという観察学習とコーチングからなる。
③経験の反復 初心者の練習においては、指導者や同僚が、望ましい行動をほめたり、結果の知識が得られるようなフィードバックを与えることが重要である。 一方、指導者がいない練習であっても、学習者自身が自分の行動をモニターし、コントロールすることはできる。
④経験からの帰納と類推 経験の反復による学習がスキルや知識の蓄積であるのに対して、帰納は、蓄積したスキルや知識、事例を類似性に基づいてカテゴリ化し、その共通性やルールを抽出することである。
⑤メディアによる学習 書物、雑誌、テレビ、インターネット、マニュアル、内部資料、研修などのメディアを通した学習。 |
引用:『実践知』金井 壽宏 / 楠見 孝 編
表現が少し難しいですが、要約すると、
・学習する(先輩、上司、知人、メディアなど)
・経験を繰り返す&振り返る
・実践を通じて他者と関わる
・学びと実践を結びつける
といったことになります。
まとめ
これまで、経営者に必要なスキル、スキルを磨くための方法について書いてきました。
必要なスキルはいくらでもありますので、まずは2章でご紹介した「6つのスキル」から考えてみられてはいかがでしょうか?
大事なのは、学びと実践を繰り返すことに尽きます。
また、全てのスキルを一人でカバーすることは困難なので、採用や人材育成、人材登用により組織としてスキルを補完したり、外部のコンサルタントなどに不足するスキルをサポートしてもらうという考え方も持ち合わせながら、経営者自身のみならず、組織全体のスキル向上という観点でも、ぜひこの記事をご活用いただければ幸いです。
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