営業戦略と営業戦術はなにがちがう?
「営業戦略」と「営業戦術」といったたような言葉がありますが、何が違うのでしょうか。
営業戦略と営業戦術は、営業活動のなかのプランニングのことを指しますがレベルが異なっています。営業戦略は目標達成にむけての大局的な計画で、営業戦術はその目標を達成するための具体的な手段やアクションの計画のことです。
ここからは、営業戦略と営業戦術二つにわけて、どこが違うのかを解説していきます。
営業戦略とは
営業戦略とは、中長期的な営業目標を達成するために策定する方法論のことで、「売れる組織作り」を準備・計画・運用していきます。
営業戦略は会社の成長や業績アップのための重要な要素である「経営戦略」の一部です(経営戦略は「全社戦略」と「事業戦略」の二つのレベルに分けることができます)。
経営理念をもとに全社戦略を策定し、それに連なるように事業戦略として営業戦略をはじめ生産戦略・マーケティング戦略などを策定していきます。
営業戦術とは
一方で、営業戦術とは、営業活動を実際におこなう際の具体的な方法論のことを指します。つまり、営業戦術は、どのようにアプローチしていくかという、販促活動や広告計画、価格設定や交渉戦略など、営業現場での具体的な行動計画になります。
営業戦術は企業の特性、どの業界か、市場の状況などさまざまな要因でバリエーションが異なります。大切なポイントは、営業戦略と一貫性をもち、また、現場の要望や顧客のニーズに対応していくことになります。
営業戦略において重要な10の項目とは
営業戦略には10の重要な項目があります。
①ミッション
②チーム構成
③対象となる市場
④ツールなど
⑤ポジション
⑥マーケティング
⑦顧客獲得戦略
⑧アクションプラン
⑨目標
⑩予算
①ミッション
営業戦略において重要な一つ目の項目は、「ミッション」です。
営業戦略を立てるときは、まず「何のためにその営業目標を達成するのか」を確定させるところから始めます。どうしてミッションが必要なのかというと、営業目標となる数字だけを確定させても目的が明確でないので、モチベーションを維持することができないからです。
②チーム構成
営業戦略において重要な二つ目の項目は、「チーム構成」です。
特に、B to Bのビジネス営業では、従業員一人の活動では成立しないことがほとんどです。営業部門のメンバーでの連携はもちろんですが、マーケティング部門や生産部門など他部署との連携も密におこなうことで、目標に向かってスムーズに営業を進めていくことができるようになります。
誰が・何の・どんな役割を担うのかなど、具体的に役割分担して、営業計画を作成していきましょう。また、チーム構成は組織図で簡潔にまとめるようにしましょう。「一人のマネージャーが三人の担当者をまとめる」という風に、具体的に記すとよりわかりやすくなります。
③対象となる市場
営業戦略において重要な三つ目の項目は、「対象となる市場」です。
取扱商品やサービスのターゲット市場に関する情報をまとめて記載します。地域ターゲットやバイヤーペルソナなどの項目にわけて詳細な情報を明記します。地域ターゲティングは、対象地域、地域戦略などをまとめます。
全国展開をしている企業は、どの地域が優先かも検討して記載します。バイヤーペルソナとは、既存顧客のデータや市場調査をもとに、理想的な顧客像を明記します。
ターゲット市場については、事業が進むにつれてソリューションや戦略が洗練されていき、取扱商品・サービスが受け入れられる市場が大きく変わっていく可能性もあります。そのため、定期的にペルソナやターゲット市場の内容を見直すことが大切になってきます。
④ツールなど
営業戦略において重要な四つ目の項目は、「ツールなど」です。営業目標を達成するために必要なソフトウェアなどのツールを記載します。
また、ソフトウェア以外に営業担当の業務がスムーズにまわるようにするツールやリソースも具体的に明記します。営業活動で使用する有名なソフトウェアは、CRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援システム)があります。
そのほかにもセールスネーブルメントツールという生産性を高めるために営業活動を仕組化するツールや、メンバー全員で情報を共有できるような社内ポータルシステム・コラボレーションツールなどがあります。
⑤ポジション
営業戦略において重要な五つ目の項目は、「ポジション」です。
自社が業界においてどこに位置づけられているかを記載します。そうすることで、営業計画を読む際に自社の強みや弱み、競合他社との相違点をスムーズに把握することができます。
市場環境の動向や、バリュープロポジション(独自の提供価値)、価格戦略なども明記するようにしましょう。また、ポジショニングに関連するフレームワークである3C分析やSTP分析を利用している場合は、分析の際にできた図をそのまま掲載しても問題ありません。
⑥マーケティング
営業戦略において重要な六つ目の項目は、「マーケティング」です。
マーケティングを記載する際は、価格設定やプロモーションの実施予定についても整理します。ブランドの認知度アップ、見込客の創出に必要な施策、売上予測などをあわせて明記していきます。
マーケティングと営業はとても関係が深い分野です。どちらの計画も営業部門とマーケティング部門で共有し、連携を図ることで、効率的にどちらの業務も伸ばすことができるようになります。
⑦顧客獲得戦略
営業戦略において重要な七つ目の項目は、「顧客獲得戦略」です。
マーケティングによって創出された見込客から、接触をはかり顧客獲得につなげていく方法を明記します。顧客獲得戦略をしっかり記載しておくことで、営業担当者は見込客だけに時間を割くことができ、無駄な時間を省くことができます。
また、顧客からのフィードバックを明文化しておくと、お客さまの声をもとに営業サイクルの改善を図ることができます。
⑧アクションプラン
営業戦略において重要な八つ目の項目は、「アクションプラン」です。
企業の目標を達成するために営業担当者の行動を具体的に明記します。アクションプランを作成する際、企業の事業目標から逆算して作成します。
すべての営業担当者で目標達成するまでのプロセスを共有することも大切になります。アクションプランと実際に実行した業務を記録し、計画との乖離を早い段階で発見できるようにしましょう。
⑨目標
営業戦略において重要な九つ目の項目は、「目標」です。
目標を記載する際は、具体的な数値を表すようにKPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)を使用して設定しましょう。数値目標を明確にすることで、営業を進めていく時に実績と目標の差を視覚的に捉えることができ、課題の抽出や改善点の考案がよりしやすくなります。
また、営業計画を立てる際には現実的な目標を設定することも重要です。実現不可能なものだったり、実現が安易にできてしまうものであったりすれば、従業員のモチベーションが下がってしまいますので、市場規模や製品価格などを考慮して適切な目標を設定するようにしましょう。
⑩予算
営業戦略において重要な十個目の項目は、「予算」です。営業活動における費用をしっかり整理し、売上目標を達成するためにはいくら必要かを確定させて明記します。
そこには、営業担当者の給与・賞与、活用するツール代、出張交通費、接待交際費などが含まれます。予算計画を立てた後は予実管理をし、と比べて実績の推移を確認するようにします。そこで差異がでた場合は、早いタイミングで問題点を見つけ、改善策を講じるようにしましょう。
営業戦略を立てるプロセスとは
ここからは営業戦略を立てるプロセスを解説していきます。
営業戦略は以下のプロセスで立てていきます。
①自社分析
②営業目標の設定
③ペルソナの設定
④カスタマージャーニーの策定
⑤現状の課題捻出
⑥KPIの設定
自社分析
営業戦略を立てる時、まずは「自社分析」をおこないます。
自社分析の際は自社の戦略的な立ち位置を判断していきます。
・株主、従業員、顧客、取引先のほかに、金融機関、行政機関なども含めあらゆる利害関係者には準備段階から参加してもらいます。
・経営陣で相談して戦略的な課題を特定します。
・顧客の視点で市場環境や業界についてのデータを収集します。
・外部環境や脅威を把握します。
上記の流れ、自社の戦略的な立ち位置を明確化し、中長期的に戦略目的を決めていきます。
営業目標の設定
次に、「営業目標の設定」をおこないます。
自社分析で自社の戦略的な立ち位置を確定させたら、具体的な戦術に落とし込んで、営業目標を設定していきます。営業部門や営業担当者、また、この施策に携わる部署には、営業目標の内容とタイムライン、責任の範囲を共有しましょう。
そこで、計画の全体像を可視化して、ビジネスプロセスを構築します。
ペルソナの設定
次に、「ペルソナの設定」をおこないます。
ペルソナとは、自社の取扱商品やサービスを認知・購入・利用・継続してもらう理想の顧客像を具体的に表現した架空の人です。
実在する人のようにプロフィールをつくり、ライフスタイルや悩み事などの内情についても考えていきます。具体的なペルソナを設定することで、自社のコンテンツを誰に届けるべきかが明確になり、営業戦略も立てやすくなります。
カスタマージャーニーの策定 300
次に、「カスタマージャーニーの策定」をおこないます。
カスタマージャーニーとは、顧客が自社の取扱商品やサービスを購入し、利用・継続・再購入するまでの道のりのことをいいます。
カスタマージャーニーで営業についてマップ化することでマーケティング施策を打ち出すことができ、成果を伸ばしていくこともできます。
現代社会は商品やサービスであふれており、消費者には数多くある商品・サービスのなかから自社のコンテンツを選んでもらわなくてはいけません。
商品・サービスの認知から購入・利用してもらい、顧客に継続して利用・再購入してもらうためには、一連の顧客体験を考察し、一貫性をもってマネジメントしていくことが重要になります。
現状の課題捻出
次に、「現状の課題捻出」をおこないます。営業戦略を練るうえで、現状自社にどのような課題があるのかを調査する必要があります。
最終的な売上目標を達成するまでのプロセスは、現状の課題から逆算して検討していく必要があるので、売上目標達成プロセスのもととなる現状の課題はしっかり可視化しておく必要があります。
KPIの設定
最後に、「KPIの設定」をおこないます。
KPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)とは、業績を管理する評価として必要な指標です。
KPIとして数値目標を設定しておくことで、ビジネスパフォーマンスをより効果的に測定できるようになります。そして、KPIを評価することで、今後、効果的な意思決定をおこなうことができます。
営業戦略を立てる際のポイント3選
営業戦略を立てる際、下記で紹介する3つのポイントを理解しておくと、目標や方向性が曖昧になったり、計画が思い通りに進まなかったりといった失敗を未然に防ぐことができます。
①アクションに対して定量的な目標を設定すること
②営業のボトルネックを把握しておくこと
③立案と検証を繰り返すこと
①アクションに対して定量的な目標を設定すること
営業戦略を立てる際の一つ目のポイントは、「アクションに対して定量的な目標すること」です。
売上目標を確定させたら、最終目標から逆算して、成約率・商談件数などの具体的で定量的な目標を設定するようにしましょう。
定数的な目標が設定されていると、アクションプランをより理解しやすくなります。
②営業のボトルネックを把握しておくこと
営業戦略を立てる際の二つ目のポイントは、「営業のボトルネックを把握しておくこと」です。
営業活動をおこなっていくと思うような成果が出ない時があると思います。うまく成果がでない背景には、複数の原因が発見される可能性が多々あります。
その原因のなかでもボトルネックとなっている優先度の高い課題を明確にし、営業戦略に反映させるようにしましょう。また、営業部門内でボトルネックとなっている部分を共有しておくことで、営業戦略への理解も深まります。
③立案と検証を繰り返すこと
営業戦略を立てる際の三つ目のポイントは、「立案と検証を繰り返すこと」です。
営業戦略を立てて終了ではいけません。営業計画を立案し、実行する段階では効果を検証していくことが重要になります。
目標数値に対してどのような営業をおこない、どのような成果を生むことができたのかを繰り返し検証し、営業戦略に反映させていくことで、よりよいものへと改善していくことができます。
営業戦略を立てる際に役立つフレームワーク8選 150
営業戦略立てる際、優先順位をつけ、評価・軌道修正のプロセスを検証するワークフレームが必要となります。営業戦略を立てる際に役立つフレームワークを8つ紹介していきます。
①SWOT分析
②マクロ環境分析(PEST分析)
③5F分析(ファイブフォース)
④3C分析
⑤バリューチェーン分析(VC分析)
⑥マッキンゼーの7S
⑦ランチェスター戦略
⑧パレートの法則
①SWOT分析
営業戦略を立てる際に役立つ一つ目のフレームワークは、「SWOT分析」です。
SWOT分析とは、「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」「機会(Opportunities)」「脅威(Threats)」の頭文字をとって名付けられたもので、社内外の環境を整理するフレームワークです。
【強み】自社分析だけでなく、同業他社とも比較して記載
【弱み】単純な弱みではなく、弱みを補うための取り組みまで記載
【機会】業績にプラスの影響を与える外部環境
【脅威】業績にマイナスの影響を与える外部環境
②マクロ環境分析(PEST分析)
次に紹介するフレームワークは、「マクロ環境分析(PEST分析)」です。
マクロ環境分析は、自社ではコントロールできず、そして自社に一番影響を与える外部環境要因を分析するためのフレームワークです。
「Politics(政治)」「Economy(経済)」「Society(社会)」「Technology(技術)」の頭文字でPEST分析とも呼んでいます。
【政治】ビジネスを規制する法律や政治動向
【経済】経済水準、所得、為替、金利など
【社会】人口、価値観、流行、習慣など
【技術】ビジネスに影響を与える技術動向
③5F分析(ファイブフォース)
次に紹介するのは、「5F分析(ファイブフォース)」というフレームワークです。
5F分析とは、業界の収益構造やKSF(Key Success Factor、重要成功要因)を見いだすためのフレームワークです。
【業界の競合】同業他社との競争の激しさ
【新規参入の脅威】新規参入で競争が激化してしまう可能性
【代替品の脅威】代替品で既存の商品・サービスの市場が奪われる可能性
【売り手の交渉力】部品や原材料の業者との力関係
【買い手の交渉力】顧客との力関係
④3C分析
次に紹介するのは、「3C分析」です。
3C分析とは、Customer(顧客・市場)、 Company(自社)、Competitor(競合他社)という3つのCを分析し、バランスよく事業計画をまとめていくためのフレームワークです。
【顧客・市場】市場規模、市場の成長、購買決定のプロセス、ニーズなど
【自社】市場シェア、ブランドイメージ、技術力、ヒト・モノ・カネなど
【競合他社】参入する上での障壁、競合の戦略、競合のパフォーマンスなど
⑤バリューチェーン分析(VC分析)
次に紹介するのは、「バリューチェーン分析(VC分析)」です。
バリューチェーン分析とは、事業戦略の改善策や有効性を見つけるためのフレームワークで、自社の事業活動を分解してどこがどのように付加価値につながっているかを分析していくものです。
主活動(原材料の調達、製造、出荷、物流、販売、マーケティング、アフターサービスなど)と、人事、経理、技術、開発などの支援活動~モノの流れを可視化して、付加価値を表していきます。
⑥マッキンゼーの7S
次に紹介するフレームワークは、「マッキンゼーの7S」です。
マッキンゼーの7Sとは、営業戦略を実行するための7つの要素の相互関係を分析し、優先順位をつけたり、軌道修正したりすることに役立つフレームワークです、7Sは、「ソフトの4S」と「ハードの3S」の要素から成り立っています。
【ソフトの4S】
・Shared value (共通の価値観・理念・ビジョン)
・Style(経営スタイル・社風)
・Staff(人材)
・Skill(スキル・能力)
【ハードの3S】
・Strategy(戦略)
・Structure(組織構造)
・System(システムや制度)
⑦ランチェスター戦略
次に紹介するのは、「ランチェスター戦略」です。
ランチェスター戦略とは、自社と競合他社の戦力の違いによって市場での優位性を分析し、リソースの効果的配置を図ることを目指すフレームワークです。
ランチェスター戦略は、元は軍事的な数理モデルをビジネスに応用した戦略のことで、戦力の違いに応じて効果的な戦略を選びます。
ランチェスター戦略のメリットは、戦力に応じて戦略を決められるという点です。そうすることで、自社の戦力を客観的に見て、競合他社と戦うために一番よい戦略をとることができます。また、リソースの無駄遣いを防げます。
⑧パレートの法則
最後に紹介するのは、「パレートの法則」というフレームワークです。
パレートの法則は、「多くの結果は少数の原因によって生じる」という考えで、一部の要素が全体の結果に大きな影響を与えるということを示します。
営業戦略において、売上の80%は20%の社員に依存する、もしくは、20%の顧客が全体の80%を占めているというような、ポイントを明確にしていきます。このトップ20%の顧客に対して特別な施策(サービスや割引など)を実施することで、売上増を目指すことができます。
効果的な営業戦略の下で事業計画を実行しよう
効果的な営業戦略の立て方をここまで解説してきました。営業戦略は事業計画を実行するうえで重要な戦略になります。
フレームワークなども使い、しっかりと営業戦略を立て、事業の成功に進んでいきましょう。
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