月次決算は年次決算と何がちがう?月次決算の重要性と具体的な流れを徹底解説

    記事公開日: 2023.06.16

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    月次決算とは

    月次決算とは、経営成績と財政状況を確定する作業で、事業の年度末に行う年次決算とは別に、この作業を毎月一ヶ月単位で行うことを指します。

     

    この作業の目的は、営業成績と財政状況などの経営を管理するために参考となる情報を経営陣に伝えることですので、予算や計画との比較をするために、正確性・詳細性よりも概観的で迅速な情報が必要になります。

     

    また、経理・財務には、月次決算の早期化とKPI(「Key Performance Indicator」重要業績評価指標、目標達成のためのプロセスが適切に実行されているかどうかを評価する指標)に基づく予実差異分析が求められます。月次決算は年次決算とは違い作業項目は多く、スケジュールもタイトです。今回は、月次決算の目的ややり方、効率よく月次決算をおこなうためのポイントを詳しく解説していきます。

    月次決算と年次決算の違いとは

    年次決算は年に一回一年間の経営成績と財務状況を確定する作業です。一方で、月次決算はその作業を月に一回一ヶ月単位でおこないます。

     

    また、年次決算は会社法や金商法、法人税法などの法律で実施することが義務づけられていますが、月次決算は企業が任意でおこなうものです。目的も異なっており、年次決算は損益計算書や貸借対照表に一年間の売上実績をまとめ、株主や取引先に対して情報を提供することを目的としています。

     

    一方で、月次決算は経営陣が自社の経営状況をタイムリーに確認し、経営方針や経営戦略を早期に考え、対策していくための資料として使われています。

    月次決算をおこなう4つの目的とは

    月次決算をおこなう目的は下記4点です。

    • 現状把握
    • 事業の進捗管理
    • 決算対策
    • 年次決算の効率化

     

    ここからは、月次決算をおこなう目的をひとつひとつ見ていきたいと思います。

    現状把握

    月次決算をおこなう目的の一つ目は「現状把握」です。月次決算は前述でお伝えした通り、毎月一ヶ月単位の経営成績と財務状況を確定する作業ですので、現状をすぐに把握することができます。

     

    そのため、急激な経営環境の変化で売上減や経費増が起こってしまった場合でも、早急に原因の追究ができ、適切な経営判断をおこなうことが可能になります。

     

    問題解決には早期発見が健全な経営の基本の基です。年次決算だけをおこなっていると、年次決算の時には数字が過去のものとなっていることが多く、原因の追究や対策の実施は難しい状況にあることがほとんどです。月次決算は経営陣が現状を把握し、経営判断をおこなう基本の資料となるのです。

    事業の進捗管理

    月次決算をおこなう目的の二つ目は「事業の進捗管理」です。月次決算では、毎月、事業の進み具合や売上をまとめていきます。

     

    月次決算で大切なことは現状の実績と事業計画を比べ、差異がないかを調べることです。順調に進んでいる場合も、計画通りに進んでいない場合もどうしてそのような結果になったのか原因を追究し、今後の事業に活かしていくことができます。

    決算対策

    次に紹介する月次決算をおこなう目的は「決算対策」です。月次決算をおこなうことにより、年次決算よりも前に利益予測を出すことができます。

     

    利益予測が出せれば、決算の前かたら納税予測をすることができるので、節税対策につなげていくことができます。企業にとって納税の額は大きな問題です。月次決算で決算対策をしっかり行い、節税をしていきましょう。

     ④年次決算の効率化

    月次決算をおこなう四つ目の目的は「年次決算の効率化」です。年次決算は、一年間のすべての会計業務を確定する作業です。一年間の会計書類や帳簿を整理し、期日までに決算書類を作成して提出しなくてはなりません。

     

    つまり、年次決算はスピードも正確性も求められて膨大な労力がかかる作業になります。月次決算として毎月会計資料をまとめておけば、年次決算の際にまとめる資料が減り、時間や確認項目なども大幅に軽減することができます。

     

    また、一年に一度の年次決算業務を毎月おこなうことで業務が楽になると考えれば、経理担当者の決算時の作業も減り、業務効率化にもつながります。

    月次決算の具体的な流れ

    月次決算の目的をお伝えしてきましたが、ここからは月次決算をおこなう流れを具体的に解説していきたいと思います。

     

    現金および預金の残高確認

    棚卸高の集計

    仮払金や仮受金の振替

    経過勘定の処理

    減価償却費の計上

    退職給付費用などの計上

    月次資料の作成

    財務分析

    月次報告

    現金および預金の残高確認

    まず、「現金および預金の残高確認」をおこないます。現金・預金の帳簿残高と、実際の残高に違いがないか確認していきましょう。

     

    通帳での預金残高、金庫に保管している現金残高の確認をし、帳簿残高と差異がある場合、どこでズレがでてしまっているのか原因を調査します。毎日の業務で出納帳をつけている場合、毎日ズレがないか確認をしていると思いますが、締めである月末は特に注意を払うようにしましょう。

    棚卸高の集計

     次に、「棚卸高の集計」をおこないます。棚卸高の集計とは、月末の在庫金額を集計することを指します。可能ならば、帳簿と棚卸資産が一致しているかどうかも確認するようにしましょう。

     

    また、毎月、棚卸をして棚卸資産管理の手続きがされている場合は、下半期決算や年次決算のときの棚卸を省力化することもできます。

    仮払金や仮受金の振替

    次は、「仮払金や仮受金の振替」をおこないます。仮払金や仮受金は、正確な金額が分からない支出・収入のことです。名前の通り仮の情報なので、正確な金額がわかり次第処理をします。また、仮払金や仮受金のままではなく、内容は何かを整理しておくことも重要です。仮払金や仮受金のままにしておくと、その月の経営状況が見えにくくなってしまいます。

    経過勘定の処理

    次におこなうことは、「経過勘定の処理」です。経過勘定の処理とは、前払費用や未払費用が月をまたいでしまった時に処理をすることをいいます。

     

    早急に処理をするために、対象の科目や計上する基準をあらかじめ設定しておくようにします。経過勘定で費用を損益計算書に反映させることで、その月の経営状況を正確に把握できるようになります。

    減価償却費の計上

    次に月次決算でおこなうことは、「減価償却費の計上」です。減価償却費は、年間でどのくらいの費用がかかるか見積もりが可能です。年次費用をだしたうえで、月次費用として12分の1の金額を計上しましょう。

    退職給付費用などの計上

     減価償却費と同様に「退職給付費用などの計上」をおこないます。年間での見積もりがわかるので、年次費用をだしてから月次費用として12分の1の金額を計上します。

     

    退職給付費用のほかに、賞与、固定資産税、社会保険などの各種保険料なども月割計上処理をする必要があります。

    月次資料の作成

    次は「月次資料の作成」をおこないます。仕訳したものを総勘定元帳に転記し、月次試算表を作成します。月次試算表は年次試算表と同じく、「損益計算書」「貸借対照表」「キャッシュフロー計算書」があります。

     

    また、予算実績対比表や前年同月対比表などを作成する企業が多いです。試算表は3種類あり、「合計試算表」と呼ばれる勘定科目の貸借をそれぞれ合計したもの、「残高試算表」と呼ばれる勘定科目の残高を記載したもの、「合計残高試算表」と呼ばれる「合計試算表」と「残高試算表」のどちらも記載したものがあります。

    財務分析

     その次には「財務分析」をおこないます。月次資料として、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の3つの試算表を作成しています。

     

    その他にも、「前期比較表」や「予算実績対比表」などの比較資料を作り、財務分析をおこないます。売上や利益は前年同月と比べるとともに、どうしてこのような結果になったのか原因究明もおこないます。また、予算と実績を比べ、問題があれば経営計画の見直しや経営判断をくだします。

    月次報告

    最後には「月次報告」をおこなう必要があります。月次報告の際に役立つのは、予算実績対比表や前年同月対比表です。前月の試算表、前年同月の試算表と比較し、資金繰りの状況、売上・経費・予算達成度合いを確認するようにしましょう。

     

    また、月次報告でもっとも重要なことは速やかに経営陣に報告することです。月次決算の報告が遅れるということは経営判断が遅れてしまうということです。月次決算を早期化するための体制作りをしっかりしていくようにしましょう。

    月次決算で作成する資料とは

    月次決算の具体的なやり方のなかでもお伝えしましたが、月次決算で作成する資料は、「月次決算書(月次試算表)」「予算実績対比表」「前期比較表」です。どのような資料かひとつひとつ詳しく解説していきたいと思います。

    月次決算書

    月次決算書とは、細かく分けると「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」です。この3つの資料は財務三表と呼ばれています。

     

    貸借対照表はある時点における企業の資産負債状況を示す書類で、企業の資金調達方法や財政状況を読み解くことができます。

     

    損益計算書は収益・費用・利益が記載されている書類で、企業はどのような事業でどのくらい儲けているか、もしくは損失を出しているかを明らかにすることができます。キャッシュフロー計算書は、企業のお金の流れを表したものです。しかし、会社法において作成義務はありません。

    予算実績対比表

    月次決算では予算と実績の乖離を確認して分析することが重要となります。そこで、予算実算対比表を作成し、予算の進捗率や達成度を把握することは大切な作業です。

     

    予算の達成度が把握できれば、経営方針の転換か現状維持をするか意思決定の役に立ちます。また、予算実算対比表は、売上高・売上原価・人件費・販促管理費などの項目も比較できます。

     

    項目ごとに差異の理由を記入しておくことで、これからどこを改善していくかなどが把握しやすくなり、会議などで使いやすい資料となります。

    前期比較表

     月次決算で大切な作業は前期との比較です。前年同月と比較しやすいように「比較表」を作成している企業も多くあります。業種によっては季節的な要因が関係して、利益率が上がったり下がったりしているケースもあります。

     

    例えば、花粉症の時期にはマスクやティッシュなどを製造している企業の売上があがります。また、前年同月の売れ筋商品や気象データなども役に立つかもしれませんし、前年と比較して使いすぎている経費にも気がつきやすくなります。

    月次決算を効率よく行うためにできること

    月次決算はスピードが求められる作業です。そのため、月次決算はできるだけ効率的におこなう必要があります。ここからは、月次決算を効率よくおこなうためにできることを解説していきます。

    ・月次決算のスケジュールを社員と共有する

    ・経費精算の締切日を徹底する

    ・会計ソフトなどを用いた業務効率化

    月次決算のスケジュールを社員と共有する

    月次決算を効率よくおこなうためにできることの一つ目は、「月次決算のスケジュールを社員と共有する」ことです。

     

    月次決算に必要な書類をいつまでに作成するかが分かれば、社員もそこから逆算してデータの取りまとめや書類作成、棚卸業務など、具体的な業務に取りかかることができます。

    経費精算の締切日を徹底する

    月次決算を効率よくおこなうためにできることの二つ目は、「経営精算の締切日を徹底する」ことです。経費精算や請求書の締め日を徹底することは、月次試算表を停滞せずに行うために必要不可欠な要素となります。

     

    経費精算の締め日などはしっかり管理し、経費精算の伝票や請求書は必ず期限通りに提出してもらうように従業員に呼びかけましょう。締め日のルールを具体的し社内共有することも徹底させる有効な手段です。

     会計ソフトなどを用いた業務効率化

    月次決算を効率よくおこなうためにできることの三つ目は、「会計ソフトなどを用いた業務効率化」です。会計ソフトを導入することで業務の効率化が進みます。これは、月次決算の作成だけでなく日常業務についても同じです。

     

    会計ソフトは、自動仕訳や、預金残高の確認、記帳作業などもできます。また、スマホで領収書を撮影するだけで自動入力ができたり、ICカードの履歴と交通費が連動していたりと会計ソフトの種類によってできることも異なってきます。

     

    また、ペーパーレス化やテレワークなどの業務効率化にも会計ソフトは役立ちます。

    月次決算はチェックリストを使った方がいい?

    月次決算の際チェックリストは必ず使わなくてはいけないものではありません。しかし、チェックリストを使うことでチェックすべき項目が明確になり、ミスも減らしていくことができます。経理の業務は多岐にわたり、どの業務も正確な処理が求められるものばかりです。

     

    毎回、マニュアルを読み直したりすると時間のロスにもなってしまうので、「月次決算処理チェックリスト」を活用した方が良いです。

     

    チェックリストは、「誰がみても分かるようにする」、「チェックリストは常に更新する」、「過去に作成した資料などをリンクで貼り付けておく」ことが重要です。チェックリストを使う場合は、気をつけたいポイントを理解して効率的に正確な月次決算をおこなっていきましょう。

    決算をすると融資が受けやすくなるってホント? 

    月次決算をすると金融機関などの外部から評価が高まる傾向があります。それは、月次決算をおこなっているということが、経営や財務状況を管理していることの証明になるからです。

     

    金融機関などから評価が高まると、融資や取引を持ちかける際の心証がよくなりますので、融資を受けやすくなります。また、金融機関の融資審査の資料ともなるので、審査のスピードもあがります。

    まとめ  :月次決算は適切かつ迅速に終わらすことが理想的である

    月次決算は、経営陣に経営状況を毎月確認してもらい、経営判断をしてもらうことが目的です。そのため、月次決算は適切でかつ迅速に作業することが求められます。

     

    月次決算を効率的におこなうためにどうすべきかをまとめてきましたので、ぜひ理解して取り入れていただければと思います。   

     

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