経営計画とは、会社が進むべき道筋を示したうえで、道筋を達成するための具体的な方法を記載した計画書です。
経営計画を策定すれば自社の財務状況に沿った経営改善策を実施できたり、社員と意識を合わせて同じ方向性を向いて業務へ取り組んだりできます。
そこで今回は、経営計画の策定方法についてご紹介します。
本記事を読めば、経営計画書の策定方法について詳しく理解できるため、自社の経営状況に適した経営計画書を策定できるようになるでしょう。
経営計画とはどういったもの?
経営計画とは、自社が達成するべき目標を明確にしたうえで、その目標を実現させるための経営戦略を具体的に策定した計画書です。
経営計画を策定すれば、自社の経営理念を社員が把握しやすくなるのですべての社員が同じ方向性で業務に取り組めるようになったり、社員と意識を合わせて現状の経営課題の解決に動いたりできます。
また、経営計画では、主に経営理念や経営基本方針、販売計画、利益計画など事細かに内容を策定する必要があります。
例えば、自社が策定する経営計画の例として、以下の項目を参考にするとよいでしょう。
経営理念 |
常にお客様の笑顔と利益のために全力を尽くすこと |
経営基本方針 |
社員全員が成長できる機会を提供し続ける |
販売計画 |
15~30歳までの一人暮らしの男性向け |
利益計画 |
自社の利益を130%上昇させる |
経営計画は義務ではないため、必ず策定しなければいけないわけではありません。しかし、経営計画を策定したほうが自社の業績向上につながりやすくなるのは事実です。自社を効率的に成長させたいのであれば、経営計画の策定を検討しましょう。
経営計画はなぜ必要?
経営計画を策定する際には、経営計画が必要な理由を把握しておかなければいけません。経営計画が必要な理由として、以下の3つを解説します。
- 経営理念を明確化するため
- 経営状態を把握するため
- 社員と意識を合わせるため
ここで解説した内容を理解したうえで、経営計画の策定を実施しましょう。
経営理念を明確化するため
経営計画は、経営理念を明確化するために必要です。経営理念を明確化すれば、すべての社員が会社が目指そうとしている目標を把握でき、その目標を達成するために事業へ取り組めるようになります。
もし、経営計画を策定せずに事業を展開してしまった場合は、何のために事業をしているのかが把握できなくなり、目標達成が遠のいてしまう恐れがあります。社員が事業へ取り組みやすくするためにも、経営理念を明確化する必要があるのです。
また、経営計画を策定する際は、自社が定めた目標を達成するためにどのように事業へ取り組めばよいのかを事細かく決めておかなければいけません。例えば、1日にどのように事業へ取り組めばよいのかを策定すれば、社員も業務へ取り組みやすくなります。
経営理念を明確化するためにも、経営計画を策定する必要があります。
経営状態を把握するため
経営計画を策定する理由として、経営状態を把握することが挙げられます。自社の経営状態を把握できるようになれば、さらに業績を向上させるための改善施策を検討することが可能です。
例えば、経営計画を策定すれば、自社サービスをリピートする顧客が少ないことを把握できるため、クーポン券の配布や友達紹介特典の付与など業績をさらに高めるための施策を実行できます。
もし、経営計画を策定しなければ、自社の経営状態を把握できないため、黒字倒産をしてしまう恐れがあります。黒字倒産とは、帳簿上で黒字が発生しつつ資金の回収が遅れて運転資金のやりくりができなかった結果、倒産してしまうことです。
つまり、経営計画を策定しないことで黒字倒産に陥ってしまう可能性があります。自社の経営状況をより良い状態にするためにも、経営計画を策定したほうが良いでしょう。
社員と意識を合わせるため
経営計画は、社員と意識を合わせるために必要です。経営計画を策定しなかった場合は、それぞれの社員が異なる方向性に向かって業務に取り組んでいる可能性があります。
つまり、経営計画を策定しないことで、業務効率の低下に陥る可能性が考えられるのです。そのため、経営計画を策定して自社が目指すべき目標を社員に共有することで、社員と意識を合わせて業務へ取り組めるようにしなければいけません。
経営計画は3つに区分される
経営計画には、さまざまな種類があります。経営計画を適切に策定するためにも、それぞれの種類を把握しなければいけません。経営計画の種類として、以下の3つを解説します。
- 長期経営計画
- 中期経営計画
- 短期経営計画
ここで解説した種類を理解したうえで、経営計画の策定を実施しましょう。
長期経営計画
長期経営計画とは、5~10年先の未来を想定して策定する計画書のことです。
長期経営計画では、自社の基本的な方針の策定や今後強化する予定の領域、将来的な見通しを中心に具体化させていく必要があります。
例えば、基本方針を策定する際は、5~10年の自社の経営状況を想像して、経営理念が達成できるように目標設定するとよいでしょう。
また、複数事業を展開している会社であれば、どの事業を強化させていくべきなのかを検討する必要があります。
5~10年も経過していたら、新事業が展開されている可能性も考えられます。現在の社会情勢における需要を検討したうえで、強化領域を決めるようにしましょう。
将来の見通しでは、企業として5~10年後にどのような目標を達成していたいのかを検討する必要があります。長期経営計画は、将来も継続的に会社経営を実現させやすくするためにも策定しておくとよいでしょう。
中期経営計画
中期経営計画とは、3~5年先の未来を想定して策定する計画書のことです。
中期経営計画では、売上やROE(株主資本がどれほど利益を獲得できているのかを表す指標)、利益目標などの定量的な数値を具体的に策定する必要があります。
中期経営計画を策定すれば、1年未満の短期経営計画では実施できない大きな成果を出すことが可能です。
長期経営計画のように、10年先の自社の未来まで策定することは困難です。とはいえ、短期経営計画のように1年だけであれば、実現できる目標も限られてくるでしょう。そのため、中期経営計画は策定しやすい計画書として認知されています。
自社がより良い経営状況になるためにも、中期経営計画を積極的に策定しましょう。
短期経営計画
短期経営計画とは、1年間の経営計画書のことです。短期経営計画は、中期経営計画の数値目標や行動目標をさらに具体化した書類として、認識しておくとよいでしょう。そのため、短期経営計画は中期経営計画を策定した後に策定してください。
中期経営計画の重要性とは
経営計画には、長期経営計画と中期経営計画と短期経営計画の3種類があります。その中で、中期経営計画が最も策定しやすい計画書といわれています。
中期経営計画を策定すれば、1年で成果を出すことが困難な事業も細かく定めることが可能です。また、中期経営計画は長期経営計画のように5~10年ほど先の期間を予想した計画表ではないため、比較的作成しやすい書類といえるでしょう。
そんな中期経営計画を策定することで、金融機関から融資を獲得しやすくなります。中期経営計画を策定すれば、自社の経営状況を事細かに金融機関へ伝達できるため、適切な融資の判断がしやすくなるからです。
もし、中期経営計画を策定しなかった場合は、会社の資金繰りが難しかったり、新規事業を開始する際の運転資金が不足していたりするときに機会損失に陥ってしまいます。
自社の業績を効率的に高めていくためにも、中期経営計画を策定する必要があります。
中期経営計画の具体例3選
適切な中期経営計画を策定するために、ほかの企業の経営計画の内容を参考にするとよいでしょう。中期経営計画の具体例として、以下の3つを解説します。
- トヨタ紡織
- 大成建設
- 東京海上ホールディングス
ここで解説した具体例を参考にしたうえで、自社の中期経営計画を策定してください。
①トヨタ紡織
トヨタ紡績とは、愛知県刈谷市豊田町に本社を構える自動車部品メーカーです。トヨタ紡績の中期経営計画は、以下のように設定されています。
ビジョン |
明日の社会を見据え、世界中のお客様へ感動を織りなす 移動空間の未来を創造する |
2030年ありたい姿 |
企業価値の向上によりサステナブルかつ世界トップレベルの企業になる |
マテリアリティ(経営課題) |
全社員がSDGsを認知して、本業を通じ社会に貢献することへ取り組む |
中期経営計画の考え方 |
社員の活力につながり、全員でチャレンジできる目標を掲げ、さらなる飛躍に向けて豊田紡績グループのマテリアリティをベースに中期経営計画を策定 |
トヨタ紡績の具体例を参考にしたうえで、自社の中期経営計画を策定しましょう。
②大成建設
大成建設は、日本の大手総合建設会社です。大成建設は、中期経営計画の数値目標として、以下のように設定しています。
ROE |
10%程度 |
配当性向 |
25%程度 |
純有利子負債 |
実質無借金の維持 |
グループ売上高 |
2兆円 |
グループ営業利益 |
1,400億円 |
グループ純利益 |
1,000億円 |
参考:TAISEI VISION 2030/中期経営計画(2021-2023)(大成建設)
中期経営計画の数値目標の具体例を探している方は、大成建設の数値目標を参考にしてください。
③東京海上ホールディングス
東京海上ホールディングスとは、生命保険会社や損害保険会社などの維持管理を統括する損害保険グループです。東京海上ホールディングスの中期経営計画の方向性は、以下の通りです。
長期ビジョン |
世界のお客様に”あんしん”をお届けし、成長し続けるグローバル保険グループ ~100年後もGood Company~をめざして |
長期ビジョンを実現するための方法 |
|
成長戦略 |
|
経営を支える基盤 |
|
参考:中期経営計画(2021年5月発表)(東京海上ホールディングス)
中期経営計画の方向性の定め方に悩んでいる方は、東京海上ホールディングスの中期経営計画を参考にしてください。
成功事例を参考にした中期経営計画策定のポイントとは
中期経営計画は、さまざまなポイントに気をつけたうえで策定しなければいけません。成功事例を参考にした中期経営計画策定のポイントとして、以下の3つを解説します。
- 経営理念や経営方針が明確化されている
- 自社分析を細かくおこなうことができている
- 自社に必要なことを会社全体が理解できている
ここで解説したポイントを理解したうえで、自社の中期経営計画の策定をしましょう。
経営理念や経営方針が明確化されている
中期経営計画を策定する際は、経営理念や経営方針が明確化されるように心がけるとよいでしょう。経営理念や経営方針では、会社が進むべき方向性を定めています。
そのため、経営理念や経営方針が明確化されていなかった場合は、社員がどのような方向性で業務へ取り組めばよいのかが把握できなくなります。
経営理念や経営方針を明確化すれば、会社が進むべき方向性を把握できるため、全社員が同じ目標を達成するために業務へ取り組めるようになって業務効率化につながるでしょう。
業務効率をより高めるためにも経営理念や経営方針を明確化し、中期経営計画の策定をしてください。
自社分析を細かくおこなうことができている
中期経営計画を策定する際は、自社分析を細かく実施するようにしてください。自社分析を実施する際におすすめの分析方法は、SWOT分析です。
SWOT分析とは、経営戦略を立案することを目的として内部環境と外部環境のプラス面とマイナス面を洗い出す現状分析の方法です。SWOT分析のそれぞれの意味や例は、以下のようになっています。
種類 |
意味 |
例 |
強み |
自社商品やサービスに良い影響を与える内部環境の要素 |
|
弱み |
自社商品やサービスに悪い影響を与える内部環境の要素 |
|
機会 |
自社商品やサービスに良い影響を与える外部環境の要素 |
|
脅威 |
自社商品やサービスに悪い影響を与える外部環境の要素 |
|
上記のSWOT分析を活用したうえで、自社分析を細かく実施するようにしてください。
自社に必要なことを会社全体が理解できている
中期経営計画を策定する際は、自社に必要なことを会社全体が理解できているようにしましょう。自社に必要なことを会社全体が理解していなければ、経営を改善することが困難であるからです。
例えば、自社の売上が悪化しているのであれば、オウンドメディアで自社商品をPRしたり、店舗営業しているなら24時間営業したりして改善策を実施する必要があります。
もし、自社に必要な改善策を会社全体が理解できていなければ、経営改善することはできません。より良い企業づくりをするためにも、自社に必要なことを会社全体が理解するようにしましょう。
経営計画をつくる際の3つのポイントとは
経営計画を策定する際のポイントとして、以下の3つを解説します。
- 内容が具体的になっているかどうか
- 内容の量よりも質の高さを追及する
- 他社の経営計画やテンプレートを上手に活用する
ここで解説したポイントを理解したうえで、経営計画を策定しましょう。
①内容が具体的になっているかどうか
経営計画を策定する際は、内容が具体的になっているのかが重要です。経営計画を策定したとしても内容が抽象的だった場合は、どのように事業へ取り組めばよいのかが分からず混乱してしまう恐れがあります。
例えば「自社の売上を昨年より上げる」といった経営目標を設定した場合、どれくらい高めればよいのかが分からないため、先が見えません。
しかし「自社の売上を昨年の130%向上させる」といった数値目標を設定していれば、具体的にどれほど売上を向上させればよいのかが理解できるため、業務へ取り組みやすくなります。経営計画を策定する際は、内容を具体的にすることを心がけてください。
②内容の量よりも質の高さを追求する
経営計画は、内容の量よりも質の高さを追求するようにしてください。経営計画の内容を増加させたとしても、読むのが大変になるため、内容の量を不必要に増やすべきではありません。
そのため、経営計画を策定する際は、A4用紙1枚のみに必要最低限の項目だけ入れ込むようにしてください。内容の量よりも質の高さを追求したうえで、経営計画を策定しましょう。
③他社の経営計画やテンプレートを上手に活用する
経営計画を策定する際は、他社の経営計画やテンプレートを上手に活用してください。自力で経営計画書を策定した場合は、膨大な時間を費やさなければいけないため、途中で挫折してしまう可能性が高いからです。
そのため、他社の経営計画やテンプレートを上手に活用したうえで、経営計画を策定するとよいでしょう。
他社の経営計画を参考にして、質の高い経営計画を立てよう
今回は、経営計画の策定方法についてご紹介しました。経営計画とは、自社が達成するべき目標を明確にしたうえで、その目標を実現させるための経営戦略を具体的に策定した計画書です。
経営計画を策定する際は、経営理念や経営方針を明確化したり、自社に必要な改善策を会社全体で理解したりする必要があります。
また、経営計画を策定する際は、内容を具体的にしたり、他社の経営計画やテンプレートを活用したりするとよいでしょう。
経営計画を策定する予定の方は、本記事で紹介した他社の経営計画を参考にして質の高い経営計画を立てるように心がけてください。
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