事業承継の強い味方
経営計画の作成をサポートする
『マネるだけ、埋めるだけで作れる
経営計画書 作成シート(ダイジェスト版)』
中小企業において後継者育成・教育は大きな課題となっています。
課題が明確なのにも関わらず“どのように育成したらよいか”具体的に解説している書籍やサイトが極端に少ない現状があります。それは関与してきた事例数が少ないためです。
そこで本記事では、毎年120社以上会社の引継ぎに携わっている弊社の知見から、経営資源に限りがある中小企業において、後継者育成はどのようなことを行えばよいかを三つの段階に分けて、それぞれのフェーズで何をしたらよいか方法論に特化して解説していきます。
1.初期=導入期で行うべき内容
このフェーズは2~3年をかけて行うことが多いです。
大事な視点としては、経営者として必要な
・網羅的な専門知識の醸成
・社内外のコミュニケーション機会の創出
ができることになります。
そしてこれらの目的・意図を事前に後継者候補に伝えた上で育成していくことも重要です。
効果的な3つの手段をご紹介します。
1.1 自社内でジョブローテーション
費用をかけずに最短で明日からできるのが会社内でのジョブローテーション=配置換えになります。ほぼ全てのお客様といってもいいくらい、何かしらの形で取り入れている方法です。
1.1.1 現職とは真逆の部署に移る
今の役割が営業職や技術職であれば管理部門(総務・経理・人事など)へ、管理部門であれば営業職や技術職へ移ることをオススメします。
経営者は会社の舵取りを行う上で、俯瞰して判断していくことが重要なので、すべての部門を広く浅く知っておけるようにしましょう。
経営を行うためには会社の内情を俯瞰して、次の一手を決めていく必要があります。
後継者候補の知識や社内的な交流(人脈)が社内・社外どちらかに偏ってしまうと、全体最適な解を出すことができなくなり、求心率の低下化から社内崩壊…ということもよくある話です。実際にあった事例として、後継者に偏りがあり、そこから生まれた溝により社内の幹部が何人も退職してしまったということもありました。
1.1.2 中小企業だと兼業が現実的
理想は専任ですが、中小企業で考えるとそこまで人材に余裕がある会社は少ないので兼任で考えましょう。
現職が営業職の後継者候補を例に考えてみると、今までは営業にフルコミットだったものを営業:間接部門=7:3くらいの割合で仕事ができるように調整して兼務できるようにしていくと良いです。
曜日で仕事を固定することや繁閑に合わせてシフトを組むこともざっくりと決めることは大事です。しかし毎日時間単位で固定してしまうことは、学べる知識に偏りが生じる可能性や従来の仕事も行いつつだと突発的なことも発生するため、柔軟性を持たせられる組み方に現経営者の方が調整してあげることも検討すべき要素になります。
1.1.3 各部署のゼネラリストへ
大事なことはプロフェッショナルになるためのジョブローテーションではなく、ゼネラリストになるための異動と捉えて頂くことです。
そのためジョブローテーション先の部署では、作業を覚えることは最低限行いつつ、全体の流れを知ることに重点を置いて学んで頂きたいです。
後継者候補の方を選ぶ際に、強みを活かしながら引き継ぎということをイメージしているかと思います。だからこそその強みを更に突き抜けるためにと考えたときに、ジョブローテーション先の作業を覚えることは優先順位としては高くないはずです。投下時間を最小限で最大のパフォーマンスを上げるためにも木の枝ではなく、森を見ることができるようになるジョブローテーションにすることが有効です。
1.2 協力会社へ出向・他社での経験
出向や他社での就業経験は行える会社は限定的ですが、実現できれば後継者候補に対して急成長が期待できる育成方法になります。
- 1.2.1 関係会社もしくは経営者仲間、ツテを辿って探す
探し方として、子会社や関連会社があればそこで働くことは一つの選択肢となります。
あるいは現経営者のツテを辿り、探すこともよくあるケースです。
いくら教育といっても自社と方針が180度異なる会社に行う所に行ってしまうと、悪影響を及ぼし組織がガタついてしまう可能性があるため危険です。
“自社と似た価値観を持った会社”かどうかを一つの基準とするとよいでしょう
どちらの場合にせよ現経営者次第となるため、早くから検討・相談・根回しすることが何よりも大事になります。
1.2.2 親族内の後継者ほど効果大
特に親族内承継を検討している会社はすごく相性が良い方法になります。
理由としては、現経営者の親族が同じ会社で働いているといくら立場が低かったとしても分け隔てなく指導できる人材はほとんどいないからです。
いくら現経営者と利害関係がないと論理的に分かっていても、感情的に一歩踏み込むことができない方が多いと聞きます。
他社で働く上では「○○社長の息子/娘」などという看板がなく、一から自身の地位を作っていく必要があるので、継ぐ上では唯一無二の経験となるはずです。
1.2.3 3年を1クールとして考える
先方の事情も踏まえて期間は3年を一つの目安で考えましょう。
1年くらいの短期だとせっかく受け入れてくれた会社も「来年にはいないのだから…」と当たり障りのないことしか教えてもらえず、生産性な観点からも社員としての受け入れというより派遣社員の受け入れのような対応を取られてしまいます。
出向先でも一人前の仕事ができるようになるまでの期間を先方とも事前に確認して、期間を設定しましょう。
1.2.4 何を経験するかを明確に意識づけすることが大切
出向という経験を通して、得るべきものの理想は出向先の知識やスキル、ビジネスモデルや人脈などの自社にはない“無形の情報”です。単なる社会勉強の一環として目的意識が薄いまま就業したとしても時間だけが経過して、何も身にならないことも十分にあり得ます。
他の出向先の従業員と同等もしくはそれ以上の意識を持って取り組むことが必要となってきます。
1.3 社外研修への参加
社外研修は、社内で学べない、もしくは自社の弱みを補える内容を学ぶのに優れた選択肢の一つです。自社完結しようとかえってコストや時間もかかってしまうため、その知見に特化している専門家をバランスよく活用していくことも重要です。
1.3.1 後継者に不足しているスキルは何か見極めて、将来必要になるものを学ぶ
一般的に社外研修で多いコンテンツは
・論理的思考能力
・リーダーシップ
・コミュニケーション能力
を強化する内容が多いです。
もちろん上記の内容も大事ですが、やはり会社を経営するための研修ということを逆算して考えると、自己啓発に重きを置く内容より、経営結果に直接反映するスキルの方が優先度としては高くなってきます。
故に会社の中長期の戦略を考えられるようになる
・マーケティング能力
や根拠(=数字、法律)に基づく経営を行うために
・会計知識、法務知識
などを学べる内容が良いでしょう。
1.3.2 目的に応じた参加形態を選択
何を主眼に置く研修なのかによって変わってきます。
冒頭にも触れた
『網羅的な専門知識の醸成』を主目的とするのであれば、時間の問題もありますのでWEBがいいでしょう。
『社内外のコミュニケーション機会の創出』であれば、参加者の方と接触する回数が多ければ多いほどよいのでリアルの方が良いです。
実際にこのような社外研修から生まれた人間関係の縁が、後々の事業に貢献…というお話を何度も耳にします。
1.3.3 費用の相場・期間
費用や期間は何を学ぶかによって大きく変わってきます。
後継者候補に絞ると平均的には以下の表のようになります。
内容 |
期間 |
金額 |
知識研修(WEB) |
1年 |
10~20万(初期費用)+3~5万/月 |
管理職研修 |
3か月 |
40~60万円 |
チームビルディング研修 |
1日~半年 |
20~50万円 |
1.3.4 学んだ知識のアウトプットの場を社内で設ける
良質なインプットにするためにはアウトプットの場を設けることが重要です。
有名なエビングハウスの忘却曲線の通り、振り返りが無ければ定着せず時間の経過と共に「社外研修に行った」ことだけが記憶に残り、肝心な「何を学んだ」かが抜けてしまいます。
ぜひ自社の中で何か行動に移せる場を設けてみましょう。
例えば“マーケティング能力”を学んだのであれば、顧客獲得に向けたプロモーション活動や自社の認知を増やすためのSNS運用など小さな施策を試せるといいでしょう。
大事なことは、「失敗しても経営に大勢を与えない内容を任せてみること」です。
結果はついてくるに越したことはないですが、それより小さくPDCAを回すことの方がより重要になってきます。
2.中期=成長期で行うべき内容
初期で経営者として必要な基礎的な知識や考え方、人間関係の構築などを学べたはずです。
それらを少し応用した場の提供が中期=成長期で行っていく段階になります。
現経営者との関わりがここから徐々に増加していきます。
2.1 事業計画の作成
後継者候補が携わってきた部署の中で、外部への売上が発生する部署の事業計画の立案をしてみましょう。
現在の商品・サービス・ビジネスモデルは環境の変化と共に変わっていくことはあり得ますが、収入がないと会社存続の危機になりますので、売上の有無は非常に大事になってきます。
2.1.1 事業の販売計画の作成
理想としては、事業の収支計画を立てることですが、ハードルを考慮して、まずは年間の販売計画を作成してみましょう。
※ここでは販売計画=売上計画とします。
“これだけ売りたい”と思っても、実態に即さないと意味がありませんので、以下の点は少なくとも抑えましょう。
・商品やサービスなど供給が可能な数字か
・前期の季節要因を加味した計画か
・成長率に無理はないか
販売計画を立てるときに、売上の増減に応じてかかる費用(=変動費)も加味しながら立案できると更によい計画となります。
2.1.2 現経営者や第三者などからの必ずFBを受ける
作成したら現経営者はもちろんのこと、部門長や会社の数字を知っている第三者にも公開してFBを受けることが重要です。活用するための計画とするためです。
そのため初稿を作って終わりではなく、FBを受けて第二稿、第三稿と更新をしていき、より実態に即した精度の高い計画を作っていくことになります。
- 2.1.3 作って終わりではなく、実際に運用してみる
実際に立案した計画で予実管理を行ってみましょう。
最初は計画の精度がそれほどでもないかもしれませんが、その事実がなぜ生じたのがゆくゆくはとてもいい教材となります。
・なぜ誤差が生じたのか
・そもそもの実現可能性はあったのか
・次はどのように計画を立てられたらよいか
など気づきを与えてくれるためです。
事業計画は経営者になれば毎年立てていくものですので、得た気付きを基にブラッシュアップし続けていくことが、良い経営者になるための近道です。
2.2 新規事業へ抜擢
1.3.4の発展形として、新規事業への抜擢も一つの教育です。
導入期と成長期で異なるのは「責任の有無」です。
2.2.1 自社の強みを活かした新規事業に抜擢する
大前提として以下のアンゾフの成長マトリクスに合わせて、②新商品開発や③新市場開拓に重きを置いた新規事業を検討しましょう。
事前に後継者へ事業計画書を作成させ、投下する経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報等)に無理や無駄がないかを現経営者が判断してから開始という流れが良いでしょう。
大事な時間や資金を用いた事業ですので、いくら新規事業とはいえ通常の事業と同じように準備することが大事です。
2.2.2 結果だけでなく過程や将来性も考慮したアドバイス・評価
もちろん事業の収支も大事ですが、1~2年単位では結果が出ない事業もあるはずです。
そのため結果を出すための過程や行動も評価することも重要になってきます。評価項目としては、例えばですが
・社員をどのように巻き込んでいるか
・収支計画は大きくマイナスにはなっていないか
・あとどのくらいの期間で結果が出るのか
など定量的なものから定性的なものまで会社を経営する上で必要な目線を適宜アドバイスして、評価・判断することが将来経営者になる上で唯一無二の経験となります。
3.後期=成熟期で行うべき内容
成長期までで経営者にとって必要な基本はある程度整います。
ここからの成熟期は応用力に主眼を置いた教育に移行となります。
3.1 幹部として経営に携わらせる
「立場が人を変える」という言葉があるように、役職を与えて経営に携わらすといい効果があります。
責任を明確化することで後継者本人はもちろんのこと、社内も対外的にも会社の方向性をアピールすることができます。
3.1.1 段階を追って地位を上げる
段階を踏んで地位を上げていくことが重要になります。
しばしば聞く事例としては、社内承継の会社で息子・娘を入社と同時に役職を与えて、1年ごとに昇進していくケースです。
「早く後継者になってもらいたい」という現経営者の切なる想いは伝わりますが、周りの他の社員や得意先といった外部の関係会社はどう捉えると思いますでしょうか。
きっと“不安”、“不公平”などネガティブな印象が先行してしまいます。
そうならないように全体のスケジュールから逆算したステップアップにしていきましょう。
3.1.2 社外へのイベントに積極的に参加させる
経営者・幹部=会社の顔ですので、積極的に外に出していきましょう。
中長期的な会社の方針を披露できる場として活用できるためです。
外部とのコネクションを構築することは、中長期的な経営を行う上で大事になってきますので、役職に応じた露出というものも検討していくことが大事となります。
3.1.3 社内→社外という順で公表していく
3.1.1で段階を踏んでとも記載した通り、引き継ぎ計画を立てる際に大まかなアウトラインは決めるべきです。成熟期に重役を担うイメージがいいでしょう。
また社外に公表するタイミングは職に就くのと同じでよいですが、社内に公表するのは少し早めにお伝えするのが良いです。内部の理解、体制の構築に想像以上に時間がかかるからです。理想は半年から1年前に社内で公表し、ハード面ソフト面の準備を整えて、引き継ぎという流れになります。
3.2 経営計画の作成
成長期の2.1では事業計画の作成でとどまりましたが、成熟期では会社全体の経営計画の作成に取り掛かれると良いでしょう。
3.2.1 会社の歴史、創業の想いを知る
現経営者から後継者へ上手く引継ぐためには、会社が歩んできた歴史を伝えることがとても重要になります。歴史から会社の隆盛を学ぶことができるためです。
会社の沿革や創業の精神を経営計画に載せられると良いでしょう。
㈱古田土経営では「創業の精神」「創業者が後へ続く者たちへ伝えたいこと」など複数の項目が次世代へ向けてのメッセージとして経営計画書に記載しております。
3.2.2 経営方針と利益計画の2つをセットで
会社の方向性を示す経営方針と数字の根拠となる利益計画は必ず両方を作成しましょう。
作成方法に関しては、詳細が書いてある過去の記事をご参照ください。
経営方針とは?
経営計画書の書き方
3.2.3 現経営者と一緒に作成
経営計画の作成は現経営者と後継者が一緒になって作成しましょう。
現経営者だけで作成してしまうと、今までの色を踏襲してしまう形となり何も変わらず、後継者だけだと経験が乏しいため精度の部分で課題が生まれます。
会社を引き継ぐための経営計画という位置づけで、個別方針など戦術の部分は分担しながら、肝となる戦略・基本方針の部分は一緒に検討しながら作成できるとよいです。
作成の過程も一種の引き継ぎの場として活用できることが理想です。
3.2.4 作成した計画を社内外に公表する
作成したら必ず社内外に公表して、計画を基に実行へ移しましょう。
公表することで“実行責任”も増しますし、社内外から様々な角度のFBを受けやすくなります。
4.まとめ
後継者教育は段階を踏んで進めていくことが重要であることが認識頂けたかと思います。
教育方法も引き継ぐまでに計画をあらかじめ組んでおくと、やらなければならないことが明確化され、本業に集中しやすい環境となります。
今回記載した内容はあくまでも方法論の紹介になります。
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