スローガンは経営計画をはじめとする自社の特徴を社内外へ伝えるためのもの
スローガンとは、企業や団体の主張・目的・思考を簡潔に表したものを指します。学生生活で例えると体育祭や文化祭などでスローガンを掲げていたと思います。
スローガンは社内外から企業の価値を高める効果があり、特に印象に残るスローガンを掲げている企業は、経営者の想いや方向性が伝わりやすく、企業認知度や従業員のやる気アップといったことも期待できます。スローガンを掲げる際は、自社にふさわしいものにすることで組織力のさらなる発展の可能性が生まれることもあります。
企業のスローガンには種類があり、企業理念や経営計画などを表す「コーポレートスローガン」や、オフィスなど社内に張り出して従業員のやる気アップを目指す「職場スローガン」、1年間の目標を示す「年間スローガン」などがあります。
その中でも、「コーポレートスローガン」はコーポレートメッセージやブランドコンセプトと呼ばれることもあり、企業の顔になるものです。
スローガンの必要性とは
スローガンをつくる意味はなんでしょうか。企業のスローガンは顧客や取引先、従業員が最初に目にするものとも言えます。自社のイメージを社内外に伝える重要なもので、スローガン次第で企業の事業内容や活動目的を伝えることができるのです。
つまりは、スローガン次第で企業の印象も大きく変わるということです。
そして、従業員にとっては最も身近な言葉となり、業務を進める上での道しるべとなります。全社一丸体制にするためにも、自社の理念や方向性をスローガンに盛り込めるようにしていきましょう。
スローガンとキャッチコピーの違いとは
スローガンについて説明してきましたが、スローガンと似たように使われる言葉に「キャッチコピー」があります。スローガンとキャッチコピーの違いはなんでしょうか。
キャッチコピーとは、顧客に注目してもらうために使う、社外向けの宣伝文のことを指します。スローガンよりも広告的に使用する意味合いが強くあります。キャッチコピーが印象に残る企業もありますが、独自性や訴求力を追求したスローガンは、企業名とともに世間に発信される言葉となります。
キャッチコピーも企業にとって重要なものですが、世間への認知度はスローガンの方がより高いと言えます。
スローガンを決める際に気をつけたいポイント5選
スローガンは短い文章で相手の心をつかめるかが大切になってきます。企業理念や経営理念とズレのないスローガンを掲げるために、経営陣をはじめ社内で、「自社をどの方向にすすめていきたいのか」しっかり話し合ったうえで、考えていきましょう。
ここでは、参考までにスローガン作成の5つのポイントをお伝えします。
①誰をターゲットにするのかを明確にする
第一に大切なポイントは、「誰をターゲットにするのかを明確にする」という点です。
スローガンを伝えたい人により伝わるようにするためには、誰に伝えたいのかを明確にすることが重要です。顧客なのか、取引先なのか、従業員なのか。
すべての人に届けたいと思う気持ちも分かりますが、すべての人をターゲットにしたいと思って作ってしまうと平凡なスローガンになってしまう可能性もあります。
従業員をターゲットにするならば、自社の目指す方向性、チームワークを高めるような呼びかけなどを盛り込んだものにすると良いでしょう。一方で顧客をターゲットとした場合は、スローガンを見たときに興味が持てるものや、頼りたいと思えるような内容にすることがポイントになります。
②MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を連想できる内容にする
第二のポイントは、「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を連想できる内容にする」という点です。スローガンにはMVVのどれかの要素を含めるようにし、企業のスタンスに一貫性を持たせるようにしていきましょう。既に掲げている企業理念のなかにもMVVは含まれていると思います。
MVVは、企業の使命・理想像・行動指針を示したものなので、もしMVVと関係のないスローガンをたててしまうと、企業理念との整合性がなくなり、受け取る相手に違和感をあたえてしまいかねません。
スローガンは企業理念とあわせて、一目見ただけでMVVが連想されるものにしていきましょう。
③社内の一部のアイデアだけでつくらない
第三のポイントとしては、「社内の一部のアイデアだけでつくらない」ということです。企業理念を考えるのは経営者をはじめ役員メンバーかもしれません。また、スローガンを有名なコピーライターに依頼する企業もあるようです。
しかし、最初から経営陣だけで考えたりするのではなく、従業員も巻き込んでアイデアを出し合うことが大切です。従業員の意見を聞くことで、経営陣は知らない自社の魅力や特徴が見えてくる場合もあります。社内全体で意見やアイデアをまとめれば、その後、外部のコピーライターに依頼したとしても自社にあったオリジナリティの高いスローガンを提案してもらいやすくなります。
④独自性のあるかつ分かりやすい表現
第四のポイントとしては、「独自性のあるかつ分かりやすい表現」にするという点です。スローガンでは企業の色を出していく必要があります。抽象的な言葉を使うと受け取る相手に曖昧な印象を持たせてしまい、何をしている企業なのかが伝わりにくくなってしまいます。
例えば、「明日をきらめくパートナー」というような表現では、企業の特色も目標も何をしているのかも伝わりません。スローガンには独自性のある言葉を使うようにしましょう。また、独自路線にすすみ過ぎてもいけません。
一般消費者が分からない専門用語をスローガンに入れてしまっては、スローガン自体が理解できない文章になってしまいます。分かりやすさはもちろんですが、企業の信用を落とすようなネガティブな言葉は使わないようにしましょう。
⑤社会貢献の内容を盛り込む
最後のポイントとしては、「社会貢献の内容を盛り込む」という点です。企業のイメージアップとして重要なことは、社会貢献につながる内容であるということです。
SDGsという言葉が多くの企業で使われるようになり、持続可能な取り組みや多様性を尊重する活動などをおこなう企業が増え、「社会貢献」は世間からも注目度の高い項目となっています。社会貢献をする企業で働くことは従業員の誇りにも繋がっていきます。
社会事情を考慮したスローガンを掲げれば、多くの人の心に響くスローガンになるでしょう。
有名企業が掲げるスローガンの事例14選
今からスローガンを考えようと思っている方もいると思います。これから有名企業が掲げているスローガンを紹介します。誰もが知っている大企業のスローガンですので、実際に聞いたこともあるのではないでしょうか。
自社のスローガンのイメージを膨らませるために、ぜひ参考にしてみてください。
①「あなたと、コンビに、ファミリーマート」 ファミリーマート
まず紹介するのは、ファミリーマートの「あなたと、コンビに、ファミリーマート」です。ファミリーマートはコンビニですがファミリーと名乗っており、「家族のように地域とつながりたい」「お客さまにとって家族のような存在でありたい」という想いが込められています。
その理念をもとに1989年に「便利(コンビニエンス)な存在であること」「お客さまと一緒に(コンビに)」という想いから、スローガンが掲げられました。
②「水と生きる」 サントリー
次に紹介するのは、サントリーの「水と生きる」です。サントリーと言えば誰もが知っている飲料メーカーです。飲み物を作る会社だからこそ、きれいな水、美しい自然環境を大切にしていきたいというような想いが込められています。
また、サントリーグループの理念の中には、社員へのメッセージとして「水のように自在に力強く」という、柔軟に新しいことに挑戦していくという言葉が入っています。
③「お口の恋人」 ロッテ
三社目はロッテの「お口の恋人」です。ロッテの企業理念は「私たちはみなさまから愛され、信頼される、よりよい製品やサービスを提供し、世界中の人々の豊かなくらしに貢献します。」と掲げています。スローガンの「恋人」も、企業理念の「愛され」も、なかなか他社では見かけない言葉のチョイスです。
ロッテは「愛される」ことをモットーに経営しているので、スローガンにもその想いが込められています。
④ 「お、ねだん以上。」 ニトリ
四社目に紹介するのはニトリの「お、ねだん以上。」です。このスローガンには、良いものをリーズブナブルにお届けしたいという企業の想いがつまっています。また、「お、」という驚きの感嘆詞が入っており、消費者視点での驚きを忘れないというような想いも感じ取れます。
「お値段」という言葉にもかかっており、ユニークな仕上がりで印象にも残ります。
⑤「ココロも満タンに」 コスモ石油
五社目に紹介するのはCMなどで聞いたこともあるスローガンだと思いますが、コスモ石油の「ココロも満タンに」です。コスモ石油はエネルギーの会社ですが、エネルギー事業だけでなく、地球環境との調和、社会貢献、顧客満足度を高めることを重視していることが伝わります。
⑥「まだ、ここにない、出会い。」 リクルートホールディングス
六社目に紹介するのはリクルートホールディングスのスローガン「まだ、ここにない、出会い。」です。リクルートホールディングスの業務は個人と企業をつなぐことです。
デジタル社会になり、情報があふれかえっている今だからこそ、より多くの選択肢のなかからより最適な出会いをしていただけるようにという想いが込められています。シンプルで分かりやすいスローガンです。
⑦「Maps to the future」 ゼンリン
七社目に紹介するのはゼンリンの「「Maps to the future」です。ゼンリンは住宅地図帳などの各種地図や、地図のデータベース作成、地図情報に関するソフトウェアの開発をしている会社です。ゼンリンは、住宅地図の作成会社から、時代の流れに対応しながら発展を続けている会社です。「地図情報で未来を創造する」という言葉に、地図の常識や価値を超えていくという意味が込められており、企業の事業内容も明確に伝わってきます。
⑧「一瞬も一生も美しく」 資生堂グループ
八社目の企業は資生堂グループです。2005年に「一瞬も一生も美しく」というスローガンを掲げています。資生堂は、パーソナルビューティーパートナーを名乗り、お客さま一人ひとりの美しさを叶えるために、お客さまの肌と心に寄り添い、今の美しさも、未来の美しさも一緒に創り上げていくことを目指していますので、スローガンにはお客さまの人生そのものを豊かにするという資生堂の想いが反映されています。
⑨「ほかにはないアンサーを。」 オリックス
九社目に紹介するのはオリックスの「ほかにはないアンサーを。」です。オリックスの企業理念は「オリックスは、たえず市場の要請を先取りし、先進的・国際的な金融サービス事業を通じて、新しい価値と環境の創造を目指し、社会に貢献してまいります。」を掲げています。
時代や人が変わっても、最後までお客さまの要望に応えるために考え抜いて「アンサー」を出そうとしたいという姿勢が、スローガンで簡潔に表されています。
⑩「今日を愛する。」 LION
十社目に紹介したいスローガンは、LIONの「今日を愛する。」です。LIONの存在意義として掲げていることは「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する」であり、1891年の創業以来、社会に貢献することを一貫しておこなってきました。特別な日ではなく、人々の日々の生活に寄り添い、健康で清潔でいられるようにという考えです。
歯磨き、洗濯、手洗い、食器洗いに欠かせない商品を作っているLIONらしいスローガンです。
⑪「未来のキップを、すべての人に。」 JR東日本
十一社目はJR東日本の「未来のキップを、すべての人に。」を紹介します。JR東日本のグループ理念は「私たちは『究極の安全』を第一に行動し、グループ一体でお客さまの信頼に応えます。技術と情報を中心にネットワークの力を高め、すべての人の心豊かな生活を実現します。」であり、「すべての人」の未来が豊かになるようにという想い、そして、鉄道会社であるということがよく伝わるスローガンです。
⑫「味ひとすじ」 永谷園
十二社目はお茶漬けやふりかけなどを製造・販売している食品メーカー・永谷園の「味ひとすじ」です。永谷園は経営理念も「味ひとすじ」としており、「今までにない」「お客さまに『なるほどおいしい』と感じてもらえる」「他社にマネできない」という商品を作り続けたいという決意が込められています。
⑬「とどけ、元気。つづけ、元気。」 富士薬品
十三社目に紹介するのは、富士薬品の「とどけ、元気。つづけ、元気。」です。富士薬品は、元々、置き薬販売事業から始まり、現在では医薬品の研究開発および製造・販売などまでおこなう医薬品メーカーとなっています。
富士薬品は2030年に創業100周年を迎えるのにあたり、企業のあり方を再検討し、このスローガンを掲げました。人生100年時代と言われる今、多くの「ひと」の元気な生活を支えたいという想いが込められています。
⑭「あったかいをつなぐ」 四国石油
十四社目に紹介するのは、香川県で石油製品やガス機器の販売、生命保険代理業、不動産業など、幅広い事業を展開する四国石油という会社のスローガンです。
四国石油のスローガンは「あったかいをつなぐ」。
「あったかい」という言葉は、メイン事業のエネルギー関連業を連想させます。
まとめ:有名企業に劣らないメッセージ性溢れるスローガンを掲げよう
たくさんの有名企業のスローガンを紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。インパクトがあり、分かりやすくメッセージ性のあるものが多かったのではないでしょうか。
企業の理念やビジョンなどを盛り込み、インパクトとポジティブさの伝わるスローガンをぜひ掲げて、組織力アップを目指していきましょう。
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